アメリカ陰の政府:プーチン-トランプのシリア停戦合意を妨害
Federico PIERACCINI
2017年7月16日
ハンブルクでのG20会合でのトランプ・プーチン会談は、アメリカ合州国とロシア間の複雑な関係に新たな希望を吹き込んだ。この希望に何らかの基盤があるのかどうかは、時間がたたなければわからない。
今年、最も待望されていたプーチンとトランプの会談は、予定の20分を遙かに過ぎ、二時間を越えた。話し合われるべき様々なあつれきや、国際関係の多くの懸案事項や、これが世界指導者二人の初の公式会談だという事実からすれば、さほど驚くべきことではない。得られた結果は、当初の野望を超え、シリアに関する重要な合意に至り、サイバー・セキュリティを巡る議論をするほど、プーチンとトランプの個人的な相性は十分だったようだ。アメリカ国内で彼を中傷する連中をなだめる手段として、トランプは、プーチンに、アメリカ大統領選挙におけるロシアによるハッキングとされるものに関して質問さえした。会談後の両大統領の声明が二人の前向きな意図を強調している。トランプは、思慮深く、詳細に配慮する、マスコミで描かれているのとは全く違う人物だとプーチンは言った。トランプは、核武装した超大国間の対話の重要性を述べて、プーチンとの会談を称賛した。
最も重要な合意は、イスラエルとヨルダン国境沿いの南部シリアにおける停戦だ。ここは戦闘がきわめて活発な地域なので、停戦は、アメリカ合州国とロシア間や、シリアとイスラエル間で、アメリカ空軍がシリアSu-22戦闘機とイラン無人機を撃墜した際に見られたような収拾がつかない状況にエスカレートしかねない危険な対立の可能性を未然に防ぐことになる。アルカイダと、ダーイシュ・テロリストに対する優勢を止めようという必死の取り組みで、イスラエルは、占領したゴラン高原内の陣地から、シリア・アラブ軍 (SAA)を再三攻撃した。
最初の会談で、二時間もしない内に、プーチンとトランプは、最も不安定な状況の地域に関する合意に至り、その過程で何百人もの一般市民の命を救った。シリアに関する合意は、今や、陰の政府や、反トランプで整列した他のあらゆる既得権益という難所を切り抜けなければならない。2016年、オバマとプーチンとの間でまとまった同様な合意からわずか数日後、アメリカ空軍によるデリゾール爆撃と約100人のシリア・アラブ軍兵士殺害て、まとまったばかりの停戦協定は切り刻まれ、ひっくり返された。
トランプは、オバマの停戦協定を妨害したのと同じオカルト勢力と取り組んでいるのだ。アメリカ陰の政府が停戦の決断をどれほど戦略的に支持しているかを知るのは不可能だ。SAAがイラク国境アル-タンフの北に至って以来、アメリカとその同盟諸国が作戦行動に使えるスペースは劇的に縮小している。アル-タンフが孤立しているので、ワシントンの停戦が、シリアのこの地域の既に大きく変わった力のバランスを変えたり、動かしたりすることはない。こうしたあらゆる理由から、停戦は、いずれの側による譲歩とも見えることはなく、超大国間の直接対決の可能性を少なくするための単なる常識的な動きに見える。
ラッカとシリア民主軍(SDF)が、デリゾールと近隣の油田に至るため、アメリカにとっての一番の基軸なので、軍事機構は北シリアでの状況に注力しているように見える。アメリカ国務省と、シリアに介入しているアメリカ軍事組織は、シリアを別々の地域に分割し、ラッカをダマスカスの傀儡政権の支配下に置いて、シリアの小国分割を望んでいる。とは言え、ダマスカスが、シリア領土で認められている唯一の権力であり、帰還するシリア国民でラッカが満ちれば、アメリカのそんな計画は崩壊するだろうから、イラクでのようにブレナン風総督を押しつけるというアメリカの願望は絶望的だ。しかもバグダッド当局は既に、二度、軍事作戦で、アメリカ支援が全くいやであることを明らかにしている。モスルの場合、イラクはアメリカの配備と関与は最小限であるべきだと述べており、イラク当局は既にシリアとのイラク国境を完全に支配したい旨、表明しており、事実上、両国の国境沿いを混乱と不安定にしておくというワシントンの計画を妨害している。アメリカ陰の政府は、混乱を、紛争を引き起こし、不安定を醸成する理想的な方法だと考えているのだ。シリアとイラク軍の最も重要な目標の一つは、それゆえ国境を隔離して、一方の国から他国への人の行き来を管理することであり、その過程で、これまで、兵器や何であれ好きなものを持って、自由に国境を越えられるという、ダーイシュや他のテロ組織にとって戦略的利点だったものを否定することだ。
