■ ナビスコのファイナル2011年のナビスコカップの決勝戦は、準決勝でガンバ大阪を2対1で破った浦和レッズと、名古屋グランパスを2対1で破った鹿島アントラーズの対戦となった。決勝がこのカードとなったのは、2002年、2003年に続いて3度目。2002年は鹿島が1対0で勝利し、2003年は浦和が4対0で勝利した。浦和はこのときがクラブ史上初のタイトル獲得で、2007年までに、「リーグ戦」、「天皇杯」、「ナビスコ」、「ACL」と4つの主要タイトルをすべて獲得し、黄金時代を築いた。
2003年以来、2度目のナビスコ制覇を目指す浦和は「4-1-4-1」。GK加藤。DF山田暢、濱田、永田、平川。MF鈴木啓、梅崎、柏木、山田直、原口。FWエスクデロ・セルヒオ。日本代表のMF原口は、今年のニューヒーロー賞を受賞している。MFマルシオ・リシャルデスは欠場で、FWデスポトビッチはベンチスタートとなった。
一方、2002年以来となる4度目のナビスコ制覇を目指す鹿島は「4-2-2-2」。GK曽ヶ端。DF新井場、青木、中田浩、アレックス。MF柴崎、小笠原、遠藤、野沢。FW興梠、大迫。アジアカップ2011の日本代表のDF岩政は怪我のため欠場中。MF増田はベンチスタートで、ルーキーのMF柴崎がスタメン出場。FW田代もベンチスタートとなった。
■ アントラーズが延長戦を制する試合は、立ち上がりから鹿島ペースとなる。勝つと「15冠目」となる鹿島は、U-22日本代表のFW大迫が頻繁にボールに触って攻撃をリードする。対する浦和は、1トップのFWエスクデロのところにボールをおさめて、2列目の4人が絡むシーンを作りたかったが、いい形はほとんど作れない。
0対0で折り返した後半の立ち上がりに試合が大きく動く。後半2分、後半5分と連続してMF山田直がイエローカードを受けて退場。浦和は10人になってしまう。浦和は、11対11の状況でも劣勢だったので、さらに押し込まれて防戦一方となる。数的優位の鹿島は、その後、立て続けにゴール前のシーンを作るが、浦和のGK加藤の活躍もあって、先制ゴールはなかなか生まれない。
すると、今度は、後半35分に鹿島のDF青木が2枚目のイエローカードを受けて退場。鹿島も10人となって、10人対10人のイーブンとなる。こうなると、浦和もチャンスを作るようになるかと思われたが、あまり状況は変わらず、鹿島が攻め続ける。しかし、鹿島も攻めきれないままで、0対0のまま15分ハーフの延長戦に突入する。
延長戦から、浦和はMF鈴木啓に代えてルーキーのMF小島を投入。鹿島も、MF小笠原に代えてMF増田を投入。朗チームとも、ボランチを入れ替えてくる。均衡が破れたのは、延長戦の前半終了間際で、鹿島は途中出場のFW田代のポストプレーからFW興梠が左サイドの裏でボールを受けると、ゴール前にグラウンダーのクロスを入れる。これを、FW大迫が合わせてゴール。貴重な先制ゴールを奪う。結局、試合は延長戦の末に1対0で鹿島が勝利。4度目となるナビスコカップ制覇を成し遂げた。
■ 15個目のタイトル鹿島は、すでに「リーグ制覇」の可能性もなくなっており、4位以下が決定しているので、残留争いをしている浦和と比べると、カップ戦に集中できる状況となっている。ただ、どちらかのタイトルを獲らないと、オリベイラ監督の立場も危うくなるので、若干、追いつめられた状態であるが、「完勝」と言える内容で、2002年以来のナビスコのタイトルを獲得した。
押し込みながらも「先制ゴール」は奪えず、延長戦の前半15分までゴールは決められなかったが、立ち上がりから、ずっと鹿島ペースで進んで、順当勝ちだった。浦和は、先日、ペトロヴィッチ監督が解任されて、堀監督は2試合目の采配だったが、力の差は明らかであった。鹿島も、今シーズン、リーグ戦では調子が上がって来なかったが、ここ一番のときの「集中力」や「団結力」はさすがのものがある。改めて、「鹿島の強さ」を見せつける試合となった。
