■ 上位対決2位のG大阪が日本平で清水エスパルスと対戦したJ1第30節のビッグカード。
首位の浦和レッズとの勝ち点差が「6」であるG大阪にとっては、残り5試合は全勝するしかない状況である。FWバレーが怪我から復帰し、さらには出場が微妙だったDF加地とMF明神もスタメンで出場。現時点では、ベストといえるスタメンである。GK藤ヶ谷。DF加地・シジクレイ・山口・橋本。MF明神・遠藤・寺田・二川。FWマグノ・アウベスとバレー。FW播戸、MF家長、DF安田はベンチスタート。
対するホームの清水は、現在4位。GK西部。DF市川・青山・高木和・児玉。MF伊東・藤本・兵働・フェルナンジーニョ。FWチョ・ジェジンと矢島。こちらもベストメンバーである。
■ 激しい中盤の攻防試合は、中盤にタレントのそろう両チームの対戦ということもあって、中盤で激しい主導権争いが繰り広げられた。
そんな中、先制したのは清水。前半12分に、DF市川のオーバーラップからチャンスをつかむと、ルーズボールを拾ったFW矢島が左足で蹴り込んで先制する。前半は、市川の攻撃参加が効果的だった。
先制点以降は、G大阪がボールを支配して攻め込む。1対0で折り返した後半は、G大阪は開始からMF家長とDF安田を投入。よりいっそう攻撃的に出てくる。しかし、その裏をついて、清水が追加点。
後半6分にMF兵働のスルーパスを受けたMFフェルナンジーニョが左足で決めて2点のリードを奪う。さらに後半17分にも、MF藤本のCKからFWチョ・ジェジンが頭で合わせて3対0と突き放す。
G大阪は試合終了間際にDF山口のゴールで1点を返したが、反撃はそれだけ。清水が3対1で完勝した。敗れたG大阪は、リーグ制覇の夢が遠ざかる敗戦となった。
■ プランどおり完璧な清水試合の分岐点となったのは、試合開始早々のバレーのシュートミス。左サイドからFWマグノ・アウベスがクロスボールを上げて、中央でドフリーとなっていたFWバレーが頭で合わせたが、バレーのシュートは枠をそれた。その後、清水は右SDFの市川のオーバーラップを有効に使って、反撃を開始。後半12分に、その市川から先制点が生まれた。大きなシュートミスだった。
先制した後はG大阪に攻め込まれたが、DF高木を中心にがっちりと守って、後半の追加点につなげた。ボールを回される時間帯もあったが、完全に崩されるシーンは少なくて、中盤でのせめぎあいでも劣っていなかった。追加点も効果的で、まさしく完勝だった。
開幕からほとんどスターティングメンバーを固定して、辛抱強く戦ってきた清水だが、ここにきて明確な結果が出ている。4位以上もほぼ確定し、またしても順調なシーズンを過ごすこととなった。
■ フェルナンジーニョ後半戦の清水の躍進を支えているのが、MFフェルナンジーニョ。この試合は、古巣のG大阪との対戦となったが、大車輪の活躍を見せて、鋭いドリブルで何度も好機を作った。
開幕当初は、組織的な清水のサッカーになかなかフィットしなかったが、後半戦はチームにもなじんで、フェルナンジーニョのドリブルが清水の攻撃の最大の武器になっている。
持ちすぎることもあって、使い勝手のいい選手ではないが、決定的な仕事の出来る選手であり、スタジアムに興奮をもたらすことの出来る選手である。プレーヤーとしての価値は高い。
■ 痛い敗戦一方のG大阪は、痛い敗戦を喫した。早い時間帯に先制点を奪われたことで前がかりにならざるえなくなったことで、清水にカウンターのチャンスを許した。
後半開始から、DF安田とFW家長を投入し、彼らの攻撃力がうまくチームに還元できていて、反撃開始という時間に、2点目を奪われたことが致命的だった。2点目のシーンも、簡単にワンツーで突破されて、MF兵働をフリーにしてしまった。
タラレバだが、明神と橋本のダブルボランチコンビであれば、兵働をあそこまでフリーにすることは無かっただろう。
■ 最後まで決まらなかった2トップの組み合わせもう1つの誤算は、2トップの不調である。
マグノ・アウベス、播戸、バレーという3人のトップスコアラーを擁するG大阪だが、いずれの選手も怪我が多く、万全の状態で試合に臨めたケースは少なかった。そのため、どの2トップの組み合わせが最適なのか、答えが見つからないまま終盤戦まで来てしまった。
