プロパガンダ君臨
2017年7月20日
Paul Craig Roberts
もし真実に見込みがあるとすれば、それはアメリカ以外の国でのことだ。
発明者のユダヤ人広報専門家エドワード・ルイス・ジェームズ・バーネイズから、ナチスの 国民啓蒙・宣伝相パウル・ヨーゼフ・ゲッベルスに至るまで、プロパガンダの達人たちは、ウソは絶えず繰り返すことで、真実に変えられることに同意している。
ウソが純粋であればあるほど、それを真実に変えるのが、より完璧な成功になる。一部事実に基づくウソや、半分だけの事実は、事実によって、疑念をさしはさまれてしまう。宣伝屋にとって、最高のウソは、真実とはわずかの関係さえない自由なウソだ。そのようなウソは実に自明の真実に変えられるので、何の証拠も不要なのだ。ニッキー・ヘイリーとヒラリー・クリントンが言うように“証拠だと! いまいまして証拠など不要だ。ロシアが我々の選挙をハッキングしたのを我々は知っているのだ!”
何も知らない典型的なアメリカ人にとって、元国務長官で“当然のアメリカ大統領”の確信と、ドナルド・トランプ大統領自身の国連大使の確信だけで、ロシアがアメリカ大統領の座をトランプのために盗み取ったというウソを本当と思い込むのに十分なのだ。我々全員がそれを知っている。なぜだろう? 何カ月も果てし無く繰り返されるのを我々全員が聞いているためだ。ある知人はこう言った。“もしそれがウソなら、マスコミが確実に暴露しているはずだ。”こののんきな純朴さは欧米国民の特徴だ。
バーネイズとゲッベルスが知っていた通り、一人の優れた宣伝屋が、性であれ、国民であれ、標的にした集団の意見を支配できるのだ。
バーネイズが最初に標的にした集団は、アメリカの女性だった。アメリカのタバコ会社の宣伝屋とし、“歪曲の父”は女性の喫煙を、フエミニストの自立の印として売り込んだ。彼はタバコを“自由の松明”と呼んだ。彼は、ユナイテッド・フルーツ社が、1954年、アメリカ政府に、選挙で選ばれたグアテマラ政権を打倒させるのを可能にしたプロパガンダも実施した。
ゲッベルスはドイツを第三帝国の従僕に変える業績をあげ、ネオコンはアメリカ合州国においてはまだこれを実現できていないが、今もこのために働いている。
ネオコン、軍安保複合体、イスラエル・ロビーと、アメリカ売女マスコミは、トランプがシリアから撤退するのと、ロシアとの関係を正常化するのを阻止するのに成功している。連中はでっち上げの“ロシア-ゲート”を使って、トランプ大統領を箱に押し込めて、これに成功した。もしトランプが今ロシアとの関係を正常化すれば、売女マスコミによって、世界に対し、欧米民主主義に対するプーチン/トランプの共謀が現実であることの証明だとされよう。もしトランプが関係を正常化し、軍安保複合体予算の権限と利益を正当化する“脅威”を取り除くようなことがあれば、彼はアメリカの逆賊として弾劾される可能性が高い。トランプのツイートは、売女マスコミの猛攻撃に圧倒されるだろう。
アメリカ人やイギリス人やヨーロッパ人やロシア人や中国人やインド人や他のあらゆる人々がロシアに対するワシントンの敵意が、強力な既得権益集団に仕えるためのものであることを理解する必要がある。これらの既得権益集団はアメリカ大統領より強力なのだ。
イスラエルと中東に対する彼らの計画はこれらの強力な既得権益集団の一つだ。海軍作戦部長で、統合参謀本部議長だったトーマス・モーラー大将が言った通り“イスラエルに立ち向かえるアメリカ大統領はいない。”
シオニスト国家イスラエルとアメリカ軍安保複合体に仕えるネオコンは、アメリカ政府を拘束している別の強力な既得権益集団だ。ネオコンがイスラエルと軍安保複合体としっかり提携していることで、連中の権力と影響力が増大している。1961年に、アイゼンハワー大統領が、国民に対する彼の最後の公開演説で、軍産複合体の権力がアメリカ民主主義に対する脅威になっているとアメリカ人に警告した。https://www.bing.com/videos/search?q=Eisenhower%27s+warning+of+the+military%2fsecurity+complex&&view=detail&mid=7E7D9C582D8FB406F8927E7D9C582D8FB406F892&rvsmid=9D891E045120807989A89D891E045120807989A8&fsscr=0&FORM=VDQVAP
アイゼンハワーの警告は56年前のことだった。56年前のアメリカ大統領が軍産複合体に懸念したのだから、何十年もの冷戦の後と“ソ連の脅威”で、この権力がどれほど更に定着したかご想像願いたい。軍安保複合体の権力はワシントンにおける主要勢力なのだ。
