■ U-22ミャンマーとの親善試合3月下旬にU-23アジア選手権の本大会出場を賭けた予選が開催される。手倉森ジャパンはマカオ・ベトナム・マレーシアの3チームと同組に入っているが、その3試合に向けた準備のための強化試合であるU-22日本代表とU-22ミャンマー代表の試合が3月11日(水)にフクダ電子アリーナで開催された。3月7日(土)と3月8日(日)にJ1とJ2の第1節が行われたので、多くの選手が中2日あるいは中3日の試合となる。
日本は「4-2-2-2」。GK櫛引。DF松原健、岩波、植田、山中。MF遠藤航、原川、荒野、中島翔。FW鈴木武蔵、浅野拓。「4-2-3-1」や「4-1-2-3」を用いることが多かったが、この日は「4-2-2-2」を採用して、新潟のFW鈴木武蔵と広島のFW浅野拓の2トップとなった。攻撃の中心となる川崎FのMF大島僚はスタメンで出場する予定だったが、足に違和感があるため欠場。京都のMF原川がスタメンで起用された。
磐田のGK牲川、福岡のGK中村航、FC東京のDF奈良、福岡のDF亀川、東京VのDF安在、広島のMF吉野恭、広島のMF野津田、岡山のMF矢島慎の8人がベンチスタートで、川崎FのMF大島僚はスタンド観戦となった。当初は鹿島のMF豊川と柏のMF秋野もメンバーに選ばれていたが、ともに怪我のため参加を見送ることになった。ただ、MF豊川は3月15日(日)に五輪代表に再合流する予定になっている。
■ ゴールラッシュで9対0の圧勝試合は日本のゴールラッシュとなる。前半8分に相手キーパーのキャッチミスをFW鈴木武蔵が押し込んであっさりと先制すると、前半13分にはFW鈴木武蔵のパスからMF中島翔が決めて2点目を挙げる。さらに前半21分にはDF山中のCKからDF岩波が決めて3点目を挙げると、前半25分にもDF山中のアシストからFW鈴木武蔵がヘディングシュートを決めて4点目を挙げる。柏の左SBのDF山中は2アシストの活躍だった。
4対0とリードした後はパスミスが多くなって一時的にリズムを壊してしまうが、前半41分にFW荒野のパスからFW鈴木武蔵が決めて5点目を挙げると、前半42分にはMF遠藤航のスルーパスからMF中島翔が決めて6点目。さらに前半のアディショナルタイムにもMF荒野のスルーパスを受けたMF中島翔が決めて7点目を挙げる。FW鈴木武蔵とMF中島翔の2人はともに前半だけでハットトリックを決める活躍だった。
後半開始からGK中村航とDF亀川とMF安在とMF野津田とMF矢島慎の5人を投入。後半6分には日本代表経験のあるDF松原健のクロスからFW鈴木武蔵が決めて8点目を挙げると、後半15分にもMF野津田のクロスをMF中島翔が決めて9点目を挙げる。二桁ゴールまでリーチがかかったが、その後はなかなか決定機を作れない。結局、9対0というスコアでU-22日本代表がU-22ミャンマー代表に大勝した。
■ 主要メンバーはほぼ決まる。正直なところ、ミャンマーのキーパーのGKチョー・ジン・ヒョーのレベルが低かった。一定以上のレベルのキーパーであったならば、決まっていないと思われるシュートがいくつかあったので、9ゴールというのは相手のキーパーのレベルの低さが大いに関係している。チームの総合力に関してはここまでの大差が付くほどの大きな差は無かったと思うが、特に7ゴールを奪った前半の出来は良かったと言える。
当然、結果は大事で、勝つということは大事なことであるが、スコア自体に大きな意味は無い。並程度のキーパーであったならば、5対0くらいのスコアでおさまったと思うが、5対0だろうが、9対0だろうが、13対0だろうが、こういう形の親善試合においてはあまり大きな違いはない。スコアにこだわる意味はほとんどないが、リズムのいい時間帯はテンポよくパスが回っていたので、その点は評価できる。
五輪代表のメンバーはある程度は定まって来た。今の時点ではGK櫛引とDF松原健とDF岩波とDF植田とDF山中とMF遠藤航とMF大島僚とMF中島翔とFW鈴木武蔵の9人はかなりレギュラーに近い位置にいる。さらに「4-1-2-3」を採用するときは京都のMF原川がスタメンで起用される可能性が高いので、MF原川も含めると10人までがほぼ決まっており、同じようなメンバーで戦ってきた試合は多い。
