トランプを打倒するため、連邦準備制度理事会は次の暴落を画策するだろうか?
2018年9月25日
F. William Engdahl
New Eastern Outlook
主要金融市場を見守っている人々にとって、アメリカ金融市場で次の大規模津波の前兆の頻度が日に日に増えている。数週間前、いわゆる新興市場、特にトルコ、アルゼンチン、インドネシア、インドやメキシコが注目された。主要マスコミがほとんど触れないのは、こうした出来事と、ドルの“創造主”アメリカ連邦準備金制度理事会による世界の金融体制からの意図的なドル回収との関係だ。今やこのプロセスが、アメリカ株式のみならず、ハイリスクのジャンクボンド、アメリカの不動産債務、自動車債務、クレジット・カード債務の劇的な下落を爆発させる兆候を示しているを。2020年の大統領選挙、あるいは今年11月の中間選挙まで、経済的成功をもたせるというトランプの希望も連邦準備制度理事会の意志によって粉砕されかねない。
プロの金融界の外部ではほとんど議論されない興味深い事実は、アメリカでは、少なくとも1893年恐慌以来、あらゆる大規模な金融パニックや金融恐慌は、ライバル達を犠牲にし、金融界主流派に有利になるよう画策されてきたということだ。1907年の恐慌もそうで、当時の“連邦準備金制度理事会”と、J.P. モルガンを取り巻くウオール街の一派が、厄介な競争相手連中に優位に立つためパニックを引き起こしたのだ。1913年に、JPモルガンやロックフェラーやウオール街の諸銀行が、巧妙に民営の連邦準備金制度理事会を創設し、その連邦準備制度理事会が、まず同じ連邦準備制度理事会の政策で、資産投機ブームを作り出した後、周期的な市場崩壊を画策している。
1929年ウオール街大恐慌は、1927年に、ロンドンへの金の流れを促進するため、アメリカの金利を引き下げさせるイングランド銀行のモンタギュー・ノーマンによる圧力と繋がる連邦準備制度理事会の金利政策で、意図的に引き起こされたものだ。アメリカ金利が、危険な株式市場バブルを作り出すと、1929年に、連邦準備制度理事会が金利を上げてバブルを崩壊させ、大暴落と大恐慌を引き起こした。1990年代、グリーンスパン連邦準備制度理事会が意図的に、連邦準備制度理事会議長が“新経済”を褒めそやす講演をし、金利を再び上げる前に、金利を引き下げ、株式バブルをあおり、Dot.comバブルとして知られている、もう一つのウオール街投機バブルをけしかけ、2000年3月にバブルをはじけさせた。dot.comの崩壊後、2003年、まさに同じグリーンスパンが、金利をわずか1%へと劇的に引き下げ、はっきりと不動産ブームを煽り、不動産担保証券と“無利息融資”を作り出したウオール街を称賛した。その同じグリーンスパンが、2006年から2007年9月に、連邦準備制度理事会金利を意図的に上げ始めると、アメリカのサブプライム住宅ローンが本格的に崩壊した。彼は直前に都合よく辞任していた。
QTと、来るべきバブル崩壊
現在、未曾有の十年間のゼロ金利と量的緩和の後、金利をあげて、連邦準備制度理事会は次の金利引き締めサイクルの初期段階にある。金利引き上げに加え、量的引き締めとして知られているものにより、QEの十年間に購入した財務省証券や他の債券を売却して、QEを相殺しつつあり、実質的に、信用供与枠を減らしている。2017年、連過去8年間のゼロ・レベルからの実にゆるやかな連邦準備制度理事会による金利上昇で、おずおずと始まった。今や連邦準備制度理事会の新議長がジェローム・パウエルとなり、金利は今後、大幅に上昇するように思われる。
過去8年間のゼロ水準から、連邦準備制度理事会の実にゆるやかな金利引き上げで、2017年に、おずおずと始まった。今や連邦準備制度理事会新議長がジェローム・パウエルとなり、金利は、今後大幅に上がる準備ができているように見える。同時に、連邦準備制度理事会は、過去十年間で購入した約4兆ドルの米長期国債や社債や他の資産を売り始めた。現在までに、2310億ドルの財務省証券とモーゲージ証券を売却し、金融体制内から、それだけの金額の流動性を引き揚げている。
連邦準備制度理事会金利の上昇と、量的緩和でためた財務省手持ちの換金という組み合わせの影響が、世界的なドル流動性の引き締めをもたらしている。この影響は、これまでの所、トルコやアルゼンチンのような脆弱な新興成長市場に現れているが、ここ数週間、アメリカ国内金利の上昇を強い始めており、十年前に始まったウオール街の多幸性株バブルを終わらせる恐れがある。ちなみに、2008年の危機が始まって以来、スタンダード・アンド・プアーズ総合500株価指数は、未曾有の387%にのぼっている。
