■ J1まとめJ1は、すでに11節を終了した。34節のリーグ戦なので、ちょうど、3分の1を経過したことになる。
それでは、各チームごとに、ここまでの印象を述べる。そして、最後に、これまでの、J1のベストイレブンを発表する。
■ 「守備的なサッカー」 ガンバ大阪現在、首位のガンバ大阪。その原動力となっているのは、攻撃力ではなくて、むしろ、「高い守備力」にある。そして、ここでいう守備力とは、単に失点数の「多い」「少ない」で表されるものではない。
失点数だけ見れば、G大阪よりも少ないチームもあるが、中盤で相手ボールを奪う、その奪い方に関して、ガンバ大阪と肩を並べるチームは、Jリーグの中には、存在しない。「いい形で中盤で奪って、素早く攻撃するスタイル」が、現在の世界のトレンドである。G大阪は、その最先端を行っており、実際に、たくさんのチャンスを生み出している。
攻守は、表裏一体である。いくら、攻撃的に行くと叫んでも、いくら、攻撃的なタレントを多くピッチに送り込んだとしても、守備をないがしろにしては、真の攻撃的なサッカーは、披露できない。
■ 「脱バランスのサッカー」 清水エスパルス開幕前に、G大阪のMFフェルナンジーニョを獲得し、チームの改造に取り掛かった。昨シーズンで、一度、固まったチームを壊してまで、新しいチームを作ろうとした長谷川監督の心意気は、高く評価できる。
フェルナンジーニョは、諸刃の剣である。好調時の彼は、ドリブルからシュートまで、1人ですべてをこなしてしまうだけのポテンシャルをもつ。しかしながら、彼が個人技に走りすぎると、チームはよくない方向に進んでしまう。
現在、浦和と並んで4位につけている清水。悪くない順位だが、まだ、フェルナンジーニョは、完全にチームにフィットしていない。いや、正しくは、フェルナンジーニョのやりたいサッカーにチーム全体が合わせてしまって、逆に、兵働昭弘や藤本淳吾らの持ち味が発揮できない状況になってしまった。脱バランスへの道は、まだ半ばである。
■ 「不幸なサッカー」 浦和レッズACLでグループ首位、リーグ戦では4位と、それなりの結果は出ているが、どうもしっくりこない。FWワシントンやMF小野が、オジェック監督の起用方法に意義を唱えた事件も、うまくいかないチームを象徴している。
ただ、この状況は、シーズン前から、ある程度は、予想できた。
いい選手(スター選手)ばかりを並べて、チームが作れれば、それは一番の理想ではあるが、よほどの名将でない限り、うまくチームを機能させるのは難しい。現状の浦和は、みんなを引き立てようとして、みんなが不幸な状況に陥っている。
昨シーズン、ブッフバルト監督は、FW永井、FW田中、MF小野、MF相馬といったビッグネームを、シーズン途中から、ベンチ要因とした。そして、彼らの代わりに起用したのが、MF山田であり、MF平川である。どこかで、折衝しなければならない。
ただ、難しいのは、昨シーズンの途中でブッフバルト監督が行ったことと同様の采配をしたとしたら、今度、サブに回された選手は、爆発するだろう。それは、ブッフバルト監督とオジェック監督の監督としての能力差というわけではない。選手にとって、1年だけならベンチでも我慢できても、2年続けてベンチという状況は耐えられないものだからである。
■ 「磐石なサッカー」 川崎フロンターレリーグ2位、ACLでも予選突破を確定している川崎。戦前の予想では、過密日程に苦しむのではないかといわれていたが、分厚くなった選手層で、結果;内容とも、申し分ない状態である。
特に、MF中村憲剛の充実振りが、目につく。彼は、「リズムを作る仕事」と「リズムを変える仕事」という2つの大きな役割を、ハイレベルでこなしている。川崎といえども、MF中村が欠場した試合は、少なくない影響が出ている。彼が、休むことなく試合に出続けられたとしたら、川崎が優勝候補の筆頭といっても過言ではない。
また、大きな補強となったのが、GK川島である。その効果が、特別、数字に表れているわけではないが、吉原や相沢には失礼だが、川島がゴールを守っているというだけで、安心感がある。
■ 「ノスタルジックなサッカー」 ヴァンフォーレ甲府ワンタッチプレーの積み重ねで、執拗に中央からの突破を狙うスタイルは、非効率ではあるが、新鮮であり、また、一種のノスタルジーを感じる。ヴァンフォーレ甲府クラスの規模のチームにとって、リーグ戦の順位は大切だが、それ以上に、大切なものも存在する。
大砲のFWバレーが退団したことで、スケールダウンが心配されたが、現時点では、バレーの穴は感じない。むしろ、バレーがいなくなったことで、藤田や茂原らの才能が、より生かせるようになった。
たくさんのドラマを見てきた、小瀬のサポーターは、最後まで、試合をあきらめることはない。その雰囲気が、また、新しいドラマを生み出す。
■ 「トラウマの残るサッカー」 FC東京サンフレッチェ広島との開幕戦。前半13分、前半18分、前半27分と、立て続けに3失点を喫したFC東京。いずれも、広島のカウンターからの失点だった。
この開幕戦でのトラウマが、FC東京の今シーズンの行方を左右したというのは、言い過ぎかもしれないが、序盤のFC東京の低迷を招いた最大の要素であることに違いはない。前に出て攻撃的に行きたいチームが、カウンタの恐怖を知ったとき、選手たちに、アンビバレントな心理が働くようになった。攻守のバランスが崩れるのも、必然だった。
「攻撃的なサッカー」には、しっかりとした土台が必要である。いつ、開幕戦のトラウマが払拭できるのだろうか?
■ 「異色なサッカー」 サンフレッチェ広島J1の中で、もっとも、イレギュラーなサッカーをしているのが、サンフレッチェ広島である。DFラインに、本職ではない選手を多く起用し、徹底的にビルドアップの向上を狙った、ポゼッションスタイルのサッカーを目指している。
確かに、十分な、結果は出ていない。まだまだ、本職のDFでは考えられないようなポジションニングのミスも目立つ。だが、昨シーズンと比べると、確実に、向上の跡が見て取れるし、「堅いサッカー」が伝統のサンフレッチェらしくなく、非常に、見所のあるサッカーが完成しつつある。
中でも、右サイドの駒野である。つい最近までは、G大阪の加地亮が日本最高のライトサイダーだと思っていたが、その考えが、変わりつつある。精度の高いクロスは絶品で、危険極まりない。
好材料も多いが、やはり、上位に食い込むには何かが足りない、という感じもする。手っ取り早いのは、トップ下に位置する柏木の成長を待つこと。彼が、グレードアップしたとき、ペトロビッチ監督の目指すポゼッション重視の攻撃的なサッカーが、完成するのではないだろうか。
■ 「組織的なサッカー」 名古屋グランパスエイト開幕から、突っ走った名古屋。ここにきて、息切れの感も漂うが、チームの目指す方向に、揺らぎはないため、大崩れはしそうにない。フェルフォーセン監督は、欧州の監督らしく、組織的ないいチームを作った。この手腕は、高く評価できる。
ただ、その一方で、やや、組織重視なサッカーに傾きすぎているようにも感じる。「組織的なサッカー」の究極の状態は、どの選手が代わりに入っても、同じ質のサッカーが保たれることであるが、チーム内に、有効な武器があるのであれば、それを生かさない手はない。例えば、「ヨンセンの頭」、「本田の左足」、「中村のパス」等。
(5月15日 随時、更新します。)
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