■ J1の開幕戦J1の開幕戦。劇的な形で2013年以来のJ1復帰を果たしたジュビロ磐田はホームのヤマハスタジアムで名古屋グランパスと対戦した。磐田は名波監督になってから3シーズン目。一方の名古屋はクラブOBでスター選手だった小倉監督が就任して大きな注目を集めている。学年的には名波監督の方が1つ上となる。ともに現役時代は「スペシャルな左足と創造性」を持っていたが日本代表で一緒にプレーしたことはない。
ホームの磐田は「4-2-3-1」。GKカミンスキー。DF櫻内、大井、森下俊、中村太。MF上田康、宮崎智、太田吉、小林祐、アダイウトン。FW齊藤和。32試合で20ゴールを挙げたエースのFWジェイはコンディションが万全ではないためベンチ外。J2の熊本から加入したFW齊藤和が1トップの位置でスタメンとなった。2015年は41試合で12ゴールを挙げている。五輪代表入りが期待されるMF川辺はベンチスタート。
アウェイの名古屋は「4-2-3-1」。GK楢崎。DF矢野貴、オーマン、竹内彬、安田理。MF田口、イ・スンヒ、古林、矢田、永井謙。FWシモビッチ。飛躍が期待される188センチのDF大武がベンチ外となったので「本職のCBがベンチに誰もいない。」という非常事態となった。PanasonicカップのG大阪戦(A)は右SBでプレーしたMF古林が1列上がって右SHでスタメン出場。右SBには経験豊富なDF矢野貴が起用された。
■ 1対0でアウェイの名古屋が勝利試合の序盤は磐田が圧倒する。動きの重い名古屋を尻目に持ち味であるコンビネーションと個の力をミックスさせた攻撃でチャンスを作っていく。防戦一方の展開になった名古屋だったが前半29分に中盤でボールを奪ってカウンターを仕掛けるといいタイミングで攻撃に参加した右SBのDF矢野貴のパーフェクトなクロスを199センチのFWシモビッチが豪快に頭で合わせてアウェイの名古屋が先制する。
このゴールで試合の流れは一変する。磐田はMFアダイウトン頼みの攻撃になって名古屋の守備陣の的が絞りやすくなる。1対0で迎えた後半も名古屋ペースが続いていく。威力を発揮したのは199センチのFWシモビッチの高さ。180センチのDF大井と178センチのDF森下俊では20センチほどの身長差があるので空中戦の勝負は圧倒的にFWシモビッチが優勢。名古屋は少なくない数の決定機を作って相手ゴールを脅かす。
守護神のGKカミンスキーの活躍もあって何とか0対1のスコアを維持したままで終盤を迎えた磐田はFW森島康らを投入。しかしながらほとんど攻撃の形を作れない。結局、前半29分のFWシモビッチのゴールが決勝点となって1対0でアウェイの名古屋が勝利。小倉監督は見事に初戦で初勝利を手にした。一方の磐田は黒星スタートとなった。絶対的な存在であるJ2得点王のFWジェイの早期の復帰が待たれる。
■ 制空権を握り続けた199センチのFWシモビッチ名古屋は開幕前のテストマッチで結果を出せなかった。湘南・鳥栖・G大阪という同じJ1チームを相手に3連敗。18クラブの中で最も仕上がりが不安視された状態で開幕を迎えたが白星発進となった。立ち上がりの20分間は硬さがあったのか、磐田の猛攻を食らって防戦一方の展開になったが前半29分のFWシモビッチの先制ゴールで流れが一変した。「1つのゴール」でこれほど流れが変わる試合は珍しい。
2月14日(日)に行われたG大阪戦(A)はショートパス主体のサッカーだった。連動した動きからチャンスを作るシーンもあったがFWシモビッチの高さが生きる場面はほとんどなかった。相手のCBのクオリティが異なるので単純に比較することはできないがFWシモビッチ自体もG大阪戦のときはそれほど空中戦の勝率が高くはなかった。今一つの出来だったがこの日は「ほとんど勝利した。」と言えるほど制空権を握った。
