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2015年8月13日 (木)

資本主義の社会的費用

Paul Craig Roberts
2015年8月11日

事業の全費用を負担している企業は、たとえあったにせよ、ごくわずかだ。企業は費用の多くを、環境や、公共部門や、遥か遠くの第三者に押しつけている。例えば、現在、コロラド州の鉱山から、約1100万リットルの毒性廃水が流出し、二つの川を下り、ユタ州やパウエル湖に向かって流れている。これらの川に頼っている、少なくとも7都市の水道システムが停止している。廃棄物は、民間企業が放置したもので、廃棄物は、環境保護庁が誤って流したというが、これは本当かも知れないし、鉱山をかばっているのかも知れない。もしパウエル湖貯水池が汚染されてしまえば、第三者が負担する鉱山の費用は、鉱山操業時の総生産金額を越える可能性が高い。

経済学者は、こうした費用を“外部費用”あるいは“社会費用”と呼んでいる。鉱山は、汚染物質を生み出すことで、利益を得たが、汚染物質の費用は、利益の分け前を得ていない人々が負担する。

規制されている資本主義でさえ、こういう風に機能しているのだから、野放し状態の資本主義がいかに酷いものか想像できよう。その結果、我々がいまだに苦悩しており、更に問題が起きるだろう、規制されない金融制度のことを考えるだけで良い。

全く逆の膨大な証拠があるのに、政府の干渉から解放されれば、最高の製品を、最安の価格で生産して、消費者に貢献するのだという資本主義に対する連中の夢想的な概念に、リバタリアン連中は、しがみついている。

そうであればよいのだが。

進歩主義者も、リバタリアン連中のロマン主義に対応する彼等なりのものを奉じている。進歩主義者は、政府を資本家連中の強欲から国民を守る白い騎士だと見なしているのだ。

そうであればよいのだが。

誰もが、そして何より確実に、リバタリアン連中や進歩主義者達は、ジェフリー・セントクレアの著書、Born Under A Bad Sky (2008)を読むべきだ。セントクレアは、魅力的な作家で、彼の本は、多くのレベルで有益だ。もし、アメリカ西部の川でボート体験をしたり、危険な急流に挑戦したり、蚊やガラガラヘビの中でキャンプをしたりという経験がなければ、セントクレアの本で、まるで体験しているかのごとく、こうした人生の側面を体験でき、同時に、国立公園局、農務省森林局や土地管理局における腐敗によって、製材企業、採鉱企業や牛の牧場主達が、国有林や国有地を略奪することで金儲けをする結果になっているのかも学ぶことができる。

採鉱業者、製材業者や牧場経営者に与えられる公的助成金は実に法外で、公共の利益 連邦準備金制度理事会や財務省が“大き過ぎて潰せない銀行”に与える助成同様有害だ。

進歩主義者もリバタリアンも、原生林伐採や、絶滅危惧種や希少種の生息地破壊をする製材会社に助成する為、農務省森林局が、一体どの様に、前人未踏の森林に道を建設しているかに関する、セントクレアの説明を読む必要がある。公共から、民間の手へと、富を移転する為に、一体どのようにして、より価値がある国有地と、価値の低い土地が交換されているのかを、我がロマン主義者達は、学ぶ必要がある。牧場経営者達に、国有地の利用を認めていることが、生息地破壊や、川岸や、水生生物の破壊をもたらしていることを、彼等は学ぶ必要がある。連邦の監督官庁のトップそのものが、国民の為にではなく、私企業の為に働く、製材、鉱業や、牧場経営者の工作員であることを理解する必要がある。上院議員や下院議員連中は、軍安保複合体、ウオール街や、イスラエル・ロビーによって買収されているのと同時に、連中は、鉱業、製材や、牧場の権益にも買収されていることを、あらゆる信念のアメリカ国民が理解する必要がある。

この構図中に、公共の利益は皆無だ。

二大貯水池、ミード湖とパウエル湖は、満水時の39%と、52%だ。アメリカ合州国西部が依存している巨大な湖は、干上がりつつある。パウエル湖は、今や、砒素、鉛、銅、アルミニウムとカドミウムを含んだ、約1100万リットルの廃水流入に直面している。汚染された川の氾濫原にある井戸も危機にさらされている。

川をオレンジ色に変えた汚染物質は、コロラド州、アニマス川から、シルバートン デュランゴを通って、ニュー・メキシコ州、ファーミントンのサン・フアン川へと流れ、更にパウエル湖とミード湖へ流入するコロラド川へと流れ下る。

この全ての被害が、たった一社の資本主義鉱山によるものだ。

昨年11月、クリス・スチュワート下院議員(共和党 ユタ州)が、彼の法案を下院で成立させた。スチュワートは、資本主義の為に、いやな仕事をこなす人物だ。彼の法案は“資格要件を満たす、自立した科学者達が、環境保護庁(EPA)に助言するのを防ぐべく作られている。有資格の学者達は、該当する科学的専門知識を持っているか、いないかわからないが、彼らの雇い主が聞きたがっていることを、EPAに語ることで給与上の恩恵を受ける業界関係者に置き換えられるのだ。” http://www.iflscience.com/environment/epa-barred-getting-advice-scientists

