■ クルピ監督に再建を託すガンバ大阪2017年の開幕前に高評価を受けながら低迷して監督も交代したG大阪・FC東京・広島の3チームは巻き返しを図るシーズンになる。G大阪はクルピ監督、FC東京は長谷川監督、広島は城福監督を招聘。3人ともJリーグで実績のある指導者なのでクラブ再建の期待がかかるがG大阪はMF遠藤ならびにMF今野の2人が大ベテランの域に入ってきて「軸に据えても大丈夫なのか?」微妙な年齢に差し掛かってきた。
広島も同様で3度の日本一に輝いた時期の主力であるMF青山敏、DF千葉、DF水本などが30才を超えてパフォーマンスの低下が懸念される時期に入ってきた。FC東京は20代後半の北京世代の選手が中心なので高齢化という問題は表面化していないがここ数年はスタイルが定まらずに期待以下のシーズンに終わるケースが多くなっている。G大阪・広島・FC東京の3チームは予想が難しいチームと言える。
他には札幌や神戸も「上位に浮上するのか?下位に沈むのか?」の予想が難しいチームなので2018年のJ1は「順位予想の難しいシーズン」と言えるが特にG大阪は読みにくいチームである。G大阪は今オフの補強が積極的ではなかったので基本となるメンバーはあまり変わらないがここまでのトレーニングマッチは主力組が出場したときに思うような結果が出ていない。不安を募らせているサポーターは多い。
■ 最初の10試合は低調なのは事実か?嘘か?20才前後の若手世代に年代別代表クラスの選手がたくさんいるので「一気に若返りを進めるのか?」、「これまで主力として活躍してきた選手を引き続いて主力に抜擢するのか?」は興味深いが、クルピ監督というと「チーム作りに時間がかかるタイプの指導者」と言われている。C大阪を率いていた時期は「チームが出来上がるまでに時間がかかって開幕から出遅れるケースが多かった。」という印象は確かにある。
なのでC大阪のサポーターを中心に「クルピ体制の最初の10試合は我慢が必要」、「最初の10試合は結果が出なくても辛抱しなければいけない。」と言われるケースが多くなっており、一種の定説になっているが、果たして本当なのか?否か?気になるところなので実際にC大阪の監督を務めたシーズンの成績を調べてみたところ、表1のようになった。2007年と2012年はどちらもシーズン途中での監督就任になる。
ちなみに1997年はまだJ2は誕生しておらず。さらに引き分け制度も導入されておらず、延長Vゴール方式だった。1997年の数字のみ仮の勝ち点になるが、1試合平均の勝ち点に注目すると最初の10試合に得た平均の勝ち点は1.54で、それ以降の試合で得た平均の勝ち点は1.77。やはり、「それ以降」に得た勝ち点の方が0.25ほど多くなっている。年間の試合数が34試合と仮定すると0.25*34試合=8.50となる。
表1. クルピ監督の「最初の10試合」と「それ以降の試合」の比較
年度 | カテゴリー | 最初の10試合 | それ以降 | 年間トータル |
試合 | 勝ち点 | 勝 | 引 | 敗 | 試合 | 勝ち点 | 勝 | 引 | 敗 | 試合 | 勝ち点 | 勝 | 引 | 敗 |
1997 | J | 10 | 1.50 | 5 | 0 | 5 | 22 | 1.50 | 11 | 0 | 11 | 32 | 1.50 | 16 | 0 | 16 |
2007 | J2 | 10 | 1.60 | 5 | 1 | 4 | 25 | 1.96 | 15 | 4 | 6 | 35 | 1.86 | 20 | 5 | 10 |
2008 | J2 | 10 | 1.60 | 5 | 1 | 4 | 32 | 1.66 | 16 | 5 | 11 | 42 | 1.64 | 21 | 6 | 15 |
2009 | J2 | 10 | 2.30 | 7 | 2 | 1 | 41 | 1.98 | 24 | 9 | 8 | 51 | 2.04 | 31 | 11 | 9 |
