カート・キャンベルの日本・モンゴル訪問:アメリカ外交政策にとって何を意味するのか
2024年4月4日
ウラジミール・テレホフ
New Eastern Outlook
辞任したビクトリア・ヌーランドの後任として今年2月に就任したばかりのカート・キャンベル米国務副長官が3月19日から23日まで日本とモンゴルを訪問した。これに関し、予備的ながら、いくつか基本的観察をしてみよう。
第一に、キャンベル本来の専門(これまでの外交活動と研究機関での両方)を考慮すると、この非常に重要な職位に彼が任命された事実そのものが、ワシントン外交政策の根本的転換傾向の体系的現れだと自信を持って言える。外交政策におけるインド太平洋地域の優先だ。これは所属政党に関係なく、次期アメリカ政権も踏襲する傾向だ。
第二に、この傾向は不可逆的になりつつある。最初の兆候は、既に1990年代に見られ、リチャード・アーミテージやロバート・ゼーリックなどの象徴的人物も同じ立場にあった。しかし新興世界大国の中国に対する政策に関し、二人の意見は反対だった。後者がこの立場で登場する事実は、1990年代後半、American Political Scienceによって既に予想されていた。
R・ゼーリックは中国政府と建設的関係を築く見通しは可能と信じており、明らかに彼の見解は(G.キッシンジャーとZ.ブレジンスキーが主張した)G2構想の基礎となったようで、すぐにG2構想が登場し、「アメリカ・中華人民共和国」連携の枠組みの中で支配層が世界支配活動をすると想定されていた。しかし、この概念の実現に失敗し、その後の政治的混乱(アフガニスタンや中東全般や、ヨーロッパやウクライナの混乱)により、前述の傾向を組織する過程は10年遅れた。
第三に(そして上記の結果として)、ヨーロッパ情勢全般、特にウクライナ紛争がアメリカ外交政策の優先事項上、二の次になっている。これに関連して、ヌーランドを国務副長官の職から解任したことには、明らかにいくつか「個人的」動機があったが、それらが二次的役割を果たしたことに注意する必要がある。繰り返しになるが、重要なのは、この職務に、今やインド太平洋地域問題専門家が就くべきことだ。
第四に、彼が(任命後)初外遊で、あらゆる点で全く異なるアジアの二国を訪問した事実自体、アメリカ外交政策の優先順位の根本的変化という過程に完全に合致している。繰り返すが、動機は、ほぼ完全に「中国要因」だ。
第五に、この「要素」は、必ずしも妥協のない敵対的立場からのみ評価されるわけではない。「管理された競争」の概念、つまり、R. アーミテージとR. ゼーリックの手法の一種の共生は今日も使われている。この概念は、様々な種類やレベル(最高レベルを含む)の米中接触の維持を前提としている。
しかしK. キャンベル訪問の主な動機は「競争」という言葉を特に重要視する、前述概念の別要素に条件付けられていた。後者は地域の軍事政治組織に基づくことになっていた。「アジアNATO」のようなものを創設する必要性は既に1990年代初頭議論されていたが、今のところ、そのような組織の個別(初期)断片しか存在しないことに注意すべきだ。
2021年9月に創設されて以来、オーストラリア、イギリス、アメリカが参加しているAUKUS同盟は、その中核的役割を益々主張しつつある。この構図を拡大し、その中での関係を正式化する問題がワシントン政策の中心になりつつある。AUCUSへの最初の参加候補は日本で、二番目はフィリピン (カナダ、ニュージーランドなど)だ。この過程における重要な一歩は、4月、これら三か国の最初の国で開催される日米比首脳会談だ。
東京訪問中のK.キャンベルの主な焦点はその準備だった。日本のAUKUS加入が「ロボット工学とサイバー技術分野で成果」をもたらすと彼は期待している。同時に、日本のAUKUS完全参加への主な障害は、核技術の取り扱いに関する既知の制限(いわゆる「非核三原則)の維持だと彼は見ている。オーストラリアが原子力潜水艦艦隊を取得する当初の目的でAUKUS同盟は設立された。
来るべき三国首脳会談の準備過程へのフィリピン参加に関しては、東京での会談にテレサ・ラザロ外務副大臣がフィリピンを代表して出席した。
