■ 第30節J1の第30節。10勝14敗5分けで勝ち点「35」のヴィッセル神戸と、11勝12敗6分けで勝ち点「39」の川崎フロンターレがホームズスタジアムで対戦した。14位の神戸は残留争いに巻き込まれており、15位の大宮は勝ち点「33」、16位のG大阪は勝ち点「32」、17位の新潟は勝ち点「31」となっている。
ホームの神戸は「4-2-2-2」。GK嘉味田。DF茂木、北本、伊野波、相馬。MF田中英、橋本、野沢、朴康造。FW田代、吉田。怪我のFW大久保はベンチスタートで、ベテランのFW吉田が17節以来のスタメンとなった。24試合で9ゴールを挙げているMF小川は怪我で欠場となった。
対するアウェーの川崎Fは「4-2-1-3」。GK西部。DF田中裕、實藤、ジェシ、山越。MF風間宏希、稲本、中村憲。FW楠神、小林悠、レナト。風間監督の次男のFW風間宏矢とボランチのMF大島の2人はU-19日本代表に招集されており欠場となった。
■ 3対3のドロー試合はホームの神戸のペースで進んでいく。前半早々にFW吉田が負傷交代するアクシデントが発生し、FW都倉が投入されるが、FW田代とFW都倉の2トップが高さで川崎Fを圧倒して、ハイボールからチャンスを作っていく。
しかしながら、先制したのはアウェーの川崎Fで、前半39分にMF風間宏希のパスを受けたFWレナトが得意の左足で強烈なミドルシュートを決めて先制ゴールを奪う。FWレナトは今シーズン6ゴール目となった。前半は1対0と川崎Fがリードして折り返す。
ビハインドの神戸は後半11分にMF野沢のパスを起点にチャンスを作ると、最後はDF田中裕のクリアがミスになって中央にこぼれたボールをFW都倉が決めて1対1の同点に追いつく。川崎Fの下部組織出身のFW都倉は今シーズン4ゴール目となった。
追いつかれた川崎Fだったが、後半20分に左サイドでFKを得ると、MF中村憲のボールをFW小林悠が決めて2対1と勝ち越すと、さらに、後半24分にも右サイドに流れたFW楠神のクロス性のボールがそのままゴールに吸い込まれて3対1とリードを広げる。FW楠神は今シーズン5ゴール目となった。
追い詰められた神戸はFW大久保を投入。すると、後半31分にFW大久保のパスを起点に途中出場のDF奥井の折り返しをFW田代が決めて1点差に迫ると、さらに、後半37分にもMF朴康造のクロスをFW都倉が豪快にヘディングで決めて3対3の同点に追いつく。FW都倉は今シーズン5ゴール目となった。
結局、乱打戦となった試合は3対3で終了。川崎Fは2点差を追いつかれたが、勝ち点「40」に到達して、J1残留の目安とされる勝ち点に到達した。一方の神戸は2点差を追いついたが、大宮が勝利したため、大宮と神戸が勝ち点「36」で並んだ。しかし、得失点差は大宮よりも上なので、神戸が14位で、大宮が15位という順位は変わらなかった。
■ FW都倉が恩返し弾残留争いをする神戸は、立ち上がりは優勢で先制のチャンスもあったが、決めることができずにいると、前半39分にFWレナトにミドルシュートを決められて川崎Fに先制を許した。1対1に追いついた後も、セットプレーから勝ち越しゴールを許すと、さらに、FW楠神のクロス性のボールがそのままゴールに吸い込まれるという不運もあって、2点ビハインドとなったが、2トップの活躍で追いつくことが出来た。
前半9分にFW吉田と交代でピッチに送り出されたFW都倉は、古巣との対戦となったが、能力の高さを見せつける2ゴールの活躍だった。圧巻だったのは2点目のヘディングシュートである。187センチと高さがあって、なおかつ、身体能力も高いというのが、FW都倉の魅力で、誰にも真似することができないファインゴールでチームを救った。
同じターゲットタイプのFW田代と2トップを組んだこともプラスに働いた。29節の清水戦はFW小川と2トップを組んだが、DFヨン・ア・ピンに完全に封じられて、最悪の出来だったが、FW田代と組むとマークも分散されるので、比較的、自由にプレーすることができた。
