■ 大阪ダービー10勝5敗7分けで5位のガンバ大阪と、11勝4敗7分けで2位のセレッソ大阪が対戦した「大阪ダービー」。吹田市がホームのガンバ大阪と、大阪市がホームのセレッソ大阪の対戦である。長居スタジアムで行われた2節のダービーは、1対1のドロー。後半20分にG大阪のMF明神がミドルシュートを決めて先制したが、後半26分にC大阪のFWアドリアーノがドリブルから左足で同点ゴールをマーク。痛み分けに終わった。
ザッケローニ監督も視察に訪れた注目の試合。ホームのG大阪は<4-2-2-2>。GK藤ヶ谷。DF加地、高木、中澤、安田。MF武井、遠藤、二川、橋本。FWルーカス、宇佐美。FW平井、FWドド、FWイ・グノらがベンチスタート。MF明神は欠場。MF遠藤がスタメン復帰。FWドドは22節のアルビレックス新潟戦で後半終了間際に決勝ゴールをマークしている。
対するアウェーのC大阪は<4-2-3-1>。GK松井。DF高橋、茂庭、上本、丸橋。MFアマラウ、マルチネス、乾、家長、清武。FWアドリアーノ。今節からのスタメン復帰の噂もあったGKキム・ジンヒョンはベンチ外。FW播戸、FW小松らがベンチスタート。MF清武は2試合連続ゴール中。
■ 打ち合いの末試合は開始早々にG大阪が先制する。左サイドからドリブルで仕掛けたDF安田のグラウンダーのクロスをFWルーカスが中央でキープし、FW宇佐美にラストパス。FW宇佐美が落ち着いて右足で決めて先制する。FW宇佐美はリーグ戦5ゴール目。さらに前半12分にも左サイドでセットプレーを獲得。MF遠藤のキックをDF中澤が決めて2点リードとする。DF中澤は今シーズン初ゴールとなった。2点リードを奪われたC大阪は前半ロスタイムにFWアドリアーノがラフプレーで一発退場。10人で2点ビハインドという苦しい展開で前半を終える。
しかし、後半になるとC大阪が猛反撃を見せる。後半7分にMF乾が右足でミドルシュートを突き刺して1点を返すと、後半10分にもMFマルチネスのミドルシュートのこぼれ球に反応してゴール前に走りこんでいたMFアマラウが押し込んで2対2の同点に追いつく。MF乾は今シーズン4ゴール目、MFアマラウは今シーズン3ゴール目。
追いつかれたG大阪であったが、途中出場のFW平井らがゴール前でチャンスを作ってC大阪のディフェンスにプレッシャーをかけると、後半23分に右サイドに流れたMF遠藤のパスから中央に位置したFWルーカスがつないで、最後はDF安田が右足でシュート。これが見事に決まって3対2と再びリードを奪う。
C大阪はFW小松、DF石神を投入し、同点・逆転を狙うが、G大阪もうまくボールをキープしてC大阪に反撃のチャンスを与えない。結局、そのまま3対2でG大阪が勝利して勝ち点「40」でC大阪に並んだ。C大阪は3位に転落。G大阪は4位に浮上。ACL出場権を巡る争いは、勝ち点「40」でC大阪、G大阪、清水が並ぶ大混戦になってきた。
■ 気持ちが入っていたガンバ勝てば勝ち点でC大阪に並ぶことのできる大切な試合で、G大阪が底力を見せて勝利を飾った。前半ロスタイムにFWアドリアーノのレッドカードが大きかったのは事実だが、立ち上がりからG大阪の出来が良くて、早々に2点リードを奪ったのが大きかった。後半に少し守備が緩くなる時間帯もあったが、中盤から前の選手も守備面で奮闘した。
怪我の影響で日本代表の試合も欠場したMF遠藤が戻ってきたのも大きかった。アシストが記録されたのは2点目のDF中澤のゴールシーンのみであったが、1点目と3点目のゴールの起点にもなって、3ゴールすべてに絡む活躍だったた。この試合はザッケローニ監督も視察に訪れていたが、果たしてザッケローニ監督の目にどう映っただろうか?まだ30歳であり老け込む年でもないが、この当たりの年齢から急激に衰えていく選手も少なくはない。MF遠藤のプレースタイルを考えると、ここからさらに円熟味を増していきそうな気もするが、どうだろうか。
■ 決勝ゴールの安田理大試合前は、ガンバからセレッソにレンタル中のMF家長に注目が集まっていたが、結局、試合を決めたのはDF安田のミドルシュートだった。ガンバユースではMF家長やMF本田らの1学年下にあたるDF安田がダービーのヒーローとなった。
DF安田は2007年のシーズン前のゼロックス・スーパーカップでの鮮烈なプレーを見せてレギュラーに定着。北京五輪代表チームや日本代表にも選ばれていて、他のユース出身組がトップチームで苦戦する中では、順風満帆なプロ生活を送っていたが、ここ1年ほどは精彩を欠くプレーが多く、スタメンから外れる試合が増えていたが、この日のDF安田のプレーは十分に日本代表レベルといえるプレーだった。
最初のプレーがFW宇佐美の先制ゴールにつながったのが大きかったのか、この日は対面したDF高橋を圧倒した。DF安田のサイド攻撃には、試合中にクルピ監督も警戒するように注意を促していたが、正確なシュートがゴールにつながった。2007年のナビスコカップ決勝や日本代表の試合やACLの舞台でいくつかの印象的なゴールを決めているため、これがリーグ戦初ゴールというのは意外であるが、DF安田の復調のきっかけになりそうなゲームとなった。
日本代表の左サイドバックにはチェゼーナのDF長友がいるが、攻撃力だけを考えるとDF安田のほうが優れている部分も多い。性格的にも明るくて、こういう選手が代表に絡んでくると面白くなるが・・・。
