■ 日韓決戦アジアカップの3位決定戦。日本は、韓国と対戦。
日本は、これまで4試合連続スタメンだったFW巻に代えて、山岸を起用した以外は、これまでと同じスターティングメンバー。
日本は、前半に、中村俊輔からのパスを受けた遠藤のシュートシーン、ゴールほぼ正面からの遠藤のFK、CKから中澤が至近距離から決定的なシュートを放ったシーンなど、いくつかのチャンスを作るが、決めきれず。韓国の攻撃は、ロングボールを使った単調な攻めで、日本は、阿部と中澤がしっかりと跳ね返すものの、前半の中盤以降は、セカンドボールが拾えなくなって、やや押し込まれる場面も目立った。
後半開始10分、韓国のDFが退場になって、数的優位な状況になったが、オーストラリア戦と同様に、引いた相手を崩しきれず、スコアレスのまま、PK戦に突入。結局、日本の6人目の羽生が失敗し、4位という結果で大会を終えた。
■ 計りかねるオシム監督の意図日本は、非常にもったいない試合をした。
スタメンがほとんど同じだったのは、ベトナムからインドネシアへの移動に手間取って、ほとんど、事前の練習が出来なかったからなのだろうか?日本は、オーストラリア戦やサウジアラビア戦と同様に、完全に引いた相手を崩しきれないという欠点を露呈し、10人の韓国からゴールは奪えなかった。
それにしても、このスタメンで試合に臨めば、疲労もあって十分なパフォーマンスは期待できず、オーストラリア戦やサウジアラビア戦の後半のように、閉塞状態になることは、ある程度、想定できたことである。なぜ、オシム監督は、フレッシュな太田や水野や矢野といった若い選手をスタメンに抜擢しなかったのだろうか?
■ 選手交代に冴えが見られず今大会を通して、オシム監督の選手交代は冴えを見せなかった。ジェフ千葉時代には、何度も、選手交代の妙を見せてきたオシム監督には、多大な期待がかけているので、この点は、やや不満の残る部分である。
特に、10人になったときの選手交代は、オーストラリア戦も韓国戦も、かなり消極的で、流れを引き寄せることは出来なかった。もともとのスターティングメンバーがかなり攻撃に偏ったメンバー選考をしているので、これ以上、攻撃的にすることはなかなか簡単ではないが、この試合でも、オシム監督が取った策は、中村憲→羽生、山岸→佐藤、高原→矢野という無難な選択だった。
■ 崩しきれないことについて「相手に守られたときに崩しきれないこと。」は、今大会で明確になった日本の課題である。(これは何も、日本代表だけが抱える課題ではなく、世界中のどのチームにも当てはまるものであるが・・・。)その課題は、韓国戦でも、解決策は見せられなかった。しかしながら、これは、想定内のことである。サウジアラビア戦からは、3日しか経っておらず、ほとんど練習もしていない。したがって、課題が解決しているはずはない。
よって、これは、アジアカップ以後に解決すべき課題である。ひとりで打開できるタイプの選手を入れるのか、もっとリスクを背負った攻撃ができるように攻守のバランスを調整するのか、いずれにしても、いくつかの解決策はあるだろう。
■ 収穫は俊輔・鈴木・阿部あまり多くの収穫はなかったが、それでも、いくつかの収穫はあった。まずは、中村俊輔のプレーである。この試合の俊輔のプレーは、今大会を通して最高のものであり、日本のビッグチャンスのほとんどを、俊輔が演出した。
サウジアラビア戦のあと、「このチームでは個人技を発揮しにくい。」という風な発言をしていたが、この試合の俊輔は、タスクをこなしつつ、随所にアイディア溢れるプレーを見せており、彼の適応能力の高さ(頭の良さ)を感じずにいられなかった。
また、鈴木啓太のプレーも、非常に良かった。サウジアラビア戦では、怪我の影響もあったのか、ダイナミズムを欠いていたという印象を受けたが、この日のプレーは、いつもの鈴木啓太のプレーだった。
他には、CB阿部のプレーも、素晴らしかった。サウジアラビア戦では、失点シーンに絡んだので非難を浴びてしまったが、韓国のCFを相手に、空中戦でも負けずに、まったく仕事をさせなかった。ビルドアップにもっと関与して欲しいという不満はあるが、阿部のCBでの起用に、一定の目処がついたことは、今大会の大きな収穫である。
■ いい経験となった羽生直剛さて、実際には、あまり3位も4位も変わらないと思うが、「負けるよりは勝つ方がいい。」と考える人がほとんどだろう。したがって、決定的なシュートを2本外して、さらには、PK戦でもPKを失敗した羽生は、分かりやすい戦犯として、しばらくの間は、祭り上げられることだろう。日本代表の試合は注目度も高いので、仕方ない部分もある。
しかしながら、この試合をきちんと見ていた人であれば、いかに羽生の存在が攻撃を活性化させるのか、そして、彼がオシム監督の愛弟子だから代表に選ばれているわけではなく、日本代表の戦士としてピッチに立つ実力が十二分に備わっていることが、分かるだろう。この逆境を乗り越えることが出来れば、プレーヤーとして新しい境地に達することが出来るだろうし、また、彼のパーソナリティを考えれば、それも十分に可能だろう。
■ 今大会の収穫今大会の総括すると、現状で出来ることと出来ないことが、はっきりと明確になったことが、一番の収穫だろう。
出来ることとしては確認できたのは、
・カタールやUAEといったアジアの中堅クラスのチームを相手にした場合、それなりに引かれたとしても崩しきれるということ。
・オーストラリアやサウジアラビアといったアジアトップレベルのチーム相手でも、ポゼッションでは優位に立てること。
