センターバック → 日本サッカー界の弱点と言われて久しいポジションで、実際に関塚ジャパンとザックジャパンは「CBの人材不足」に苦しんだ。しかしながら、五輪代表に話を限定すると、2つ前の北京世代は20歳そこそこの年齢でフル代表に抜擢された千葉のDF水本(現・広島)と清水のDF青山直(現・甲府)がいたので、CBで苦労することはなかった。
「強固なCBコンビ」が反町ジャパンのウリの1つだったので、「毎度、五輪代表はCBで困っている。」という認識は間違っているが、改めて言うまでもなく、リオ世代はCBが充実している。DF田中誠、DF鈴木秀、DF松田直、DF上村らを擁したアトランタ組もCBは充実していたが、質も、量も、近年の五輪代表ではリオ世代が突出している。
早期のフル代表入りが期待される鹿島のDF植田と神戸のDF岩波だけでなく、G大阪のDF西野も超有望な大型CBである。残念ながら今回のアジア大会は途中で怪我をして初戦のクウェート戦の1試合の出場にとどまったが、187センチのDF西野と186センチのDF植田と186センチのDF岩波の3人で組んだ3バックはスケール感が満載だった。
「この3人がいればそれで十分」と言えるが、それ以外の選手も粒ぞろいである。この世代の出世頭の1人であるDF遠藤航(湘南)は178センチとCBとしては小柄であるが、2010年のU-19アジア選手権と2012年のU-19アジア選手権の2大会は連続してCBのレギュラーとして起用された。経験値という点では粒ぞろいCB陣の中でも1番上となる。
「CBが充実していて、ボランチはやや人材不足」というリオ世代の実情もあって、今回のアジア大会はボランチでの起用がほとんどだった。今後も五輪代表においてはボランチ起用が中心になると予想されるが、CBとしても高い能力を持っている。得点力が高い点がウリの1つで、今シーズンは湘南で30試合に出場して7ゴールを記録している。
シーズン前半は東京VでプレーしたDF吉野恭(広島)も将来が楽しみな選手である。1月のU-22アジア選手権のときは中盤の底でプレーした。CBとボランチの2つを高いレベルでこなすことができる点がセールスポイントで、五輪代表においてはボランチとCBの両ポジションでレギュラー候補と言える。フィード力はCBとしては申し分ないレベルである。
今回のアジア大会には、DF植田、DF岩波、DF西野、DF遠藤航、DF吉野恭の5人が招集された。先のとおり、DF遠藤航とDF吉野恭はボランチでも、CBでもプレーできるが、このまま、この5人がリオ五輪の本大会でもCB候補としてメンバー入りを果たす可能性が今の時点では最も高い。今回はCBのポジションにオーバーエイジを用いる必要性は全くない。
突出した選手が何人かいるため、本大会のメンバー予想はあまり難しくないが、それ以外にも好素材が何人もいるのがリオ世代である。その筆頭はDF奈良(札幌)である。180センチとサイズは並であるが、鍛え抜かれた体を生かした当たりの強さに定評がある。高校3年生のときから札幌のトップチームで活躍してきて、今では守備の要となった
チームメイトのDF櫛引(札幌)も有望なCBと言える。1993年2月生まれなので、リオ世代の中では一番上の学年となる。彼も早くから札幌のトップチームで活躍しており、プロ1年目の2011年の途中にCBのレギュラーを獲得した。このシーズン終盤に1学年下のDF奈良にポジションを奪われたが、その後もコンスタントに出場機会を得ている。
札幌コンビに続くのは初のJ1昇格を目指す松本山雅の不動の左ストッパーであるDF犬飼である。総合力の高いCBで、特に得点力の高さに定評がある。昨シーズンは21試合で3ゴールで、今シーズンも34試合で5ゴール。DF飯田など空中戦に強い選手の裏からDF犬飼が出てきてゴールを決めるというのが松本山雅の必殺パターンになっている。
なかなかトップチームで出場機会を得ることができないが、京都のDF高橋祐も将来を嘱望されてきた大型CBの1人である。185センチとサイズに恵まれており、昨シーズンは豪州リーグのブリスベン・ロアーでプレーした。姉はファッションモデルの高橋メアリージュンで、ルックスではCBに限らず、リオ世代の選手の中でも屈指の存在と言える。
当時、新潟でプレーしていたDF鈴木大(現・柏)を除くと、有望なCBがなかなか出てこなかったロンドン世代と比べると雲泥の差である。DF櫛引、DF犬飼、DF高橋祐なども五輪代表のCB陣がロンドン世代レベルであったならば、レギュラーCBに据えられてもおかしくない実力を持っている。CBに関してはメンバー入りを果たすだけでも大変である。
