アメリカのイラク占領延長交渉開始
James Cogan
2011年8月6日
イラク国会の主要政党指導者達の会議は、火曜夜、アメリカ政府と、2011年12月31日以降の、アメリカ軍駐留を認可する、駐留米軍地位に関する協定 (SOFA)について再交渉することに合意した。延長できなければ、アメリカ軍がイラクに駐留し続けることを正当化するための別の仕組みが必要となる。
月曜、バグダッドでの、ヌリ・アル-マリキ首相と、他のイラク人実力者達と、アメリカ統合参謀本部議長、マイケル・マレン海軍大将の会談後に、この決定が行われた。マレン大将は、イラク国会に、SOFA延長を“できるだけ早急に決断するよう”にというワシントンの要求を繰り返した。条約は“アメリカ軍兵士の特権と免責”を保持する必要があると彼は言明した。現行のSOFAのもとでは、アメリカ軍兵士は、戦闘活動中、あるいは基地内でおかしたいかなる犯罪に対しても、イラクの裁判所による起訴が免除されている。
オバマ政権は、2003年の違法なイラク侵略によって、アメリカが得た戦略的利益を、断固保持するつもりだ。ワシントンは、そこから世界最大の産油地域におけるアメリカの権益に対する、いかなる脅威にも反撃が可能な、中東の中心にある主要空軍基地にへのアクセスを維持したがっている。アメリカは同様に、アメリカに従順なイラク傀儡政権を、将来無期限に、抱え続けることを固く決意している。イラクの膨大な未開発の石油とガス資源が、今や大規模投資と採掘のために開放されている。アメリカは、過程を自分で方向づけて、アメリカ企業が必ず利益を得られるようにするつもりだ。
絶えざるアメリカの圧力にもかかわらず、占領支持派のイラク人エリートは、特にチュニジア、エジプトや、地域の他の国々における爆発的な政治の激変を踏まえ、アメリカ軍駐留の“招請”を発行するのを、何ヶ月も拒絶してきた。圧倒的大多数のイラク人にとって、アメリカ占領は大惨事であり、彼等はいかなるアメリカ軍の駐留継続にも激しく反対している。占領初期の五年間で、少なくとも120万人のイラク人が亡くなり、約400万人が自宅から強制退去させられ、イラクの大部分が荒廃させられた。
何千人もの国民が、イラク中で投下された、何百トンものアメリカ劣化ウラン兵器による深刻な健康問題に直面している。アル・ジャジーラの調査によれば、南部のシーア派のバビル州における癌罹患率は、2004年の500症例から、2009年の9,082症例へと増大した。2004年、アメリカ占領に抵抗したことに対する残虐な集団的懲罰としてのアメリカ爆撃で大半が破壊されたファルージャ市では、生まれる赤ん坊の四人に一人が、欠陥を持っている。
経済的に、イラクの労働者階級は、大量失業と、機能不全の公共事業に直面している。アメリカが押しつけた政権は、残虐で腐敗している。占領軍によって、絶えずあおられている、宗派、民族間の緊張は、国民を分断するために利用され続けている。今週も、敵対するクルドと、アラブの民族主義者が覇権を競っているモスルとキルクークでの爆発で、人命が失われた。
アメリカ占領に対して、大衆が抱く憎悪の深さゆえに、シーア派聖職者ムクタダ・アル-サドルに忠実な議会党派は、形ばかりの抗議として、火曜の会議から退場した。バグダッドの労働者階級地区や、他の南部都市の主要支持基盤を維持するため、マリキ内閣の閣僚として働きながらも、サドル派は、あらゆる外国軍の駐留への反対姿勢をとっている。アメリカ軍と長年協力してきた保守派のイラク・イスラーム最高評議会(ISCI)も、シーア派大衆の信頼を再構築しようとして、現段階では新たなSOFAの承認を拒否している。
新たな条約を支持している政党は、マリキのシーア派を基盤とするダーワ党、元CIAスパイ、イヤド・アラウィが率いる基本的にアラブのスンナ派を基盤とするイラキーヤと、イラク北部のクルド自治地域を統轄するクルドの民族主義政党だ。
他のシーア派政党による支持がないので、マリキは、SOFA再交渉への支持を獲得するため、イラキーヤに大幅な妥協を申し出た。水曜、国会は、長らく約束されていた、アラウィが率いる国家安全保障会議の設立に賛成投票した。マリキは、昨年12月の組閣以来、自分の職としてきた防衛相と国内治安相も任命すると発表し、イラキーヤに、この職につく候補者をあげるよう依頼した。
イラクによる正式なアメリカ軍駐留要請は、国民の反対を静めるよう、入念に作り上げられるものと予想される。ニューヨーク・タイムズと、ワシントン・ポストの記事は、現在イラクに駐留しているアメリカ人要員49,000人中、わずか10,000人だけが駐留を依頼されるだろうと示唆している。彼等はイラク軍“指導者”と表現されることになる。しかし、中には、イラク各地で、いまだに活動している武装反抗勢力の集団に対する作戦の先頭に立ち続けるアメリカの特殊部隊も含まれている。
