NATO、リビアで軍事的こう着状態に直面
Peter Symonds
2011年8月4日
先週のリビア反乱軍司令官アブドル・ファタハ・ユニス将軍の理由不明な殺害は、NATOが支援する暫定国民評議会(TNC)の分裂して、不安定な性格と、ムアンマル・カダフィ政権打倒の取り組みにおける軍事的こう着状態を浮き彫りにした。暗殺の後、イギリスとフランスの閣僚が一連のコメントを行っているが、それは事実上、カダフィ政権はすぐに崩壊すると予測した、何ヶ月ものアメリカとNATOのプロパガンダを覆している。
月曜の演説で、イギリス外務大臣ウイリアム・ヘイグはこう表明した。“どれだけ続くか、我々にはわからない。一体いつ、カダフィ大佐が、自分が去るべきだということを認めるかはわからない。彼の政権メンバーが、いつそういう結論にいたるのかわからない。”戦争を継続するイギリス政府の決意を表明しながら、ヘイグは“紛争では、事態は穏やかな形では進まない。”と警告した。
ヘイグは暴露的なコメントの中でこれによって“何千人もの命を救い、エジプトとチュニジアの不安定化を止められたと、NATO爆撃作戦を擁護した。”民間人の命を救うというのは、NATOの違法な対リビア戦争を正当化するのに使われる口実だ。だが、エジプトとチュニジアに関する言及で、アメリカとNATOは、リビア石油の支配権掌握とともに、中東と北アフリカにおける革命的蜂起に対する足掛かりを設置しようと熱中していることが確認できる。
日曜のイギリスのリアム・フォックス国防相の発言に続く、ヘイグのコメントは、リビアの反体制派は、カダフィを打倒できそうもないことを認めている。フォックス国防相はこう語っている。“リビア問題解決の鍵は、カダフィ大佐の近しい取り巻き連中が、彼にかけても無駄だということを理解するか、どうかだ。彼の命脈はつきている。遅かれ早かれ、権力の座をおりるしかない。”
日曜、フランスのジェラール・ロンゲ国防相も同様な発言をし、いわゆる“反体制派”戦士は、リビアの首都を自力では制圧できまいと語った。彼は言う。“事態はトリポリに入りこむべきなのだ。はっきり言って、国民は立ち上がらねばならない。来月は当然厳しいことになる。[イスラム教の断食期間]ラマダン月でも、休止はないと思う。”
これらの発言は、彼等が外交的に認知したTNCの安定性に関する、ワシントンとヨーロッパ首都の懸念を反映している。ユニス将軍殺害から一週間後も、何が、なぜ起きたのか、まったく明らかになっていない。ユニスは、どうやら、先週木曜に、前線から、公表されていない嫌疑の尋問の為ベンガジに呼ばれ、他の二人の将校とともに殺害されたようだ。
ユニスの支持者達は、現地の導師が指揮する、有名なイスラム教主義者も加わっている民兵集団、2月17日殉教者旅団を公然と非難している。“反体制”政権内部の党派抗争を何とか避けようとして、TNCスポークスマンは、ベンガジで秘密裏に活動しているカダフィ支持者の罪をなすりつけようとしている。
二件目の原因不明の出来事として、TNC軍は、日曜早朝、カダフィ支持派の“第五列”とされる民兵集団と、大規模な戦闘を行った。戦闘は8時間以上続き、三人のTNC戦士と、四人の民兵が死亡した。TNC内務副大臣ムスタファ・アル-サギスリは、民兵が立てこもっていた工場で、ユニスの名前が載った殺害予定者リストとともに、武器と爆弾が発見されたと主張している。
ベンガジ掌握を強化すべく、TNCは様々な半独立民兵を抑えようと、市内で活動している。土曜日、衝突直前、TNC指導者ムステファ・アブドル・ジャリルは、様々な武装集団に、TNCに加わらなければ“粉砕する”と警告した。
TNC指導部は、TNCを支援している最大集団の一つである、ユニスの部族員の怒りをそらすべく、“第五列”をでっちあげようとして、戦闘の機会にとびついていても不思議はない。ユニスの身内は、将軍の殺害者は迅速に裁きを受けるべきだと警告しているとニューヨーク・タイムズは報じている。“一週間経ったが、情報は皆無だ”彼の息子の一人が新聞に語っている。“法律で得られないものは、実力で得るつもりだ”と彼は語った。
