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2015年8月15日 (土)

ベトナムとのアメリカの毒性‘パートナーシップ’

アメリカのベトナム戦争は、公式には、40年前に終わったとはいえ、この東南アジアの国は、アメリカ軍が残した恐るべき遺産と、いまだに戦っている。先週、アメリカのジョン・ケリー国務長官は、ハノイ滞在中に、二国がいかに“修復し”、新たな“パートナーシップ”構築しているかを褒めたたえた。

ケリー国務長官は、戦争終結から20年以上後の、1995年8月のアメリカ・ベトナム“国交正常化”から20周年について演説した。

“修復から構築へと移行するのに、20年以上かかりました。今後20年で、我々が一体何を実現できるか考えてみてください”とケリー国務長官は述べた。

アメリカ人外交官による“修復から構築へ”というのんきな説明は、アメリカのベトナム戦争による毒の遺産とともに暮らす約300万人のベトナム人に対して続いている恐怖と矛盾している。この人数は、アメリカの集中爆撃と地上戦で、戦争中に亡くなったベトナム人の総計とほぼ同数だ。

1961年から、戦争が終わる3年前の1972年までの間に、アメリカ軍は、合計757億リットルの極めて有毒な除草剤を、当時の南ベトナムに投下した。ニューヨーク・タイムズは、影響を受けた面積は、“およそ、マサチューセッツ州の広さ”、約27,300平方キロ・メートルだと報じた。これは当時の南ベトナム全領土15パーセント以上に等しい。

こうした枯れ葉剤で最も有名なものは、ベトコンと呼ばれる南ベトナム武装反抗勢力に対する、木による目隠しや、食料供給を絶つ目的で、アメリカが、飛行機や、海軍の川船から森林や作物に散布した、エージェント・オレンジだ。

ベトナム・エージェント・オレンジ被害者協会 (VAVA)によるとこうだ。“300万人以上のベトナム人が枯れ葉剤の後遺症を未だに患っている。2012年、枯れ葉剤に関連する健康問題を患っている赤ん坊が報告されているが、これは第四世代の被害者が現れたことを意味している。”

VAVA副理事長のトラン・スアントゥーは、被害者が苦しみ続ける限り、そして新たな症例が現れる限り、“戦争はまだ終わっていない”と語る。

南ベトナム全土へのアメリカの化学薬品散布による健康被害には、うんざりするほどの、癌、腫瘍、新生物、皮膚病や、先天性出生異常がある。

現在29歳のトラン・ティ レ フエンは、1975年に戦争が終わってから、10年以上後に生れた。彼女は、アメリカ軍が、オペレーション・ランチ・ハンドとして知られる、主力のエージェント・オレンジ飛行を運用していた中部ベトナムのダナン近くに暮している。トランは、ねじれて、痩せ細った不自由な両足の為、生れて以来、寝たきりだ。母親はこう語る。“色々な病院に行きましたが、治療をしてくれる病院は皆無でした。”

2013年まで、ほぼ10年間、VAVA無毒化プロジェクトを指揮してきたデンマーク人のベンテ・ピーターソンは、筆者に、エージェント・オレンジの毒で、家族全員が倒れた無数の例を回想してくれた。彼女は、特に息子を三人育てたのに、結局全員、違う癌で亡くなるのを看取るしかなかった、悲劇的なベトナム人退役軍人を覚えている。

人口比で言えば、ベトナムにおける現在の多数のエージェント・オレンジ被害者は、約1000万人のアメリカ人が、同様な命を脅かす病で苦しんでいるのと同じことになる。同様に、エージェント・オレンジの毒性に屈した何千人ものアメリカ軍退役軍人は、除草剤を製造した化学製品会社(モンサント、ダウ) から補償金を受け取っているが、ベトナム人は、ワシントンからいかなる賠償金も受け取っていない。まさに同じ裁判所が、1984年もの昔に、補償金を受け取れるようアメリカ人退役軍人に有利な判決を下しているにもかかわらず、ベトナム人被害者達が起こした集団訴訟は、アメリカ裁判所で繰り返し却下されており、最新のものは、2009年,アメリカ最高裁によるものだ。

