核の気候変動:事態を激化させるワシントン
ブライアン・クローリー
2021年5月4日
Strategic Culture Foundation
我々は更に一歩、惑星の破壊に近づいた、とブライアン・クローリーが書いている。
4月29日、世界問題について尊敬されている評論家トム・エンゲルハートが、アメリカの永久戦争を検討する記事を発表し、こう結論している「アメリカ人がめったにしようと考えさえしない質問はこれだ。もしアメリカが基地帝国を解体し始め、軍事にむけられている実に膨大な税金を、国内ニーズという別の目的に転換し、この国が永久戦争に注力するのを止め、我々の神聖な教会としての国防総省を放棄したらどうだろう?もし短期間でさえ、戦争、紛争、陰謀、殺害、無人機暗殺など全てが止まったら?もし我々が平和を宣言して国に戻ったら世界は実際どうなるだろう?」
彼がよく知っているように、答えは世界が暮らすのに、もっと良い、より安全な、ずっと魅力的な場所になるだろうということだ。だが、彼が悲嘆しているように、ワシントンから、平和追求で世界を率いることができる国アメリカ内の最も遠隔地域まで、その翼を広げている軍産複合体の心や政策の変化はないだろうから、ほとんどそうなる可能性は無いように思われる。
実に多くの国々の人々に対し、大きな悪影響を与え、ワシントン権力回廊の大立て者にしっかり支配されている他の変動を除けば、世界の安定に対する最大の脅威であり続ける可能性が高いので、我々全員が気候変動を懸念している。
我々の暮らしに対する究極の脅威は核戦争だが、その脅威を減らす手段を考え出すことに、彼らの有能な才能を捧げる代わりに、国防総省の計画立案者や、やり手連中は、政治家や兵器製造に財政的権益がある他の連中に徹底的に援助されて、世界や宇宙にアメリカの核影響力を広げることに懸命だ。
アメリカ戦略軍(STRATCOM)は自身を「我が国の永続的な強さを維持し、大国の紛争を阻止し、勝利し、21世紀の戦略上の抑止力を作り出すための知的資本を増大し、支配的な戦略部隊と革新的なチームを派遣する」「グローバル戦争戦闘司令部」であると述べている。この任務で、STRATCOMは自身が「自国と同盟諸国安全保障の究極の保証人」だと考え、核兵器で世界を破壊する準備ができていることを意味する「断固とした対応」を瞬時に行う準備ができている。
4月20日、この組織のトップ、チャールズ・リチャード海軍提督は上院軍事委員会で演説し、特に「現在中国の核兵器保有量は、ロシアやアメリカが配備しているものより少ない(が未曾有の拡大を進めている)が、中国の核兵器備蓄規模は、総合的戦略能力の大まかな指標だ」と発言した。これは北京や他の多くの世界の首都に強い歓喜をもたらしたのは確実だが、彼が中国とアメリカが保有する兵器の量を公式に明記しなかった事実は依然変わらない。差異がばかばかしいほど明らかなのが、その理由である可能性が高い。
(情報が信頼できる)ストックホルム国際平和研究所SIPRIによれば、アメリカは合計5,800発の核兵器を持っており、うち1,750発が配備されている。これらは即座に使用する準備ができている。(他は「解体を待っている退役弾頭や、保管や予備弾頭」だ。)
他方、中国は320発の核兵器を保有しており、SIPRIは「核兵器庫の本格的近代化の最中だ。中国は、初めて、地上と艦載海ミサイルと核搭載航空機で構成される、新たな、いわゆる核の三本柱を開発しつつある。」と述べている。
長年、ワシントン既存の核の三本柱司令官であるリチャード海軍提督は、中国の核戦力開発を、不当で、遺憾だと考えている。彼は上院軍事委員会で「中国は急速に戦略核能力と可能性を強化しており、道路輸送可能ミサイル製造の急速な成長や、いくつかのICBM旅団での発射装置倍増や、より大規模での固形燃料大陸間弾道弾(ICBM)サイロ配備などで、今後10年で核保有量を二倍にするのに必要なペースより早い」と発表した。[強調は筆者による。]
もし中国の核保有が今後十年で二倍になれば、中国はアメリカの三分の一の核兵器を保有するかもしれないことを意味する。さらに、この全てが「透明度の完全な欠如の背後で」行われており、非難されるべきで、決して容認できないとリチャード海軍大将は抗議した。SIPRIが述べているように、アメリカが「アメリカの備蓄規模を公式に発表する慣習を終わらせた」のは重要ではないが、他の全ての国々は、核兵器開発計画で、絶対に透明であるべきだと見なされているのだ。(おそらく、イスラエルなど?)