2010 | J1 | 10 | 1.30 | 3 | 4 | 3 | 24 | 2.00 | 14 | 6 | 4 | 34 | 1.79 | 17 | 10 | 7 |
2011 | J1 | 10 | 1.10 | 2 | 5 | 3 | 24 | 1.33 | 9 | 5 | 10 | 34 | 1.26 | 11 | 10 | 13 |
2012 | J1 | 10 | 1.50 | 4 | 3 | 3 | 1 | 1.00 | 0 | 1 | 0 | 11 | 1.45 | 4 | 4 | 3 |
2013 | J1 | 10 | 1.40 | 4 | 2 | 4 | 24 | 1.88 | 12 | 9 | 3 | 34 | 1.74 | 16 | 11 | 7 |
合計 | - | 80 | 1.54 | 35 | 18 | 27 | 193 | 1.77 | 101 | 39 | 53 | 273 | 1.70 | 136 | 57 | 80 |
■ 失点数は微増。得点数は大幅にアップする。年間成績で勝ち点が「8」や「9」ほど異なると順位も大きく変動するので勝ち点の差も決して小さくないがもっと顕著に差が付くのは得点力である。最初の10試合の平均得点は1.34であるのに対してそれ以降の試合は平均で1.96。得点力は大幅にアップする。一方の失点数は1.23失点→1.28失点なので微増。「チームが出来上がって来ると得点力が一気にアップする。」というのは数字からも明らかである。
結局、「クルピ体制の最初の10試合は我慢が必要」というのは過去の成績からも明らかである。難しい時期を乗り越えることが出来れば成績は確実に上向いてくる。シーズン序盤はなかなか得点が取れなくて勝利にもつながらずに苦労するがシーズンが進むにつれて攻撃陣が噛み合い始めて(失点も少なくないが)攻撃的なサッカーでサポーターを魅了するというのがクルピ監督時代のC大阪のパターンだった。
であるならば「チームの始動日に間に合うように来日してキャンプ期間中に多くのトレーニングマッチをこなして開幕までにそれなりのレベルまで引き上げることが出来たら最初の10試合を犠牲にせずに済むのでは?」という点は誰しもが考えるクルピ監督のチーム作りに関する大きな疑問点であるがずっとC大阪時代はそういうやり方だったので「そういうやり方がクルピ監督のスタイルだ。」と受け入れるしかない。
C大阪のサポーターはクルピ監督との付き合いが長いので仮に開幕から思うような結果が出なかったとしても「いつも通り」、「いずれ攻撃陣が噛み合うようになるはず。」と温かい気持ちで見守ることが出来たが、やはり、G大阪となると勝手が違う。C大阪以上に勝利や結果が求められるチームであるが、なおかつ、昨シーズンの秋以降はほとんど勝なかったのでフラストレーションを溜めているサポーターは多い。
当然、育成力に定評のあるクルピ監督に期待を寄せているG大阪のサポーターは非常に多いと思うがその一方でセレッソ色の非常に強い監督なのでクルピ監督に託したことを快く思っていないサポーターも少なくないはず。極めて複雑なシチュエーションなので(クルピ監督にとってはいつも通りではあるが・・・)開幕から結果が出なかった場合、G大阪のサポーターの感情が爆発する可能性は決して低くはない。
表1. クルピ監督の「最初の10試合」と「それ以降の試合」の比較
項目 | 最初の10試合 | それ以降 |
試合 | 80 | 193 |
平均勝ち点 | 1.54 | 1.77 |
勝利 | 35 | 101 |
引き分け | 18 | 39 |
敗戦 | 27 | 53 |
総得点 | 107 | 379 |
平均得点 | 1.34 | 1.96 |
総失点 | 98 | 247 |
平均失点 | 1.23 | 1.28 |
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