■ 東アジアカップの3戦目東アジアカップの3戦目。初戦は北朝鮮と対戦して1対2の逆転負けを喫して、2戦目の韓国戦は1対1の引き分けだったハリルジャパンが開催国の中国と対戦した。中国はここまで1勝1敗。先に行われた韓国と北朝鮮の試合は引き分けだったので、韓国は1勝2分けで、北朝鮮は1勝1敗1分け。最終戦で中国が日本に勝利すると中国の優勝で、引き分け以下の場合は韓国の優勝となる。日本は勝つと2位で大会を終えることになる。
日本は「4-2-3-1」。GK東口。DF丹羽大、森重、槙野、米倉。MF遠藤航、山口蛍、永井謙、武藤雄、宇佐美。FW川又。G大阪のGK東口とDF丹羽大とDF米倉の3人が代表初出場となった。CBが本職のDF丹羽大が右SBに入って、右SBが本職と言えるDF米倉が左SBに回った。過去2試合は右SBで出場したMF遠藤航はボランチに回った。DF森重とDF槙野とMF山口蛍とMF遠藤航とMF永井謙の5人が3試合連続スタメンとなった。
■ 1対1のドロー試合は開始10分に中国が先制する。ペナルティエリア内で起点を作って後方から上がってきた選手に丁寧なパスを出すと、MFウー・レイが右足で確実に決めて中国が先制する。与えたくない先制ゴールを奪われた日本だったが、その後はボールを保持して攻め込む時間が長くなる。すると前半41分にDF槙野のスルーパスから左SBのDF米倉が相手の裏を取ってグラウンダーで折り返すと、MF武藤雄が合わせて同点に追いつく。
後半は立ち上がりから右サイドハーフのMF永井謙の走力が生きるシーンが多くなる。後半25分にはMF永井謙のチェイシングをきっかけに高い位置でボールを奪うとMF山口蛍の絶妙なヒールでのパスを受けたMF武藤雄がキーパーと1対1の決定機をつかむが、これはキーパーがファインセーブを見せて逆転とはならず。中国はセットプレーからゴール前を脅かすが、流れの中ではほとんど攻撃の形を作れない。
中国は勝てば優勝なので2点目を狙ってアグレッシブに来るかと思われたが、「何がなんでも2点目を奪う。」という意思は感じられず。結局、1対1のドローに終わった。1勝2分けの韓国が1位で、1勝1敗1分けの中国が2位で、同じく1勝1敗1分けの北朝鮮が3位で、日本は0勝1敗2分けで4位に終わった。前回の2013年大会は2勝1分けで初優勝を飾った日本代表だったが、今大会は残念な結果に終わった。
■ 試合の入り方はまずまずだったが・・・。勝てば優勝ということで、東アジアカップ制覇がかかった中国がもっと積極的なサッカーを見せるかと思われたが意外とそういう風ではなかった。スタジアムの盛り上がりも中国のチャンスシーンになると大歓声が上がったが、パッと見た感じでは空席も少なくなかった。「中国はサッカー人気が非常に高い。」と聞いていたので拍子抜けしたところもあるが、内容を考えると1対1のドローという結果は極めて妥当と言える。
日本の試合の入り方はまずまずだった。初戦の北朝鮮戦はアグレッシブに行き過ぎて失敗して、2戦目の韓国戦はその反省もあって少し消極的な入り方になった。今大会の3試合の中では「もっともいい試合の入り方」ができたと思うが、序盤にセットプレーを中心にチャンスシーンを作ることができたので、MF宇佐美のシュートがバーに直撃するなどこの時間帯時にいくつか訪れたチャンスを生かせなかったのは残念だった。
一方の守備陣は試合の序盤は相手フォワードに対するマークがやや緩かった。前半10分の先制ゴールの場面はボックス内で相手選手に起点を作られてしまった。3人ほど日本の選手が囲んでいたが、激しいプレッシャーはかかっていなかったので、正確なパスを通されてしまった。それ以外の時間帯はしっかりとDF槙野やDF森重が相手フォワードを潰せていたが、最初の10分ほどはチェックが緩かったのは否定できない。
先制ゴールを奪ったことでスタジアムが盛り上がってかさにかかって攻め込んでくるかと思われたが、ペースダウンしてくれたのは日本にとってはラッキーだった。CBやボランチの選手に強いプレッシャーがかかっていなかったので、MF遠藤航とMF山口蛍とDF森重とDF槙野の4人はかなり自由にプレーすることができたので、ここから効果的なパスが入ってバイタルエリアを攻略する場面がいくつか見られるようになった。
