国旗はしまおう-7月4日にハワード・ジンを追悼する
ハワード・ジン
2010年7月3日
"The Progressive"
今日7月4日は、愛国心と愛国心のあらゆる象徴は放棄したほうがよさそうだ。国旗、国家に忠誠するという誓い、神はアメリカのみを祝福したもうという国歌へのこだわりを。
そうしたものは愛国心ではない。余りに熾烈で、大量虐殺を生み出すような、国旗、国歌への心酔は、人種差別や宗教的憎悪と並ぶ、現代最大の悪の一つだ。
子供の頃からずっと、はぐくまれ、仕込まれ、吹き込まれてきた、こうした考え方は、権力者にとっては便利だが、権力を持たない人々にとっては極めて有害だ。
国が小さく、軍事力も、拡張への熱望も欠けているような国々(スイス、ノルウェー、コスタリカ等々)にあっては、愛国心も無害な可能性はある。しかし、わが国のように、巨大で、何千発もの大量破壊兵器を保有する国家においては、無害なうぬぼれでありえたかも知れないものが、他国にとっても、また自らにとっても、危険で傲慢な国粋主義と化してしまうのだ。
アメリカ国民は、わが国は、他の国々とは違っていて、世界の中でも例外で、比類なく高潔であり、文明、自由、民主主義をもたらす為、他の国々進出するのだと考えるように育てられている。
そうした自己欺まんは、遠い昔に始まったものだ。
最初のイギリス人入植者がマサチューセッツ湾のインディアンの土地に移住し、抵抗に出会った際、武力衝突は、ピクォート・インディアンとの戦争へとエスカレートした。インディアン殺戮は、神によって認められたものであり、土地の奪取は、聖書によって命じられたのだ。清教徒は聖書の詩篇2:8を引用するのだった。"求めよ。さらば汝に諸々の国を嗣業(ゆづり)として与え、地の果てを汝のものとして与えん。"
イギリス人がピクォートの村に火を放ち、男性、女性や子供を虐殺した際、清教徒の神学者コットン・メーザーはこう言った。 "その日、600人以上のピクォート族が地獄に送られたものと想定される。"
米墨戦争直前、あるアメリカ人ジャーナリストは、"神意によって割り当てられた大陸を覆い尽くすのは、我々の明白なる運命である"と宣言した。 メキシコ侵略が始まった後、ニューヨーク・ヘラルド紙はこう宣言した。"あの美しい国を文明化することは、我々の運命の一部だと信じている。"
わが国が戦争を始めるのは、いつも、建前は悪意のない目的だった。
キューバ人を解放するために、アメリカは1898年にキューバ侵略し、それから間もなくフィリピンで戦争を始めたが、マッキンリー大統領は フィリピン国民を"文明化し、キリスト教化するため"だと語っていた。
アメリカ軍がフィリピンで虐殺をしている最中(少なくとも600,000人のフィリピン人が、数年の武力衝突の間に亡くなった)、陸軍長官エリフ・ルートは、こう語っていた。"戦争が始まって以来、アメリカ人兵士は、他の全ての国々の、他の全ての兵士たちと違っている。アメリカ人兵士は自由と正義、法と秩序、そして、平和と幸福の前衛部隊なのだ。"
イラクで、わが兵士が他の国々の兵士と変りないことを我々は目にしている。彼等は、おそらく、その良心に反して、何千人ものイラク民間人を殺害した。そして兵士の中には拷問という残虐行為を行える能力を発揮した者もある。
それでも、彼等とてアメリカ政府の嘘の犠牲だ。
兵士たちに、もしも君たちが死んだら、もしも彼等が手足を失ったり、盲目になって帰国するようなことがあれば、それは"自由" の為、 "デモクラシー"の為なのだ、とブッシュ大統領が語るのを、我々は一体何度聞かされただろう?