トランプとこの交渉に関わったあらゆる当事者は、モスクワとワシントン間の同意をとうとう実現させた。これ以前の合意とは異なり、現在、シリアにおけるアメリカは、多くの戦略目標を実現し損ねたため、12カ月前よりもまずい状況にある。北シリアでのトルコとの協力は、アレッポ解放と、クルド (SDF)への明らかなアメリカの支援で潰れた。同様に、アスタナ(イランとロシアとトルコ間で)で合意されたシリア内の衝突回避地域が、多くの紛争の激しい地域で、テロリストの成果を阻止し、より多くの町を占領する可能性を皆無にしている。そうした取り組みは、様々な和平交渉で重要な有利な交渉材料だ。
アサド排除に失敗した後、シリアを解体する本来の計画に関係している陰の政府の軍事組織の権益に合致する、唯一可能な解決策に焦点を当てるのが、この戦略の核心のように見える。ある観点からすれば、アメリカが依然多少の影響力を持っている唯一の地域、シリアの北、ラッカの状況に注目するのも当然かも知れない。これは、アメリカ陰の政府の対立派閥によって作られた歪められた見方かも知れない。確かに、モスクワの視点からすれば、シリアでの戦略は、トルコやアメリカ合州国など主要当事者との複数の停戦合意を目指す外交的解決と、ロシア、イランとシリアによる戦争遂行努力を棚上げすることは決してしないこととの組み合わせなのだ。
プーチンとトランプとの合意は、何よりシリアの一般市民にとって恩恵で、SAAが、より多くの町や村をテロの支配から解放する機会も拡大する。長らく期待されていた合意であり解決策が、アメリカ陰の政府最も重要な部隊からにらまれているのだ。合意が失敗した場合、トランプには、彼の計画を妨げ、それを、自分たちのお粗末な政策で置き換えようと動いているワシントン既存支配体制と、その陰の政府による破壊を、世界に指摘する義務がある。
休戦が持続しているおかげで、この合意から具体的な恩恵を引き出すというモスクワの自信は、時々刻々増している。ロシアの視点からすれば、いかなる軍事的な妨害も、トランプのそれ以降の動きとは無関係に、アメリカの意図を再度暴露することになる。とは言え、妨害された場合、一つ確実なのは、トランプが決定的選択に直面せざるを得なくなることだ。陰の政府に降伏し、状況を核超大国との超対立状態に戻すか、あるいは、陰の政府と対決して打ち勝ち、彼の選挙公約を実行できるようにするかだ。
記事原文のurl:https://www.strategic-culture.org/news/2017/07/16/us-deep-state-sabotaging-putin-trump-ceasefire-agreement-in-syria.html
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国家戦略特区によるカケ問題、審議の質疑時間、与党・野党、5:5にしろという理不尽。丁寧な説明が聞いてあきれる。
『国家戦略特区の正体 外資に売られる日本』を読み終えた。
おなじみの「岩盤規制」という言葉があるが、「要するに規制緩和のための規制緩和」と郭教授は書いておられる。
今の政権が実現を目指しているものが、例えば
労働者保護が皆無な小林多喜二が虐殺された時代の労働環境への回帰、
農地解放以前の、小作農時代への回帰
だということがわかる。
そもそも、特区、アメリカの圧力で始まったものなのだ。
横浜のカジノ、東京の混合診療、庶民にとって、恩恵皆無。
182ページにこうある。
国にも、国民にもメリットがない。負担は国民と、国民が支える国家へ。利益は企業へ。これが国家戦略特区の正体である。
IWJのアーカイブには、国家戦略特区にまつわるものが多々ある。
下記フォーラムには郭教授も登場されている。国民に向けられた安倍政権のドリル
国家戦略特区で「命の格差」がやってくる ~第3回希望政策フォーラム 「国家戦略特区は、何を狙っているのか」 2014.6.6
良いこと無しの国家戦略特区構想、 韓米FTAで韓国も規制緩和の嵐で大ダメージ 2014.4.13
【IWJブログ・特別寄稿】都知事選の隠された争点! 〜郭洋春著『TPP すぐそこに迫る亡国の罠』を担当した女性編集者の視点から 2014.1.29
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