スチュワート下院議員は、これは科学的事実と業界利益の釣り合いの問題だと語っている。

おわかりいただけただろう。

Paul Craig  Robertsは元経済政策担当の財務次官補で、ウオール・ストリート・ジャーナルの元共同編集者。ビジネス・ウィーク、スクリップス・ハワード・ニューズ・サービスと、クリエーターズ・シンジケートの元コラムニスト。彼は多数の大学で教えた。彼のインターネット・コラムは世界中の支持者が読んでいる。彼の新刊、The Failure of Laissez Faire Capitalism and Economic Dissolution of the WestHOW AMERICA WAS LOSTThe Neoconservative Threat to World Orderが購入可能。

ご寄付はここで。https://www.paulcraigroberts.org/pages/donate/

記事原文のurl:http://www.paulcraigroberts.org/2015/08/11/social-cost-capitalism-paul-craig-roberts/

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本の山から『原発はやっぱり割に合わない 国民から見た本当のコスト』大島堅一著を発見。104ページに、「原発の社会的コスト」がという見出しがある。

日本航空123便墜落事故から30年。
辺野古移転問題協議の当日、沖縄で、米軍ヘリ墜落。
沖縄国際大学米軍ヘリコプター墜落事件は、2004年8月13日
しかも今回は、陸自中央即応集団エリート隊員が搭乗していたという驚き。

IWJ 8/12夕方5時からの岩上安身氏による日本共産党小池晃副委員長インタビューは圧巻。大本営広報部の洗脳番組と雲泥の差。戦争法案成立に先立って、自衛隊内で、今後の方向性を研究しているという、とんでもない状況むき出し。

今日にも早速、昨日の小池議員インタビューの模様を、19時から再配信します! 見逃した方はぜひ、この再配信をご覧下さい!配信はCh1です!

【Ch1はこちら】
http://iwj.co.jp/channels/main/channel.php?CN=1

 再配信も見逃してしまった、もう一度見返したい、という方は、IWJの一般会員であれば1カ月、サポート会員であれば無限に、いつでも動画アーカイブをご覧になることができます。また最近は、動画を全て観切る時間がないという人のために、動画とともにインタビューのテキスト要旨も、記事に掲載しています。こちらも会員の方であれば、全編ご覧になれます。

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Paul Craig Roberts氏、社会的費用については、類似題名や同名記事でも触れておられる。趣旨は必然的に似ているが、内容は当然違っている。

今回のコロラド州汚染水流出、「足尾鉱毒事件」そっくり。ただし、あちらの鉱山は、Gold Kingという金鉱山。今はゴーストタウン。谷中村の人々や田中正造のような人物が活動されたかどうか全く知らない。

田中正造といえば、最近、文学座により『明治の柩』がアウルスポットで上演されたが、今度は劇団東演による『明治の柩』が、紀伊國屋ホールで上演される。11/27-12/4 切符前売り開始は9/24。

コスト高をきらった営利企業の怠慢によって、事業所周辺の環境が汚染され、田畑には毒物が浸みこんで荒廃し、広大な村落は廃村と化し、一世紀たっても森林は再生せず、禿山だけが異様に目立つ.....。これは、たんなる寓話でもないし、さりとて東フクシマ・東電事故の周辺地域の未来図でもない。いまから一世紀以上も昔、足尾・古河銅山の鉱毒によって周辺の村が廃村となったあとの、現在の風景である。68ページ

にもかかわらず監督官庁は、古河という一企業の利潤の消滅を、国家の富源の喪失にすり替え、古河の経営の継続を「公利」と言い募ったのである。96ページ

上記は新刊、筑摩選書民を殺す国・日本 足尾鉱毒事件からフクシマへからの引用。

2013年6月3日の資本主義の社会的費用の記事翻訳にも、末尾に余計なことを書いた。一部貼り付けさせていただく。

「社会的費用」という言葉、名著『自動車の社会的費用』宇沢弘文著、岩波新書を思い出す。これだけは手元にある。『環境破壊と社会的費用』(K.W.カップ著)という本を昔読んだ記憶がある。あるいは宮本憲一『環境経済学』。
年代から想像すると、著者が触れているのは、同じK.W.カップでも『私的企業と社会的費用―現代資本主義における公害の問題』あたりだろう。

  • 足尾鉱毒の社会的費用、古河銅山の利益を越えていただろうか?
  • イタイイタイ病の社会的費用、カドミウム生産の利益を越えていただろうか?
  • 水俣病社会的費用、チッソの利益を越えていただろうか?
  • アスベストの社会的費用、メーカーの利益を越えていただろうか?
  • 原発の社会的費用、原発、燃料製造元、電力会社や政治家の利益を越えること余りに明白。
  • 兵器の社会的費用、当然、軍需産業の利益を越えるだろう。

そういう膨大な社会的費用をものともしない多国籍企業に国家支配をまかせるのがTPP体制だ。膨大な社会的費用を合法化するとんでもない怪物。

中略

IWJ

2013/04/16 「事故コスト、事実上は国民負担」―原発ゼロノミクスキャンペーン・シンポジウム 原発ゼロノミクス~脱原発のコストと経済性~

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