■ セルビア代表との試合国際親善試合のセルビア代表と日本代表の試合がセルビアのカラジョルジェ・スタジアムで行われた。セルビアとの対戦は2010年4月以来で、このときは0対3で完敗している。セルビアはW杯の欧州予選はベルギー・クロアチア・スコットランド・マケドニア・ウェールズと同じグループに入ったが、3勝4敗2分けで勝ち点「11」で3位。残り1試合となって、2位のクロアチアが勝ち点「17」なので、3位以下が確定して予選落ちが決定した。
ホームのセルビアは「4-2-3-1」。GKストイコビッチ。DFルカビナ、イバノビッチ、ナスタシッチ、トモビッチ。MFスタンコビッチ、マティッチ、バスタ、タディッチ、トシッチ。FWジョルジェビッチ。セリエAで5連覇を達成したときのインテルで主力として活躍したMFスタンコビッチはボランチでスタメンとなったが、この試合が現役のラストマッチとなる。1998年と2006年と2010年のW杯に出場している世界的なスター選手である。
対する日本代表は「4-2-3-1」。GK川島。DF内田、吉田、今野、長友。MF長谷部、遠藤、岡崎、本田圭、香川。FW柿谷。怪我のため出場が危ぶまれたMF遠藤も先発出場でベストメンバーが揃った。GK西川、GK権田、DF伊野波、DF森重、DF酒井宏、DF酒井高、MF細貝、MF山口螢、MF清武、MF齋藤学、MF乾、FWハーフナー・マイクの12名がベンチスタートとなった。ボランチのMF遠藤は国際137試合目の出場となる。
■ 2対0でセルビアが勝利試合は前半12分にMFスタンコビッチにベンチに退いてお役御免となる。ピッチを去る時には、試合がしばらく中断して、両チームの選手に見送られて交代となる。国民的な英雄のラストゲームを勝利で飾りたいセルビアに対して、日本はなかなかチャンスを作れないが、前半31分に細かい連携からMF長谷部のパスを受けたMF香川が決定機を迎えるが、良いシュートを打つことはできず、GKに防がれてしまう。前半は0対0で終了する。
後半になると、ようやく日本の攻撃が活性化してシュートチャンスを作るようになるが、後半14分にサイドでパスをつながれて、最後はシュート性のクロスをうまくコントロールしたMFタディッチに決められてセルビアに先制ゴールを許す。追いつきたい日本は後半26分にショートコーナーからMF香川のパスを受けた1トップの位置にポジションを移していたFW岡崎が決定機を迎えるが、シュートは枠を逸れて追いつくことはできない。
MF清武、FWハーフナー・マイクらを投入した日本は、ロスタイムに右サイドのCKを獲得するが、途中出場のMF細貝のクロスがミスキックになってカウンターを食らうと、最後は、途中出場のFWヨイッチに押し込まれて0対2となる。結局、試合はホームのセルビアが2対0で勝利して、MFスタンコビッチのラストゲームを飾った。日本代表は10月15日(火)にベラルーシ代表と対戦する予定になっている。
■ またしても完封負け・・・この試合はセルビア代表のMFスタンコビッチの現役ラストゲームとなった。W杯にも3回出場しているレジェンドであるが、1998年のフランスW杯のときに初めて名前を知った。当時はユーゴスラビア代表だったが、FWミヤトビッチ、FWミロシェビッチ、FWコバチェビッチがいて、もちろん、MFストイコビッチもいて、MFサビチェビッチもいて、DFミハイロビッチもいた超・タレント軍団だった。(2011年に浦和レッズの監督だったMFゼリコ・ペトロビッチもいた。)
その中で、当時のMFスタンコビッチは19歳だったが、「ストイコビッチの後継者」と言われて、相当な期待を集めていた。10代の頃から注目される選手というのは、どこかで伸び悩んでしまって、思ったほどの成長を遂げられず、平凡な選手で終わることも多いが、MFスタンコビッチは早熟でありながら35歳という年齢まで一線級でプレーすることができた。国際Aマッチは103試合目の出場だったというが、物凄い記録である。