国粋主義思想の効果の一つは、バランス感覚を喪失することだ。真珠湾で2,300人が亡くなったことでが、広島と長崎で240,000人の人々を殺戮したことを正当化しているのだ。9月11日に3,000人が亡くなったことで、アフガニスタンとイラクで、何万人もの人々を殺害していることを正当化しているのだ。
愛国心は神意によって祝福されているのだと言われると、愛国心は更に毒々しさを帯びる。今日アメリカには、四年間で二つの国を侵略し、2004年の選挙遊説で、神は私を通して話しておられると宣言した大統領がいる。
わが国は違うのだ、世界史上の他の帝国主義大国より、道徳上優れているのだという考え方に、私たちは異議をとなえる必要がある。
特定の一カ国にではなく、人類に対する忠誠を、私たちは主張しなければならない。
第二次世界大戦では、爆撃手として服務したハワード・ジンは、ベスト・セラー"民衆のアメリカ史" (最新版はPerennial Classics、2003年=邦訳、上・下巻は明石書店刊)の著者である。本記事は、2006年プログレッシブ・メディア・プロジェクトによって配信された。
ハワード・ジンは今年1月7日に亡くなった。彼の業績のより詳細については、マシュー・ロスチャイルドの"有り難うハワード・ジン"を参照されたい。
記事原文のurl:www.informationclearinghouse.info/article25862.htm
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違法侵略をする宗主国の指令に、唯々諾々として従い、基地を提供し、みかじめ予算を渡し、アフガニスタン、イラクでの空爆による違法な民間人殺戮を支援する属国支配者が、権力を持たない国民に属国国旗・国歌を押しつける。
某イスラム国の人に、原爆を二発を落とされたのに、どうして日本人は、アメリカの後を素直についていくのか?と、詰問されたことがある。
質問する方がまっとうで、質問される側の方針がまっとうでないだろう。
「個人的には、大勢とは逆のことを考えています」と答えたが、相手の方にたいする答えにはなっていなかったはずだ。
それも、もうずっと昔の話。今なら、もっと激しく詰め寄られるだろう。現在は、もはや原爆被害国といって、逃げられない。イスラム教の人々を違法に殺害するのを進んで幇助しているのだから。日本は中立ではない。あきらかに侵略に加担する側にいる。日米軍事同盟というのは、それが目的だ。日本中の米軍基地はそれが目的だ。
野球賭博は悪いことだろう。しかし、国民の圧倒的な反対を無視して、世界最大のならずもの国家である宗主国用の世界侵略幇助基地を作る約束をするほうが、はるかに罪は重いだろう。
国民に対しても、そして、侵略される外国の人々に対しても。マスコミは、本当に重要なことには決して触れない。
七夕の日、来る選挙で、ますます属国化・ガラパゴス化し、内田樹教授が『従者の復讐』で主張しておられる、抱きつき心中高等戦術が促進されることでも祈ろうか?
実は、日本の民はかしこい。無駄な抵抗などせず、さっさと属国化を促進し、宗主国・属国ともども、破滅を早める決意だ。特攻隊精神は、しっかり遺伝している、のだろうか?
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ej 様コメントありがとうございます。おっしゃる内容は良くわかりました。「欧米の概念を余り簡単に信じるな」はまさに普段私が周囲に言っていることだったので「まいった」と思いました。日本の医学界ではアメリカで行われていることを何の批判検討もなく我々も取り入れろとよく言われ、厚労省からいつの間にか通達が出されて我々が右往左往するという事態が続いています。例えば癌治療専門医制度も医師の数はそのままで「癌医療が遅れているから制度だけ取り入れろ」といわれて実態は何も変わらないのに同じ医師が各科治療も行い、癌治療専門医にもなるというような馬鹿げたことが繰り広げられています。経済や資本主義のありかた、政治のありかたも利害得失を検討することもなく「欧米でこうだから日本もやれ」みたいなことがあまりにも多い。おっしゃる通り「欧米の概念を余り簡単に信じるな」と思います。
国家については、日本でずっと暮らしていると「日本」と「外国」の二つの国しかないように普段は感じてしまうのも本当なんですね。
投稿: rakitarou | 2010年7月28日 (水) 00時37分
rakitarouさん、此の前英国で行われた国際ラクロス大会(ラクロスと言うスポーツ知っていますよね?北アメリカ原住民が始め伝統的に行っているスポーツです。)でラクロスの本家本元のアメリカ原住民国家のイロコイ国家代表チームが彼等のイロコイ国家のパスポートで英国入りをしようとしたのですが、英国はイロコイ国家は国際的に認められていない(詰まり、欧米諸国の観念で国家と認められていないと言う意味)と言う理由でイロコイ国家チームの英国入国を拒否しイロコイ国家チームは国際大会で戦えなかったのです。(若し参加が認められていたなら当然英国ラクロスチームなんか子供同然の様に撃破していたのでしょうけれど)
前置きが長くなりましたが、現在rakitarouさんが使っている国家と言う概念は欧米諸国による人種差別的な概念であって土地を占有し国境があり国旗が或ると言う極めて薄っぺらな概念なのです。
