■ あと2週間で開幕Jリーグの開幕まであと2週間。
次の土曜日には新シーズンの到来を告げるゼロックス・スーパーカップが行われ、そして、その翌週からは、いよいよ2009年のJ1/J2のリーグ戦が開幕する。各クラブともキャンプの終盤にさしかかっており、仕上げの最終段階に入っている。
この日、大阪の長居スタジアムでは、「J:COM CUP 大阪ダービー2009 モリシ メモリアルマッチ」と題して、大阪ダービーが行われた。C大阪がJ2に降格した2006年シーズン以来、約2年半ぶりのダービーである。
#1 大阪ダービー
■ 大阪の2つのクラブ西日本最大の都市で、政治・経済・交通・経済などあらゆる分野で中心となる大阪市が府庁所在地となる大阪府の人口約880万人。この数字は、東京都、神奈川県に次いで全国3位である。
その大阪府をホームタウンに持つのが、ガンバ大阪とセレッソ大阪である。
昨シーズン、ACLを制したG大阪のクラブの前身は1980年創部の松下電器産業サッカー部。このクラブは、Wikipediaによると、「日本サッカーリーグ(JSL)2部所属のヤンマークラブ(ヤンマーディーゼルサッカー部の下部組織)が1979年に解散した事を契機に、同クラブの指導者と選手を受け入れる形で結成された。 」という。
一方、昨シーズンJ2で4位のセレッソ大阪の前身は、「ヤンマーディーゼルサッカー部」。1970年代に、日本サッカー史上最高のストライカーである釜本邦茂が所属し、全盛期を築き上げた。1995年からJリーグに参戦している。
ともに大阪のクラブではあるが、G大阪のホームタウンは吹田市であり、C大阪のホームタウンは大阪市となる。したがって、同じダービーでも、横浜Fマリノスと横浜FCのような同じ街の両チームの対戦というわけではない。
#2 試合前のサポーターの行列
■ モリシ&名波この日は開幕前2週間という大事な時期ではあるが、昨シーズン限りで現役を引退したMF森島寛晃とMF名波浩の引退試合を兼ねている。
セレッソ一筋のMF森島は、J1で318試合に出場して94ゴール。J2で42試合で12ゴール。国際Aマッチ通算で64試合で12ゴール。2002年ワールドカップのチュニジア戦で決めた地元の長居スタジアムでの先制ゴールが印象深いクラブのレジェンドである。
また、2006年に半年間、セレッソ大阪に所属したMF名波浩。残念ながら、J1残留請負人として磐田からレンタルで加入したMF名波が所属したときにクラブがJ2に降格してしまったが、繊細なレフティの姿はC大阪サポーターも強く印象に残っているだろう。J1通算で301試合で34ゴール。日本代表でも67試合で9ゴール。フランスワールドカップでは背番号「10」を背負った。
#3 森島&西澤&名波
■ 注目のスタメン2年続けてJ1昇格に失敗したC大阪。今シーズンは、もう絶対に昇格を逃すことは許されない。
この日のシステムは<3-6-1>。GKキム・ジンヒョン。DF前田、チアゴ、江添。MFマルチネス、黒木、酒本、石神、乾、香川。FWカイオ。特別ゲストのFW森島寛晃とMF名波浩がベンチ入り。両者とも、ラスト5分からの出場予定となっている。また、清水から復帰したFW西澤がベンチ入り。
一方のガンバ大阪は<4-5-1>。GK藤ヶ谷。DF佐々木、山口、中澤、安田。MF明神、橋本、遠藤、寺田、ルーカス。FW山崎。注目の新戦力のFWレアンドロとFWチョ・ジェジンはコンディション不良のため共にベンチ外。さらには、DF高木和道とDFパク・ドンヒョクの新戦力センターバックもベンチスタート。
結局、G大阪のスタメンは、全て、昨シーズンに同クラブに所属したメンバーとなった。
#4 試合開始前
■ 香川真司の先制ゴール試合は、今キャンプ中の練習試合での成績が4敗1分けと調子の上がっていないG大阪を相手にホームのC大阪が押し込む展開となる。
