■ 第30節J2の第30節。14勝10敗5分けで勝ち点「47」の横浜FCが、ホームで水戸ホーリーホックと対戦した。水戸は11勝11敗7分けで勝ち点「40」。29節の大分戦は終了間際にFC東京から加入のDF吉本がゴールを決めて、2対1で劇的な勝利を飾った。
ホームの横浜FCは「4-1-4-1」。GKシュナイダー潤之介。DF井手口、渡邉、ペ・スンジン、阿部。MF佐藤、寺田、高地、武岡、野崎。FW田原。チームトップの11ゴールを挙げているFW大久保はベンチスタートで、4ゴールを挙げているFW田原がスタメン出場となった。45歳のFW三浦知もベンチスタートとなった。ここまで14試合に出場して1ゴールを挙げている。
対するアウェーの水戸は「4-2-2-2」。GK本間。DF市川、吉本、尾本、輪湖。MFロメロ・フランク、西岡、小澤、橋本。FW鈴木隆、星原。元日本代表のFW鈴木隆は25試合に出場して3ゴールを挙げている。同じく元日本代表のDF市川は、29節の大分戦で1ゴール1アシストの活躍を見せた。
■ MF高地が決勝ゴール!!!試合は前半7分にホームの横浜FCが先制する。ハーフウェーライン付近から左SBのDF阿部がゴール前に精度の高いロングパスを送ると、水戸のCB二人とMF武岡が競り合って裏に流れたボールをFW田原が右足で決めて横浜FCが先制に成功する。FW田原は今シーズン5ゴール目となった。
その後は、互角の展開で、横浜FCはテクニシャンを並べた中盤の華麗なパスワークからチャンスを作ると、対する水戸はDF市川のクロスからチャンスを作っていく。試合の流れを大きく変えるプレーが発生したのは、前半43分で水戸のDF尾本が2枚目のイエローカードを受けて退場。水戸は10人となる。
しかし、10人の水戸が前半終了間際にペナルティエリア内で粘ったFW鈴木隆のシュートのこぼれ球をFW星原が決めて1対1の同点に追いつく。G大阪から加入のFW星原は、2試合目の出場で移籍後の初ゴールをマークした。前半は1対1で終了する。
水戸は後半4分に先制ゴールを挙げたFW星原に代えて大卒ルーキーのDF石神を投入。DF市川をCBに回して、DF石神を右SBに起用して守備の安定を図るが、後半17分にMF佐藤の縦パスを起点にして、裏に抜け出したMF高地が落ち着いて決めて2対1と横浜FCが勝ち越しに成功する。MF高地は今シーズン3ゴール目となった。
終盤になると、10人の水戸が最後の力を振り絞ってゴール前のシーンを作るが、GKシュナイダー潤之介の守るゴールを打ち破ることはできず。結局、2対1で横浜FCが勝利し、勝ち点「50」に到達した。一方の水戸は、10人で健闘したが、追いつくことはできなかった。
■ DF尾本の退場シーン真夏の中2日の試合ということで、タフな日程であったが、見ごたえのある展開となった。山口監督率いる横浜FCは、MF佐藤、MF高地、MF寺田、MF武岡、MF野崎と中盤はテクニックと判断力に優れた選手を並べていて、ハマったときは、テンポよくパスが回っていく。
一方の水戸も、就任2年目の柱谷監督の下、MF橋本、MF小澤、MFロメロ・フランクを中心にして、ボールを大切に扱うサッカーを見せており、J2の中では「キレイなサッカー」を志すチーム同士の対戦となったが、期待通りの展開となった。
残念だったのは、前半43分にDF尾本が2枚目のイエローカードを受けて退場になったことである。吉田哲朗レフェリーは、躊躇することなく、DF尾本にイエローカードを提示したが、リプレーを見る限り、全く退場に値するようなプレーではなかったので、熱戦に水を差す形となった。
それ以後も、水戸にとって不利な判定が多くて、ベンチの柱谷監督は、激しく抗議して、「ベンチに下がる・下がらない」でひと悶着があったが、文句を言いたくなる気持ちはよく分かる。退場のシーンは、ハーフウェーラインにも達しておらず、危険なプレーというわけでもなかった。
