■ 第2戦ロンドン五輪のアジア予選の第2戦。初戦でタイに苦戦しながらも3対0で勝利した「なでしこジャパン」が、韓国代表と対戦。韓国は初戦で、地元の中国と対戦してスコアレスドロー。勝ち点「1」を獲得している。先に行われた試合はオーストラリアがタイに5対1で勝利し、オーストラリアが1勝1敗、タイが0勝2敗となっている。
日本は「4-2-2-2」。GK海堀。DF近賀、熊谷、岩清水、鮫島。MF阪口、澤、大野、宮間。FW川澄、安藤。タイ戦とは大きくメンバーを入れ替えてきて、W杯決勝のアメリカ戦と同じ11人となった。FW永里優、FW丸山らがベンチスタートとなった。
■ 大苦戦も2連勝スタート試合の立ち上がりは日本ペース。細かいパス回しで韓国のDFを崩してチャンスを作ると、前半10分にセットプレーから先制する。右サイドのCKを獲得すると、MF宮間が左足で蹴ったボールを中央でフリーのMF阪口がヘディングで決めて先制する。
いい形で先制した日本だったが、その後は、韓国がいい形を作っていく。前半30分には、DF岩清水の横パスを受けようとしたDF熊谷が滑ってしまって相手にボールを奪われるとドリブルで運ばれて、最後は、INAC神戸でプレーするFWチ・ソヨンにミドルを決められて1対1の同点に追いつかれてしまう。
その後は、韓国が主導権を握って攻め込んでくる。嫌な流れになった日本だったが、前半終了間際にMF澤の攻撃参加からゴール前でFW川澄が、上手いターンからDFを引き付けて横に流すと、最後はフリーになっていたMF大野が決めて2対1と勝ち越しに成功する。前半は、そのまま2対1と日本がリードして折り返す。
いい時間帯に「勝ち越しゴール」が生まれたので、後半は日本ペースになるかと思われたが、引き続いて、韓国がペースを握る。日本は後半途中に「4-1-4-1」に変更し、少し守備が安定するが、奪ったボールを攻撃につなげず、防戦一方になる。厳しい展開になったが、最後は韓国側も疲れてミスが続出。何とか1点を守って2対1で勝利。勝ち点「3」を獲得し、2連勝となった。
■ 大きかった前半終了間際のゴールもっと楽な試合になるかと思われたが、予想以上に苦しい戦いになった。韓国は試合の入り方がまずくて、日本をリスペクトし過ぎた感じで、先制ゴールが入るまでは「世界チャンピオン」という称号を前に及び腰になっていたが、失点を喫して吹っ切れた韓国は、しっかりとボールをつなげるようになったので、日本は後手後手となった。
したがって、日本にとっては「らしくない展開」となったが、前半のラストで見事な連携からゴール。結果的には、このゴールが非常に大きかった。前半の最後のプレーで、攻め込まれていたので、日本としては無理をせず「1対1でハーフタイム突入」でも良かったが、機を見たMF澤の攻撃参加からチャンスを作って、FW川澄の冷静なプレーがMF大野のゴールをお膳立てした。
このゴールは、日本の技術とアイディアが発揮されたゴールだったが、試合後に、改めて振り返ってみると、もし、MF大野のゴールが無くて1対1で前半を折り返していたら、後半開始から、もっと韓国がパワーを備えて試合に入ってきたはずなので、引き分けあるいは敗戦も十分に考えられた。この試合のことだけでなく、予選突破ということを考えても、大きなゴールだったといえる。
■ 苦戦の理由は?①大苦戦となったが、それでも日本は2連勝。北朝鮮が1勝1分け、オーストラリアが1勝1敗、韓国が1敗1分け、中国が0勝2分け、タイが0勝2敗なので、日本は勝ち点「6」で首位となった。内容的には今一つであるが、いい具合に、他の試合で勝ち点のつぶし合いをしてくれているので、日本にとっては、理想的な展開になってきている。
したがって、結果だけ見ると申し分ないが、なでしこが「世界チャンピオン」であることを考えると、反省点の多い試合だった。韓国はFIFAランキング16位で、ドイツW杯にも出場できなかったチームである。近年、若年層が結果を残しているとはいえ「格下」といえる相手なので、すっきりした試合をしなければならなかった。