これで、鹿島は15個目のタイトルとなった。内訳は、リーグ戦で7冠、ナビスコと天皇杯で4冠ずつとなっているが、「15冠」というのは、しばらく、どこのクラブも追いつけないくらいの圧倒的なものである。ナビスコ制覇は2002年以来で「9年ぶりだった」というのは意外な気もするが、『初タイトル』を獲得するのに、多くのチームが苦労している中、順調に「タイトル数」を伸ばしている。
■ FW大迫が決勝ゴール大事な試合で「決勝ゴール」を決めたのは、高卒3年目のFW大迫でMVPにも輝いた。ゴールシーンは、FW田代とFW興梠のお膳立てが見事で、FW大迫には『決めるだけ』という最高のボールが来たので、味方に「感謝・感謝」のゴールだったが、得点シーン以外にも、たくさんのチャンスも絡んでいて、鹿島の攻撃陣の中では際立った活躍を見せた。「決勝ゴール」という結果も残して、文句なしのMVPだった。
FW大迫は、U-22日本代表としても期待されているが、リーグ戦では、1年目が22試合で3ゴール、2年目は27試合で4ゴールで、3年目の今シーズンも23試合で4ゴール。鹿児島城西高校時代から、「大型ストライカー」として期待された割には、リーグ戦でゴールを重ねることはできず、「伸び悩み」も指摘されたが、今年の夏頃から、攻撃に関わるシーンが増えてきて、殻を破りそうな雰囲気が出て来ている。
プレーが途切れた後は「笑顔」が出ることも多いが、プレー中は「気持ち」も出るようになってきて、「技術的な部分」よりも、「精神的な部分」で成長しているように感じられる。FW大迫のようなセンターフォワードは、若い世代では、ほとんどいないので、より一層の活躍を期待したいところである。
■ 東城レフェリーのジャッジが安定せず120分間を通して、両チームがファイトした「いいファイナル」となったが、東城レフェリーのジャッジは、安定しなかった。鹿島のCKのように思える場面でゴールキックとなったり、浦和のCKのように思える場面でゴールキックとなったり、「あれっ?」と思うシーンも多かったが、もっとも、疑問に思ったのは、後半35分の鹿島のDF青木の退場シーンで、どちらかというと、浦和のMF原口の方のファールのように思えた。
東城レフェリーの頭には、後半5分のMF山田直の退場のことが強く残っていたと思われるが、MF山田直の退場については、1枚目のイエローカードも含めて、レフェリー側に落ち度はなくて、「正しいジャッジ」だったと思うので、特にレフェリーが気にする必要はなかった。
一方のチームに退場者が出ると、バランスを気にしてしまうのか、もう一方のチームにも退場者が出て、「10人対10人」になることは、日本だけでなく、欧州でも少なくないが、そういう配慮は、全く必要のないと思う。鹿島にとっては、納得しがたいジャッジで、試合を壊しかねない「大きなミス」だったと思う。
■ 浦和は準優勝に終わる一方の浦和は、現状の「力の差」を見せつけられて、準優勝に終わった。今シーズンの戦いぶりを見ると「ファイナルの舞台」まで進むことができただけでも「大成功」と言えるが、せっかく、ここまでたどり着いたので、「残留争い」が続く「終盤戦」に弾みをつけるためにも、鹿島を叩いて、久々にタイトルを獲りたかったが、夢は叶わなかった。
大事なのは、すぐに気持ちを切り替えることである。「ファイナルまで進んで勝てなかった。」ということで、選手たちは悔しいだろうが、切羽詰まった状況であることを考えると、ナビスコカップは「おまけ」であり、本当に大事なのは「リーグ戦」である。J1は、残り4試合となったが、甲府との差は「2」なので、1試合で逆転される可能性もある。落ち込んでいる暇はない。
心配されるのは、鹿島に圧倒されたため、30節の横浜FMとの試合で掴んだ「自信」が薄らいでしまう点である。堀監督の初陣となった横浜FM戦は「2対1」で逆転勝ちしたが、時間が経つにつれて、攻撃でも、守備でも、約束事が整理されて、残り試合を戦う上で「ベースのようなもの」が出来つつあるように感じられたが、横浜FMの1試合だけで得られたものであり、確固たるものではなかったので、失われるのも早い。横浜FMで良くなった「流れ」が、また、ちょっと悪くなったように感じられる。
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