もちろん、後方からチャージしているので、ファールを取られても仕方がないプレーであるが、なぜ、イエローカードに値するプレーだと判断したのか、理解に苦しむところである。ノーミスという訳にはいかないが、試合展開を左右する大事な場面では、できるだけミスを減らしてほしいところである。
■ 急浮上の横浜FC終盤は運動量が落ちて、危ない流れになったが、横浜FCは勝ち点「3」を獲得した。今シーズンの横浜FCは、開幕当初は岸野監督が指揮していたが、開幕4試合で0勝2敗2分けという結果に終わると、電撃的に解任されて、元日本代表の山口監督が5節の甲府戦から指揮している。
しかしながら、序盤は苦しんで、0勝5敗3分けというところまでいったが、9節の京都戦で初勝利を挙げると、9節以後は、15勝5敗2分けと素晴らしい成績を残している。幸いにして、上位陣がもたついており、首位の甲府との差は「8」で、プレーオフ圏内の6位の山形との差も「2」に迫っている。
岸野前監督のときは、どういうサッカーをしたいのか、あまり見えてこなかったが、山口監督になってからは、細かいパス回しで相手の守備を崩して、最後は、ゴール前のFW大久保やFW田原といった大型ストライカーを生かすという形ができて、エンターテイメント性の高いサッカーを実現させている。
加入3年目でようやく力を発揮するようになったMF武岡、ドリブラーのMF野崎、テクニシャンのMF高地といった鳥栖出身の3人が存在感を発揮しているが、この日は、アンカーの位置で起用された大卒2年目のMF佐藤の質の高いプレーが光った。
1ボランチ気味の布陣なので、守備のところの負担は大きいが、判断が正確で、しかも技術も高いので、中盤でパスを散らすプレーが秀逸で、右から左に展開したり、左から右に展開するだけでなく、機を見て縦パスを入れたり、相手の守備の陣形を見て、もう一度、右サイドに展開したりと、インテリジェンスを感じさせるプレーを見せた。
後半17分のMF高地の決勝ゴールも、MF佐藤の鋭い縦パスが起点となっており、テクニシャンが揃った中盤で絶大な存在感を発揮した。ルーキーイヤーの2011年からボランチで起用されていたが、波長の合う選手が多くなって、持ち味が生きるようになった。
■ 期待のDF吉本は負傷退場・・・対する水戸は、前述のように不運な判定に泣かされたが、10人になっても、決して諦めない姿勢は見事なもので、柱谷監督のイズムが浸透していることを伺わせた。結果は勝ち点に結びつかなかったが、サポーターの期待を裏切らない試合を見せたといえる。
水戸で目立ったのは、後半22分に投入された明治大在学中のFW山村で、積極的な仕掛けで横浜FCの守備陣を困惑させた。FW山村は、FC東京の下部組織で育っているが、FC東京のユースから大学に進んで、力をつけて、プロの世界でプレーするチャンスを得た選手が、ここ最近は目立っている。山形の大卒ルーキーのMF宮阪が典型例と言えるが、FW山村も能力の高い選手である。
一方、残念なのは、FC東京から加入して、29節の大分戦で後半のロスタイムに決勝ゴールを決めるなど、貴重な戦力となることが期待されていたDF吉本が前半早々に負傷して、左膝前十字靱帯損傷という大怪我を負ったことである。水戸でのデビュー戦で決勝ゴールを決めるという最高のスタートを切ったが、完治するまでに1年程度が必要な大きな怪我となった。
結局、この試合は、前半でDF吉本が負傷退場して、DF尾本がレッドカードで退場となったので、元日本代表のDF市川をセンターバックで起用するという苦しい起用を余儀なくされた。水戸も11勝12敗7分けで、ほぼイーブンの成績で、プレーオフ圏内の6位の山形との差は勝ち点「12」なので、諦めるような差ではないが、戦力ダウンは必至である。
もともと選手層の薄いチームであるが、新加入のDF吉本が期待どおりのプレーを見せて、DFラインの中心として活躍できそうな雰囲気になっていたので、本当に大きなマイナスであるが、水戸らしく粘り強い戦いで、上位に食らい付いていって欲しいところである。
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