FWカイオ、MF乾、MF香川の前線のトライアングルの破壊力は健在で、前半7分にMF乾の右サイドへの大きな展開を起点に中央へクロス。相手GKが処理しきれなかったボールをファーサイドにいたMF香川が落ち着いて決めてC大阪が先制する。
背番号「8」を引き継いだMF香川のゴールで勢いに乗るC大阪は、その後も、ダブルボランチのMFマルチネスとMF黒木の左右への大きな展開からG大阪を揺さぶってチャンスを作り続ける。しかし、GK藤ヶ谷の好セーブもあって、前半は1対0のまま。C大阪リードで折り返す。
■ 守備陣が奮闘思い通りの前半ではなかったG大阪は、後半開始からFW播戸を投入し2トップに変更。すると、FW播戸の運動量と裏へ抜ける動きがC大阪のディフェンスに脅威を与えて、ペースを取り戻す。
C大阪はダブルボランチの動きが落ちて、G大阪のパスワークに翻弄されるようになるが、C大阪は最終ラインが踏ん張って得点を許さない。唯一の決定的なピンチだったG大阪のミドルシュートもGKキムがファインセーブで防いでゴールを許さず。
ラスト5分でC大阪はMF森島とMF名波を投入。最後はなかなかボールを奪えない苦しい展開となったが、なんとか守り切って1対0でC大阪が勝利。開幕に向けて弾みのつく試合となった。
#5 背番号「8」
■ 動きの良かったセレッソ 1週間後にタイトルマッチであるゼロックスを控えるG大阪と比べると仕上がりが遅くて普通のC大阪であったが、むしろ、セレッソイレブンのほうが動きは良かった。攻撃力ばかりに目がいきがちだが、前線のFWカイオ、MF香川、MF乾の3人の運動量も相当なもので、前線からのプレスが効果的だった。
対するG大阪は、「なかなか調子が上がっていない。」という報道通りで、特に前半の動きは最悪で、前半終了と同時にガンバサポーターからもブーイングが出る始末だった。
ゼロックスと長丁場のリーグ戦はともかくとして、3月10日から2連覇のかかる大事なACLのグループリーグがスタートする。ホームで山東魯能(中国)との対戦となるが、少なくとも、この試合までにはコンディションを上げていかなければならない。そうでないと取り返しのつかないことになる。
■ 新戦力のMFマルチネスの評価MFジェルマーノに代わってC大阪の背番号「10」を背負うのが新外国人のMFマルチネス。ブラジルの名門クラブのクルゼイロやパルメイラスでプレーした185cmの大型ボランチであるが、ポジティブな印象を残すホームでのデビュー戦となった。
リーチの長さを生かしたボールキープと正確なパス、さらには体格を生かした守備の強さが魅力的で、この試合では、よくボールに絡んで攻撃をリードした。残念ながら、直接フリーキックのチャンスでは壁に当たってしまったため、フリーキッカーとしての能力を計ることはできなかったが、中盤のフィルター役とゲームメイクの中心の両面で重要な戦力になりそうだ。
ただ、前任のMFジェルマーノと比べると、運動量や機動性といった意味では劣るのは間違いなく、どれだけチームにフィットして、継続的に安定したプレーができるかがポイントになるだろう。
#5 新外国人MFマルチネス
■ 新加入の石神怪我から回復途上のDF尾亦のコンディションがまだ十分ではないこともあって左ウイングバックで先発起用されたのが、鹿島からレンタルでやって来たMF石神。選択肢としてMF平島を起用する可能性もあったが、クルピ監督はMF石神を選択した。
そのMF石神のプレーは及第点以上といえる。積極的にゴール前に入っていって、惜しいシュートを2本放ったのは好印象で、G大阪のディフェンスが逆サイドへのケアが甘かったという理由もあるが、右サイドからのクロスに対して中に入ってシュートを狙う姿勢は良かった。