ワシントンは、ベトナムにおける除草剤の使用は、故意に民間人を標的にしたものではないと主張している。それゆえ、エージェント・オレンジを、化学兵器としては利用しなかったと主張している。しかし、これは、何百万エーカーもの作物や森林に無差別に散布された、広範な住民が汚染されるであろうことを十分に知りながらの、ひねくれた言葉遊びのように思える。また工業分析は、1957年という昔に、ベトナムで、アメリカ軍が用いた除草剤が、極めて有毒で、発癌性のあるダイオキシンを微量に含んでいることを示していた。アメリカ人科学者や市民の反戦運動によって表明された健康への危険を巡る世論の圧力で、エージェント・オレンジ作戦は、1972年に公式に中止された。

2012年、アメリカ議会は、ベトナムの汚染された地域の汚染除去に、とうとう約4000万ドル割り当てた。全額が実際に振り向けられたか否かはまた別の問題だ。ベトナム全土の汚染除去の為のより現実的財政コストは、何十億ドルにものぼるだろうが、しかもこれは、被害者の適切な医療に必要な何十億ドルを含んでいないのだ。これまで、ダナンの元アメリカ空軍基地は、土壌や近辺の水路で、部分的な無毒化を行った。だが、何十もの、いわゆるダイオキシン“ホット・スポット”は、南ベトナム全体とカンボジアとラオス国境近くに散らばっているのだ。

マングローブの植え直しと、アメリカの枯葉作戦で破壊された高原地域に関与しているベトナム森林科学技術協会のファン・ツー・ボイは、“破壊された環境を回復するには何世紀もかかるでしょう”と語っている。

ベトナム、国民、環境を破壊してから40年後、ワシントンの“汚染除去”支援は、ベトナムに、エージェント・オレンジを散布するのに使われた208リットル入りドラム缶の一つにしか見えない。何百万人もの被害者や、これから何世代もの子供達にとって、これは全く不十分な賠償だ。

先週のジョン・ケリー訪問に関するベトナムの報道を丹念に読むと、アメリカが本当に懸念していることが分かる。ケリーは“修復”について語ってはいるが、戦争被害者の窮状や、ワシントン が直接的な医療支援を提供すべきものについては、ごくわずかしか触れなかったと報じられている。アメリカ国務長官にとって、ずっと重要だったのは、どうやら、他の東南アジア諸国11ヶ国と、環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)を実現しようという願望のようだ。ベトナムは、アメリカにとって、意図的にその貿易協定から中国を排除しているTPPを強固にする為の鍵と見なされているのだ。

ケリーは、ベトナム指導者達に、ワシントンはベトナムに対する武器輸出制限解除の方向で動いていると語り、中国との海上領土紛争で、アメリカがベトナムを支持することを熱心に繰り返した。

ベトナムに残した負の遺産を無毒化するのを支援するという、遅ればせながらのアメリカの動きは、2011年、ヒラリー・クリントンがアメリカ国務長官だった時に始まった。この動きは、今後、中国を最大の地政学的ライバルとして標的にするつもりであることをワシントンが合図した、オバマ大統領の下での“アジア基軸”政策とも同期していた。以来、ワシントンと北京間の緊張は着実にエスカレートしている。

だから、ケリー国務長官が、ベトナムとアメリカが“修復から、パートナーシップの構築”へと素早く動く必要性を語る際は、アメリカの本当の狙いは、対中国の地政学的計算上、ベトナムの協力をとりつけることにあると推論して間違いなかろう。

ベトナム指導部は特恵貿易特権やアメリカ戦艦の提供を喜んでいるかも知れない。だが、何百万人ものエージェント・オレンジ被害者達が証明している通り、ワシントンとのパートナーシップとされるものは、結局は有害なパートナーシップであることがわかるだろう。

記事原文のurl:http://www.strategic-culture.org/news/2015/08/15/america-toxic-partnership-with-vietnam.html

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てんこもり作文談話。染みだす侵略戦争積極参加意思表明の悪臭。

嬉々として戦争法案成立のお約束を英語演説する彼氏を、スタンディング・オベーションで歓迎した宗主国議会、一体どれほどありがたい代物か、考えるまでもない。

金も血もおっしゃる通り、いくらでも、いつまでも、どこへでも、提供いたしますというお目出度いカモ・ネギ属国傀儡に喜んで喝采しているだけ。

ワシントンとのパートナーシップとされるものは、結局は有害なパートナーシップであることがわかるだろう。

【岩上安身のニュースのトリセツ】安倍談話はやはり村山談話の否定だった!浮かび上がる「積極的平和主義」と「TPP」の正体 〜単なる米国の「属国宣言」に過ぎないという本質と本音