こうした組み合わせに、トランプの寛大な減税と軍事費や他の支出のおかげで、米連邦の赤字は今年、約1兆ドルになるはずで、少なくとも十年間、その水準のまま続き ワシントンは最大の債権国中国とも、日本とも貿易戦争している事実を加えれば、連邦準備制度理事会から、多少自立さえしたアメリカ金利上昇が起きる寸前の状況だ。
アメリカの債務バブル
連邦準備制度理事会による歴史的最低金利の十年間が、連邦政府、大企業から、家庭に至るまで、アメリカ経済のほぼあらゆる分野で、奇怪に歪曲された借金状態をもたらした。連邦政府債務は、現在、記録的な21兆ドルで、リーマン危機が勃発した、2008年当時の二倍以上だ。アメリカ企業の債務は未曾有の6.3兆ドルで、金利が史上最低のままである間しか維持できない。
アメリカ家庭の債務は、13.3兆ドル以上で、2008年のピークを遥かに超えている。その中で一番多いのが、またしても9兆ドル以上の不動産債務で、2008年の水準に近い。未曾有の家計負債中、1.5兆ドルが学資ローン負債だ。2008年、この数値は半分以下の6110億ドルだった。更に、1.25兆ドルの自動車ローンと記録的なクレジット・カード負債を加われば、上昇する連邦準備制度理事会金利が、企業や住宅ローン当事者が債務返済できず、債務不履行が増え、ドミノ風破産を引き起こせば、アメリカが典型的な借金地獄に陥るお膳立ては整っている。
連邦準備制度理事会金利の上昇が、11月中間選挙に間に合うよう株式市場暴落を引き起こすかどうかは全く不明だが、連邦準備制度理事会が、2020年選挙の頃までに、アメリカ経済を深刻な不況あるいは恐慌に追いやるためのお膳立ては明らかに整った。本当の権力者が他の選択肢の方が、連中のグローバル権力の狙いにとって、より役に立つと決めさえすれば、それでトランプ大統領はおしまいだ。
“それは景気後退とは呼べないでしょう。大恐慌よりずっと酷いものになります。”2007年のサブプライム破綻を予測したファンド・マネージャーのピーター・シフは言う。シフはトランプ大統領一期目が終わる前の大規模経済停滞を予言している。“アメリカ経済は十年前当時より遥かに酷い状態にある。”ただし今回、連邦準備制度理事会は、2008年当時より遥かに弱い立場にあり、アメリカの債務総計は十年前の水準を遥かに超えている。アメリカ経済とアメリカ政府は一部の人々が思っているほど無敵ではない。疑問は、一体何がそれに置き換わるかだ。中国-ロシア-イランのユーラシア代替案、最も有望な代替案は、成功するつもりなら、彼らの経済をドルから切り離すための遥かに一貫した措置を講じる必要がある。
F. William Engdahlは戦略リスク・コンサルタント、講師で、プリンストン大学の学位を持っており、石油と地政学に関するベストセラー本の著書。オンライン誌“New Eastern Outlook”への独占寄稿。
記事原文のurl:https://journal-neo.org/2018/09/25/will-fed-engineer-next-crash-to-topple-trump/
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もっとも信用できない新聞はどれ?という記事を読んでびっくり。フェイクの見本。
植草一秀の『知られざる真実』で、この記事と直結する?記事を拝読したばかり。
米国発世界同時株安と今後の展望 2018年10月12日 (金)
今日は植草氏がとりまとめておられる下記学習会を拝聴予定。
【IWJ・Ch5】16:00~「オールジャパン学習会『私たちの命の源が危ない ―水・種子・食の安全を守ろう!―』」
視聴URL: https://twitcasting.tv/iwj_ch5「オールジャパン平和と共生」主催の学習会を中継します。登壇者は、拓殖大学教授 関良基氏、新宿区議会議員・弁護士 三雲崇正氏、元農林水産大臣・弁護士 山田正彦氏、ほか。これまでIWJが報じてきた「オールジャパン平和と共生」関連の記事は以下のURLからご覧いただけます。
https://iwj.co.jp/wj/open/archives/tag/%E3%82%AA%E3%83%BC%E3%83%AB%E3%82%B8%E3%83%A3%E3%83%91%E3%83%B3%E5%B9%B3%E5%92%8C%E3%81%A8%E5%85%B1%E7%94%9F
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