■ 副業として主審を担当する人も多い。今シーズンの開幕の時点でJリーグの主審として登録されているのは57人。(副審として登録されているのは78名。)各節はJ1が9試合、J2が11試合、J3が8試合なので合計すると28試合。土・日に行われる28試合を57人の主審で回す必要があるのでスケジュールを組むのはかなり大変である。プロフェッショナル・レフェリー(PR)になると年間でJリーグの試合を30試合ほど担当することになるのでハードな仕事である。
57人の主審の中でPRは10名、78名の副審の中でPRは4名となる。一方、ACLや代表戦など国際試合を担当する国際審判員(INT)は主審が7名で、副審は9名。主審の中でPRとINTの両方に当てはまるのは飯田淳平主審、家本政明主審、木村博之主審、佐藤隆治主審、東城穣主審、山本雄大主審の6名。南アフリカW杯とブラジルW杯で笛を吹いた西村雄一主審はブラジルW杯後の2014年夏に国際審判員からの引退を発表した。
結局のところ、Jリーグの審判(主審・副審)を本職にしている人は少なくて、多くの審判員は他に仕事を持っている。多いのは小学校や中学校や高校の先生をしているケースである。「Jリーグで有数の主審」と評価されている高山啓義主審は県立高校の保健体育の先生をしていて、窪田陽輔主審も同様に京都府にある高校の保健体育の先生をしていて、週末はJリーグの審判を担当するというハードスケジュールである。
長身で威圧感のある廣瀬格主審は英語の先生をしている。もはや伝説となったストイコビッチ監督の革靴シュート(@日産スタジアム)のときは得意の英語力を駆使して毅然とした対応を見せた。最年長の52才でありながら未だに国内トップレフェリーとして笛を吹き続けているのは吉田寿光主審はもともとは公立高校の先生と主審の仕事を兼任していたが2003年に退職。その後、プロの審判員(PR)として笛を吹いてきた。
■ プロ化の流れを進めるのは難しい。「審判員の地位を高めるためにPRの割合を高めるべきだ。」という意見もあるが、これだけ先生など他の職業と兼任している人が多いと難しい。『大学まではプレーヤーとしてサッカーをしていて教員になった後、生徒にサッカーを教えているときに審判の資格を持つ必要が出てきたので試験を受けてその流れであれよあれよとJリーグの試合を担当するようになった』という人がかなり多いのではないか?と推測できる。
「待遇を良くするので主審や副審の仕事に専念してほしい。」と言われたとしても簡単に今の仕事(先生など)を辞めることを決断できる人は少ないはず。プロの主審や副審として24時間、審判という仕事に専念できる人が増えてくるとJリーグにおける審判員のレベルが向上してJリーグの試合で誤審騒動等のトラブルが起こる可能性が低くなることは十分に考えられるが現状では「プロ化の流れ」を進めるのは難しい。
さらに言うとPRとして「審判」という仕事に専念できる環境の人の多くが上層部や選手やサポーターから主審として高い評価を受けているのか?というと必ずしもそうわけでもない。もちろん、西村雄一主審や扇谷健司主審などはPRとして評価の高いレフェリーであるが、すでに名前を挙げた高山啓義主審は教員(=高校の保健体育の先生)とJリーグの審判を兼任しているが「Jリーグの中では屈指の主審」と評価されている。
■ 主審として評価が高いのは誰なのか?Jリーグの試合で主審や副審を担当したときは必ず「レフェリーアセッサー」という人によってパフォーマンスを評価される仕組みになっている。「反則がしっかりと取れているか?」、「アドバンテージをきちんと適用できているか?」、「警告や退場などの罰を正しく適用できているか?」、「動きの量や位置取りに問題はないか?」、「副審としっかりと協力して試合を運営できているか?」などが評価されるという。
点数化されていい点を取った人がさらに上のカテゴリーで笛を吹くチャンスを得ることができる仕組みになっているのでJ2がメインだった主審が高評価されて新シーズンからJ1の舞台で主審を任されるケースも少なくない。近年では池内明彦主審、上田益也主審、榎本一慶主審などはJ2での仕事ぶりが評価されて2014年シーズンあたりからJ1の主審としてもしばしば登場するようになった若手のレフェリーである。
