■ ボール回しで過ぎた5分半女子のアジアカップのGLの3戦目の日本 vs オーストラリアは後半18分にMF阪口のゴールで日本が先制に成功するが後半41分にオーストラリアのFWカーがゴールを決めて1対1のの同点に追いついた。このまま1対1のスコアで試合が終了するとオーストラリアが首位通過を果たして、日本は2位通過で、韓国は3位。オーストラリアと日本がW杯の出場権を獲得して韓国は5位決定戦に回ることになる。
また、1位になると準決勝の相手はタイで、2位になると中国との対戦になる。組みやすい相手はタイになる。先のことを考えるとどちらも「出来れば首位通過を果たしたい。」というシチュエーションだったが、やはり、2位と3位ほどの大きな差はない。W杯の出場権を確保できるか、生きるか死ぬかの大一番に挑むことになる3位では天と地ほどの差がある。日本とオーストラリアも最後は現実的な戦いを選択した。
後半のアディショナルタイムの表示は「2」。同点ゴールが決まった後、試合再開のホイッスルが鳴って試合終了のホイッスルが鳴るまでは約5分半。当然、勝ち越しゴールや逆転ゴールを狙えるだけの時間は十分に残されていたがずっと日本がボールを保持したまま。オーストラリアもボールを取りにくいことはなかった。DF熊谷、DF市瀬、DF清水の3人でボールを動かして試合終了のホイッスルが鳴るのを待った。
■ 不十分だった3人の解説者の説明突破がかかったグループリーグの最終節や優勝・昇格・残留がかかった最終節ではありがちな試合の終わらせ方になったが当然の選択である。先のとおり、1位になるのか?2位になるのか?で準決勝の相手が変わってくるのでオーストラリアに勝てれば最高だったがリスクを冒して攻め込む必要性は全くない状況である。高倉監督からの指示だったと思うが、極めて妥当であり、極めて適切な判断だった。
同点ゴールを奪われた後もパニックにならずに冷静に指示を出した高倉監督の判断は高く評価できるが、やはりと言うべきか、同点ゴールを奪われた後の5分半の戦い方に関して批判の声も出ている。ただ、「W杯の出場権獲得」という最大のミッションを達成するための最も高い確率を選択したにも関わらず、「無気力試合」や「八百長」という言葉が用いられてしまうのは当然のことながら違和感はある。
日本 vs オーストラリアの大一番はテレ朝系列とBS1で生中継されていたが、一部でなでしこジャパンが「無気力試合」や「八百長」という不名誉なレッテルを張られている理由の1つはTV中継で解説を務めた人の説明不足にある。代表の試合になると解説者の発したコメントに多くの人が影響を受けるが、テレ朝系列の松木安太郎さんと大竹七未さんはもちろん、BS1の矢野喬子さんもこの点の解説として不十分だった。
■ 五輪の出場を逃したことで受けたダメージ中継を見返してみると松木さんは最後の戦い方に関して相当な不満を抱いている。むしろ、なでしこジャパンが取った選択の意図を十分に理解していないように思えた。「前にボールを運びたい。」、「相手の陣内で・・・。」というのはこの状況においては極めてナンセンスなコメントである。「次(準決勝以降)につながるために何かをしてほしい。」という気持ちはわかるが大事なのは出場権を確保することである。
大竹さんはある程度は理解を示していた。「確実に切符を取るための判断」とコメントしているが「攻めに行く姿勢を・・・」、「オーストラリアに勝つという姿勢を見たかった。」というのは同様にナンセンスである。「どちらのチームにとってもこのままのスコアでOK」というシチュエーションで「勝ち越しゴールや逆転ゴールを狙いに行く。」というのは常識外れである。もっと言うと、ちょっどあり得ない話である。
ただ、テレ朝の中継の実況を務めた吉野アナウンサーは冷静。意図や意味を視聴者に伝えようと懸命に試みた。この点は唯一の救いだったが松木さんと大竹さんの解説は不十分すぎた。一方、BS1の矢野さんは「次につながるために何かをしてほしかったという気持ちもある。」とコメントしているがこのまま行くと100%出場権を確保できる中、確率を下げてまで「次につながるための何か」を探しに行く状況ではない。
2016年の春に行われたリオ五輪のアジア予選で敗退したことでどれだけ女子サッカーがダメージを受けたのか?は女子サッカーを見続けてきた人であればあるほど理解している話である。どれだけW杯の出場権を獲得することが大事なのか?を理解していたら「無気力試合」や「八百長」という話にはならない。松木さんはともかくとして、大竹さんならびに矢野さんにはもっと的確なコメントを残してほしかった。
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