rakitarouさんの頭の中に有る“国家”は人種差別をする欧米白人支配層によってデッチ上げられた幻なのです。
rakitarouさん日本人とかアメリカ人とかよりも人間としての自尊心のほうが大切だ思いませんか?欧米の概念を余りに簡単に信じない様に気をつけてください。
私が『国家とは幻想だ!』と言った独逸の思想家の言葉を引用したのは彼が西欧人だからではなく、彼が近代、現代の歴史の中で初めて“国家”と言う言葉の危険性について語った人だからです。因みに『神は死んだ』と言うニーチェの言葉は『国家は幻影だ!』と言った此の思想家の言葉『神は死んだ!我々人間が殺したのだ!』から来ています。
投稿: ejnews | 2010年7月27日 (火) 18時34分
日本の場合ナショナリズムとパトリオチズムはほぼ同一のものとして語られています。韓国では南北の問題もあり両者が相反する内容を含むでしょうし、中国でも自分の属する民族によって両者の意味合いが変ってくる事でしょう。「日本でも厳密には違うぞ」という議論はあるでしょうが、日常生活の実感としてはそれは嘘です。
日本では「お国自慢」という言葉が示すように純朴な郷土愛の延長として愛国心が語られることが多かったのですが、大日本帝国が戦争に敗けたことで郷土愛の範囲を国家まで広げた時点でそれは議論の余地なく「悪いものとする」と定義づけられ教え込まれてきました。「愛国心は大切だ」などと言おうものなら本人の真意や信条を確認することもなく特定のレッテル貼りをして「倫理的に悪意を持った人士」として黙らせなければならないと殆ど無意識のうちにすり込まれてきたと言えます。だから私もなかなか公の場所で公言できない。
「郷土愛の延長として愛国心があってはならない」というのは、日本において未来永劫続かなければいけない概念でしょうか。「外国」の権威ある偉い人の言葉を教養の一部として引用するのではなく「日本人自ら」が考えて「自分の言葉で」意見を述べて欲しいところです。
愛国心(パトリオチズム)は帝国主義戦争に利用されたとする解釈はむしろ欧米列強において、戦後はアメリカで現在においても当てはまる概念であって日本の兵士の手記などでは純朴な郷土愛の延長として愛国心が語られている場合の方が多いように感じます(こう書くだけで戦争を美化していると言う反応が返ってきてしまう所が日本の思考力のレベルの低さなのですが)。クリントイーストウッド監督の硫黄島二部作など日米の戦争における愛国心の解釈を対比させた良い例と言えます。日本人よりも外国人である監督の方が日本人の愛国心を色眼鏡なく素直に解釈していることは皮肉なことです。
人間が社会で生活する以上「法律」が及ぶ範囲の境界として「国家」があります。他国にたいする経済問題の協議では「国家の利益」を背負って官僚や政治家が交渉にあたりますが、自己の所属する社会の延長としての「愛国心に基づく国益」をとことん追及する気概がなければ、力の強い者(他国)に結局利用されてしまう結果になります。日本において「反愛国心」を利用する勢力(主にアメリカですが)の狙いはそこにあります。
投稿: rakitarou | 2010年7月19日 (月) 08時43分
愛国心や国家について一寸---------Johann Kasper Schmidt(Max Stirner)の有名な著書“The Ego and its Own”の中だったと記憶していますが『国家は幻影だ!』と言う所があったと思います。国家とは昔から人間集団を支配している特定の集団が国民と呼ばれる大多数の人間集団から税金とか言うまことしやかな名前で金を搾り取ったり戦争と言う合法的殺人に国民と呼ばれる哀れな人間集団を強制する為にでっち上げられた概念なのです。(現在でも国家を持たない人間集団が民族と呼ばれて存在するのです。例えばアイヌとかアメリカの原住民族とか色々ですね。)
兎に角、------と言う事で『愛国心』と言う事を大声で喚き散らしている人々は100%裏に何か個人的魂胆を隠しているのです。アメリカの保守派や右翼の様に。
George Orwellも『愛国心と言う言葉で戦争を煽っている奴らに限って実際には戦わないで戦争によって個人的利益を得る奴らばかりだ---------』なんて事を何処かで書いていましたね。
投稿: ejnews | 2010年7月10日 (土) 05時46分
私は愛国心は嫌いではありません。一部の利益集団が特をするために愛国心という言葉が悪用され続けていることが問題なのだと思います。世界の人々から米国が敬愛されるようになり、米国民が平和に暮らし、他国を侵略して虐殺に加担することがなくなるように提言することは「真の愛国心」と言えるでしょう。その意味でこのような文章がstars and stripesやNY timesでなくprogressiveというようなメディアに載せざるを得ないのは悲劇的ですね。それは日本も同様で「愛国心」も「反愛国心」も追及してゆくと本来の国民の幸福につながらない「ある種の権力」につながっている所が「愛国心」という言葉を不純なものとし、国民を政治的思考から遠ざけさせている元凶なのだろうと思います。
投稿: rakitarou | 2010年7月 8日 (木) 00時14分