岩上安身責任編集 – IWJ Independent Web Journal

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コメント

                いざ往かん、君にさも似しかの国へ-越南自哀文- 

  1975年,ベトナム戦争は終わった。もう少し正確に言えば,対越米国侵略戦争が米国の敗北で終わった。そのおなじ年,加藤周一は「いざ往かん、君にさも似しかの国へ(『言葉と人間』,朝日新聞)」を書いて米軍の撤退(マクナマラ国防長官の「勝利は曲がり角に来ている」説の破綻)を歓迎し,しかしその将来の容易ならざる事を憂えた。
  そうして1984年,中越国境紛争が勃発し,双方に大きな被害が生じたが,1989年に戦火は収まる。以後,中越国境は開かれ,今や商売,貿易の決済は「人民元」であり,紛争などなかったかのようである。

  海辺の町のス-パ-ではタイ米,インドネシア米,マレ-シア米,そしてベトナム米などを見かける。まずいコメもあるが,ベトナム米などはかなり美味しい。しかしGMOのモンサント社が開発した枯れ葉剤(エ-ジェント・オレンジ)が小生の脳裏から離れない。そのオレンジを運んだのは沖縄の米軍基地からである。それを知ってか知らずか,人生の同行者もベトナムには行きたくない,という。

  ベトナムの声VOV5のHPにはダイオキシンに苦しむ子ども,人々の写真・文が載せられている。しかし,フクシマを経験した日本はベトナムへ原発を輸出するという。また最近の,スプトニク日本語版によれば,ロシアも彼の地に原発を建設するといい,米国はTPPによって(原発)労働者を5千人以上送り込む予定=皮算用である。
  他方で,日本の「他衛隊」が米軍・豪軍兵士を輸送艦に乗せてダナンを訪れている。それを親善訪問と言うから恐れ入るが,中米日ロの草刈り場になっているのが,現在のベトナムなのかもしれない。故に題して,越南自哀文。

  しかしながらベトナム政府は「したたか」なのかもしれない。小生の地元には某国際福祉医療大学があるが,日本政府ODAでベトナムから研修学生を受け入れている。英語で授業をしているのだが,フランス語の方が学生には理解しやすいので,研修の効果が上がっているのか不明。とは言え,日本の無償ODAは有り難い。しかしそれだけではない。

  ベトナム政府は,豪州と共にAIIBに加入し,ロシアを中心とした中央アジア諸国とユ-ラシア関税同盟に加入し,双方に顔を立てながら,自国の利益を最大にするように外交を展開しているように思えてならない。
  中国包囲網であるTPP-米国主導の経済同盟と対立するAIIB・ユ-ラシア関税同盟をどう舵取りをしていくか,興味は尽きないが,ロシアのラブロフ外相が言ったように「アメリカと付き合うと,ろくな事は起きない(スプトニク)」。すなわち,『ワシントンとのパートナーシップとされるものは、結局は有害なパートナーシップであることがわかるだろう』という考えに賛成する。
 
追記: 世界銀行の筆頭副理事長はマレ-シアが2020年までに「先進国」入りをするだろうと持ち上げている。中国人民銀行の3度にわたる利下げによりマレ-シア・リンギットの力が急激に弱くなった。そこでベトナムと比較したときその違いは,マレ-シアの米ドル・人民元依存度がベトナムより高いだけでなく,マレ-シアがイスラムの国であることである。裏を返せば,両国ともTPP交渉参加国であり,米日から持ち上げられているが,ベトナムはイスラエルの恨みを買っていないから,旅客機が落ちることはない。

  違いの二つ目は,アメリカの持ち上げ,脅しにも拘わらず,今日8月15日,マレ-シアのムスタパ・モハメド通産相は、環太平洋経済連携協定(TPP)交渉について、2018年までの妥結、発効はないとの考えを明らかにした(ザ・サン紙,ザ・スタ-紙)。しかし,ベトナムはTPPについて口をつぐんでいることである。おそらくかの国は米日と同じく,民主主義国家ではないのかもしれない。
 

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