銃をつきつけられた中で行われるアフガニスタン大統領選
wsws.org
2009年8月20日
どこから見ても、今日のアフガニスタン大統領選挙は茶番だ。外国による軍事占領継続状態のもと、人権侵害、汚職や、国民の圧倒的大多数の基本的要求を実現し損ねていることで評判が悪い傀儡政権に、てこ入れをするために、選挙は行われるのだ。
2002年に、アメリカによって就任させられた現職大統領で、主力候補者であるハミド・カルザイは、広範なアフガニスタン国民から忌み嫌われている。特にタリバンの影響力が強い、南部のパシュトゥーン族地域における、国民の大多数の反対という事実にもかかわらず、アメリカ-NATO占領に反対する人物は、有力な立候補者から排除されている。カルザイの主要なライバルである、元外務大臣アブドラ・アブドラは、かつてはアメリカが、タリバンを打倒するのを支援した、北部同盟民兵組織の広報担当だった。
アメリカとNATO兵員人数の増強にもかかわらず、タリバンと彼等の仲間は、東部と南部アフガニスタンの多くの地域で、支配力を持っており、選挙ボイコットを呼びかけている。アフガニスタンの少なくとも60パーセントで、投票所は攻撃される危険がある。7,000箇所の投票所のうち、およそ440箇所は、警備が不可能なため、全く開設されない。およそ100,000人の外国軍と、180,000人のアフガニスタン政府軍と警察の要員が、投票を警備するために配備されている。
タリバンや、グルブッディン・ヘクマティアルのイスラム党運動などの他の武装反抗勢力集団は、アメリカとNATOの軍隊を、アフガニスタンから追い出し、親米政府を打倒するための活動を強化している。有力な大統領候補の全員が、武装反抗勢力との交渉や、連立政権さえ約束しているが、支持が拡大しつつあるため、タリバンやヘクマティアルは、外国による占領という条件下では、交渉に入らないと主張している。
勢力圏を証明すべく、武装反抗勢力は先週、占領支配の中枢に対し、目立つ攻撃を遂行した。8月15日、カーブルのNATO本部と、近くのアメリカ大使館が、大型自動車爆弾の標的となった。火曜日、タリバン戦士は、迫撃砲を射程内に据えつけ、首都中心部にある厳重に警備されている大統領官邸の敷地に砲弾を撃ち込むのに成功した。
今月、タリバン武装反抗勢力が全く存在しないと思われていた同国の北部諸州を含め、アメリカと外国の軍隊、アフガニスタン治安軍、候補者や、政府幹部に対する無数の攻撃が発生した。8月のアメリカ/NATO兵士の死亡者数は、既に50人にのぼり、この戦争で最高である、7月の75人という死者数に続いている。公式数値は、めったに発表されないが、さらに毎月少なくとも150人の政府軍兵士や警官が殺害されている。
南部と東部では、投票率は極めて低いものと予想されている。ウルズガン州のあるアフガニスタン人裁判官はマックラッチー紙に語っている。「国民のわずか10から20パーセントが投票できるに過ぎません。国民の80パーセントが投票できないのに、一体どうしてこれが透明な選挙でしょう?」
アメリカは、タリバンの暴力を非難するが、8年間の無差別空爆、地上攻撃、そして何千もの恣意的な拘留が、占領と、それに対するアフガニスタン協力者への根深い敵意を生み出したのだ。
1996年にタリバンによって打倒された部族軍長達の集団、北部同盟を、アメリカ侵略が、基本的に、政権復帰させた。わずかな新顔といえば、数十億ドル規模の“再建”や“援助”プロジェクトで暴利をむさぼろうと、アメリカやヨーロッパから舞い戻った貪欲な亡命実業家の一団くらいのものだ。
中部と北部の諸州では、主としてタジク族、ウズベク族やハザラ族の部族軍司令官が、結果を左右する。カルザイは、主としてその恩恵を受ける人物となることが予想されている。彼の二人の副大統領候補や、他の支援者達は、主要な北部同盟メンバーであり、カンダハル州からのアヘンとヘロイン交易の大半を組織しているとして、非難されている、彼の弟アフメド・ワリ・カルザイを含む、タリバンに反対する、南部パシュトゥーン族実力者の多くに支援されている。