なので、コンビネーション等は確立されてきている。この日は中心のMF大島僚が欠場となったが、MF荒野やFW浅野拓もうまく攻撃に絡むことが出来た。メンバーを大きく入れ替えた後半はなかなか決定機を作れなかったので、途中出場の選手の何人かアピールできなかった。その点は残念だったが、メンバーを大きく入れ替えるとコンビで崩すのが難しくなるのは当たり前のことであり、仕方がないと言える。
■ 4ゴールと結果を出した中島翔哉最終的なスコアにこだわる必要はあまりないが、4ゴールを挙げたFW鈴木武蔵とMF中島翔の2人は評価されるべきである。相手キーパーにアシストされたゴールもあったが、どういう相手であれ、ゴールという結果を出すことは簡単なことではない。結局、この2人以外でゴールを決めたのはCBのDF岩波のみ。「結果」という点をクローズアップすると、これまでの五輪代表の活動の中ではこの2人が突出している。
MF中島翔は2月のシンガポール戦ほどの存在感は無かった。いつもの試合と比べるとボールは集まってこなかったが、肝心なところでゴール前に入って仕事をした。FC東京ではなかなか出番が巡ってこないので、試合勘という部分が心配されるが、このタイミングで90分間プレーできたのは非常に大きい。3月下旬の3試合も彼が攻撃の中心となって多くのゴールを生み出すのは間違いないだろう。
その他ではスタメンでテストされた札幌のMF荒野の出来もまずまず良かった。5点目のFW鈴木武蔵のゴールと7点目のMF中島翔のゴールをアシストしたので、MF荒野も2アシストと結果を出したが、ダイレクトで出すパスが効果的で、周りの選手との連携も良かった。前述のとおり、右サイドハーフは数少ないレギュラーが決まっていないポジションであるが、MF荒野はこの試合でアピールに成功したと言える。
9対0の試合で、しかも、相手が放ったシュートは2本だった。マイナス評価になる選手は少なくて、ほとんどの選手が及第点以上と言えるが、すでに触れた選手以外では神戸のDF岩波、柏のDF山中、福岡のDF亀川あたりが良かった。ここに来て左SBで出場機会を得ているDF亀川は前回のシンガポール戦も出来が良かったが、この日も良かった。ただ、DF山中の出来も良かったので、序列を覆すには至らなかった。
ちょっとしたサプライズだったのは東京VのMF安在である。東京Vのときはほとんどが左SBで、中盤でプレーするところを観た記憶は無かったが、想像以上にうまくこなしていた。五輪代表は左SBが質も量も不足気味で、当然、左SBのレギュラー候補の1人だと思っていたが、中盤でこれほど気の利いたプレーができるようだと生き残る可能性が膨らむ。この試合で一番アピールできたのはMF安在だったのではないか。
■ 未完の大器のFW鈴木武蔵FW鈴木武蔵も4ゴールと結果を出した。自身の3点目や4点目は「レベルの高いキーパーでも防ぐのはなかなか難しかった。」と思えるようなシュートだったので、いい形のゴールだったと言える。新潟ではなかなかスタメンの座を確保することができなくて、2014年は29試合で3ゴールという成績だったが、五輪代表ではエースと呼ぶにふさわしい活躍を見せており、MF中島翔と並ぶ得点源の1人になっている。
新潟のときはなかなかチャンスに決められないので、五輪代表でのFW鈴木武蔵と新潟でのFW鈴木武蔵は別人のように思えるときもあるが、五輪代表では十分すぎるほどの結果をピッチ上で残しているので、精神的に落ち着いてプレーすることができるのだろう。決して器用な選手ではないが、五輪代表のときは落ち着いてフィニッシュできている場面が多くて、決定機を確実に仕留めることが多い。
3点目や4点目のゴールの方が見栄えがいいのは間違いないが、評価したいのは1点目のゴールである。MF原川のクロスはイージーボールだったが、相手のキーパーがファンブルして詰めていたFW鈴木武蔵が難なく押し込んだ。これ以上ないほどのラッキーゴールだったが、万一に備えて一応のアクションを起こしていた点が良かった。準備をしていなかったら決して間に合わなかったので、その点を評価したい。
FW鈴木武蔵は抜群の身体能力を持っていて、特にスピードが最大のウリである。185センチとサイズもあるので、発展途上と言える「力強さ」が出てくるといい選手になれると思うが、真面目にプレーすることができる点も1つの魅力と言える。できるプレー自体はそこまで多くないが、今の自分にできることをできる範囲で精一杯こなそうとする点は彼のいいところであり、成長する上で大きな助けになると思う。
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