ユーゴスラビアとの対戦というと、1996年に加茂監督のときに国立競技場で対戦してFW三浦知のゴールで1対0で勝利した試合と、1998年のフランスW杯の直前に行われた試合(0対1で敗れた試合)が思い出されるが、前回も長居スタジアムで0対3で敗れているので、相性は良くない。テクニックのある選手が揃っているので、ボールを回されて、走らされて、鋭いカウンターから失点するというのがパターンになっているが、この日も、そういう展開になった。
近年は、なぜかCBにタレントが集まっていて、チェルシーのDFイバノビッチ、マンチェスターCのDFナスタシッチ、ドルトムントのDFスボティッチなどCBの宝庫になっているが、やはり、セルビア(ユーゴスラビア)というと、イマジネーション溢れる攻撃が魅力のチームで、近くにあるクロアチアとも違っている。「東欧のブラジル」と評されることもあるが、どの選手もタッチが滑らかで、滑らかさは真似をしようと思ってもなかなかできないレベルである。
旧ユーゴの国はサッカーだけでなく、バスケットボールも強くて、バレーボールも強い。旧ユーゴは「7つの国境、6つの共和国、5つの民族、4つの言語、3つの宗教、2つの文字を持つ、1つの国家」と言われていたので、一様ではないと思うが、「チームスポーツに向いている国民性」なので、サッカーでも、バスケットボールでも、バレーボールでも、優秀な選手をたくさん輩出して、世界大会でも存在感を発揮していると言われている。
■ 日本ペースにならなかった一因一方の日本は、あまり良い試合ではなかった。欧州でプレーしている選手が多いので、コンディション的にはそれほど問題は無かったと思うが、全体の運動量はそれほど多くなくて、あまりチャンスを作れなかった。ピッチがあまり良くなかったのも事実で、ボールは走らなくて、ボールコントロールのミスも多かった。せっかくのアウェー戦だったが、収穫を見付けるのが難しいほどの低調な試合だったと言える。
また、トルコ人のレフェリーの基準があいまいだったことも、試合を難しくした。日本代表が中盤でプレスをかけていい形でボールを奪っても、倒された相手選手のアピールによって、ちょっと時間が経ってからファールの笛が鳴るシーンが何度もあった。前線からの積極的な守備からリズムを作りたかったが、こういうジャッジが続くと、思い切ってチャレンジしにくくなるので、日本ペースにならなかった一因と言えるだろう。
ただ、アウェー戦になると、こういう試合もある。クラブチームでも、年に2・3試合は、この日のように、攻撃もダメで、守備もイマイチで、レフェリーとの相性も悪くて、ピッチも悪くて、観ている方も面白くなくて、結果も出なくて、解説者もダメで、収穫のほとんどない試合がある。反省することも大事だと思うが、こういう試合は、引きずってもいいことは何もないので、「早く忘れる。」というのも、プロ選手には必要なことだと思う。
■ 一度は通る道もちろん、W杯まで8ヶ月ほどになったので、収穫のほとんど見当たらない試合というのは、できるだけ避けなければならないが、そういう試合をしてしまった以上、どうすることもできない。普段のリーグはもちろんのこと、代表チームの活動もぶつ切りではなくて、1つの1つの積み重ねでチームは作られていくので、大袈裟に考え過ぎて、深刻な事態に陥ってしまう方がよほど問題である。
ここ最近のザックジャパンは、南アフリカW杯の直前の岡田ジャパンや、ロンドン五輪の直前の関塚ジャパンと同じで、「本当に大丈夫なのか・・・。」という雰囲気になって来ているが、W杯や五輪の前になると、それまでと比べて力のあるチームとの対戦が続いていくので、結果が出にくくなるのは当たり前で、日本代表が世界トップレベルに到達するまでは、「こういう時期が必ず訪れる。」ということは理解しておく必要があると思う。
ただ、だからと言って、本大会でも勝てないかというと、そうでもないことは、南アフリカW杯とロンドン五輪で体験している。「日本サッカーは経験が不足している。」と言われるようになって久しいが、この場合の経験というのは、成功体験のことだと思うが、南アフリカW杯とロンドン五輪のことがあるので、個人的には、今、悲観し過ぎても仕方がないと思う。むしろ、ネガティブキャンペーンに踊らされて、南アフリカW杯前のようにアタフタする方がよほど問題だと思う。
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