彼らはJ2でのパフォーマンスが高くて上層部から評価された形になるが「どの主審が上層部から評価されているのか?」を知るためには『過去のビッグマッチでどの主審が抜擢されたのか?』を見ると一目瞭然である。表1は2006年以降のゼロックス・スーパーカップ、天皇杯の決勝、ナビスコカップの決勝、入替戦、チャンピオンシップ(CS)と昇格プレーオフで主審を任された回数をカウントしてまとめたものである。
1位はやはり西村雄一主審。11回と群を抜く回数である。Jリーグでは2009年から7年連続で優秀主審に選ばれているがコミュニケーション能力の高さとアドバンテージを適用する上手さが高評価の理由と言える。2位はやや太めの体形の扇谷健司主審で6回。安定感がウリとなるがイエローカードを出す確率は高めである。3位は家本政明主審と吉田寿光主審。前者は「サッカー通」と呼ばれる人からの評価が高い。
5位は村上伸次主審と佐藤隆治主審。前者はJFL時代の西濃運輸でプレーした元サッカー選手である。7位は飯田淳平主審と松尾一主審。佐藤隆治主審と飯田淳平主審はレフェリーカレッジ出身。松尾一主審は大阪出身で大阪城公園の周辺が普段のトレーニングコースとなる。9位の東城穣主審は浦和ユースの一期生。同じく9位の山本雄大主審は期待の若手レフェリーで2022年や2026年のW杯で笛を吹く可能性がある。
表1. ビッグマッチの担当試合数 (2006年-2016年まで)
順位 | 名前 | 回数 | ゼロックス | 天皇杯 | ナビスコ | 入替戦 | CS・PO |
1 | 西村雄一 | 11 | 4 | 4 | 1 | | 2 |
2 | 扇谷健司 | 6 | 1 | 2 | 1 | 1 | 1 |
3 | 家本政明 | 5 | 1 | 1 | 2 | | 1 |
3 | 吉田寿光 | 5 | 1 | 1 | 2 | | 1 |
5 | 村上伸次 | 4 | | 1 | 1 | | 2 |
5 | 佐藤隆治 | 4 | 1 | 1 | | | 2 |
7 | 飯田淳平 | 3 | 1 | | | | 2 |
7 | 松尾一 | 3 | | | | | 3 |
9 | 東城穣 | 2 | 1 | | 1 | | |
9 | 山本雄大 | 2 | 1 | | | 1 | |
11 | 高山啓義 | 1 | | | 1 | | |
11 | 廣瀬格 | 1 | | | | 1 | |
11 | 福島孝一郎 | 1 | | | | 1 | |
11 | 上川徹 | 1 | | | 1 | | |
11 | 木村博之 | 1 | | | | 1 | |
11 | 窪田陽輔 | 1 | | | | 1 | |
「評価の高いJリーグの主審」というと・・・。 ・西村雄一
・扇谷健司
・家本政明
・吉田寿光
・村上伸次
・佐藤隆治
・飯田淳平
・松尾一
・東城穣
・山本雄大
★ 現在の投票数 → 99票
→ 投票したい主審を選択してから左下の「投票」のボタンをクリックしてください。
→ 最大で10名まで投票することができます。
→ 「コメント」のところは何も書かなくてもOKです。(投票可能です。)
→ 記事内容に関係のないコメント(政治的な内容も含む。)はご遠慮ください。
関連エントリー
2016/05/20 【Jリーグ】 53クラブの中で「サポーターの応援が凄いクラブ」はどこだろうか? → 1699票
2016/05/21 【Jリーグ】 53クラブの中で「ホームタウンが観光地としても魅力的なクラブ」はどこだろうか? → 588票
2016/05/21 【Jリーグ】 53クラブの中で「スタジアムグルメが充実しているクラブ」はどこだろうか? → 364票
2016/05/27 【Jリーグ】 人気のあるマスコットは? ~1位:ベガッ太、2位:ドーレくん、3位:ディーオ~ → 398票
2016/05/27 【Jリーグ】 53クラブの中で「サポーターが(いい意味で)温かいクラブ」はどこだろうか? → 529票
2016/05/30 【Jリーグ】 53クラブの中で「優秀な監督」というと誰になるだろうか? → 134票
2016/05/31 【Jリーグ】 「将来、監督としても成功しそうな選手」は誰だろうか? (ベテラン:Jリーガー編) → 475票
2016/05/31 【日本代表】 「将来、監督としても成功しそうな選手」は誰だろうか? (ハリルJAPAN編) → 98票
- 関連記事
-