グラウンド・クルー、保全要員、防空要員、防御部隊が、主要な戦略空軍基地から運行し続けるアメリカの飛行機を保守する。イラクには、実働する空軍がないので、イラク領空に対するアメリカ軍の現行の権利は絶対必要だと、アメリカとイラクの軍人達は、再三発言していきた。マリキは、アメリカに、36機のF-16戦闘機を注文したが、早くとも2014年までは引き渡されず、飛行できるようにしておくためには、長期的なアメリカの支援が必要になる。
駐留を続けるアメリカ軍要員は、継続中のアメリカ占領の一面に過ぎない。5月のナショナル・パブリック・ラジオ報道によると、イラクで現行の“役務”を提供するために少なくとも、民間軍事会社8社が雇われている。
アメリカ国務省は私兵を雇用している。5,000人もの傭兵が、バグダッドの巨大な大使館や、イラクの主要都市にあるアメリカ領事館防衛のために雇われている。これには、ディンコープ・インターナショナルによって運用されている攻撃型ヘリコプター航空隊の乗組員、イージス、グローバル・セキュリティーや、インターナショナル・ディヴェロップメント・サービシズなどの企業の地上防衛隊が含まれる。後者は、悪名高い旧ブラックウオーター・コーポレーションと関係がある。
記事原文のurl:www.wsws.org/articles/2011/aug2011/iraq-a06.shtml
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イラクの66年?先を進む日本、いつの日か、「駐留米軍地位に関する協定」を再交渉する機会はあるのだろうか?この国は、「地位協定」「安保」廃棄どころか、TPPに参加して、本物の永久属国になろうとしている。
サマワに軍隊を送った日本のマスコミ、サマワの様子はおざなりに報じたが、イラク「駐留米軍地位に関する協定」については、不思議にも、ほとんど触れていない気がする。イラクの「駐留米軍地位に関する協定」交渉を、詳細に検討している商業マスコミ記事・番組、ご存じであればご教示をお願いしたい。
日本のマスコミのアジェンダ・セッティング、日本のマスコミ論議の対象から、この重要な話題、完全に排除されていると思うのは被害妄想だろうか?資源エネルギー庁の反原発ブログ監視とは、比較にならない、「安保条約」「駐留米軍地位に関する協定」批判監視が行われているのだろうか?基地反対の実に穏やかな集会でも、大変な人数のお役所の皆様が監視しておられる。非暴力的な反原発デモも同様。囮による、参加者逮捕まである。例えば下記の記事。まともな反対意見への監視・抑圧、この国では日常茶飯事。
雪裏梅花様の記事、それって(もう一つの)カニコーじゃん!!(現代日本、既に小林多喜二等を虐殺した、治安維持法時代に先祖帰り?)
あるいは、属国化先進国では、イラクの人々とは、精神構造が全く異なり、圧倒的大多数の国民が、占領状態に満足しておられるのだろうか?
「安保条約」廃棄も「駐留米軍地位に関する協定」廃棄も主張することなく、思いやり予算を献上し、自国民から、税金をまきあげ、益々減価するアメリカ国債を大量購入し、原発と、核リサイクルで、大量放出される放射性物質で外部被曝、内部被曝を続けながら、「日米隷属同盟」を深化させ、永久「汚染不沈空母」のまま続くのだろうか?子供給付をやめるのは、「汚染不沈空母」の乗組員を、これ以上増やしても無駄とわかったからだろうか?いや、むしろ、官僚と民主・自民・公明その他、支配層が、「汚染不沈空母」乗組員の大規模削減策を、意図的に推進していると解釈するのが、一番素直に思えてきた。
ところで、「地位協定」、「通りがけ」様から、地位協定に関連するコメントを、(例えば、一例をあげると「CIAの無人機戦争に反撃する」では下記を)再三書き込んでいただいている。
日米地位協定を国民投票で破棄してやれば道徳を守らない政治家官僚公務員は次々と検挙されるであろう。日本人にとって伝統的に最も大事なものは法でも正義でもない道徳であり、日本人は不道徳を生理的に受け付けない民衆道徳社会を築き上げてきたからこそ、扶桑の国以来常に同時代世界最高の品格を連綿と保ち続けられておるのである。
地球史上最悪の不道徳国家アメリカに隷属する地位協定を、この期に及んでもなお直ちに破棄しない政治家は全員不道徳きわまる悪人悪漢であり、道徳心と正義感を堅持する品格ある日本国民正太郎の代表では全くない。
独立を実現する方策の一つかも知れないと、毎回拝読している。とはいえ
- コメントをいただく記事と、コメント内容が必ずしも関係していないこと
- ダーワ党やイラキーヤ亜流が多数派である国会で、どのように「地位協定廃棄」国民投票が実現するのか、コメント内容からは、小生には判読できないこと
から、折角のコメント、大半を公開せずにいる。あしからず。
「地位協定廃棄」国民投票ブログを開設されて、実現過程を詳述されることを期待させていただいている。
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