31節で対戦する横浜FMはCBが強力なので、そんなにうまくはいかないと思われるが、CBやボランチに高さの無いチームを相手にするときは、FW田代とFW都倉という高さのある2トップは威力を発揮するだろう。苦しい展開となったが、2トップの活躍で引き分けに持ち込んだ。
■ 残りは4試合J1は残り4試合となったが、残留争いは、13位の鹿島、14位の神戸、15位の大宮、16位のG大阪、17位の新潟の5チームに絞られた。13位の鹿島は勝ち点「38」、14位の神戸と15位の大宮は勝ち点「36」、16位のG大阪は勝ち点「33」、17位の新潟は勝ち点「31」なので、新潟が苦しくなっているが、G大阪は得失点差で有利なので、1試合で神戸や大宮を逆転できるところに位置している。
次節は、大宮と鹿島がNACK5スタジアムで対戦するが、ここで鹿島が勝利すれば、鹿島は残留争いから卒業となるが、大宮が勝利するようなことがあれば、鹿島にも降格の危機が迫ってくる。鹿島は、大宮(A)、仙台(H)、名古屋(A)、柏(H)というカードなので、ラスト3試合も厳しい相手となるので、次の大宮と鹿島の試合は要注目である。
神戸は、横浜FM(H)、FC東京(A)、柏(A)、広島(H)と対戦するが、とにかく、次の横浜FM戦が重要となる。最終節もホームゲームとなるが、優勝争いをしている広島との試合なので、勝ち点を計算することはできない。横浜FMに勝つことが出来れば、相当に有利な立場になるが、引き分け以下に終わるようだと、降格の可能性の方が高くなる。
神戸は、ここに来て、怪我人が出ているが、幸いにして、次週はナビスコカップの決勝があるので週末に試合は行われない。神戸にとっては幸運と言えるが、特に、GK徳重やFW小川の回復具合は気になるところである。GK徳重は24日(水)に左足関節捻挫で全治3週間と発表されており、次の横浜FMは怪我から2週間後となるので出場は微妙であるが、GK嘉味田との実力差は大きいので、何とか間に合わせてほしいところである。
■ 風間監督の評価は?一方の川崎Fは、3対1とリードを奪ったが、逃げ切ることはできなかった。2失点目はキレイに崩されたので、仕方がないところもあるが、3失点目はDF山越がしっかりとクリアしていれば、問題ないシーンだったので、悔やまれるところである。
後半開始からMF稲本を下げてDF伊藤を投入し「3バック」に変更したが、現実的な采配であり、ある程度は成功したといえるが、最後の最後は、FW都倉の高さに対抗できなかった。MF稲本にはスタミナの問題があるので難しいところだが、高さ対策をするのであれば、MF稲本を下げるのではなくて、MF風間宏希を下げた方が良かったのではないか?とも思う。
これで、神戸は8試合勝利なしとなったが、川崎Fも3試合勝利なしと苦しんでいる。勝ち点「40」に到達したので、降格の心配はなくなったといえるが、なかなか結果につながらないので、来シーズン以降の見通しは明るくない。残り4試合となったが、来シーズンを見据えて、希望の見える戦いをしたいところである。
風間監督については、批判的な声も出始めているが、個人的には、川崎Fで成功するのは厳しいように思う。ダークホース的な存在となって、リーグをかき回すような立場のチームであれば、今のようなやり方でも面白いと思うが、川崎Fは、ここ数年、常にタイトル争いに絡んできたチームなので、目標はもう少し上である。
「風間監督のサッカーがチーム内に浸透するには時間が必要である。」という意見は一理あるが、これまでの試合を観ると、浸透したからといって、タイトルを狙えるようなチームに生まれ変わるかというと、疑問である。ポジティブなイメージを持つことはできない。
むしろ、ユニークな考え方をする指導者なので、ファーストインパクトの刺激は強くて、最初の段階では効果的に働いて、いい方向に進んでいくが、薬の効き目が切れてしまうと、手詰まりになって、下降していく可能性の方が高いように感じる。現状は、停滞感も出ているので、風間監督が次の手を打つことが出来るのか、次善の策を持っているのか、注目したいところである。
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