アイゼンハワーの演説は、これまでどのアメリカ大統領がしたものの中で最高だ。わずか14分4秒だ。それでも、全てを含んでいる。そこには我々が自分の成功の犠牲者になりかねないという認識があるのだ。彼がアメリカにとっての軍産複合体の脅威をソ連の脅威と比較したので、ネオコン連中は、連中の公的地位が何であれ、アイゼンハワー大統領を夢中に憎悪する以外何もできない。
アメリカ人は、ロシア人や、中国人や、ヨーロッパ人や他の全員同様に、経費と無関係に、ネオコンが一体誰に対して覇権を行使するつもりなのかを気づくことが必要だ。アメリカ軍安保複合体の予算総計は、1.1兆ドルと推計されており、この数値は、ロシアの2017年推計GDPの70%だ。これはメキシコやトルコのGDPより大きい。これはフランスやイギリスのGDPの45%で、ドイツのGDPの32%だ。世界には195の国がある。アメリカ軍安保複合体予算より大きな国内総生産の国は、そのうちわずか14カ国しかない。
中東におけるワシントンの戦争には、パイプラインの位置とエネルギーの流れを支配している世俗の連中などを含め多くの権益が絡んでいる。そこにはイスラエルの権益も絡んでいる。イスラエルは、南レバノンの水資源を占領し、併合する目的で、軍隊を二度、南レバノンに派兵し、二度、民兵ヒズボラがそれを打ち破り、戦闘能力が過大評価されているイスラエル軍を追い出した。ヒズボラは、シリアとイランから財政および軍事支援を受けている。ネオコン同盟者や、プロパガンダで画策されたアメリカ人のイスラム教徒憎悪を利用して、イスラエルは、シリアとイランをイラクやリビアと同じ混乱状態に追い込むのにアメリカ軍を利用するつもりなのだ。外部からの支援を奪えば、イスラエル軍によって、最終的にヒズボラを打ち破れる。シリアとイランが混乱すれば、ロシア嫌いのネオコンは、アメリカ単独覇権主義に対する最大の制約を破壊すべく、聖戦戦士をロシア連邦に送り込める。
大半の国々のGDPより大きなアメリカ軍安保複合体の年間予算、アメリカ世界覇権というイデオロギーのネオコンと、民主党と共和党両党との提携と、アメリカ政府を完全に支配下においていて、それを自慢しているイスラエルなど、こうした既得権益集団の総合的な権力を考えれば、彼が実現するつもりだと言った、ロシアとの関係正常化や、アメリカの中東介入からの撤退を、トランプ大統領が一体どうして実行可能だろう? トランプが成功する見込みはごくわずかだ。
もしロシア政府が、仕切っているのが、トランプ大統領ではないことを理解しそこねれば、ロシアは、アメリカや他の世界の国々共々破壊されるだろう。
Paul Craig Robertsは元経済政策担当財務次官補で、ウオール・ストリート・ジャーナルの元共同編集者。ビジネス・ウィーク、スクリップス・ハワード・ニューズ・サービスとクリエーターズ・シンジケートの元コラムニスト。彼は多数の大学で教えた。彼のインターネット・コラムは世界中の支持者が読んでいる。彼の新刊、The Failure of Laissez Faire Capitalism and Economic Dissolution of the West、HOW AMERICA WAS LOST、The Neoconservative Threat to World Orderが購入可能。
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記事原文のurl:http://www.paulcraigroberts.org/2017/07/20/the-reign-of-propaganda/
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「トランプ大統領: 安らかに眠りたまえ」にアイゼンハワー大統領退任演説の一部の翻訳がある。
「残業代ゼロ法案条件付き容認」への抗議デモは労働者の分断!? 不毛なこと!? ネットで発信するから受け止められない!? ~連合神津里季生会長が会見で連合本部前デモを批判!! 2017.7.21
分断を図っているご本人に、反対デモは分断だなどと言われたくないものだ。
ハーネイズの著書では、『プロパガンダ[新版]』という翻訳がある。
プロパガンダ技術の概要を知るには『PR!世論操作の社会史』がお勧め。ただし、かなり高価。プロパガンダ君臨、『マトリックス』世界から抜け出すには必読書。
ポール・クレイグ・ロバーツ氏の前回の記事、「サプライサイド経済学 理論と結果」興味深いのだが、小生の手に負えず翻訳できない。
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