■ 劇的な試合になったが・・・。6月7日(日)に行われたJ1の第15節の川崎フロンターレと湘南ベルマーレの試合は1対1で迎えた後半49分に川崎FのMFエウシーニョが左足で劇的なミドルシュートを決めてホームの川崎Fが勝利。川崎Fは14節の清水戦(A)で2対5と大敗するなどここ最近は雰囲気が良くなかった。この日の前半の出来は「今シーズンの中ではワースト」と言えるほどの低調な内容だったが、後半に2ゴールを奪って神奈川ダービーを制した。
湘南は後半の途中までは完全に試合の主導権を握っていた。湘南ペースの時間が長かったが、最後のMFエウシーニョの決勝ゴールのシーンはDF三竿雄のクリアボールが味方選手に当たってMFエウシーニョのところにこぼれるという不運があった。これで湘南は5勝6敗4分け。川崎Fとは対照的にここ最近は非常にいい戦いを見せており、結果も出るようになっていたが、湘南にとっては残念な結果となった。
「調子が良くない。」という理由からベンチスタートになったMF中村憲が投入されると流れが変わったが、この試合における最大のトピックスは後半9分のMF菊池大のミドルシュートがノーゴールと判定されたシーンを含むいくつかのジャッジについてである。川崎FがPKを獲得したシーンや湘南がバックパスを取られて川崎Fがエリア内で間接FKを得たシーンも「どうだったのか?」と語られるような場面だった。
■ MF菊池大介のシュートは入っていたのか?結局、「このジャッジはどうだったのか?」と話題に上がるような重大局面は3つとも川崎F側に有利な判定になった。そういう意味でも湘南側にはイライラの溜まる試合になったが、バックパスに関しては「湘南のキーパーのGK秋元がやや不用意だった。」と言うしかない。PKについては「100%PK」とまでは言いきれないが、DF三竿雄の足がスピードに乗った状態のMF中村憲に当たっている可能性が高いように思える。
もっとも気になる後半9分のMF菊池大のミドルシュートが決まっていたのか否かのジャッジは「本当に微妙」と言うしかない。最初は「バウンドしたボールがゴールの中に入ってからクロスバーに当たったのではないか。」と感じたので、「これはスーパーゴールだ。」と思ったが、その少し後に流れたスローVTRを見ると「完全に割っているとは言い切れず。もしかしたらノーゴールかもしれない。」と感じた。
湘南のサポーターの中には「完全に入っている。」と思う人もいるだろうし、川崎Fのサポーターの中には「明らかにノーゴールだ。」と思う人もいると思うが、中立の立場の人間が見ると、「ゴールのようにも見えるし、ノーゴールのようにも見える。」という意見が主流になるのではないか。仮に西村主審が『ゴール』と判定していたら、「入ってないだろう。何を見ているのか。」と批判されるのは確実と言える。
■ 審判団に特に落ち度はなかった。審判団にとっては非常に難しいシーンになった。一部では「誤審ではないか?」という声も上がっているようだが、このレベルの『どちらとも取れる。』というジャッジを誤審扱いするのはあまり適切ではないと思う。『どちらとも取れる。』というシーンはサッカーの試合ではよくあること。スローVTRを繰り返し見てもどちらが正しいのか判断に困るようなシーンなので、審判団が下したジャッジに素直に従うしかない。
MF菊池大は少し距離のあるところからミドルシュートを放っているが、当然のことながら、メインスタンド側の副審はオフサイドが否かを判定できるように川崎Fの最終ラインの真横に張り付くことになる。ゴールラインの延長線上でジャッジできたらより正確なジャッジを下すことができると思うが、現実的には不可能である。副審の位置というのはこの位置しかありえず、「副審に落ち度がある。」とは言えない。
もちろん、西村主審を責めるのはさらに筋違いである。言うまでもなく、全てに対して最終的な判断を下すのは主審であるが、ゴールラインを割っていたのか否か?をより正確に判断できるのは近くにポジションを取ることができる副審の方である。カウンターの場面だったので、西村主審はゴールラインからはかなり遠いところにいた。あの位置の西村主審がゴールを割っていたのか否か?を判断するのはほぼ無理と言える。
ということで、「西村主審を含めた審判団に特に落ち度はなかった。」と言えるが、意外にも西村主審を批判する声は多いようだ。この点は試合終了直後、「西村雄一 誤審」という検索フレーズで当サイトを訪問する人が激増したことからも明らかである。(ちなみにこの検索フレーズで引っかかるのは下記の2つのエントリー。ちょうど1年前の出来事で、このときのPKのジャッジは世界中で話題になった。)
2014/06/13
「誤審」とは言えない西村雄一氏のジャッジ 2014/06/14
恥ずべきクロアチアのコバチ監督と選手のコメントこのあたりのことに関しては、「Jリーグのコアなサポーターの中にもルール等に精通していない人が少なくないと言わざる得ない。」と感じる。(「完全に入っていたのにノーゴールになった。」というケースでも主審の責任とは言えず。)結局、スカパーの中継を含めた目に付きやすい公の場で「ジャッジ」についての議論をできるだけ避けて穏便に済ませようとする「事なかれ主義」が生んだ負の部分だと思う。
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