ロシアの石炭と、中国での可能性
2021年10月14日
ピョートル・コノワロフ
New Eastern Outlook
中国は世界最大の石炭消費者だ。地球上で燃える全石炭の約50%が中国で燃えている。中国は世界の主要石炭生産国でもあるが、主要輸入国でもなければならないのだ。
一方、中国は環境問題を懸念している。中国の産業は、自国のみならず、第一に、安い労働力のために、第二に、環境保護のために、生産能力を中国に移した全ての国々の必要を満たす必要があるのだ。結果的に、それらの国々は、比較的クリーンな水と空気を得意げに話せるが、中国の一部地域に排出炭化水素物質が集中的に蓄積し、公衆衛生に対する実際の脅威になっている。
数年前、中国は国内石炭生産を劇的に減らし、石炭から天然ガスへの大規模移行を実行し、廃棄予定の石炭発電所の代わりに大量の原子力発電所建設を目指すエネルギー部門の本格的改革を始めた。
2017年、北京と近くの河北省の全ての石炭発電所とボイラー施設は閉鎖された。何万もの施設が閉鎖された。だが、これは中国の発電システムのごく小さな部分に過ぎない。
一部地域で、2017年-2018年の冬が極めて寒いことが分かり、火力発電所の負担を増し、中国の石炭消費に拍車をかけた。2018年の大半、中国が輸入する一般炭は増加した。おそらくこれは中国自身の石炭生産高減少のせいだ。結果的に、2018年末、中国は生産に関し依然先頭走者で、2017年(2億7900万から2億8100万トンに上昇)と比較して約0.7%、あらゆる種類の石炭輸入を増やした。世界で生産される全石炭の約半分が中国用だった。
2019年、中国は石炭輸入を減らす必要性に関する公式主張にもかかわらず、2018年と比較して4%国内生産を増やしながら、ほぼ3億トン、この化石燃料を買った。
2020年、COVID-19世界的大流行のため世界全体で生産が減少した。一部工業国の石炭消費量も同様に低下した。それにもかかわらず、2020年、中国は前年より1.2%多い石炭生産に成功し、2018年と比較して、ほぼ9%多い(1300万トン)3億400万トンを輸入した。中国は経済をコロナウイルス危機から抜け出させるため燃料供給を必要としているかのように見える。
いずれにせよ、石炭生産と使用を減らす中国の計画は、大きな結果をもたらすようには思われない。中国の巨大な経済は、あまりに多く、この化石燃料に依存し、北京が石炭消費量を削減するには長い時間を要するだろう。一方、中国自身の石炭生産と輸入は着実に伸びている。
これは、2019年早々、石炭輸出に関し、モスクワがオーストラリアとモンゴルに続いて第三位にランクし、長い間中国に石炭を供給していたロシアにとって有望な見込みをもたらす。現代の国際的な気候がロシア石炭産業が中国市場への供給を増加する機会を広げている。
オーストラリアは、何年間も中国への石炭の主要輸出国だった。だが、2018年、二大国間の断絶が出現し始めた。アングロサクソン世界の一部であるオーストラリアは、南太平洋で中国が影響力を拡大することを懸念し、北京との貿易戦争でワシントン側につくと決めた。それで、世界中に装置を売り、アメリカを本拠とするアップルのような競争相手を脇に追いやっている中国の巨大ハイテク通信器機企業ファーウェイとZTEと、アメリカが引き起こした対立に参加しこ。中国の諜報機関のために、中国企業がユーザーデータを盗むという口実の下、アメリカで彼らは禁止された。オーストラリアも、その領土でのファーウェイとZTE装置の使用を禁止した。さらに、2018年末、オーストラリアとアメリカは、中国が基地を配置するつもりだった、パプアニューギニアの前オーストラリア・ロンブルム海軍基地の共同近代化計画を発表した。オーストラリアとアメリカの海軍がこの基地に配備されるかもしれない。これも南太平洋における中国の権益に相反する。
結果として、2019年2月、中国は通関時間を増やしてオーストラリア石炭輸入を制限した。オーストラリア石炭を何万トンも積んだ多数の船が、中国の港町で動けなくなり、船と商品の所有者に途方もなく大きい損失を与えている。同時期に、インドネシア、モンゴルやロシアのような中国への石炭供給元は決してこのような困難に直面していない。2019年、どうやら中国-オーストラリア摩擦のおかげで中国へのロシア輸出が19%増加した。それでも、長い通関時間と北京が課した割当量という増阻害要因にもかかわらず、2019年、オーストラリアは100億ドル以上の石炭を中国に売った。
この戦略上重要なオーストラリア製品の輸入を中国が減らすだろうと真面目に信じることができたのはごく僅かの人々だ。まず第一に、オーストラリア石炭は品質が高く、より少ない汚染物排出で、より多くのエネルギーを作り出すのだ。第二に、他の多くの地域からより(石炭はオーストラリア石炭と同じ品質だが、例えば中国輸出に関し2019年までロシアが第三位だった理由だ)オーストラリアから中国に石炭を出荷するほうが容易だ。