だが、4月16日、ホワイトハウスで、バイデン大統領が日本の菅義偉首相と会った際、ワシントンが透明だという核政策の一つの側面が明らかにされた。彼らの共同声明は「新たな時代におけるアメリカ-日本グローバル・パートナーシップ」という題で、ワシントン長年の核戦争準備を、バイデンが決定的に承認した、これまでで最も重要な兆候だ。このおそろしい文書は、どんな問題に関しても、中国との妥協の可能性があり得る兆しを示しておらず、バイデン、菅両者が十分理解しているが、中国の国際政策の土台に対して究極的に挑戦的なものだ。つまり、南シナ海の島嶼に対する主権の主張。
南シナ海に対するアメリカの立場は、国際法に基づくべきだと、ワシントンは繰り返し述べており、バイデン-菅の中国との対決的宣言は、国連海洋法条約に記されている航行及び上空飛行の自由を含む、海洋における共通の規範を推進する」合意を強調している。これは、アメリカが、イランやイスラエルやシリアや朝鮮民主主義人民共和国やリビアなどの国々と共に「国連海洋法条約UNCLOS批准を拒否した事実がなければ、耳を傾ける価値があったかもしれない。バイデンは、他の国々に、ワシントンが拒絶した重要な国際協定に従って海事に対処するよう命じているのだ。
アメリカは日本を支持するとし、戦争までバイデンは誓約したが、国連海洋法条約UNCLOSが、その戦争正当化に使える事実がなければ、ばかばかしい、くだらないものだ。バイデンは「アメリカ/日本同盟のため、共有する安全保障に対する強固な支持」を宣言し、特にワシントンと東京は「朝鮮民主主義人民共和国や中国の挑戦や、東シナ海、南シナ海などの問題に対処するための協力を固く決意している」。核心は共同声明の「核を含むあらゆる種類のアメリカの能力を用いた日米安全保障条約下での日本の防衛に対する揺るぎない支持」という声明だ。何気ない言葉は「核を含む」だ。
究極の剣が振りかざされたのだ。4月16日、アメリカ大統領は、中国に核兵器を使うという露骨な恫喝をした、4日後、ロシアと中国の都市を破壊する永久警戒状態にある何百発ものミニットマン大陸間弾道弾を新しい「地上配備戦略抑止力」に換えるため、上院は950億ドルの出費を承認しなければならないとアメリカ戦略軍司令官が主張した。
ワシントンと東京は「対決を、この地域全体の主題にしようと試みている」と見る中国環球時報の(準公式)論説を読んでも驚くべきことではない。これは確かに、そういう政策で、ワシントンは核兵器を強調して、対決の雰囲気を激化させているように思われる。我々は更に一歩、惑星の破壊に近づいたのだ。
Brian Cloughleyは、イギリス軍とオーストラリア軍の退役軍人、元カシミール国連軍事使節副団長、元在パキスタンのオーストラリア国防担当大使館員
個々の寄稿者の意見は必ずしもStrategic Culture Foundationのものを意味しない。
記事原文のurl:https://www.strategic-culture.org/news/2021/05/04/nuclear-climate-change-washington-heats-things-up/
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下記ニュースに驚愕。再三引用している宮本政於氏著書内容のデジャブ。1993年刊『お役所の掟』には、ムラ第一、前例主義,長時間残業、宴会好き。官僚が大臣を支配しており、大臣が官僚を支配しているのではないことなど挙げておられた。(大企業にも、かなりあてはまるだろう)彼は現代のコロナ戦争大本営である厚生省の医系技官だった。読んでいると、日本は無条件降伏しかないことが理解できる。28年前の本だが、現状の理解に必須の名著。英語、ドイツ語、フランス語のみならず、ペルシャ語版も刊行された。緊急復刊されないものだろうか?
若手官僚 長時間労働是正で行政改革相に働き方改革を要望
宮本氏が指摘した厚生官僚のムラ利権優先哲学が、PCR抑制や、ワクチン開発や購入の障害元凶。日本がコロナ敗戦で東南アジア・ダントツのビリ、世界のガラパゴスになるのは必至。
日刊ゲンダイDIGITAL
子どもの時にはオリンピックには夢中になった。校庭でスポーツの得意な男子が鉄棒で妙技を披露し、陸上部の女子が聖火リレーで走った。空に描かれた五輪を見上げた記憶がある。だが、五輪は、今後、あこがれどころか、悪夢、思い出したくないトラウマでしかない。
そして、今日の孫崎享氏のメルマガ題名
5月内閣支持率、与党寄りとみられる読売:支持43(先月47)、NHK:支持35%(先月44)。安倍政権では辞任直前NHKでは34%。菅政権の弱体化進行。この中安倍元首相、二階幹事長共菅首相を支える発言。両者共影響力維持を意図。対米など両者の方向異なる。
アメリカ新大使が発表された。これまでの名誉職とは違う。正真正銘のネオコン直轄地。
彼については、かなり昔の記事でも、短く触れている。もちろん、検索エンジンによって、隠蔽されているものが多い。
プーチンがロシアを救ったように、トランプはアメリカを救えるだろうか?
昔の名前で出てきた「チェンジ(改革)」-第三次クリントン政権
新大使と、憲法破壊推進への野党もどきの裏切り、直接つながるはず。詳細は下記を。
日刊IWJガイド・特別公開版「衆院本会議で国民投票法『改悪』案が可決! 立憲民主はたった2、3回の参院審議での法案成立を与党と合意したのか!?」2021.05.12号~No.3163号
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