オバマ政権すらもが、選挙結果は、主としてカルザイが任命した選挙担当職員による大規模な票操作によってゆがめられるであろうことを認めざるを得ない。1700万という総人口に対し、少なくとも300万枚の複製、あるいは不正な有権者登録票が出回っていると考えられている。今週BBCは、同社の覆面ジャーナリスト達が、1,000枚の投票権を、一枚10ドルで、カーブル路上でいとも容易に買う手配をすることができたことを明らかにした。
もしも、カルザイが選挙で圧勝できなければ、二番目に得票の多かった候補との、決選投票を強いられよう。アメリカ国際共和研究所によって行われた最近の世論調査では、カルザイは、44パーセントで、これに対し、一番の強敵アブドラ・アブドラは、26パーセントだった。他の二人の有力候補、アシュラフ・ガニと、ラマザン・バシャルドストは、いずれも10パーセント以下だった。
大統領選挙の詐欺的な性格は、オバマ政権のあからさまな介入によって、浮き彫りにされている。アメリカが率いる占領に、忠実に仕えてきたにもかかわらず、カルザイに対しては、彼の政権の腐敗と、国民による支持の欠如に対する、アメリカによる批判が激しくなっている。カルザイ自身が、空爆を僅かばかり批判したことが、アメリカ軍をいらだたせた。ワシントンが中立を主張しているにもかかわらず、アメリカ大使カール・アイケンベリーは、今年始め、カルザイに対する二人の主要ライバルと並んで公然と登場した。
先週土曜、親タリバン時代の残虐な部族軍司令官の一人であり、2001年のアメリカ侵略に際して、主要な同盟者であった、ウズベク族の実力者アブドル・ラシド・ドスタムのアフガニスタン帰国をあからさまに非難して、ホワイト・ハウスは、カルザイに対する不満を明らかにした。昨年、ドスタムは、政敵を殺害した後、自主的に、トルコに国外亡命することを強いられていた。カルザイの招待により帰国すると、ドスタムは、即座に現職大統領への投票を呼びかけた。
アメリカ大使館は、ドスタムは、“大規模な人権侵害に対する責任問題”に直面しているという偽善的な発表を行った。告発は、1990年代の彼の戦争犯罪には触れておらず、2001年に、クンドゥス州で、北部同盟の戦士達によって捕らわれ、捕虜となったタリバンの大量殺害に関するものだ。マザリシャリフでの同様な虐殺における、CIA工作員やアメリカ特殊部隊の関与については、全く触れられていない。((英語原文)“アメリカによる、マザリシャリフ虐殺のもみけし”を参照)
アメリカとその同盟諸国は、カルザイが、一回目の投票で圧勝するのを防ごうとしているかのように見える。火曜日夜、駐アフガニスタン・イギリス大使、マーク・セドウイルは、オーストラリア放送協会に、二回目の投票が「アフガニスタン国民に、この過程が本物であることを、納得させるだろう。」と語っている。
たとえカルザイが選挙で勝利したとて、彼の立場は確実とは言い難い。アメリカ軍司令官達の有力な顧問であるデーヴィッド・キルカレンは、今月早々、カルザイを、非常にきつい言葉で表現し、不吉にも、彼を、ケネディ政権が1963年に暗殺したベトナム大統領のゴ・ジン・ジェムになぞらえた。
ワシントンは、選挙によらない“最高執行官”を設置することで、アフガニスタン政府の日常業務を支配するという、大統領から多くの権力を秘かにはぎ取る計画を推進している 。ブルッキングス研究所の外交政策部門、世界銀行や国連に勤務したことがあるアシュラフ・ガニは、こうした高官の候補者の一人だ。
選挙が片づき次第、オバマ政権とペンタゴンは、戦争の大規模エスカレーション計画を推進するだろう。何万人もの追加アメリカ兵士が配備されたが、アメリカ人司令官達は、この残酷な新植民地戦争で、殺し、殺されるべく派遣される、更に多くの兵士を要求する用意をしているのだ。
James Cogan
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