西野監督のファーストチョイスは、マグノ・アウベス&バレーのようだが、試合後に清水の長谷川監督が語っていたように、播戸が出てきたほうが相手としてはやりにくかっただろうし、本来のG大阪のパスで崩すサッカーが出来たかもしれない。マグノ・アウベス&バレーという2トップは能力は高いが、まだコンビが熟成されておらず、中盤とかみ合わなかった。ぶっつけ本番に近い状況では、清水の堅いDFラインを崩すことは出来なかった。
播戸とマグノ・アウベスのコンビネーションのよさは昨シーズンで実証済みだが、新加入のバレーについては、彼の力強さとシュート力がここまでのG大阪を引っ張ってきたのは否定できないが、バレーが入るとやや攻撃が硬直して、単調な攻めになってしまうことも否定できない。
たとえば、ナビスコカップの鹿島戦では、前田がフォワードに入ってうまく味方を生かすプレーを見せた。MF家長やDF安田を含めて、来シーズン、G大阪が、チームプレーヤーと才能のあるプレーヤーをどう組み合わせてチームを作るかは、非常に興味があるところである。
■ ストップ・ザ・レッズG大阪が敗戦したことで、浦和レッズのリーグ2連覇が濃厚となった。
浦和は、ACLでの過密日程の影響もあって、シーズン後半の内容はそれほど褒められたものではなかったが、それでも、大宮戦以外は、ほとんど取りこぼすことなく、首位を守った。
浦和レッズのサッカーについては、賛否両論あるのは事実である。「内容が悪くてもしたたかに勝ち点を拾うサッカー」、「リードを奪うとラインを引いて相手に攻められても跳ね返す受け身なサッカー」、「前線のタレント力に頼った単調なサッカー」という評価もある。
だが、いくら他チームのサポーターが、浦和レッズを否定しようとも、浦和が勝利を続けている限りは、誰も浦和レッズのサッカーを責めることは出来ない。選手たちは、勝つために試合をしているのであって、勝つために最大限の努力をして、事実、十分な結果も残しているのであるから、非難される筋合いは無い。
とはいっても、やはり、浦和レッズには、日本サッカーのイメージリーダーとして、その地位にふさわしい内容の伴った試合を、すべての試合で見せてほしいというのは、日本サッカーに携わるすべての人に共通する願いだろう。
実際、たとえば、
18節の磐田戦、
22節のFC東京戦、
29節の千葉戦のように、浦和レッズは、多くの観客を魅了できるような魅惑的なサッカーも出来るチームである。それだけに、過密日程というエクスキューズもあるが、内容の乏しい試合が少なくないのは残念ではある。
来シーズンもオジェック監督が采配を振るうのであれば、劇的な改善は期待できないだろう。となると、浦和レッズに刺激を与えて変化を促すには、ライバルチームが、浦和レッズを上回る内容のサッカーをしてタイトルを獲得するのが一番だと思う。
そして、現在のJリーグの中で、その可能性があるのは、この試合で対戦したガンバ大阪と清水エスパルスの2チームだけであると思う。
この2チームは、土地柄もあって、勝利するだけではサポーターも満足しない。Jリーグ開幕以後、貪欲に進化への道を追求してきた成果も出始めてきており、多くの日本代表が集まっていて、結果と内容を両立できるだけの土壌は十二分に備わっている。
G大阪に対しては、今シーズン培った守備の安定をベースに、レギュラーを外れることの多かったMF家長というタレントをうまくチームにミックスさせて、相手に引かれてもものともしない、力強く優雅なサッカーを追及してほしい。
また、清水エスパルスについては、キーマンであるMFフェルナンジーニョの去就は未定ではあるが、今シーズン、やや不調だったMF藤本やMF兵働の才能をうまく攻撃に組み込んで、組織サッカーをベースに若さ溢れる思い切りのいいサッカーを見せてほしい。
来シーズン、Jリーグの中で、独走しつつある浦和を止められるのは、この2チームしかない。
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