■ ACLの初戦2014年のACLが開幕。Jリーグ王者の広島はホームでCリーグの北京国安と対戦した。広島の入ったグループFは、広島(日本)、北京国安(中国)、セントラルコースト(豪州)、FCソウル(韓国)の4チームで構成されており、2013年のACLで準優勝に輝いたFCソウルが中心になると思われる。ただ、4チームの実力は拮抗していると考えられるので、広島としては「どちらかというと恵まれたグループに入った。」と言える。
ホームの広島は「3-4-2-1」。GK林卓。DF塩谷、千葉、水本。MF青山敏、丸谷、ミキッチ、山岸、石原、野津田。FW佐藤寿。22日(土)に行われたゼロックスの横浜FM戦で負傷したMF柴崎とMF清水は怪我で欠場となったため、ボランチは大分から戻ってきたMF丸谷が起用されて、左ウイングバックは元日本代表のMF山岸が起用された。森崎兄弟やMF高萩はベンチ外となった。
■ 初戦は1対1の引き分け試合の前半はイーブンの展開となる。ボールを支配したのはホームの広島だったが、北京国安の堅い守備を崩すことはできない。北京国安の攻撃はエクアドル代表のFWゲロンが中心で、何度か体の強さとスピードを生かした突破でチャンスをを作るが、北京国安の方も決定機と言えるのは前半16分あたりのFWゲロンのシュートくらい。前半は静かな展開で0対0でハーフタイムに突入する。
後半になると動きが激しくなってきて、広島は何度かFW佐藤寿にシュートチャンスが訪れる。いい流れになりつつあったが、後半16分に右サイドのCKを与えると、こぼれ球を韓国代表のMFハ・デソンにゴールを許してビハインドの展開になる。苦しくなった広島はボランチのMF丸谷を下げてスピードのあるMF浅野を投入。MF青山敏の1ボランチ気味の布陣に変更して勝負に出ると後半33分に同点ゴールが生まれる。
同じように右サイドのCKを獲得すると、最初のボールは中央で跳ね返されるが、キッカーのMF野津田が自分のところに戻ってきたボールを正確にコントロールしてゴール前に丁寧なクロスを入れると、ゴール前に入っていたDF千葉がアクロバチックなシュートを決めて1対1の同点に追い付く。結局、試合は1対1の引き分けで終了。広島は何とか同点に追いついてホームで勝ち点「1」を獲得した。
■ 何とか追いついてドロー広島はACLは3度目の挑戦となるが、過去の2回はいずれもGL敗退に終わっている。しかも、1度目の2010年も、2度目の2013年も共に開幕3連敗で、早々に決勝トーナメント進出の可能性がなくなった。2010年のときは4節から3連勝を飾って、2013年も4節から3試合連続引き分けと意地を見せたが、2度ともスタートで躓いている。1節や2節の大事さを身にしみて感じていると思うが、今回はドロースタートとなった。
もちろん、ホームでの試合なので、何とか勝ち点「3」を獲得したかったが、先にゴールを許す展開になったことを考えると勝ち点「1」でもOKとすべきだろう。後半16分にCKから先制されたときは、過去2回の悪夢がよみがえってきたが、後半33分のDF千葉のゴールは次につながる大きなゴールとなった。決して簡単なシュートではなかったが、うまく右足でネットを揺らした。
ゼロックスの横浜FM戦はいいサッカーを見せて相手を圧倒したが、この日は苦労した。ACLは3度目となるが、広島がどんなチームで、どういうやり方をされると嫌なのか、相手もよく分かっているので、ボールを持たされる展開になった。1トップのFW佐藤寿は実績抜群の大エースであるが、ACLでは存在感を発揮しきれずにいるので、場合によっては、MF石原やFW皆川を1トップで起用するのもありではないか。
■ 難しかった終盤の交代策広島にとっては不運だったのは、ゼロックスでMF柴崎とMF清水が怪我をしてACLの初戦を欠場せざる得なくなった点である。タイトルのかかった試合になると、モチベーションも高くなって、怪我人が出る確率はかなり高くなる。ベテランのMF森崎和も「試合に出場できる状態ではない。」ということで、特にボランチをどうするのかがポイントだったが、代役で起用されたMF丸谷はまずまずだった。
ボールのつなぎであったり、組み立てに関しては、MF森崎和やMF柴崎と比べるとかなり劣るが、この点は仕方がない。軽率なパスミスもあったが、持ち味である献身的な守備で中盤を引き締めた。ボールを奪い取る能力の高い選手であるが、自分の良さは出せていた。大分で試合経験を積んで実力を伸ばしていることを大事な試合で証明して、計算できるボランチの1人になったことを示した。
先のとおり、後半32分にゼロックスの横浜FM戦でで2点目のゴールを挙げた19歳のMF浅野を投入して、MF青山敏の1ボランチ気味の布陣に変更して、その1分後となる後半33分にDF千葉の同点が生まれた。こうなると難しくなってくるのが、このままの配置と勢いで逆転ゴールを狙うのか、一度、試合を落ち着かせるかの判断である。セオリーと言えるのは前者であるが、それによって失敗するケースも多々ある。
結局、しばらくの間はそのままの攻撃的な布陣で戦ったが、後半43分にFW佐藤寿を下げて96ジャパンでも活躍したMF宮原をボランチで投入。「3-4-2-1」に戻したが、賢明な判断だったと思う。もちろん「なぜ、勝ち点「3」を積極的に狙わないのか?」という意見もあるとは思う。確かに1トップのFW佐藤寿を下げたことで、逆転ゴールとなる「2点目」を挙げる確率は少し下がってしまった。
ただ、中盤の底に残る形となったMF青山敏は前半にイエローカードを貰っていたので、ファールでは止めにくい状況だった。そして、1対1のスコアになってからも相手の1トップのFWゲロンが突破を試みるシーンが2度・3度とあった。また、MF浅野とMF野津田とMF石原とFW佐藤寿の4人を前目に置く布陣はあまり機能していなかった。これらを総合すると、MF宮原の投入は状況に応じた的確な選手交代だったと思う。
■ 堅実なチームだった北京国安一方の北京国安はアウェーで勝ち点「1」を得たので、十分な結果と言えるだろう。前述のとおり、このグループは2013年のACLの準優勝チームのFCソウル(韓国)が本命と言えるが、4チームの実力は拮抗していると考えられる。展開としては、FCソウルがやや抜け出して、2位の座を巡って広島と北京国安が争う可能性がもっとも高いと思われるので、勝ち点「1」でも十分と言えるだろう。
北京国安の印象は「典型的な中国のチームだな・・・。」という感じである。背の高い選手が多くて、しっかりと守備を固めて、能力の高い助っ人がチャンスを作っていく。この日はエクアドル代表のFWゲロンの1トップで、ナイジェリア代表経験のあるFWウタカはベンチスタートだったが、高さや強さもあるFWゲロンのところにスピードのあるFWウタカが絡んでくる展開になるとかなり厄介である。
北京国安の監督はバリャドリッドでFW城彰二氏を指導したマンサーノ監督だったが、Cリーグは名前の知れた監督がたくさんやってくるようになった。2月半ばに監督に就任したばかりで、「2週間ほどしか経過していない。」という話なので、監督のカラーはほとんど感じられなかったが、時間が経って、スペインのサッカーと中国のサッカーが上手い具合にミックスされる非常に厄介なことになる。
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