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2011年6月 9日 (木)

勝ち目のないアフガニスタン戦争をめぐるむなしい言葉

アレクセイ・プシコフ

2011年6月7日

RT

アフガニスタンのNATO軍は、最近またもや民家を攻撃し、民間人死傷者を出した。ワシントンは、状況を“きわめて深刻に”受け止めていると、ホワイト・ハウス広報担当官ジェイ・カーニーは述べた。

再三再四、アメリカは、こうしたむなしい言葉を語ってきた。再三再四、民間人死傷者の報告を、彼等は“きわめて深刻に”受け止めてきた。ところが何も変わっておらず、米軍はアフガニスタンで、日常的に、民間人を銃撃、爆撃し続けている。

その権力が、もっぱらNATO駐留に依存しているアフガニスタン大統領、ハミド・カルザイさえもが、数日前には我慢できなくなった。国中の、そしてカルザイの仲間の怒りは、カルザイが、アメリカに、“最後の警告”を与えざるを得ないところにまで至った。彼は言った。もしも攻撃が続けば、アフガニスタンは、NATO軍を“占領者”と見なす。

実際、彼らは占領者であり、それに関して、疑念をいだくアフガニスタン人はごくわずかだ。おまけに、アフガニスタン人自身が認めているように、ソ連も民間人を殺害したが、彼らは少なくとも、学校、発電所と道路を、建設したのに対し、アメリカは、砲撃し、爆弾を投下し、大惨事をひき起こしているだけなので、この占領は、ソ連の侵略よりもひどいのだ。

“NATOとアメリカの軍隊には、繰り返し、彼等の恣意的で、無用な作戦は、無辜の人々の死を招いていることを警告してきた。”カルザイは述べている。“しかし、誰も我々の言い分に耳をかさないようだ。NATOはアフガニスタンの村々を攻撃する権利などもっていないことを理解すべきだ。アフガニスタン国民はこれ以上我慢できない”と彼は言った。

“多少の民間人死傷者は不可避で、やむを得ないという可能性があることは悲劇的な事実です。”米国務長官ヒラリー・クリントンは無愛想に言い返した。これはつまり、アフガニスタンでは、何百人も、何千人もの、民間人死亡が今後も続く。しかも、これは、タカ派のジョージ・W・ブッシュならぬ、平和を愛するオバマ大統領のもとでだ。これは単に、誰が大統領であるかとは無関係に、リビアからアフガニスタンに至るまで、どこの国においても、アメリカ合州国が政策実現に尽力していることを証明するものでしかない。

だが、アメリカとNATOの軍隊が、アフガニスタンで実際に一体何をやっているのか自問してみようではないか。余りに長期間、現地にいるので、そもそも、一体なぜ彼らがそこに攻め入ったのかを誰も覚えていないようだ。連中は、アフガニスタンを2001年に支配していたタリバンが、9/11後に、ビン・ラディン引き渡しを拒否したから、攻撃したのだ。言い換えれば、連中の狙いは、ジョージ・W・ブッシュの言葉を借りれば、ビン・ラディンを、生死にかかわらず捕獲することだった。しかし、ビン・ラディンが殺害されてしまった以上(万一、アメリカ政府を信じるならば、たまたま、アフガニスタン外で)、一体なぜ、アメリカ軍が、いまだアフガニスタンにいるのだろう?

彼らはアルカイダや、国際テロと、闘って、本来ロシアの勢力圏であるべきはずの、中央アジアの共和国を守っているのだと聞かされている。ところが、実にとらえどころのないアルカイダはネットワーク組織であり、その頭を一つ切り落とすと、それが十に増えるのだ。

ともあれ、アメリカ合州国は、目に見える損害を与えること無く、アルカイダと永遠に闘うことが可能であることを立証した。アルカイダは世界中に遍在している。イエメンや、パキスタンを通して、モロッコから、インドネシアに至るまで。それなら、一体なぜ、アフガニスタンが、過去十年間も、大規模戦争によって荒廃させられているのだろう? そして、アメリカとNATOは、そこで一体何を達成しようとしているのだろう? 中央アジアを一体何から守っていようと、一体何人のタリバンを彼らが殺害しようと、この戦争に勝ち目がないことは火を見るより明らかだ。“アメリカとその同盟国は全ての戦闘に勝利し、しかも、彼らは戦争に敗北している。”ドイツの雑誌デア・シュピーゲルは書いている。

アメリカは、単に不名誉な撤退を恐れるがゆえに、この戦争を機械的に継続しているように思われる。遅かれ早かれ、アメリカが、タリバンと対話を行い、彼らとの合意を見いだし、最終的には、彼等を政府にとりこまなければならなくなるのは明白だ。カルザイや彼の同僚達が、ドバイや、アブダビで、不動産を買い占めているのも不思議ではない。彼らは自分達の政権がいかに脆弱かということを、誰よりも理解しているのだ。

要するに、アフガニスタンで民間人が亡くなっているのは、自由や民主主義のためではない。実際、アメリカ人は、彼等にこうしたものを与えることなど所詮できない。民間人が亡くなっているのは、アメリカ合州国が、分かりきっていることを認めようとしないためなのだ。大昔、全く同じことがベトナムで起き、しかも結局アメリカははやめざるを得なかったのを我々は見てきた。勝ち目のない、無駄な戦争をしているということを、アメリカが最終的に認めるまでに、アフガニスタンでは、一体何人の女性や子供達が死ななければならないのだろう?

