■ キリンチャレンジカップキリンチャレンジカップの3戦目。日本とブラジルが神戸のホームズスタジアムで対戦した。1戦目は日本とアメリカがユアテックスタジアムで対戦して1対1の引き分けで、2戦目はアメリカがブラジルに3対0で勝利した。日本がキリンチャレンジで優勝するには、ブラジルに3点差以上で勝つ必要がある。したがって「3点差」がノルマとなった。
日本代表は「4-2-2-2」。GK福元。DF近賀、熊谷、矢野、鮫島。MF田中、宇津木、大野、宮間。FW川澄、安藤。アメリカ戦でスタメンだったGK海堀、MF阪口、FW永里がスタメンから外れて、GK福元、MF宇津木、FW安藤が起用された。FW高瀬、FW菅澤らがベンチスタートで、MF澤とDF岩清水は怪我のため代表から外れている。
■ 後半にゴールラッシュ試合の序盤は、ブラジルが勢いよく攻めてきて、日本は押され気味となるが、前半16分に日本が左サイドでフリーキックを得ると、MF宮間が蹴ったボールをブラジルのディフェンダーがクリアできずにオウンゴールとなって、ラッキーな形で日本に先制ゴールが生まれる。先制ゴールを奪ったことで、日本の選手も落ち着いてきて、ボールを支配するようになるが、前半終了間際にボランチのMF田中が不用意な形でボールを奪われてゴール前のフリーキックを与えると、MFフランシエリに決められて同点に追いつかれる。前半は1対1で終了する。
後半開始からMF田中を下げて、ストライカーのFW菅澤を投入。MF宮間をボランチ、FW川澄をサイドハーフに下げると、ボランチのMF宮間のところからチャンスを作るようになる。勝ち越しゴールが決まったのは後半13分で、右サイドのコーナーキックを獲得すると、MF宮間のボールをニアで途中出場のFW永里が合わせて2対1とリードを奪う。さらに、後半16分にもFW永里の強烈なシュートを相手GKがはじいたところを、ゴール前に詰めていたMF宮間が押し込んで3対1とリードを広げる。キャプテンのMF宮間は3ゴールに絡む活躍となった。
2点差のままでは優勝できない日本だが、DF長船、MF上辻と新戦力を投入し、結果とテストの両立を図る。実を結んだのは後半44分で、右サイドのMF上辻が股抜きで相手をかわしてDF近賀にスルーパスを出すと、DF近賀がアーリークロスを送って、ニアに入り込んだFW菅澤が決めて4点目を挙げる。FW菅澤は代表では2ゴール目となった。結局、4対1で日本が勝利し、見事にキリンチャレンジの優勝カップを獲得した。
■ チーム全体がレベルアップするなでしこジャパン2006年から5年連続でFIFAの最優秀選手に選ばれていて、「世界最高の女子プレーヤー」と言われるFWマルタが不在でブラジルもベストメンバーではなかったが、日本がブラジルを相手に4対1というスコアで快勝した。ブラジルはアメリカ戦から中1日での試合となったので、体力的には日本が有利なところもあったが、ブラジルのお株を奪うパスサッカーを見せて、結果も、内容も満足できる試合となった。
W杯で優勝するまでは、アメリカであったり、ドイツであったり、スウェーデンであったり、大きな国と対戦すると、萎縮してしまうところもあったが、今では、どの国が相手でも、気後れすることもなく、普通の精神状態で戦うことができる。これは、W杯を制したことで生まれた大きなプラスの部分で、世界の頂点に立つというのは、何事にも優る大きな経験であることを、改めて感じる試合となった。
ブラジルというテクニックで相手を翻弄するようなサッカーをしてくるチームだが、この試合は、日本の選手の方がテクニックの面では優れていて、フィジカル勝負でも負けていなかった。男子サッカーでは、過去に、何度かブラジル代表と対戦しているが、全く歯が立たない試合も多くて、自力の差を感じる試合がほとんどだが、女子の場合は「同格になった。」といってもおかしくないくらいで、日本は急速に力を付けてきている。
