■ 久々となる五輪代表の試合U-22日本代表とU-22コスタリカ代表の親善試合がユアテックスタジアムで行われた。手倉森ジャパンにとっては3月末に行われたU-23アジア選手権の予選の3試合(マカオ戦・ベトナム戦・マレーシア戦)以来なので久々の試合となる。今回はMF大島僚やFW鈴木武蔵やDF山中やDF松原健など主力数名が怪我やコンディションの問題で起用できず。MF前田直やMF小屋松など新戦力に注目が集まった。
日本は「4-2-3-1」。GK櫛引(清水)。DF伊東幸(鹿島)、岩波(神戸)、植田(鹿島)、亀川(福岡)。MF遠藤航(湘南)、井手口(G大阪)、前田直(松本山雅)、中島翔(FC東京)、野津田(広島)。FW浅野拓(広島)。5月中旬に行われたハリルジャパンの代表候補合宿に選出されたFW浅野拓の1トップで、右SHには松本山雅のMF前田直が起用された。トップ下のMF中島翔と右SHのMF前田直はともに東京Vユース出身で同級生となる。
■ 2対0で日本が快勝試合は日本ペースで進んでいく。右SBのDF伊東幸、ボランチのMF井手口、右サイドハーフのMF前田直の3人は五輪代表では初出場 or 初出場に近い新戦力と言えたが、この3人と周囲の関係性はまずまず。立ち上がりは右サイドのMF前田直のドリブルからチャンスを作っていく。いくつかチャンスを逃した後の前半36分に左SBのDF亀川のクロスをゴール前に入って来たMF野津田が合わせて日本が先制に成功する。
後半開始から日本はMF井手口に代えて横浜FMのMF喜田を投入。この試合は8人まで交代が認められていたので、手倉森監督は積極的にメンバーチェンジを行ったが、後半32分に福岡のMF金森が相手のパスミスをカットしてから自らミドルシュートを決めて2点目を挙げる。1点目のMF野津田のゴールをアシストしたのも福岡でプレーするDF亀川だったので、J2の福岡でプレーする2人が日本の2つのゴールに絡んだ。
結局、試合は2対0で日本が勝利。なかなか集まる機会が無い五輪代表なので、1つ1つの試合が非常に大事になってくるが、結果も内容も伴った勝利だったと言える。後半は新潟のDF川口尚、広島のDF高橋壮、千葉のFWオナイウ阿道、名古屋のMF小屋松などを投入したが、スタメン組も途中出場組もほとんどの選手が自分の持ち味を出すことが出来た。ユアスタ凱旋となった手倉森監督も満足できる試合になったと言える。
■ 主力組が期待通りの好パフォーマンス3月末のU-23アジア選手権の予選は3試合ともすっきりしない内容だった。もちろん、負けられない予選というプレッシャーが大きかったことは容易に想像できるし、中1日というタイトなスケジュールだったことも大いに関係しているだろう。また、高温多湿のマレーシアの気候や劣悪なピッチ状態も原因だったと思うが、出来の良くない試合が続いて心配している人は多かったと思うが、この日は結果も内容も良かった。
スタメン11人の中で「所属クラブで絶対的なレギュラー」と言えるのは湘南のMF遠藤航くらい。期限付き移籍先で出場機会を得ているMF前田直とDF亀川もレギュラーに近い立場と言えるが、他の選手は微妙。GK櫛引はレギュラーを奪い返したが、サブに回る時期もあった。五輪世代が思うように試合に絡めていない点は手倉森監督の悩みの種だったが、この日はコンディションの問題もあまり感じられなかった。
「五輪代表の軸」と言えるMF中島翔、MF遠藤航、DF岩波、DF植田直、GK櫛引の5人はさすがのプレーを見せたが、中でもMF遠藤航のプレーが非常に良かった。湘南では右ストッパーでプレーする機会がほとんどなので、「ボランチでのプレーに慣れる。」というのが五輪代表で活動するときの重要なポイントとなるが、この日は攻守両面で質の高いプレーを見せた。縦への意識が高くて、そのパスの精度も高かった。
トップ下に入ったMF中島翔はゴールには絡めなかったが、いいプレーを見せた。FC東京では出場機会に恵まれずに苦労しているが、メンバー発表のときの会見の席で手倉森監督は「自分のチーム(=五輪代表)で活躍してくれると思う選手を選んでいる。」という趣旨のコメントしているが、五輪代表ではしっかりと結果を残してきた。もっともコンディションが気になる選手と言えるが、全く問題は無かった。
