■ 待望の初ゴールACLの第3節でタイのブリーラムとホームの長居スタジアムで対戦したセレッソ大阪は開始直後にFW柿谷が先制ゴールを挙げると、その後、19歳のMF南野が2ゴールを挙げて3対0とリードする。待ちに待った瞬間が訪れたのは後半終了間際で、DF丸橋のロングフィードに反応したFWフォルランがペナルティエリア内で相手ボールを奪い返して右足を振り抜くと、強烈なシュートがネットに突き刺さった。
このシュートが決まったすぐ後に試合終了のホイッスルが鳴ったので、正真正銘のラストワンプレーでFWフォルランの来日初ゴールが生まれた。本人も「早く初ゴールが欲しい。」と強く思っていたようで、ゴール直後ならびに試合後のヒーローインタビューでは安堵している様子も見て取れた。開幕前から大きな注目を浴びて、FWフォルランと言えども、相当にプレッシャーを感じていたことが容易に推測できた。
この試合はゴールシーン以外にも何度かチャンスシーンを迎えたが、J1の第3節の清水戦から最前線でプレーするようになって、決定機に顔を出す機会が多くなった。その分、FW柿谷にかかる負担が増えていて、清水戦からトップ下でプレーするようになって、この試合の終盤はサイドハーフに回った。FW柿谷はちょっと大変な役回りになっているが、チームのバランスを考えると仕方がないところである。
■ 欲しいタイミングでパスが来ないC大阪にとってブリーラム戦が公式戦の6試合目だったが、FWフォルランはACLの浦項戦(=1試合目)とJ1の2節の徳島戦(=3試合目)はベンチスタートだった。なので、スタメンは4回目で、ブリーラム戦で初めて90分間フルにプレーしたが、なかなかゴールという結果を出せずにいた。このタイミングでC大阪での初ゴールが生まれたことで、今後はちょっと余裕を持ってプレーできるようになるだろう。
チームメイトも気を使っており、清水戦は3度ほど「あとは決めるだけ。」という絶好のラストパスが出てきて、この試合もMF長谷川から完璧にお膳立てされた最高のパスが出てきた。ただ、キーパーに止められたり、相手DFにブロックされたり、なかなか決めることができなかった。「本当にC大阪で活躍できるのか?」という微妙な空気も流れ始めていたので、C大阪のサポーターも一安心といったところである。
ただ、まだチームにフィットしているとは言い難くて、FWフォルランが欲しいタイミングでパスが出て来ないケースがたくさんある。非常に紳士的なプレーヤーなので、パスが来ないことに対する苛立ちをピッチ上で露わにして、チームメイトに激怒するシーンは無いが、「何で出さないんだ・・・。」というジェスチャーをすることは少なくない。フラストレーションをためながらプレーしているのは間違いない。
■ 都並氏が話していたことACLの第3節のブリーラム戦はCSの日テレプラスで生中継されたが、FWフォルランが欲しいタイミングでなかなかパスが出て来ない理由について、解説の都並氏が話していた内容が興味深かった。要訳してまとめると下のようになる。元日本代表の都並氏は、監督としては、仙台でも、C大阪でも、横浜FCでも、成功しなかったが、頭のいい人である。日本人ではトップレベルのサッカー解説者だと思うが、
・FWフォルランの運動量はそれほど多くない。
・まだ100%のコンディションではなさそう。
・きっちりとマークに付かれているときはあまり動かない。
・(動いたとしても)いい状態でボールを受けるのが難しい場面では止まっていることが多い。
・味方選手がいい感じでボールを保持しているときも動き出さないときがある。
・この点をチームメイトがストレスに感じている可能性がある。
・チームメイトとの意見のすり合わせはできていない模様。
・ただ、動きの質は高くて、肝心な場面では鋭い動きを見せる。
・「自分を囮に使ってほしい。」と思っているときに自分にパスが出てくることがある。
・ボールを欲しがっているジェスチャーもフェイントである可能性がある。
などなど。前述のとおり、FWフォルランの来日初ゴールが決まったのは試合終了間際だったので、「なぜ、思うように活躍できていないのか?」という視点でFWフォルランの動きを解説する場面が多かったが、「動きの質」であったり、「動き出し」に関する感覚あるいは考え方がJリーグでプレーしている日本人選手と違いがあるという点は、これまでの6試合を観ると否応なしに感じるところである。
■ ちょっと違った感覚今後、練習中や試合中にパスの出し手と考え方のすり合わせをしなければならないのは間違いないが、FWフォルランの意図がチームメイトに浸透してきたら、当然、FWフォルランはもっと決定機に絡んでくるだろうし、周りの選手もFWフォルランによって生かされるようになるだろう。ここ2試合でC大阪は8ゴールを記録しているが、もっといいサッカーができるだろうし、もっと簡単に点が獲れるようになるだろう。
すぐにチームにフィットしようと思ったら、パスの出し手となるMF長谷川やMF山口蛍やMF扇原のリズムやタイミングにFWフォルランの方が合わせていく方が簡単だと思うが、ここまでのところ、自分のやりたいこと、自分の要求レベルに彼らが合わせてくることを期待しているように見える。呼吸が合うまで、まだ少し時間がかかるかもしれないが、C大阪の若い選手にとってはいい学習機会になると思う。
もちろん、FWフォルランももう少し動きの量を増やす必要がある。最初のタイミングで動き出して、パスが出て来なかったとき、2度目や3度目の動きが無いことがほとんどである。動き直しが少ない点はあまり良くないが、動きの量で勝負するのはちょっと難しくなってきた世界最高峰のレベルを知っている選手が、動きの質を追求して、ピッチ上で模索しているという現状はなかなか興味深いものがある。
トラップであったり、ミドルパスの精度の高さであったり、基本的な技術の高さは至るところで見せているが、FWフォルランがどういう動きをして、どういうタイミングでパスをもらおうとするのか。一緒にプレーしている選手だけでなく、観戦する側も勉強になると思う。先のとおり、Jリーグでプレーしているほとんどの選手とはちょっと違った感覚を持っているので、注意深く見守りたいところである。
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