■ 決勝の相手は北朝鮮タイで行われた女子のU-16アジア選手権の決勝戦は日本と北朝鮮の対戦となった。同大会は今回で8回目となるが日本と北朝鮮はともに3度アジアの頂点に立っている。女子のU-16世代は日本と北朝鮮の2チームの実績がアジアの中では抜けているが北朝鮮は何と7大会連続の決勝進出になる。U-17W杯の本大会でも2度も世界一に輝いているのでこの年代に限定すると「日本よりも実績的には少し上」と言える。
北朝鮮は伝統的にフィジカルの強い選手が多い。女子の日本人選手が苦手とするタイプのチームなので苦戦が予想されたが前半9分にPKで先制ゴールを奪われる。リードを許す展開になったが前半19分に素晴らしいコンビネーションから抜け出したボランチのMF天野紗(INAC神戸レオンチーナ)が決めて1対1の同点に追いついた。MF浜野(C大阪堺ガールズ)とMF猪瀨(マイナビ仙台Lユース)の動きも非常に良かった。
早い段階で1対1の同点に追いついた日本は前半23分にFKのクリアボールが正面で待っていたCBのDF林愛花(JFAアカデミー福島)の目の前にこぼれてくるとDF林愛花が得意の右足で強烈なミドルシュートを決めて2対1と逆転に成功する。後半は北朝鮮に攻め込まれる展開になったがキャプテンのGK野田(日テレ・メニーナ)を中心に守り切った日本が2対1で勝利。史上最多となる4度目のアジア制覇を達成した。
■ 各ポジションにタレントを揃える。約1年前に行われた男子のU-16アジア選手権も日本が制覇しているので男女アベック優勝になったが日本は5試合で4勝1分け。GLの初戦はオーストラリアと対戦してスコアレスドローに終わったが5試合で21得点/1失点。多彩な攻撃を見せてアジアのライバルを粉砕した。北朝鮮は5試合で4勝1敗。5試合で21得点/2失点だったので5試合合計の得点数と失点数はほとんど日本と北朝鮮は変わらなかった。
GLの初戦で日本が引き分けたオーストラリアを北朝鮮は準決勝で3対0で下している。なので「力的には北朝鮮の方が上」と見られていた。そのことを考えると余計に素晴らしい逆転勝利&アジア制覇になった。早い段階でPKを取られて失点を喫したが前半18分に同点に追いつくことが出来たのが大きかった。日本らしいコンビネーションから最後はボランチのMF天野紗がキーパーと1対1の決定機を迎えた。
U-16日本代表はアジア女王として来年のU-17W杯の本大会に出場することになったがこのチームはタレントが多い。2018年のU-17W杯の本大会に飛び級で出場して主力として活躍したボランチのMF木下は2003年の早生まれなので有資格者になるが怪我の影響もあって不参加。世代の顔的な存在を欠いたものの大きな影響を感じさせないほど各ポジションにタレントを揃えるハイレベルなチームだった。
→ 2017/09/20 【女子サッカー】 中学3年生のMF木下桃香(日テレ・メニーナ)という選手が相当に凄いらしい。■ MVPに選ばれたのはFW西尾だったが・・・。大会のMVPには3ゴールを挙げたFW西尾(浦和Lユース)が選出されたが試合後に本人がコメントしているとおりで驚きの選考だった。「勝った方がU-17W杯の本大会の出場権を獲得できる。」という大一番だった準決勝の中国戦での先制ゴールは最も価値のあるゴールと言えるが攻撃陣を引っ張ったのは5ゴールを挙げて大会の得点王に輝いたFW浜野(C大阪堺ガールズ)だった。多彩な能力を持ったアタッカーである。
MF木下の不在の影響を感じさせなかったボランチ陣は日本のストロングポイントになった。MF大山愛(日テレ・メニーナ)は運動量が豊富で攻撃においても守備においても常にプレーに関わることが出来る。準決勝の中国戦では2アシストの活躍だった。決勝の北朝鮮戦で殊勲の同点ゴールを決めたMF天野紗(INAC神戸レオンチーナ)はどちらかというと守備的なボランチになるが気の利いたプレーが出来る選手である。
2016年のU-23アジア選手権のときはMF中島翔、2016年のU-19アジア選手権のときはMF堂安、2018年のU-16アジア選手権のときはFW西川潤(桐光学園高)が大会のMVPに選出されていることからも分かる通り、AFCはシンプルに「優勝したチームの10番」を大会のMVPに選出することが多いが今大会に関しては10番のFW西尾よりもFW浜野やMF大山愛やMF天野紗の方が大会のMVPにふさわしいプレーを見せた。
■ 男子顔負けの強烈なミドルシュート他には安定したプレーを続けたキーパーのGK野田(日テレ・メニーナ)もMVPに選ばれても不思議はないプレーを見せたが今回の23名の中で最も将来性が高いのはCBのDF石川璃(JFAアカデミー福島)だろう。怪我の影響で決勝の北朝鮮戦はプレーすることはできなかったが172センチの長身。身体的な能力も高くてパスの精度も高い。決勝戦には出場できなかったがDF石川璃が大会のMVPでも良かったと思う。
「意図してサイズがあってスピードのある選手を優先して選考している。」という話も伝わってくるがスケールの大きな選手が多いのが今回の女子のU-16日本代表だった。U-17W杯の本大会での活躍も期待されるが決勝の北朝鮮戦の2点目のDF林愛花(JFAアカデミー福島)のミドルシュートはスーパーだった。日本人の女子の選手でこれほど強烈なミドルシュートを打てる選手は過去にいなかったのでは?と思う。
9対0で大勝したGLの2戦目のバングラデシュ戦でも前半2分に強烈なミドルシュートを決めている。彼女のゴールが日本にとっては大会初ゴールとなったがラストのゴールもDF林愛花のミドルシュートになった。バングラデシュ戦では(CBではなくて)右SBで起用されたがゴールシーン以外にもたくさんミドルシュートを放っている。5本くらいはミドルシュートを放っていると思うがほとんどが強烈なシュートだった。
後方からこれだけ精度が高くて威力のあるミドルシュートを蹴れる選手は日本人の女子選手ではほぼいなかった。オランダ代表やバルセロナで活躍した名CBのDFクーマンを連想させる。DFクーマンは「ワールドクラスのリベロ」として長きに渡って活躍したがDF林愛花はどのポジションで類まれなシュート力を生かすことになるのだろうか?163センチという身長を考えると「ボランチがベスト」と言えるのかもしれない。
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