■ DF槙野をCBで起用するメリットとは???前半41分の同点ゴールのシーンはCBのDF槙野のスルーパスがきっかけだった。現代サッカーでは「CBがドリブルで持ち上がったとき」というのはチャンスになりやすい。パスコースをしっかりと封じていて出しどころがなくてCBの選手が困るケースは試合中によく見られるが、思い切ってドリブルで持ち運ぶと前が広がるパターンは多い。DF槙野をCBで起用しているメリットの1つが分かりやすく表れた場面と言える。
同点アシストしたのは左SBのDF米倉だった。DF米倉が左SBでプレーするところを観るのは初めてだったが、大きな問題はなかった。前半に横パスをカットされたシーンとオフサイドトラップをかけ損ねて相手に決定機を許したシーンの2つは反省材料と言えるが、縦への推進力が光った。本来は2列目の選手なので、SBの専門家であるDF内田篤やDF長友やDF太田宏あたりとは違った良さを持っている。
同点ゴールを決めたMF武藤雄はデビューから2試合連続ゴールとなった。今シーズンはこういう形でサイドから入ってくるボールに対していいタイミングで顔を出して豪快に決めるシーンが多い。仙台でプレーしていた昨シーズンまでは「どちらかというとボールを持った時に良さを発揮するドリブラー」というイメージだったが、オフ・ザ・ボールの質とフィニッシュの精度が劇的に上がった。大きなアピールができた。
1対1になった後も中国が積極的に仕掛けてくることはなかったので、日本としては2点目を取ることに集中しやすい状況だったが、最後まで2点目を奪うことはできなかった。交代で投入されたFW興梠とMF柴崎岳のプレーは個人として見ると決して悪くなかったが、「選手交代によって攻撃の勢いを加速させたい。」と考えていたと思われるハリルホジッチ監督が期待したほどの劇的なプラスの効果は生まれなかった。
当然、過密日程による疲労の影響もあったと思うが、試合序盤に何度かスピードに乗ったサイド攻撃を仕掛けられた。そういう部分が日本にとってマイナスに作用した可能性はある。なんだかんだで中国の選手はパワーとスピードがあるので攻撃に人数をかけすぎてカウンターを食らうのは危険である。日本にとっては是が非でも勝ちたい試合だったが、左右のSBが後ろを気にせずに攻撃参加できる状況ではなかった。
■ 初代表の選手の活躍が目立った大会ということで東アジアカップは0勝1敗2分けという結果に終わった。「日本と韓国は欧州組が不在で、中国には開催国というアドバンテージがある。」というシチュエーションだったが、こうなると「どの試合もどちらが勝ってもおかしくない。」と言えるほど4チームは戦力的には拮抗する。日本としては1対0とリードしながら終盤にパワープレーで連続失点を喫した初戦の北朝鮮戦の逆転負けが悔やまれるところである。
「未勝利で大会を終える。」というのは非常に残念な結果と言えるが、より大事なのは今大会に出場した選手の個々のパフォーマンスをしっかりと見極めることであり、1人でも多くの選手がフルメンバーが集まるときにも代表チームに招集されて出場機会を得ることである。そういう意味では「初代表」の選手の何人かがなかなかいいプレーを見せたことが東アジアカップ2015の日本代表の収穫と言えるだろう。
もちろん、わずか2・3試合の実績で「FW本田圭やFW岡崎慎やMF香川やMF長谷部やDF内田篤やDF長友やDF吉田などを上回る評価を得てレギュラーポジションを奪取する。」というのは現実的ではないが、急造チームと言える今回のチームでどれだけのプレーができるのか?というのはハリルホジッチ監督がしっかりとチェックしているはずで、「国内組を見極めることができた。」という意味では有意義な大会になった。
9月にはロシアW杯のアジア予選が控えているが、MF遠藤航とMF武藤雄の2人は「引き続いて代表に招集されても全くおかしくない。」というプレーを見せた。特にMF遠藤航は今大会でもっとも目立った選手と言える。1戦目と2戦目は右SBで、3戦目はボランチでプレーしたが、継続的に代表チームに招集されている右SBあるいはボランチの選手とは全く違ったプレースタイルを持っているのが一番の魅力と言える。
空中戦の強さであったり、縦パスを狙う意識の高さであったり、セットプレーのターゲットになれるところであったり、自分の良さをフルに出し切ることができたのではないかと思う。その他では2戦目の韓国戦でいいプレーを見せたG大阪のMF倉田と鳥栖のMF藤田直の2人も「次回の代表チームに招集される権利」を獲得した選手でG大阪のDF米倉も可能性を示した。初代表の選手の多くが良さを出せたのは良かったと言える。
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