■ 2試合目東アジアカップの2戦目。初戦は中国と対戦して3対3の引き分けだったザックジャパンは、元浦和のオジェック監督率いるオーストラリアと対戦した。日本も、オーストラリアも、国内組が中心のメンバーとなっていて、オーストラリアの初戦は開催国の韓国と対戦して0対0の引き分けだった。前の日に行われた韓国と中国の試合も0対0の引き分けだったので、ここまでのところ、3試合すべて引き分けとなっている。
日本は「4-2-2-2」。GK権田。DF森脇、鈴木大、千葉、徳永。MF高橋秀、扇原、齋藤学、山田大。FW大迫、豊田。中3日の試合で、さらには、「日曜日に韓国戦を控えている。」という過密日程も考慮して、スタメンは総入れ替えで、11人全員が初スタメンとなった。FW柿谷、MF工藤、MF原口、MF高萩、MF山口螢、MF青山敏、DF槙野、DF栗原、DF森重、DF駒野、GK西川、GK林の12人がベンチスタートとなった。
■ 3対2で日本が勝利!!!同じメンバーがスタメンに名を連ねたオーストラリアに対して、日本は全員が変更となったので、コンビネーション等では不利になるが、コンディション的には有利である。序盤はオーストラリアがボールを回す時間が長かったが、初戦の中国戦とは違って、日本代表は高いラインを設定して、中盤でプレッシャーをかけることができたので、ボランチのところでボールを奪ってカウンター気味に仕掛けるシーンを何度か作る。
すると、前半26分に波状攻撃からセンターバックのDF千葉の縦パスを受けたMF齋藤学がドリブルで仕掛けてペナルティエリア内に侵入すると、右サイドにスライドしながらシュートコースを作って、最後は、右足でループ気味の鮮やかなシュートを決めて日本が先制する。横浜FMのMF齋藤学は国際Aマッチは2試合目の出場で初ゴールとなった。前半は1対0と日本がリードして折り返す。
試合の主導権を握った日本は、後半11分にもDF鈴木大の縦パスからFW豊田がつないで、MF齋藤学のスルーを挟んでフリーでボールを受けたFW大迫が落ち着いたコントロールから右足で決めて2対0とリードを広げる。しかし、後半31分にロングパスの処理を誤ると、最後はフリーで抜け出したFWデュークに決められて1点差に迫られると、さらに、後半33分にも中央を崩されてFWユリッチに同点ゴールを奪われる。
またしても2点リードを守り切れなかったが、再開直後のプレーでFW大迫の落としから、MF工藤→FW豊田→FW大迫とパスがつながって、最後は、FW大迫が右足でミドルシュートを決めて3対2と勝ち越しに成功する。結局、試合は3対2で日本が競り勝って今大会初勝利。これで2試合を終えて1勝1分けとなって首位に立った。韓国と中国は2引き分けで、オーストラリアが1敗1分けなので、最終日の韓国戦に勝利すると初優勝となる。
■ ターンオーバーが成功日本は先発11人全員を入れ替えてきたが、これが成功した。ターンオーバーにはプラス面とマイナス面があるが、プラスの面は「連携が取れている」ということで、韓国に入ってからずっとサブ組で一緒にプレーして来た選手たちなので、チグハグ感はなかった。また、17日(水)に行われたJ1の第17節の試合から中7日になる選手がほとんどなので、コンディション面の問題もなかった。
もちろん、初戦の中国戦のスタメンが正メンバーで、そこに合致する選手を探していくことが目的であるならば、総入れ替えというのは正しい作戦とは言えないが、中国戦のスタメン11人はそういうわけではないので、総入れ替えをしたとしても、何の問題もない。ザッケローニ監督は大会前から「新戦力を発掘したい。」というコメントを残していたが、2試合で仙台のGK林以外の全員をテストできたのは、有意義だったと言える。
練習期間とコンディションと対戦相手が違っているので、単純に初戦のスタメン組と比較することはできないが、明らかにオーストラリア戦の方がチームとして整備されていて、特に、最終ラインの高さと中盤のコンパクトさの2点が全く違っていた。さすがに、ザッケローニ監督は経験豊富な指導者なので、「7日」というある程度の期間を与えられると、急造メンバーであっても、それなりに組織的に戦えるチームを作ってくる。
■ フル代表初ゴールの齋藤学これで1勝1分けとなって、最終日の韓国戦に勝利すれば、自力で初優勝を決めることができるが、この大会で重要なのは、順位ではなくて、新戦力を発掘することである。その点で言うと、この日も、収穫は多かった。初戦の中国戦は、ボランチのMF山口螢、サイドハーフのMF工藤がアピールに成功したが、オーストラリア戦では、MF齋藤学、MF山田大、FW大迫、FW豊田、MF高橋秀の5人の活躍が目立った。
フル代表初ゴールを決めたMF齋藤学は、初戦の中国戦もMF原口に代わって後半途中に登場したが、思うような働きができなかった。得意のドリブルを披露するシーンも無くて、試合の流れを悪くする一因となったが、この日は、得意のドリブルで相手を切り裂いた。先制ゴールのシーンは、最近の調子の良さをフルに発揮したゴールで、あそこのエリアで横に流れながらシュートを放つプレーは得意としている。
ゴールには絡めなかったが、磐田のMF山田大もいいプレーを見せた。彼は地味な選手なので、クローズアップされる機会は少ないが、サイドハーフのポジションで堅実なプレーを見せた。もう少し大胆なプレーをしても良かったかもしれないが、FW豊田らを生かそうと奮闘した。自分が輝くシーンは多くなかったが、インテリジェンスを感じさせるプレーを最後まで続けた。ゴールを決めたMF齋藤学と同等の評価ができる。