苦戦の理由の1つに挙げられるのは、前線のFW安藤が前線で起点になれなかったことである。前半10分間までは、FW安藤がうまくボールを受けて攻撃に絡んでチャンスを作ったが、前半の途中からほとんどFW安藤にボールが入らなくなって、2列目の選手が押し上げることができなくなった。そのため、2トップの二人と、MF宮間やMF大野の距離が空いて、バランスの悪いサッカーになった。
■ 苦戦の理由は?②また、ボランチのMF阪口のところでミスが多かったのも、苦戦する理由となった。なでしこのストロングポイントは、相手にプレッシャーをかけられても丁寧につないで、前にボールを運べる点にあるが、前半の途中からMF阪口のところでボールを失うシーンが続いて、パスをつないで展開することが難しくなった。よって、DFラインからのロングボールが多くなったが、前線には高さが無いので、せっかく奪ったボールも、すぐに相手に渡してしまうという悪循環に陥った。
後半25分にFW安藤に代えてFW永里を投入してからは、ある程度のレベルで、FW永里がボールをキープしてタメを作ることに成功したので、セットプレーを中心に、何度か攻撃できるようになったが、悪い時間帯は、全く攻撃の形を作れなかった。W杯の準決勝のドイツ戦や決勝のアメリカ戦も攻め込まれる時間帯はあったが、これだけ、悪い流れが続くことはなかった。なでしこジャパンにとっては、ここ最近では、もっとも出来のよくない試合となった。
一方、守備陣も、今一つだった。韓国の同点ゴールは、DF熊谷がバランスを崩して置き去りにされるというミスで生まれたが、ボールを失った後の対応も十分ではなく、警戒していたはずのFWチ・ソヨンにミドルシュートを決められた。シュート自体は見事なものだったので仕方がないが、この場面は、左サイドにもフリーの選手がいて、完全に崩されてしまった。
■ 交代カード後半は良くない流れで進んだので、交代選手で状況を打開したかったが、FW川澄は先発で使っており、中盤や前線を活性化できる駒はベンチに残っていなかった。
したがって、佐々木監督にとっては、難しい展開になった。最後の最後で、MF上尾野辺を投入したが、MF澤、MF宮間、MF阪口といった中盤の核になる選手は外すことはできないので、結局、2トップのどちらか or MF大野を下げるくらいしか選択肢は無いので、交代のバリエーションは多くない。後半の途中から、中盤の選手はアップアップの状態だったので、フレッシュな選手を一人入れてやると生き返る可能性もあったが、有効なカードはなかった。
■ 次はオーストラリア戦それでも、予選は勝ち点「3」を獲ることが最大にして唯一の目的となるので、韓国戦で勝ち点「3」を獲れたことは見事だった。こういう流れの試合は「終盤に追いつかれてドローに終わる。」ということが多く、非常に嫌な流れだったが、逃げ切ったことは評価できる。
次は、中一日でオーストラリア戦となる。オーストラリアは1勝1敗なので、日本は、勝てば勝ち点「9」となって、突破の可能性は大きくなる。北朝鮮戦、中国戦は「中2日」になるので、オーストラリア戦は大一番であり、踏ん張りどころである。
注目されるのは、佐々木監督の選手起用である。予選前から、「オーストラリア戦が大事である。」と語っていたので、韓国戦もメンバーを落としてくるかと思っていたが、意外にも「ベストメンバー」をそろえてきた。初戦のタイ戦で休んだ選手は問題ないと思われるが、2試合連続でスタメン出場したDF鮫島、DF熊谷、DF近賀、FW川澄の4人は、オーストラリア戦でスタメンで使うのは難しいと思われるので、ここをどうするかである。
特に、FW川澄は、運動量豊富に動き回って守備でも貢献しており、相当に負担がかかっている。オーストラリアがラストゲームであれば、起用してもいいかもしれないが、さらに、その先、2試合残っているので、無理はさせられない。タイ戦、韓国戦と、攻撃で「いい仕事」をしており、FW川澄がいないと厳しい気もするが、果たしてどうなるか?
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