■ 攻撃的なポジションの選手に限定した場合のランキング(その2)同様に攻撃的なポジションの選手に限定して「90分あたりのタックル数」をまとめたものが表6である。1位の神戸のMF松村に関しては(
前編)で触れたが、2位はFC東京のMF三田だった。FC東京はトリプルボランチを採用することが多くて、MF三田のポジションはインサイドハーフが多かった。そのため、「攻撃的なポジションの選手」と言えるかは微妙であるが、除外はしなかった。
MF三田はテクニックがあって、ドリブルで突破を試みることもできるが、運動量も多くて、守備での貢献度も高い。この項目で上位に位置するのは納得である。7位となった清水のMF石毛も同様にSBでプレーした時間が長かったので、対象外とするべきなのか、最後まで迷った選手の1人であるが、ゴトビ監督がSBで起用したことが「守備力アップ」につながっているのは間違いないところである。
クラブ別で目立つのは何と言っても横浜FMである。トータルのタックル数はリーグ2位だったが、4位にMF佐藤優、6位にMF兵藤、11位にMF中村俊、13位にMF齋藤学が入っており、2列目の選手の守備力ならびに守備意識の高さがリーグ最少失点につながったのは確かである。MF兵藤も終盤はボランチでプレーする時間が長かったので、対象外とするべきか迷ったが、こちらも除外はしなかった。
表6. J1の90分あたりのタックル数のベスト30 (攻撃的なポジションの選手に限定)
| 選手名 | チーム名 | 試合数 | 出場時間(分) | タックル数 | /90分 |
1 | 松村 亮 | 神戸 | 17 | 427 | 19 | 4.005 |
2 | 三田 啓貴 | FC東京 | 24 | 1,197 | 49 | 3.684 |
3 | 水野 晃樹 | 甲府 | 11 | 362 | 14 | 3.481 |
4 | 佐藤 優平 | 横浜FM | 16 | 902 | 34 | 3.392 |
5 | 大森 晃太郎 | G大阪 | 24 | 1,448 | 47 | 2.921 |
6 | 兵藤 慎剛 | 横浜FM | 31 | 2,044 | 64 | 2.818 |
7 | 石毛 秀樹 | 清水 | 22 | 1,187 | 37 | 2.805 |
8 | 森岡 亮太 | 神戸 | 34 | 2,898 | 89 | 2.764 |
9 | 永井 謙佑 | 名古屋 | 28 | 2,088 | 64 | 2.759 |
10 | 阿部 浩之 | G大阪 | 30 | 2,274 | 69 | 2.731 |
11 | 中村 俊輔 | 横浜FM | 32 | 2,465 | 74 | 2.702 |
12 | 阿部 拓馬 | 甲府 | 14 | 933 | 27 | 2.605 |
13 | 齋藤 学 | 横浜FM | 31 | 2,257 | 65 | 2.592 |
14 | 大崎 淳矢 | 徳島 | 31 | 2,609 | 71 | 2.449 |
15 | 高山 薫 | 柏 | 32 | 2,337 | 63 | 2.426 |
16 | ペドロ ジュニオール | 神戸 | 32 | 2,614 | 69 | 2.376 |
17 | 家長 昭博 | 大宮 | 33 | 2,920 | 77 | 2.373 |
18 | 長谷川 アーリアジャスール | C大阪 | 30 | 2,289 | 59 | 2.320 |
19 | 永井 龍 | C大阪 | 21 | 936 | 24 | 2.308 |
20 | 小川 慶治朗 | 神戸 | 26 | 2,057 | 51 | 2.231 |
21 | 河本 明人 | 甲府 | 16 | 888 | 22 | 2.230 |
22 | 楠神 順平 | C大阪 | 26 | 907 | 22 | 2.183 |
23 | 佐藤 晃大 | G大阪 | 23 | 935 | 22 | 2.118 |
24 | 南野 拓実 | C大阪 | 30 | 2,402 | 56 | 2.098 |
25 | リンス | G大阪 | 26 | 916 | 21 | 2.063 |
26 | 野津田 岳人 | 広島 | 18 | 715 | 16 | 2.014 |
27 | 河野 広貴 | FC東京 | 30 | 1,810 | 40 | 1.989 |
28 | 泉澤 仁 | 大宮 | 16 | 906 | 20 | 1.987 |
29 | ドゥドゥ | 柏 | 14 | 687 | 15 | 1.965 |
30 | 高萩 洋次郎 | 広島 | 32 | 2,039 | 44 | 1.942 |
■ 逆に90分あたりのタックル数が少なかったのは誰か?ここまでは「タックル数」や「90分あたりのタックル数」が多かった選手を取り上げてきたが、これらの項目でリーグ上位の選手は「守備での貢献度も高い。」という印象がある選手の割合が高かった。最後の表7は「90分あたりのタックル数」が少なかった選手を示している。やはりと言うべきか、「守備での貢献度はあまり高くない。」というイメージのある選手が上位に来ている。