■ 2トップ気味の布陣が成功注目のフォワード陣は、中国戦でC大阪のFW柿谷が1ゴール1アシストと結果を残したが、この日は、鳥栖のFW豊田と鹿島のFW大迫の2トップ気味の布陣となった。「FW豊田が前にいて、その少し下にFW大迫がいる。」という形だったが、2人の距離感が良くて、2点目のゴールも、3点目のゴールも、FW豊田のアシストからFW大迫が決めるという形だった。ザックジャパンでは珍しい2トップ気味の布陣がハマったと言える。
FW豊田については、2度ほど大チャンスがあったので、ここで決めていれば、もっと評価されたと思うが、よくボールがおさまっていた。鳥栖でここまでボールがおさまることはないので、「出来過ぎ」という感じもするが、注目された最初の試合でこれだけできるというのは、見事である。試合の序盤は後方からのロングボールも多かったが、これもしっかりとマイボールにしていたので、貢献度は非常に高かった。
FW豊田はポストプレーは苦手なタイプであるが、FW大迫が近くにいたことが、助けになった。鳥栖では、左サイドハーフにポストプレーヤーのMF野田を置いて、彼に起点を作る仕事を任せることで、FW豊田の負担を減らすことに成功しているが、この日も、FW大迫が同じような感じでFW豊田をサポートしてくれたので、比較的、楽にプレーすることができた。この2人をセットで起用したのは、大成功だったと言える。
一方、FW大迫に関しては、平常時はもっとボールがおさまる選手なので、FW豊田とは真逆で、もうワンランク上のプレーが期待できる選手である。よって、素晴らしい出来だったとは言えないが、2ゴールと結果を残したのは見事である。若干、下がり目のポジションで起用されたので、慣れたポジションではなかったと思うが、1点目も、2点目も、見事なシュートで、特に、2点目のシュートはチームを救うゴールだった。
FW大迫が下がり目で好プレーを見せたことは、たくさんある収穫の中でも、特に大きなものである。当然、FW大迫という選手は1トップのレギュラー候補の1人であり、「1トップとしてどれくらいできるか」というのも、テストしておきたいところであるが、「MF本田圭がいないときのトップ下」というのも、ザックジャパンの課題となっている。FW大迫が下がり目の位置でこういう活躍できることが分かったのは大きい。
■ 攻守両面で活躍した高橋秀人一方、守備的なポジションの選手は、「2失点したこと」と「1点差に迫られた後に慌ててしまったこと」がマイナス評価となるが、どの選手も悪くは無かった。CBコンビに関しては、中央を割られて同点ゴールを許したので、ザッケローニ監督はお冠だったが、1点目のMF齋藤学のゴールはDF千葉、2点目のFW大迫のゴールはDF鈴木大の楔のパスが起点となっている。積極的な縦パスで攻撃の起点になろうとしたことは、評価できる。
DF森脇、DF徳永、MF扇原、GK権田の4人も、まずまずだった。左SBで起用されたDF徳永は、1失点目の中途半端なクリアが悔やまれるが、1対1の強さを至るところで発揮した。あまり目立たないプレーであるが、左サイドの裏のスペースにロングボールを蹴られても、簡単に対応してくれるので、ピンチにつながらない。守備的なサイドバックとして、改めて、ユーティリティー性と能力の高さを示した。
後ろの7人の中で、もっとも目立ったのは、ボランチのMF高橋秀である。初戦の中国戦の出来もまずまずだったが、この日の出来は秀逸だった。MF扇原とのコンビネーションも良好で、高さのある2人が真ん中に構えていると、相手チームはロングボールを使いにくくなる。MF遠藤とMF長谷部のダブルボランチの守備力が不安視されているが、高さのあるボランチが2枚もいると後ろの選手の負担が軽くなる。
攻撃も良かった。どちらかというと、MF扇原にボールが集まることが多くて、前半はMF扇原の鋭い縦へのパスからチャンスを作っていたが、MF高橋秀の正確なパスと落ち着きも光った。また、中盤でバランスを取るだけでなく、前半終了間際にはゴール前に侵入してヘディングシュートを放っている。こういうシーンは、MF遠藤とMF長谷部のコンビにはあまり見られないので新鮮だった。
コンフェデでは3試合で9失点したことで、CBやGKの弱さが指摘される機会が多くなっているが、はっきり言うと、「DF吉田やDF今野やGK川島よりも明らかに上」という選手を探そうとしても、本大会までの1年間では見つからないだろう。CBやGKを代えたとしても、劇的に守備が良くなることは考えにくいが、ボランチのところに守備力の高い選手を置くことで、最終ラインの負担を軽減することができる。
MF遠藤とMF長谷部のコンビというのは、熟成されており、ザックジャパンの肝となっているが、非常に攻撃的なコンビである。今後も、基本的にはこの2人がレギュラーで問題はないと思うが、対戦相手や日程を考慮して、組み合わせを変えるのもアリだと思う。中国戦ではMF山口螢が存在感を発揮したが、オーストラリアのMF高橋秀のプレーも収穫で、懸念されているボランチで若手が力を発揮したのは、好材料である。
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