明らかに派閥抗争を懸念して、ワシントンが割って入り、TNCに、まとまって行動するよう呼びかけている。月曜、ホワイト・ハウスのマーク・トナー副報道官は、TNCはユニス将軍の死に関し、信頼できる徹底的な調査を行なう“生きるか死ぬか瀬戸際の瞬間”にあると警告した。“現地状況の流動性を考えれば、TNCは、リビアの反政府派とリビア国民を代表して発言しているのだという、明晰で率直なメッセージをだすことが重要だ。”
事実、殺害は、元カダフィ政府の役人、イスラム教徒や、CIAスパイたらの不安定な連合で構成されているTNCが、内情は派閥分裂している様子を浮き彫りにした。一般のリビア人の権益を代表するどころではなく、TNCは、カダフィを打倒して、自分たちの戦略的・経済権益に従順な傀儡政権を据えようとしているNATOとアメリカ帝国主義の代理だ。
NATO攻撃が始まって以来、四ヶ月以上たっても、カダフィ政権が、崩壊したり、軍事的に打倒されたりしそうな気配はない。ベンガジでの内紛に勇気づけられて、月曜、カダフィ大佐の息子サイフ・アル-イスラムは、リビアTVにこう語っている。“我々が払ったあらゆる犠牲、我々の息子達、兄弟や友人達の殉教からして、戦いを止めるなど、考えるべきではない。考えるな。NATOが退去しようと、するまいと、戦闘は、リビア全土が解放されるまで続くのだ。”
昨日、リビア軍は、NATOによるリビア封鎖を実行中のイタリア戦艦ベルサリエーレに向けて、ミサイルを発射した。ミサイルは届かなかったものの、この攻撃は、カダフィ派勢力の軍事能力が持続していることを示している。
NATOは既に、ラマダンの間も、犯罪的な爆撃作戦を止めないことを発表している。土曜、NATO戦闘機がリビアのテレビ送信機を攻撃し、三人を殺害し、15人を負傷させたことで、民間の非軍事施設を標的にしていることが浮き彫りになった。昨日の発表で、国際ジャーナリスト連盟のベス・コスタ事務局長はこう語った。“国際法に違反し、ジャーナリストを標的にし、その命を脅かすこの行為を、我々は強く非難する。”
西部海岸の町ズリタン周辺や、トリポリ南部や、南西部の山間地で、決定的ではない戦闘が継続している。包囲されたミスラタ市“反体制派”出身のTNC戦士達が、ズリタンを掌握し、カダフィ派勢力による反撃を撃退したとされている。軍事的勝利とされるものが極めて限定的なことが、TNCが、数ヶ月前より、カダフィ打倒に近づいたわけではない事実を強調している。
記事原文のurl:www.wsws.org/articles/2011/aug2011/liby-a04.shtml
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「反体制派」のうさんくささ、この記事でもわかるが、事態はますます混乱?
いまは、以下の状況になっている。
リビア反体制派、内閣を解散 最高司令官暗殺の混乱うけ AFP BBNews 2011年08月09日
3/11の後、石黒耀(あきら)の本を、三冊読んだ。
- 地震と津波と、原発がからむ『震災列島』
- 九州での超巨大噴火災害を書いた『死都日本』
- 富士山噴火を書いた『富士覚醒』
いずれの本も、権力側の人物・行動、かなり批判的に描かれている。
『富士覚醒』の後書きは、実にストレートで、納得。
原発というものは、行政が年間八〇〇〇億円以上もの補助金を大盤振る舞いして多数の天下りを送り込み、電力会社は莫大な宣伝費を使って「安い、安全、地球に優しい」というCMをマスコミに発注して手なづけ、都合の良い論文を書いてくれる御用学者に法外な資金提供をして勢力を拡大させることによって存在するシステムなのです。日本のような設置不適当国に原発が増え続けたのは莫大な利権を生むからです。仮に安くて安全で、しかし利権を生まないエネルギーシステムが発明されたとしても、日本では原発ほど普及しなかったでしょう。逆に役所の規制を受けることになったと思います。
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