記事原文のurl:rt.com/politics/columns/aleksey-pushkov-column/afghan-war-us-nato/

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最後の文章を読んで、ボブ・ディランの「Blowing in the Wind」風に吹かれて、を久しぶりに聞いた。

以下は、上記記事とは無関係。昨日たまたま読んだ、『強い者は生き残れない』環境から考える新しい進化論 吉村仁著 新潮選書に、失敗するのが明白な「巨大国家プロジェクト」が、軒並み強行されてしまう理由を説明する理論があった。「コンコルドの誤謬」著者は、有名な「素数ゼミ」理論の提唱者。テレビの生みの親、高柳健次郎のお孫さん。彼の「進化論」を読ませて頂こうと思ったのだ。まえがきの一部4-5ページを引用させていただく。

生物史が私たちに教えていることは、気の遠くなるような長い年月、生命(遺伝子)というバトンを渡し続けている生物は、決して「強い者」ではないという事実である。今、この惑星に生き残っているのは「環境の変化に対応して生き残ってきた者たち」だった。

そして、「いかに環境の変化に対応するか」でもっと有効な方法のひとつが、他者と共存すること」なのである。

86~89ページから、また引用させていただこう。

コンコルドの誤謬

 リスク回避をしない面白い例がある。それは、「コンコルドの誤謬(Concorde faracy)」といわれているものだ。「ファラシー(faracy)」という英語、この場合、意図的な誤り、論理的なウソ、つまりインチキのようなニュアンスがある。

コンコルドとは、かつて北大西洋を3時間半足らずで横断した超音速旅客機のことである。このコンコルドにまつわる開発問題である。

 開発途中で、予想以上の開発費の上昇や採算性の問題から中止か継続かが問われた。開発費の高騰から、利益がまったく見込めないのに、開発を続けることは赤字を単に上積みするだけである。ところが、開発は続行された。超音速で飛ぶため、燃料費は莫大で、採算性はまったくなく、飛ぶだけで、巨額の赤字を生み出していた。開発中からすでに、就航してから赤字となることは分かっていた。開発中止が問われたときの続行理由は、「すでに何千億円もの巨費を投じたのだから、少しでも元を取りたい。つまり、今までに投じた額に比べてあと少しの費用で開発が終わるなら、開発を続行して元を取るべきである。さらに就航をする理由も、折角開発したのだから、就航させなければ開発が無駄になる。少しくらい赤字 でも就航させるべきである」だった。

 ここで使われた、「いままでに巨額の費用を投じて、もう少しで完成するのだから、完成させなければ損である」というロジックは、まったくのインチキである。なぜなら、収益最大化の観点からすると、続行すれば赤字を増加させるものは、すでにどれだけ費用をかけていようとも、さらに投資すれば、赤字をより大きくするだけだ。つまり、即刻中止するのが赤字を減らすもっとも最適な選択肢である。過去に使った費用は将来の最適化には無関係だ。

 これらの開発費は英仏両国政府により拠出されていたので、英国、フランスの両国民の税金が使われている。もし、開発が政府の費用でなく、ロッキードなど一般の旅客機製造会社による純粋な開発だったら、採算性の問題から計画もされなかったであろう。

 「コンコルドの誤謬」、実は、日本でも多くの公共事業で頻繁に使われるロジックだ。地方空港の建設などよい例。地方空港の多くは採算が取れないことは明白だ。

 今からでも即刻中止するのが県民にとってもっともよい選択肢である。静岡県は夕張市のように、将来的には破産するのかも知れない。コンコルドの誤謬が頻繁に起こるのは、公共事業は住民の税金を使っているので、事業の決定者(知事や県議会)には何の不利益もないからである。彼らの利益追求の考え方では、事業の続行がもっとも理にかなっているのである。

  逆に、「コンコルドの誤謬」を正した例もある。滋賀県栗東市の新幹線新駅が現滋賀県知事の決定により中止されたのは、まだ記憶に新しい。

なるほど、

    • 原発
    • MOX燃料
    • 核燃料リサイクル・システム
    • 高速増殖炉もんじゅ
    • 六ヶ所村再処理場
    • 八ッ場ダム
    • 各地の基地拡張、等々