また、守備面でもうまくスペースをケアし、全く破たんはなかった。運動量も申し分なかったが、その一方で、サイドでボールを持った時に相手をかわしたり正確なクロスを上げるといったサイドプレーヤーに求められる部分での仕事の質は高くなかった。
C大阪のサイドプレーヤーの層は決して厚くはない。レギュラー有力候補のMF尾亦にしても故障がちであり、そのバックアッパーとして堅実なプレーを見せられればC大阪としては戦力的に大きいが、左サイドの専門家のMF尾亦が帰ってくれば、今の段階ではポジションを守るのは難しく、また交代枠が5つしかないJ2では左右のウイングバックをこなせるDF平島のほうが使い勝手がいい。
C大阪で多くの出番をつかむためには、MF尾亦がいないと思われる序盤戦でいかにアピールできるかがである。
■ 2年目の黒木聖仁日章学園高出身で2年目となるMF黒木聖仁がボランチでスタメンの座を射止めた。昨シーズンは44節の草津戦の1試合のみの出場に終わったが、今シーズンは、MFジェルマーノとMFアレーの二人のボランチが退団したことで、大きなチャンスが巡ってきた。
この日はMFマルチネスとコンビを組んだが、前半のコンビネーションは良く、ボールを多く受けて捌きたいタイプのMFマルチネスの隣でうまく彼を操縦し、自身も得意の強くて正確なミドルパスで攻撃の幅を広げることに成功した。後半になるとスタミナの問題なのか、ボールに絡むプレーが極端に減ってしまったことは残念でマイナスポイントであるが、全体的な評価は悪くなかった。
ボランチのユニットとして見ても、昨シーズン後半のMFジェルマーノ&濱田のコンビよりも、中盤での守備力や左右への展開力といった部分では、この日のMFマルチネス&MF黒木の方が可能性を感じさせた。ただ、MFジェルマーノ&MF濱田のコンビほど、細かい中盤でのつなぎに関与できるコンビではなさそうなので、しっかりと相手に守られた時に攻撃が単調になる危険性はある。
■ 新守護神のキム1987年生まれで韓国の若年層の代表として活躍してきたという新外国人のGKキム・ジンヒョンがスタメンのゴールキーパーに起用された。GK相澤とGK山本が抜けたことで正GKの不在のC大阪だが、おそらく、開幕からGKキムをメインに起用するのだろう。
その注目のデビュー戦だが、前半に一度、大きなミスを犯してしまった。レフェリーの笛に救われたが、足元でボールをキープしていたときに不注意で相手フォワードに奪われそうになった。完全に1点もののプレーであり、ラッキーな笛で事なきを得たが、印象的には良くない。
ただ、そのシーンを除くと悪くなかった。G大阪の攻撃がなかなか枠に飛ぶシュートを打てなかったこともあって、セービングの部分での判断は難しいが、クロスに対する処理能力は、190cmと高さもあって比較的安心して見ていられるタイプなのかもしれない。また、フィードの面では、最終ラインから丁寧につなぐチーム戦術もあってなかなかゴールキックで大きく蹴りだすシーン自体がなかったが、後半にクロスをキャッチした後に、前線に送った2つのキックは強くて正確で、好印象を持った。
GKというポジションなので、とりあえずはボーンヘッドをすることなく、味方の信頼を勝ち得てポジションをつかんでいってほしいと思う。GKのポジションはC大阪のウイークポイントの1つであるが、GKキムの潜在能力を考えると、逆にストロングポイントになる可能性もあるだろう。
■ チアゴが加入したディフェンスライン課題の守備陣はアジアチャンピオンのG大阪を相手に無失点に抑えた。後半はパスを回されるシーンも多かったが、ディフェンスラインはよく辛抱して、決定的なシュートシーンはほとんど作らせなかった。