不名誉な1位はC大阪のFWフォルランだったが、彼が献身的にプレーしているイメージはほとんどないので、順当な結果と言えるだろう。9月以降は若手のFW永井龍の方が優先度が高くなったが、上の表6のとおり、FW永井龍は「90分あたりのタックル数(攻撃的なポジションの選手に限定)」が19位だった。FWフォルランの出場機会が激減したのは「守備での貢献度の低さ」が理由だったのは明らかである。
MF川又はシーズン途中に新潟から名古屋に移籍したが、新潟時代のMF川又が3位で、名古屋時代のFW川又が7位に入っている。一緒にしても良かったが、特徴的だったので、敢えて一緒にはしなかった。対象は「出場時間が500分以上の選手」なので、ボランチやCBやSBやWBの選手も含まれているが、30位までに入った選手の中では、22位のMF山岸(広島)とMF平川(浦和)がWBの選手である。
また、横浜FMの中盤の選手の多くは「90分あたりのタックル数」が多かったが、MF藤本淳は「90分あたりのタックル数」が少なかったので、1人だけ異質である。そして、C大阪はMF長谷川とFW永井龍とMF楠神とMF南野の4人は「多かった選手」にランクインしているが、FWフォルランとFW柿谷とFW杉本健の3人は「少なかった選手」にランクインしており、はっきりと2つのグループに分かれている。
当然、「タックル数」や「90分あたりのタックル数」が少ないからと言って、「守備をサボっている。」と即座に判断することはできないが、動き回って、献身的にプレーしていると、自然とタックルを仕掛けなければならない場面に遭遇する確率は高くなる。したがって、タックル数というのは攻撃的なポジションの選手の「守備での貢献度の高さ・低さ」を示す指標の1つになり得るのではないかと思う。
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【J1】 タックル数から考える「守備での貢献度が高い(低い)選手」は誰か? (前編) →
【J1】 タックル数から考える「守備での貢献度が高い(低い)選手」は誰か? (後編)表7. J1の90分あたりのタックル数が少なかった選手 (出場時間が500分以上の選手に限定)
| 選手名 | チーム名 | 試合数 | 出場時間(分) | タックル数 | /90分 |
1 | フォルラン | C大阪 | 26 | 1,673 | 7 | 0.377 |
2 | ムルジャ | 大宮 | 18 | 1,427 | 6 | 0.378 |
3 | 川又 堅碁 | 新潟 | 14 | 1,183 | 5 | 0.380 |
4 | 津田 知宏 | 徳島 | 19 | 882 | 4 | 0.408 |
5 | ノヴァコヴィッチ | 清水 | 34 | 3,035 | 15 | 0.445 |
6 | 高崎 寛之 | 徳島 | 30 | 2,464 | 14 | 0.511 |
7 | 川又 堅碁 | 名古屋 | 15 | 1,262 | 8 | 0.571 |
8 | 宇佐美 貴史 | G大阪 | 26 | 2,026 | 13 | 0.577 |
9 | パトリック | G大阪 | 19 | 1,387 | 9 | 0.584 |
10 | 工藤 壮人 | 柏 | 34 | 2,729 | 19 | 0.627 |
11 | エドゥー | FC東京 | 30 | 1,882 | 14 | 0.670 |
12 | 指宿 洋史 | 新潟 | 15 | 1,188 | 9 | 0.682 |
13 | 大久保 嘉人 | 川崎F | 32 | 2,879 | 22 | 0.688 |
14 | ウイルソン | 仙台 | 24 | 1,922 | 15 | 0.702 |
15 | 小林 悠 | 川崎F | 30 | 2,515 | 20 | 0.716 |
16 | 二川 孝広 | G大阪 | 19 | 624 | 5 | 0.721 |
17 | 赤嶺 真吾 | 仙台 | 31 | 2,191 | 18 | 0.739 |
18 | ダヴィ | 鹿島 | 25 | 2,065 | 17 | 0.741 |
19 | 柿谷 曜一朗 | C大阪 | 14 | 1,153 | 10 | 0.781 |
20 | 藤田 祥史 | 横浜FM | 18 | 560 | 5 | 0.804 |
21 | 渡邉 千真 | FC東京 | 26 | 1,340 | 12 | 0.806 |
22 | 山岸 智 | 広島 | 15 | 1,075 | 10 | 0.837 |
23 | 藤本 淳吾 | 横浜FM | 26 | 1,803 | 17 | 0.849 |
24 | ケネディ | 名古屋 | 11 | 951 | 9 | 0.852 |
25 | 森谷 賢太郎 | 川崎F | 27 | 2,095 | 20 | 0.859 |
26 | 杉本 健勇 | C大阪 | 32 | 2,079 | 20 | 0.866 |
27 | 玉田 圭司 | 名古屋 | 17 | 1,244 | 12 | 0.868 |
28 | 岡本 英也 | 新潟 | 32 | 1,850 | 18 | 0.876 |
29 | 平川 忠亮 | 浦和 | 25 | 1,735 | 17 | 0.882 |
30 | 田鍋 陵太 | 名古屋 | 13 | 706 | 7 | 0.892 |
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