試合後のインタビューで名波監督は「シンプルにFWシモビッチを使ってきたことで苦しくなった。」という趣旨の話をしていたが、名古屋の最大の武器になるだろうFWシモビッチの高さを敢えて強調せずにトレーニングマッチを戦って武器を隠した状態で本番に挑んで相手の意表を突いて望み通りの結果を出すことができたのであれば「小倉監督は相当な策士」と言えるが、おそらくはそういう訳ではないだろう。
■ 小倉監督はデビュー戦で初白星開幕前のJ1勢との3試合で結果が出なかったので「やりたいサッカー」にこだわることは一時的に諦めてストロングな部分を押し出すサッカーにややシフトチェンジせざる得なくなったというのが本当のところだと思う。磐田側はここまでFWシモビッチを強調したサッカーをしてくるとは思っていなかっただろうと推測できる。セカンドボールへの反応も含めて対策等があまり立てられていなかったように感じられた。
小倉監督にとっては大きな勝利である。2節が広島戦(H)で、3節が川崎F戦(A)となるが、両チームには2015年の2ndステージで対戦したときに完敗を喫しており、広島には2対5、川崎Fには1対6で大敗している。開幕の磐田戦で勝てないと初勝利を挙げるまでに時間がかかって小倉監督を不安視する声が大きくなる可能性が高かったので一安心できる勝利と言える。小倉新監督は最高のスタートを切ったと言える。
FWシモビッチが完全に制空権を握っていたので基本的にはFWシモビッチを目掛けたロングボールが攻撃の中心だったが、後半19分のカウンターからMF田口のヒールパスを受けたDF安田理が左足で惜しいシュートを放ったシーンに象徴されるように複数人が連動した攻撃も何度かあった。「何だかんだでクオリティーの高い選手がたくさんいる。」と言えるのは間違いないところ。個と組織が融合できたら面白くなる。
■ MFアダイウトンに頼り過ぎたジュビロ磐田一方の磐田は完全に押し込んでいた立ち上がりの20分間でゴールを奪えなかったことが響いた。開幕前のトレーニングマッチで全く結果が出ていなかった名古屋は大きな不安をもって試合に入ってきたのでこの時間帯に磐田が先制するようだと「磐田が圧勝する可能性」もあったと思うが、GK楢崎の好セーブもあってゴールは奪えず。前半20分あたりを過ぎると中盤でのミスが増え始めて徐々にリズムがおかしくなった。
前半18分にDFオーマン、前半24分にDF矢野貴がイエローカードを受けたが、いずれもMFアダイウトンの突破を止めようとした末のイエローカードだった。この日のMFアダイウトンはキレキレの状態。立ち上がりから何度も迫力ある突破を見せたが、あまりにもMFアダイウトンのところが有効だったので彼に頼り過ぎてしまった面は否定できない。徐々にMFアダイウトン一辺倒の攻撃になって力任せの攻撃になった。
FWジェイの欠場は大きかった。熊本から加入したFW齊藤和が1トップの位置で起用されたが、見せ場は前半11分にスローインから作った決定機のときにゴール前に顔を出して惜しいシュートを放ったシーンくらい。熊本のときも1トップの位置でプレーすることはあったが下がり目の位置からゴール前に入ってくるプレーの方が得意なので今の磐田のやり方であれば2列目の方が持ち味を発揮できるだろう。
J1にはFWシモビッチほどの高さを持ったストライカーは他にいない。「この試合が特殊だった。」とも言えるが、DF大井とDF森下俊のCBコンビは自由を与え過ぎた。シュート数も序盤は磐田の方が多かったが終わってみると名古屋が17本、磐田は9本。大差が付いた。DF伊野波が抜けてDF大井が加入したが「DF大井のパートナーを誰にするのか?」は定まっていない。183センチ程度のCBが欲しいところ。
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