3バックの中央に入ったDFチアゴの評価は1試合だけなのでまだ保留としたいが、後半に見せた大胆な攻撃参加など見るべきプレーは多く、つなぎの部分でも安心して見ていられた。
この日は、右にDF前田、左にDF江添が入ったが、特にDF前田のプレーが抜群に良かった。後半から投入されたG大阪のFW播戸に対して、投入直後はやや悩まされたが、徐々にプレッシャーを強めていってクリーンにボールを奪うシーンが多かった。
その一方で、つなぐサッカーを目指すクルピ体制では、DF前田の足元の技術ではやや不安であるのは否めない。前線にFWカイオしかいないこともあって、ゴールキックになっても大きく蹴り出すことはほとんどなく、確実に味方につなぐショートパスで攻撃をスタートさせるが、この試合でも何度かボール扱いに戸惑って相手に渡してしまうシーンがあった。
守備力(特に高さや強さ)を考えるとDF前田は外し難いが、つなぐサッカーとの相性は良くないので、継続的な不安材料となりうる。
■ 背番号「7」の乾貴士この試合でもっとも多くのチャンスを作ったのが、C大阪のMF乾貴士。FWカイオやMF酒本らの決定的なシュートが相手GK藤ヶ谷のファインセーブに阻まれたこともあって奪った得点は1点のみであったが、C大阪のチャンスの数は多く、中盤で組むMF香川のコンビネーションも抜群であった。
とにかく、この二人は、ボールを持った時に、前を向くための動作が巧みである。
正確な技術で相手に囲まれていてもしっかりと前を向くことができるので、その次の瞬間の動作で、前を向いた状態でドリブルに入ることができる。よって、無駄なロスの時間がなく、相手の準備が整う前にドリブルで仕掛けることができる。
#6 背番号「7」の乾貴士
■ 2トップの離脱と疲労超大型補強を行って優勝候補筆頭と目されるG大阪であるが、この日はその片鱗を見せることはできなかった。何といっても、得点力アップの切り札であるはずのFWレアンドロとFWチョ・ジェジンの離脱が痛い。FWバレーの抜けた後、得点力不足に喘いでいたG大阪にとっては救世主であり、シーズン前に何としてもコンビネーションを確立しておきたかったが、思わぬ誤算となった。
また、それ以外の選手にしても、元日まで試合を行った前シーズンの疲れが残っているのか、全体的な動きも重く、今後を不安にさせる出来だったことは間違いない。
#7 ガンバ大阪のイレブン
■ 右サイドの佐々木この日のスタメンは全て昨シーズンからのメンバーであったが、1つ目を引く起用となったのが、右サイドバックの佐々木。DF加地が怪我という理由もあってサイドバックでの先発であり、スピードを生かしたサイドアタックを期待されたが、思うような効果は出せなかった。
DF佐々木自体のコンディションも良くなかったこともあって前半のみで交代し、後半は左サイドから移ったDF安田が右サイドバックに入ったが、こちらも出来は今一つだった。サイドバック、特に右サイドバックの控えはいまだに適任者が見つかっていない。
■ 優勝候補の筆頭この日の観衆は16,602人。雨模様の天候であり、プレシーズンマッチということを考えると上出来と言えるが、50,000人収容の長居スタジアムは、まだまだ、スペース的に余裕があって、もっとスタンドが埋まってもおかしくなかった。
J1とJ2でカテゴリーは異なるが、幸いにして、共に優勝候補の筆頭と目されており、リーグ戦で好成績を残してリーグを引っ張っていくことが予想される。ともに代表選手を抱えており、スケジュールも過密であるが、成績のみならず、魅力的なサッカーを見せていってほしいところである。
そして、何よりも、来シーズンこそは、J1の舞台で大阪ダービーを見たいものだと、多くの観衆が感じたことだろう。
#8 モリシとともに・・・
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