■ 2点差を追いつくも・・・一方のC大阪は2点差を追いつくもDF安田のゴールで突き放された。10人になりながらもMF乾とMFアマラウのゴールで追いついたのは見事だったが、やはり、得点源のFWアドリアーノがいなくなったのは大きかった。追いついたのは後半10分。欲を言うと少し追いつく時間が早すぎた。追いついた時点で35分が残っていたので、G大阪に突き放すだけの時間的な余裕があって、じっくりとボールを回されてシュートチャンスを作られた。
期待されたMF家長は惜しいシュートシーンもあったが、全体的には今一つの出来。仕方がないとはいえ、ブーイングの中での試合で、いつもの落ち着いたプレーは見せられなかった。ここ最近、ちょっとキレがなくなってきているのが気になるが、大事な試合が続くだけにコンディションを取り戻してほしいところ。MF清武が良くなってきているので、MF家長が少し前の状態を取り戻すと、攻撃面での不安は少なくなるが・・・。
■ セレッソ対策この試合は結局、シュート数は15本で同じ。ボール支配率はC大阪が58%で上回った。後半はC大阪が10人だったことを考えると、支配率でC大阪が上回ったことは意外であるが、持たされた感もあって、うまくG大阪に守られた。
C大阪の攻撃は前線に高さのある選手はおらず、サイド攻撃もあるが、前線に個人技のある選手が多くて、ハーフカウンターの形になったときに一番、力を発揮するチームである。MFマルチネスというJリーグでの屈指のプレイメーカーがいるので、遅攻になっても息詰まるシーンは少ないとはいえ、時間がかかればかかるほど、得点の可能性は低くなる。C大阪の場合、「支配率が高くなりすぎる」のは、あまりいい傾向とは言えない。
■ 丸橋の成長敗れたものの3位とACL圏内のC大阪であるが、その要因はいくつかあるが、「19歳の丸橋のスタメン定着」も非常に大きい。今シーズン、左サイドバックは開幕から悩みの種であり、レギュラー候補のDF尾亦も、DF石神も一長一短であり、決め手に欠ける印象であったが、リーグ再開後、DF丸橋が定着してラストピースが埋まったようにピタリとチームに適合した。
もともとサイドアタッカータイプであり、サイドハーフが本職といえるが、左サイドバックで起用されて実に落ち着いたプレーを見せている。もちろん、左足のクロスも絶品であるが、ゲームメイカー的な素質も備えており、左サイドからの組み立てに多大な貢献を見せている。サイドバックでゲームメーカー的な資質のある選手というと、日本では名古屋グランパスのDF阿部翔平が浮かんでくるが、彼に近いレベルにある。
当然、プレイスキッカーとしても優秀。FW古橋がいなくなってから、C大阪はずっとプレイスキッカーで苦労していて、J2のリーグ戦の中でもセットプレーを有効に活用できていなかったが、DF丸橋がキッカーを任されるようになって、セットプレーのレベルは格段に向上している。
■ 問題のシーン両チームともに優勝を目指せる位置でのダービー。11人対11人の状況で試合を見たかったところであるが、C大阪はFWアドリアーノが退場になったことで、後半の45分は10人でのプレーになってしまった。
問題のシーンは前半のロスタイム。左コーナーを獲得したC大阪のDF丸橋がコーナーキックを蹴ったときに家本レフェリーの笛が鳴ってPKかと思われたが、DF高木にイエローカードが提示されただけでPKではなくてCKのやり直しのみ。この流れでDF中澤に報復行為を働いたFWアドリアーノがレッドカードとなった。
リプレーを見る限りは、先に手を出したのはDF中澤の方だったが、こういう場合、報復行為が絶対に許されないので、FWアドリアーノのレッドカードは妥当であるが、先に手を出したDF中澤が「お咎めなし」というのはC大阪側からすると納得できないものであり、DF中澤の倒れ方もかなり大げさだったといえる。FWアドリアーノが興奮していたことを利用したDF中澤の行為は「したたか」ではあったが、せっかくのダービーに水を差すものであり、FWアドリアーノの報復行為を含めて残念な二人のシーンだった。
■ 残念なスカパー中継もう一つ、残念だったのはスカパーの中継のクオリティ。せっかくのダービーで、試合の1時間前からの現地中継だった割には、スタジアムの盛り上がりを伝えきれなかったような印象が残る。
横浜Fマリノスでも活躍しアトランタ五輪代表チームでもプレーし、G大阪のMF遠藤保仁の実兄でもあるMF遠藤彰弘氏を解説に持ってきたのは面白かったが、もう一人の長谷川治久氏がイマ一つであり、G大阪のOBではないが遠藤彰弘氏がガンバ大阪側の視点から的確な解説が出来ていたのに対して、長谷川氏はその立ち位置が曖昧で、セレッソ大阪側の魅力を伝えきれなかった。
とかく批判されがちな「民放のサッカー中継」と比べるとスカパーの中継のレベルは相対的に高いのは間違いないが、地域によって、アナウンサーによって、解説者によって、スカパー内でもレベルの差は見られる。中継のクオリティアップも、「日本サッカーが世界で勝つため」に求めたいことである。
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