「コンコルドの誤謬」そのまま。

そもそも、核汚染物質の廃棄場所は未定。だから、原発の炉の上に、膨大な使用済み核燃料プールを置くという、正気とほど遠い設計を平気で認めるのだろう。

財務省、外務省、経済産業省、原子力完全不安院等々のエリートの皆様、

公共事業に国民の税金を使っているので、事業の決定者(経済産業省や、首相、国会)には何の不利益もないからである。彼らの利益追求の考え方では、事業の続行がもっとも理にかなっているのである。

自分の金であれば、採算性の問題から、こうした歴史的愚行、計画などされなかったであろう。彼等が腐心しているのは「環境をいかにひどい方向に変化させるか」。膨大な国費を、国家滅亡のために投資?しているとしか思われない。

小選挙区制度のもとで、選挙をやって、何度、二大属国政党を交替させたところで、財務省、外務省、経済産業省、原子力完全不安院等々の組織が解体されるわけではない。

「コンコルドの誤謬」を推進する人々が出世し、「コンコルドの誤謬」を改めようとする人々は永久に排除されつづける悪魔のサイクル。

文明には栄枯盛衰が起きる。それは利益の個人占有が発達するからだ、と著者は考えておられる。以下は、241ページから引用させていただく。

文明の勃興期には、社会の全員が国や民族のため利他行動をとっていたのに、ある程度繁栄してくると、自分の楽しみを追求した利己行動へとスイッチしていく。集団内では利己者の利益が高いので、徐々に利他者が減っていく。そして、文明が燗熟したときには、ほとんどすべてが利己者となり、革命か衰退により自己崩壊していくのである。

 このような繁栄から衰退への推移の仕方は、生物界における「適応放散(繁栄)と絶滅」とほぼ同じなのである。

そして、強いもの勝ちの資主義推進には批判的でおられる。「強者」もいつかは負けてしまう、と。下記は228ページからの引用。

「自由」という錦の御旗の下に、ナッシュ解を求めていったら、絶滅しかあり得ないことは、約40億年の地球の生物たちの進化史が教えてくれているのである。今、「長期的な利益」のために、「短期的な利益」の追求を控え、協同行動をとるべき時なのだ。

 「強い者」は最後まで生き残れない。最後まで生き残ることができるのは、他人と共生・協力できる「共生する者」であることは「進化史」が私たちに教えてくれていることなのである。

首相候補に上がっている皆様、誰一人、こうした発想をする人はおられるまい。そういう人物、属国与党幹部になれるはずがない。管下ろしの本質、単なる、「原発推進」でしかないように見えてくる。国民の命より、企業・個人的利益。再度、213ページから引用させていただく。まるで日本現状ルポに読めてくる。長期的存続など、念頭にないだろうが。

集団が大きくなると、世襲制を含めて統治システムがしばらくは自動的に継続するようになる。
そのため、取り巻きも含めた複数の権力者が個体(個人)の利益を優先しても、集団全体には、すぐには影響が出てこない。だから、権力者が利己的になっても、集団はながく維持されることになる。その集団が維持されている間(タイムラグの間)は、集団よりも個体の利益を優先させたほうが個体の適応度は上がる。もちろん、自分と自分の周りの者だけでも優雅に暮らしたほうがいいに決まっている。が、長期的な集団の存続ということから見れば権力者の一人勝ち」はマイナスであることは間違いない。

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コメント

いつも読まさせていただいています。自身では知識がないので!
お金の力は偉大なのでしょうね。
人と助け合っていかないといけないはずなのに、
これでは、もっと散らばって孤独に生きたほうが良いようです。まさに野生のように!
野生も群れはありますが
何が満足なのか?
毎日を一生懸命生きれればいい!と思います。
テレビのない世界で!

>原発による電気エネルギーの製造など論外だ、と京大の小出先生は怒りを込めて言った。
>「たかだか電気を作るためのものでしかないのに、子ども達の未来を売り渡して良いのか!」
>>http://kyosukeyamashina.blog62.fc2.com/blog-entry-925.htmlより

子供たちの未来を踏みにじれと命令するものの正体。

原発の原子炉の中で起こっている臨界核分裂は原爆の爆発と同じものである。

日本人を原爆の人体実験対象にしてデータを収集し続けている米軍。福島第一原発事故発生当初から米軍特殊部隊が首相官邸にまで入り込んでいたという。彼らの目的がメルトダウン防止にあったと信じる者は世界中に一人もいないであろう。

このように他国である日本の中枢部まで米軍が何の外交儀礼も手続きもなく好き勝手に入り込めるのは、ひとえに地位協定という治外法権のせいである。

日本の国防は米軍の地位協定治外法権によって薄紙のごとく破られ続けて穴だらけにされておりまったく機能していないのは皮肉な現実である。

米軍に未来を轢殺された沖縄の少女とおなじく、日本の子供たちの未来を踏みにじれと命令するものの正体は、「地位協定」を振りかざした戦争の狂犬病者米軍である。

扶桑の国の平和憲法の力で全世界の子供たちの未来を臨界放射能から守ろう。

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