にもかかわらず、中国-オーストラリア関係は悪化し続けた。2020年末一連の論争後、中国指導部は、オーストラリア石炭輸入に対し中国企業に暗黙の禁止令を課した。国内生産増大と、2020年に中国に2018年より6%に多くの石炭を売ったインドネシア、モンゴルやロシアからの出荷で、燃料不足を埋め合わせる計画だった。
2021年1月-7月、オーストラリアから中国への石炭供給は98%以上減少した。石炭輸出がオーストラリア経済の背骨の一つであることから、北京はキャンベラを厳しく罰することを意図していた。実際オーストラリア企業は巨額損失をした。だが2021年秋までに中国はエネルギー危機に襲われ、工業生産の下落と住宅地域の停電を強いられた。中国は今石炭備蓄を使っており、アフリカや中南米の国を含め新供給元との絆を作り出している。
2021年、ロシアは第1四半期に、劇的に8.4%増して、中国への石炭供給を増やした。ロシアは比較的中国に近いヤクチアに高品質石炭の莫大な埋蔵量があるのだから、理論上、以前オーストラリアが持っていた市場占有率を得ることができるはずだ。今のところ供給は中国-ロシアの鉄道能力に制限されている。歴史的に、この二つの巨大国家は、シベリア横断鉄道の支線で限定された能力しかない鉄道路線だけで接続されている。このお粗末な鉄道接続の一因は、20世紀後半、ソ連と中国間の張り詰めた関係によるものだ。
2019年-2021に中国とロシアを結ぶ鉄道の能力不足のため、かなりの量の石炭供給不足は、高品質のロシア商品ではなく、インドネシアの遙かに低い品質のもので満たさなければならなかった。それに加えて、上記のとおり、中国はアフリカや中南米の供給元を探さなければならなかった。これは全て、中国は、ロシアからの陸路によるもの遙かに多くを、海路で送られた貨物をとる可能性のためだ。
一方ロシアはシベリアで輸送システムの大規模近代化を準備している。2020年12月、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は鉄道改良のため約8億ドルの割り当てを発表した。もちろん、もし中国もロシアとの鉄道輸送に投資すれば、仕事はより速いペースで進むだろう。だが今のところは、あらゆる困難にもかかわらず、北京はオーストラリア石炭に対する禁止令解除を急いでいるように見えない。中国は、物流上、ロシアの方向に急激な転換をする頃合いのように見える。
ピョートル・コノワロフは政治評論家。オンライン誌New Eastern Outlook独占記事。
記事原文のurl:https://journal-neo.org/2021/10/14/russian-coal-and-its-chinese-prospects/
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FRIDAY DIGITAL
という見出しを見て、偶然の一致に、うんざり。ご無沙汰していた知人との電話で、敵基地攻撃能力、防衛費倍増は、「日本の防衛費倍増を」という宗主国の命令 とんでもないとお話したばかり。
ハワード・ジン「歴史の効用とテロリズムに対する戦争」を語る からこの文章を引用してお話したのだ。。
ゲーリングは言っています。「もちろん国民は戦争を望んではいない。なぜ畑にいる貧しいまぬけが、自分の命を戦争にさらそうなどと望むだろう?だが、結局、政策を決定するのは国家指導者だ。国民はいつでも指導者達の命令に従わせることができる。連中に、我々は攻撃されているのだと言って、平和主義者は愛国心に欠けると非難するだけで良いのだ。これはどこの国でも同様に機能する。」
「ひとつだけ覚えておくように。政府は嘘をつくものです。」
政府だけでなく、○○もウソをつく。うがい薬だけではない?
LITERA記事
大阪ワクチン断念で問われる吉村知事・松井市長の責任! アンジェス森下教授と維新を結びつけたのは日大事件で逮捕のあの人物か
政府だけでなく、マスコミもウソをつくものです。Dappi問題追及放棄。マスコミそのものが総Dappi化。唾がいくらあっても足らない。
「国民民主玉木代表が維新との連携強化を表明! 幹事長・国対委員長会談も始動! 改憲は『合意できるところからやるべきだ』と積極姿勢!」2021.11.9号~No.3344号
<インタビュー報告>「大手メディアがDappi問題を無視! 偏向報道の下で行われた衆院選で改憲勢力が3分の2を余裕で超える議席を確保!野党共闘は本当に失敗なのか!?」岩上安身による立憲民主党・小西洋之参議院議員インタビューを生中継しました!
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