ただ、DF植田やDF岩波やDF植田などは、今後、フル代表に招集されて呼びたくても五輪代表の試合に招集できない可能性がある。また、海外移籍をして、今のFW久保裕(ヤングボーイズ)のように簡単には五輪代表に招集できなくなるパターンも考えられる。そういったことを考慮すると、当然のことながら、全体の底上げは不可欠である。
間もなく開幕するU-19アジア選手権に出場する資格を持つ19歳以下のCBに話を進めると、さすがにDF植田やDF岩波クラスのCBは見当たらない。将来のフル代表の守備の要になりそうな「超の付く逸材CB」はいないが、それなりに粒ぞろいである。清水のDF三浦弦や札幌のDF内山などはポテンシャルの高さを評価されている。
DF三浦弦は大榎監督になってから清水のトップチームでも出場機会を得ており、札幌のDF内山は幾多の優秀な選手を輩出してきた札幌の下部組織で育った。年齢の近いDF奈良とDF櫛引がいるので、クラブで出場機会を得るようになるまでが大変と言えるが、183センチのサイズに加えて統率力なども評価されている頭脳派CBである。
この2人以外ではDF中谷(柏)とDF茂木(浦和ユース)もU-19日本代表メンバーに選ばれている。ともに「96ジャパン」で活躍した選手で、柏のDF中谷は「ポスト・近藤」になることをクラブ関係者から期待されている。浦和ユース所属のDF茂木は「もぎ」ではなくて、「もてぎ」と読む。来シーズンからのトップチーム昇格がすでに内定している。
2013年のU-17W杯でベスト16に入った「96ジャパン」の守備の要だったDF宮原(広島)もU-19日本代表に選ばれている。すでに広島のトップチームでスタメン出場を経験しているが、172センチとCBとしては非常に小さい。今後、ボランチなど他のポジションがメインとなる可能性が高いが、攻守両面でセンスの良さを感じさせるプレーヤーである。
U-19アジア選手権のメンバーには選ばれていないが、DFハーフナー・ニッキ(名古屋)もこの世代となる。公称は197センチで、本当の身長は199センチだという。過去、これほどの身長の日本人選手はいなかった。大きな魅力があるが、まだ成長が止まっていないため、「体作りなど本格的なトレーニングができない。」という悩みを抱えていると言う。
表3. リオ世代のアジアの公式戦の成績とCBのスタメン
大会名 | 日程 | 区分 | 対戦相手 | 勝敗 | スコア | スタメンCB |
U-19選手権 | 2012/11/03 | GL1戦目 | イラン | × | 0対2 | 遠藤航 | 奈良竜樹 | |
2012/11/05 | GL2戦目 | クウェート | ○ | 1対0 | 遠藤航 | 岩波拓也 | |
2012/11/07 | GL3戦目 | UAE | △ | 0対0 | 遠藤航 | 岩波拓也 | |
2012/11/11 | 準々決勝 | イラク | × | 1対2 | 遠藤航 | 岩波拓也 | |
U-22選手権 | 2014/01/12 | GL1戦目 | イラン | △ | 3対3 | 西野貴治 | 植田直通 | |
2014/01/14 | GL2戦目 | クウェート | △ | 0対0 | 西野貴治 | 植田直通 | |
2014/01/16 | GL3戦目 | 豪州 | ○ | 4対0 | 西野貴治 | 植田直通 | |
2014/01/20 | 準々決勝 | イラク | × | 0対1 | 西野貴治 | 植田直通 | |
アジア大会 | 2014/09/14 | GL1戦目 | クウェート | ○ | 4対1 | 西野貴治 | 植田直通 | 岩波拓也 |
2014/09/17 | GL2戦目 | イラク | × | 1対3 | 植田直通 | 岩波拓也 | |
2014/09/21 | GL3戦目 | ネパール | ○ | 4対0 | 植田直通 | 岩波拓也 | |
2014/09/25 | ラウンド16 | パレスチナ | ○ | 4対0 | 植田直通 | 岩波拓也 | |
2014/09/28 | 準々決勝 | 韓国 | × | 0対1 | 植田直通 | 岩波拓也 | |
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