■ 怪我をきっかけにレギュラー落ちJ1通算で394試合で160ゴール、J2通算でも97試合で50ゴール、日本代表としても31試合で4ゴールという成績を残しているサンフレッチェ広島のFW佐藤寿は文句なしで「Jリーグ史上でも有数のストライカー」と言えるが、プロ17年目となる2016年シーズンは苦しいシーズンになっている。怪我をした影響もあってレギュラーポジションを失ってJ1のリーグ戦はわずか18試合の出場のみ。奪ったゴールも3つだけ。
仙台時代の2004年から続けてきた「連続二桁ゴール(※ J2時代も含む。)」は12年連続で途切れるのはほぼ確実と言える。今年の3月12日で34歳になったのでキャリアは終盤戦に突入しているが数字的にはC大阪(当時もJ2)でプレーした2002年の13試合で2ゴールという成績以来の低い成績になっている。J1の通算ゴール数は160まで伸びているが、ずっと競っていたFW大久保(川崎F)との差もかなり広がっている。
J1のリーグ戦でスタメン起用されたのは7試合のみ。新加入のFWピーター・ウタカが1トップの位置でハマったこともあって怪我から戻ってきた後もベンチスタートがほとんどである。広島がリードを奪っている試合の終盤に投入するカードとしては運動量が多くてサイズのあるFW皆川のような選手の方が有効であることもあって「ベンチ入りはしたものの出番は回ってこなかった。」という試合がたくさんある。
■ 「現状には満足できない。」という気持ち出番が激減したので夏場には『自分を必要としてくれているところに行こうか・・・と考えたこともある。』というコメントがメディアで大きく報じられた。『正直、モヤモヤしたものはありますよ。』、『現状では追いかける状況のときにしか出られない。』、『1週間、試合に向けて準備し、試合中はアップだけで終わってしまう。何のためにやっているのかと思うこともありますよ。』ともコメントしているという。
ずっとレギュラーとしてプレーしてきた選手なのでベンチスタートになることに慣れておらず、かつ、昨シーズンのFW浅野拓のように「どういう展開であれ、必ず後半の15分あたりに投入される絶対的なジョーカー」という立場でもない。FWピーター・ウタカが1トップの位置で結果を出している以上、仕方がないところではあるが、『今シーズンの自身の起用法に関しては全く納得できていない。』と推測できる。
「控えに回ったときも腐ることなく練習に取り組んでチームの輪を乱すことなくトレーニングを続ける。」というのはプロの選手である以上、義務に近いが、レギュラーとして活躍していた時期と全く同じかそれ以上のモチベーションを持って日々の練習や試合に向けた準備を行うというのはなかなか難しい。特にFW佐藤寿のようなずっとチームの主役として活躍してきた選手にとっては簡単に実行できることではない。
■ もっとも去就が注目される選手の1人ずっとチームの顔として活躍してきた選手であるが「FW佐藤寿の去就」は今オフの最大の注目ポイントの1つと言える。レギュラーとして90分フル出場するのはかなり難しいと思うが、フォワードの一角としてプレーした場合、J1で年間10ゴール程度は依然として期待できる。「J1でタイトルを狙う広島なので出場機会が減ってきているがもうワンランク下のクラブであれば・・・。」というところはあるだろう。
2012年には34試合に出場して22ゴールを挙げてJリーグのMVPと得点王とベストイレブンの3つを受賞する活躍を見せたが、正直なところ、年齢的な衰えは否めず。スピードや運動量がかなり低下している。その一方で、昨シーズンは後半15分あたりでFW浅野拓と交代することがほとんどだったにもかかわらず34試合で12ゴールを記録。得点感覚の鋭さに関してはまだまだ衰えておらず、点の取り方は心得ている。
今シーズンは「フォワードの3番手」という立場だったが、期限付き移籍のFWピーター・ウタカの去就は不明で、夏にはFW浅野拓がアーセナルに移籍したので広島にとって重要な戦力であることは変わりない。仮にFWピーター・ウタカが退団となるとFW佐藤寿が1トップの1番手に戻る可能性もあるが、FW皆川やFW宮吉なども控えており、当然、即戦力となるCFの獲得に動くことは普通に考えられる話である。
■ どういうチームであれば生きるのか?移籍があり得るとしたら「J1の中堅クラブや下位クラブ」が有力候補となるが、J1の中堅クラブや下位クラブになるとフォワードの選手に求められるものが多くなる。攻め込まれる時間帯が長くなるので自陣の深くからアバウトなロングボールを蹴ったときに孤立した状態であってもボールをキープして時間を作ったり、ファールをゲットしたり、マイボールのスローインにする能力がCFの選手には必要となる。
結局、ロングボールを多用せず、しっかりとボールを回してチャンスを作ろうとする広島だからこそ、彼の裏抜けのセンスやポジショニングの良さといった武器が存分に引き出されていたところがある。なので、「広島よりも格下のクラブに行けば今よりも出場機会は増えるだろう。」とは全く言えない。特に1トップを採用しているチームであれば今シーズンと同じような起用法になる可能性の方がはるかに高い。
よりチャンスがあるとしたら2トップを採用しているチームだろう。今シーズンでいうと神戸や鳥栖や仙台や新潟あたりは2トップを採用する試合が多くなっているが、軸になれるCFがいて、その周りを衛星的に動き回って一瞬のスキを突いて仕留めるというのは何となくイメージできる。ただ、やはり、MF青山敏のようなパサー役になれる選手を必要とするタイプの選手なので難しい部分もたくさん出てくるだろう。
J1の下位のチーム(今シーズンでいうと甲府や湘南や福岡あたり)になるとロングボールをおさめるだけでなく、1人で持ち運んで独力で点を奪うプレーも求められるのでミスマッチと言えるだろう。一方、J2でのプレーに抵抗があるのか否かは分からないが、J1の下位のチームよりはJ2の上位クラブの方が良さは出しやすいと考えられる。得意な仕事に専念できる環境であれば結構な数のゴール数がまだまだ期待できる。
大半の選手は「格下のクラブになればなるほど出場機会が増える可能性は高くなる。」と言えるが、FW佐藤寿に関しては特異なプレースタイルと相まって「このパターンには当てはまらない。」と考えられる。言うまでもなく、10年以上広島でプレーしてきたので「このクラブで引退したい。」という気持ちもあるはずで、プロサッカー選手として「どういう道を選ぶのか?」はいろいろな意味で興味深いところである。
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