■ 新戦力の活躍も収穫の1つ攻守の軸となるMF中島翔、MF遠藤航、DF岩波、DF植田直、GK櫛引の5人がしっかりとしたプレーを見せたので、周りの選手は楽にプレーすることができた。J1で上位争いをしている広島のFW浅野拓とMF野津田のコンビはJリーグでの好調ぶりをそのまま五輪代表の試合でも発揮したが、松本山雅のMF前田直、G大阪のMF井手口、鹿島のDF伊東幸というスタメンに抜擢された新戦力もインパクトを残したと言える。
前半の日本は運動量が多くて選手たちの距離感も良かったが、この3人もうまく絡んでいた。MF前田直はやや尻すぼみで後半の早い段階で交代となったが、右サイドでボールを持ったときの期待感は高い。今回の五輪代表はドリブルを武器とする選手が多いが、MF前田直は左利きという特性もあって、左足のシュートも精度が高い。積極的に仕掛けることができる選手なので、五輪代表の切り札になり得る選手と言える。
G大阪のMF井手口は前半のみの出場だったが、何度かいいプレーを見せた。G大阪にはMF遠藤とMF今野がいるので出場機会を得るのはかなり難しいが、攻守両面でチームに貢献するタイプのボランチである。ほとんどG大阪で試合に出ていないにもかかわらず、何度か五輪代表に呼んでいることからも手倉森監督が高い評価を下していることが分かる。45分間の出場だったが、彼もいいアピールが出来た。
レギュラーの新潟のDF松原健が怪我で離脱していることもあって、今回は新潟のDF川口尚と鹿島のDF伊東幸が右SBとして召集されたが、スタメンのチャンスを得たDF伊東幸の出来もなかなか良かった。コンビネーションの中で生きるタイプなので、一緒にプレーしたことが無い(と思われる)選手が多い状況では持ち味を出すのは難しいかと思われたが、気の利いたパスと精力的なフリーランニングが効果的だった。
■ 持ち味を発揮した途中出場の選手たち途中出場の選手がアピールできたのもこの試合の収穫と言える。一番目立ったのは横浜FMのMF喜田だろうか。MF井手口との交代で後半開始からボランチの位置に入ったが、粘り強い守備とルーズボールへの反応はさすがだった。MF喜田は2014年1月に行われた第1回のU-22アジア選手権のときは主力として活躍。それ以降は召集外になることが多かったが、横浜FMでポジションを確保しつつある実力を見せつけた。
MF金森もいいアピールが出来た。言うまでもなく2列目は競争が激しい。2列目に用意されるのは「5枠程度」だと思われるが、エースのMF中島翔がいて、MF野津田がいて、MF矢島慎がいて、MF南野がいて、MF前田直もいて、MF井出やMF豊川なども控えている。最激戦区と言えるが、ゴールという結果は何よりのアピールである。チームメイトのDF亀川もアシストを記録しており、この日は福岡勢が目立った。
初召集のFWオナイウ阿道もまずまず良かった。最初はFW浅野拓と2トップを組んだが、2トップのときはいいタイミングで絡めなかった。仕事場が見つからなかったが、FW浅野拓が下がってFWオナイウ阿道の1トップ気味の布陣になってからは自由に使えるスペースが出来て、タイミングのいいリターンパスで味方選手を生かそうとする効果的なプレーが多かった。初出場と言うことを考えると上出来と言える。
ということで、2013年末に手倉森ジャパンが正式に発足してから20試合弱をこなしているが、1・2を争うような良い試合ができた。ただ、MF遠藤航やMF大島僚やDF岩波やDF植田直やGK櫛引などを除くほとんどの選手は次回以降も呼ばれるかどうかその保証が無い状態である。チームとしては本大会の切符を勝ち取ることが最大の目標となるが、個人としてはU-23アジア選手権のメンバーに選ばれる必要がある。
初召集が期待されながらも選ばれなかった浦和のMF関根貴を筆頭にまだまだ「五輪代表に呼ばれてもおかしくない。」という選手はたくさんいる。今回は一発勝負で五輪代表の切符を争うことになるので、「調子の良さ」というのもメンバー選考の大きなポイントになるだろう。J1はちょうど折り返し地点で、J2も間もなく折り返し地点を迎えるが、誰がU-23アジア選手権のメンバーに選ばれるのかを興味深く見守りたい。
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