今回の訪問でキャンベルが二番目に訪れた国モンゴルは、当然AUKUSには加盟しない。今ではなく、近い将来にも。しかし、特に1912年の中国の辛亥革命からほぼ半世紀続いた困難な独立時代もあって、モンゴルと中国には特別な関係がある。詳細には触れないが、それがこれだということは注目に値する。これが、過去20年にわたり発展してきたモンゴルへの(広範な)浸透を、中国の主要敵対者、アメリカと日本が推進している理由だ。しかし、インドやEUや、いくつかの主要ヨーロッパ諸国など他の主要諸国の存在が益々目立つようになっている。
モンゴルでは、外部世界との関係拡大は、ソ連というかつての主要支援者を失った後、新たなパートナーを探す過程で現れた「第三の隣人」という概念の形をとっている。モンゴルとの関係における主目的が、両国の「国民間の友好関係強化」だというこの概念は、省第二位の人物による来る初外遊に関するアメリカ外務省発表でも言及されている。
最後に、前世紀の80年代から90年代にかけての良く知られている出来事、その具体的現れが、モンゴル(および他の多くの国々)において、確実に支配的地位を占めていたソビエト連邦共和国の後継者、つまり今のロシア連邦の喪失という一般的主題に戻ることが適切に思われる。この時代の影響の深さと幅は、特にソ連・モンゴル友好時代に採用され、現代のモンゴルでも敬虔に記憶されているモンゴル語におけるキリル文字の使用で証明されている。
モンゴルにおける、ロシア連邦による偉大な前任者の地位喪失は、繰り返すが、冷戦におけるソ連の敗北により引き起こされた根本的要因の直接結果で、特徴的な付随的兆候の一つだった。これは世界規模紛争での一方の当事者が敗れた場合、常に起きる。
この点で、冷戦終結の本質に関するヒステリックで愚かなプロパガンダに対する頻繁な反省や疑念は、かけ算の九九の正しさを疑うのと同じようなものだから(恥ずべきことではないにせよ)ばかげているように見える。既に1990年代初頭には、ソ連崩壊後の地域のいわゆる「表面」には、完全敗北を示す三つの主要兆候(「クラウゼヴィッツから」)が全て現れていた。つまり、軍の敗北、敗北した敵領土の分割、そして住民の士気の抑圧だ。そして少なくとも90年代まで(「当然のことだが」)賠償金が支払われた。しかし具体的方法としては、悪名高い「強盗」という形で行われた。
「全てチュバイスのせいだ」という漫画で具現化される「裏切り」要素に関して言えば、それは(どちらかといえば)役に立つ補助的なものだった。特に、1989年後半の「マルタ首脳会談」は、その時点までの冷戦におけるソ連敗北の極めて明白な見通しを述べ公式化したに過ぎない。同様に「ヨーロッパへの統合」という概念(一部ソビエト・エリートの間で支配的とされている)は「ヨーロッパ」(「西洋」)とのこれ以上の対決の無益さという一般的感覚と同じ(「伝統的」というより、むしろ)付随的性格だったようだ。
1980年代後半、それに対して、とどめの一撃を加える目的で、ソ連社会の様々な階層の後から来た連中後や単なるクズ(主に当時の「良心の灯台」やら「思想の達人」)の動員が行われ、それも、役に立った。
いずれにせよ、偉大な国の歴史と文化の現代の継承者である我々を、手のひらで床を叩く気まぐれな幼い子ども(「だがアメリカはすぐ崩壊する」)として位置づけるべきではない。一体誰が「ハッピーエンド」のおとぎ話という形で、非常に複雑な現象の「簡単な説明」を聞くだろう。
大人は勝利を喜ぶだけでなく、これまで誰も避けられなかった大敗にも堂々と耐える。敗戦後の時代が終焉を迎えようとしており、我々は取り返しのつかない過ぎ去った時代を懐かしむのではなく、全く新しい内政・外交政策のもとで新しい国を建設すべきだ。
一方、世界舞台に出現しつつある、これら「イノベーション」の急進性をまさに示す最も顕著な証拠の一つは、繰り返しになるが、ここで議論されている(当面の)主要世界大国の外交政策部門の人事異動と、その関心の焦点がヨーロッパからインド太平洋地域へと移行していることだ。
ウラジミール・テレホフはアジア太平洋地域問題専門家。オンライン誌New Eastern Outlook独占記事。
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