■ 非情な交代「3点差以上」というノルマを課していたことも関係したのか、佐々木監督は前半から積極的な交代を見せて、チームに刺激を与えた。前半38分でフォワードのFW安藤に代えてFW永里を投入し、後半開始からボランチMF田中に代えてストライカーのFW菅澤を投入してきたが、FW安藤も、MF田中もミスが目立って、消極的になっていたが、このタイミングで代えるとは思わなかったので、驚きの采配だった。
おそらく怪我が原因ではないと思うので「非情な采配」といえるが、チームをうまくマネージメント出来ているからこそできる采配であり、競争意識を煽るには、恰好の選手交代だった。女子選手の場合、男子選手と比べると、精神的なダメージを受けやすいので、厳しい交代をするのは勇気が必要だと思うが、決断した佐々木監督は見事だった。
FW安藤に関しては、ボールのおさまり具合は悪くはなかったと思うが、ゴールに向かう積極性が不足していたように感じる。ブラジルのダブルボランチの守備がまずくて、バイタルエリアがスカスカだったので、それほど、バイタルエリアに侵入することに苦労しなかったので、ゴール前のプレーに専念しても良かったと思うが、FW安藤のポジションは下がり目で、その点が気に入らなかったのでは?と想像する。
MF田中に関しては、前のアメリカ戦からビルドアップのときに、前に運ぶ意識が低くて、後ろ向きでボールを受けて捌こうとするシーンが目立ったが、その点をブラジルの選手に狙われてしまった。失点につながるミスをした直後のハーフタイムで交代となったので、本人はショックを受けていると思うが、ユーティリティーな選手として、18人枠に入ってくる可能性の高い選手なので、立ち直ってほしいところである。
■ 猛アピールのMF宇津木ミスが目立ったMF田中とは対照的に、ボランチで起用されたMF宇津木は、攻守ともに申し分ない働きを見せた。168センチと大柄な選手で、スケールの大きなプレーが魅力だが、この試合では、散らしのパスと中盤での潰しの局面で力を発揮し、日本の中ではベストプレーヤーの一人だったと言える。今のところ、MF澤とMF阪口がボランチのレギュラーで、MF田中が3番手のボランチになっているが、MF宇津木がここまでのプレーを見せると、MF田中との序列も変わってくるかもしれない。
また、途中出場のFW永里も力を発揮した。昨年9月の五輪予選から、代表戦では質の高いプレーを続けているが、前線でのキープ力は、なでしこジャパンにとって、不可欠なものになっている。勝ち越しゴールのシーンは、鋭い動き出しを見せて相手を置き去りにして点で合わせたゴールで、点取り屋の才能を感じさせるゴールとなった。
そのゴールをお膳立てしたMF宮間は1ゴール1アシストに加えて、先制点となるオウンゴールも誘発しているので、3ゴールに絡む活躍だった。キックの精度の高さに関しては、今さら言うまでもないが、キャプテンマークを巻くようになったことも関係しているのか、試合全体を彼女がコントロールしているような感じになってきて、W杯の頃と比べても存在感が増してきている。
ノルマとなる3点差をつけるゴールを決めたのが、途中出場のFW菅澤で、チームにとっても、本人にとっても、大きなゴールとなった。チーム内では、本大会の18人に選ばれるためのサバイバルが続いているが、フォワードのポジションでは、FW永里とFW川澄が当確で、FW安藤も有力候補といえる。ただ、FW安藤がこの試合の前半途中で下げられたので付け入る隙が出てきて、FW高瀬とFW菅澤にもチャンスが出てきた。
W杯のときは、FW岩淵がジョーカー的な役割を担ったが、FW岩淵は怪我もあって代表から外れていて、ここぞというときに点の獲れる選手を必要としている。FW高瀬は、サイドハーフでも、ボランチでもプレーできるので、ユーティリティー性がアピールポイントになるが、ゴール前の存在感は、FW菅澤が上回っている。4点目をチーム全体で獲りに行ったところでしっかりと決める事が出来たことは、佐々木監督に強い印象を残しただろう。
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