・相手の個人技やセットプレーに対する弱さは見せたものの、しっかりと守備の準備が出来ていれば、日本の守備陣を崩せるチームは、アジアレベルではほとんどないということ。であり、出来なかったこととして確認できたのは、
・オーストラリアやサウジアラビアといったアジアトップレベルのチーム相手に引かれると、崩しきれずに攻撃が行き詰るということ。
・試合の流れを変えられるだけのジョーカーを持たないということ。
・スタメンと同レベルの実力をもつ選手がベンチには少ないということ。であろうか。
■ オシムの誤算?「引いた相手を崩せないこと。」については、大会前に、オシム監督に読み間違えがあったのではないかと推測する。
ボクの推測するところでは、オシム監督は、大会前に、やや日本の実力を過小評価(あるいは、対戦相手を過大評価)していて、ポゼッションスタイルでは、カタールやUAEレベルでも、苦戦を強いられると予想していたのではないだろうか。実際、昨年の日本代表は、相手のシステムやスタイルに合わせるカメレオンスタイルで試合を行ってきたので、相手がどうであれ自分たちのポゼッションスタイルを前面に押し出して試合に挑むようになったのは、今年の3試合(ペルー戦、モンテネグロ戦、コロンビア)しか、準備をする機会がなかったのだ。
したがって、オシム監督は、今大会で6試合をこなすことで、徐々に連携を高めていって、とりあえずは、まず、ポゼッションスタイルを完成に近づけていくつもりであったのではないだろうか。ベンチ入りした23人の顔ぶれを見る限り、他のスタイルで戦おうとする意図は、あまり感じられない。
ただ、最初の2試合で予想外にポゼッションから相手DFを崩せてしまったため、その後、十分な上積みができずに、端から見ていると、やや尻すぼみの印象になってしまったのではないだろうか。それでも、大会前に想定していたレベルには、十分に達しているのではないかと見るが、どうだろうか。
■ オシムジャパンの今後オシムジャパンは、今大会で、昨年までは見せなかった、ポゼッションスタイルを見せて、一定の成果を挙げた。とりあえず、ベスト4に入ったことでオシム監督は、最低限のノルマは達成し、今後、しばらくは、純粋な代表の強化に専念できるだろう。
今後の見所は、縦に速い従来のスタイルと、今大会で手ごたえをつかんだポゼションスタイルを、どう使い分けていくかである。今大会は、気候の影響もあって、一貫して、ポゼッションスタイルで挑んだが、もっと温暖な気候条件ならば、「走り勝つ」という、オシム監督の得意のスタイルが披露できるだろうし、時間帯によって、使い分けることも出来るだろう。
■ メンバーの入れ替えはあるのか?さて、今大会終了後に、大幅なメンバーの入れ替えがあるのかどうなのかも、注目されるところであるが、いくつかのポジションでは、新戦力の台頭が待たれる。
GKは、主将でもある川口が当分は中心だろうが、右サイドバックは、今大会で十分なプレーが出来なかった加地ではなく、駒野を左サイドではなく右サイドに戻して先発で起用するのが、現実的な方法ではないだろうか。
CBは、中澤と阿部のコンビが起用されているが、闘莉王が戻ってきたときに、どうするのか。高さ等を考えると中澤を外すことは考えにくく、4バックの場合は、阿部を外して、中澤と闘莉王のコンビになるのだろうか?とすると、鈴木啓太の位置(ボランチ)に阿部を起用することも可能になる。
ウイークポイントになっている左サイドバックは、三都主の復帰が待たれるが、守備力や高さを考えると、中田浩二の起用も考えられるだろう。あるいは、1対1で仕掛けられる安田理大という存在も、クローズアップされるだろう。
ボランチでは、守備的な位置には、鈴木や阿部のほか、五輪代表の青山敏も候補に入ってくるだろうし、中村憲剛がつとめた位置は、さまざまな選手の起用が可能な最激戦区である。
いずれにしても、オシムジャパンは、アジアカップを終えて、新しい章に入った。一年前と比べると、その進歩は明らかである。これからも、その発展を見守っていきたい。
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>なぜ、オシム監督は、フレッシュな選手をスタメンに抜擢しなかったのだろうか?
サウジ戦直後には選手を替えると言っていた通り、その時点では替えるつもりだったのでしょう。ただその後、疲労組の試合出場への熱いコールや、周囲の日韓戦への特別視される声を聞く中で、冒険が出来なくなったのではないでしょうか。日韓戦試合前会見で随分迷ってる様子が感じ取れましたし、その時点でフレッシュな選手を使う構想は壊れていたのかもしれませんね。で、本来与えない「再チャンス」、最後の観察で己の筋を通し、成熟の進んだ方のベストメンバーを送り出したのではないか、と。
考えすぎですかねぇ。
結果として、良くも悪くも、アジア杯を戦ってきた日本代表‘そのまま’が反映された試合だったと思います。
自分の応援するチームの選手が羽生のような状況になったら・・・と考えると、かなり苦しくなります。
神戸で選ばれるなら大久保ですから、そうなる可能性は非常に高いです。
チーム全体の問題から生まれた敗戦だと思ってます。
一定レベルでドン引きの相手をどうするか、という課題は残りましたから、マイナーチェンジはあるかもしれませんね。
羽生立ち上がれ
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