攻撃的MF編表1はリオ世代のアジアの公式戦の戦績ならびに攻撃的MFのスタメンを示している。(※ 「4-1-2-3」を採用した試合は左右のウイングの位置でプレーした選手もこのポジションでカウントしている。2014年のU-19アジア選手権は95年・96年生まれが対象。)攻撃的MFの軸になっているのはFC東京のMF中島翔である。手倉森ジャパンの攻撃の中心になっており、11試合で7ゴールと十分すぎるほどの結果を出している。
MF中島翔はテクニックとスピードがあってゴールへの意識も高い。164センチ/64キロという小ささを生かしたプレーが出来るが、心配されるのは今シーズンもFC東京でほとんど試合に出場できていない点である。守備に重きを置くフィッカデンティ監督の信頼をつかむことが出来なくて、スタメンはおろか、途中出場もほとんどない状態。エース候補の試合勘不足が手倉森ジャパンの不安材料の1つになっている。
「攻撃的MFの2番手」と言えるのはオフに浦和からJ2の岡山に期限付き移籍したMF矢島慎。U-19の頃から攻撃の中心として活躍している。浦和でほとんど出番が無かった時期も、ほぼ毎回、五輪代表には選ばれていた。新天地の岡山でレギュラーをつかんでいるわけではないが、ある程度の出場機会を得ており、攻撃的なセンスを披露している。岡山でレギュラーを確保することが現時点での大きな目標になるだろう。
MF矢島慎は途中出場でも流れを変えることが出来るタイプで独特の感性を持っている。「創造性」という点ではこの世代の中では屈指。自らドリブルで仕掛けることもできるし、決定的なスルーパスを出すこともできる。攻撃的な才能に恵まれた選手と言えるが、継続性や安定感はない。タフマッチになると試合から消えてしまって何もできないままで途中交代となるケースが多い。タフさを身に付ける必要がある。
表1. リオ世代のアジアの公式戦の戦績とメンバー (攻撃的MF)
大会名 | 日程 | 区分 | 対戦相手 | スコア | 攻撃的MFのスタメン(ウイングも含む) |
U-19アジア選手権 | 2012/11/3 | GL1戦目 | イラン | 0対2 | 大島僚太 | 野津田岳人 | |
2012/11/5 | GL2戦目 | クウェート | 1対0 | 大島僚太 | 矢島慎也 | |
2012/11/7 | GL3戦目 | UAE | 0対0 | 大島僚太 | 矢島慎也 | |
2012/11/11 | 準々決勝 | イラク | 1対2 | 大島僚太 | 矢島慎也 | |
U-23アジア選手権2014 | 2014/1/12 | GL1戦目 | イラン | 3対3 | 石毛秀樹 | 中島翔哉 | |
2014/1/14 | GL2戦目 | クウェート | 0対0 | 矢島慎也 | 金森健志 | |
2014/1/16 | GL3戦目 | 豪州 | 4対0 | 矢島慎也 | 中島翔哉 | |
2014/1/20 | 準々決勝 | イラク | 0対1 | 矢島慎也 | 中島翔哉 | |
仁川アジア大会 | 2014/9/14 | GL1戦目 | クウェート | 4対1 | 野津田岳人 | 中島翔哉 | |
2014/9/17 | GL2戦目 | イラク | 1対3 | 矢島慎也 | 中島翔哉 | |
2014/9/21 | GL3戦目 | ネパール | 4対0 | 野津田岳人 | 中島翔哉 | 矢島慎也 |
2014/9/25 | ラウンド16 | パレスチナ | 4対0 | 野津田岳人 | 中島翔哉 | |
2014/9/28 | 準々決勝 | 韓国 | 0対1 | 野津田岳人 | 中島翔哉 | 矢島慎也 |
U-19アジア選手権 | 2014/10/9 | GL1戦目 | 中国 | 1対2 | 関根貴大 | 金子翔太 | |
2014/10/11 | GL2戦目 | ベトナム | 3対1 | 関根貴大 | 松本昌也 | |
2014/10/13 | GL3戦目 | 韓国 | 2対1 | 関根貴大 | 金子翔太 | |
2014/10/17 | 準々決勝 | 北朝鮮 | 1対1 | 関根貴大 | 金子翔太 | |
U-23選手権2016予選 | 2015/3/27 | GL1戦目 | マカオ | 7対0 | 野津田岳人 | 豊川雄太 | |
2015/3/29 | GL2戦目 | ベトナム | 2対0 | 矢島慎也 | 中島翔哉 | 南野拓実 |
2015/3/31 | GL3戦目 | マレーシア | 1対0 | 野津田岳人 | 久保裕也 | 荒野拓馬 |
川崎FのMF大島僚は2012年の11月に行われたU-19アジア選手権のときは2列目で起用されたが、手倉森ジャパンになってからはボランチかIHでプレーすることがほとんど。当然、2列目でもプレー可能な選手ではあるが、ボランチの候補としてカウントする。同様のことは京都のMF原川にも言える。彼も2つのポジションをほぼ同レベルでこなすが、手倉森ジャパンでは下がり目の位置でプレーすることが多い。
現段階で「攻撃的MFの3番手」と言えるのは広島のMF野津田である。広島ではスタメンを確保できずにいるが、今シーズンは限られたチャンスをしっかりと生かしている印象で、パフォーマンス自体はなかなか良い。自身の状態が悪いからスタメンで出場できていないというよりはMF柴崎晃やMFドウグラスといった同ポジションの選手の状態が非常に良いのでなかなかスタメンのチャンスが回ってこない状態と言える。
彼の魅力は何と言っても左足の強烈なシュートとメンタリティ。左足のシュートに関しては精度も威力も日本人の中では屈指。手倉森ジャパンには左利きの選手が少ないので、そういう点でも存在価値は高い。右サイドハーフあるいは右ウイングに入るケースが多くなっているが、五輪代表の試合でもある程度以上の結果を出しており、手倉森監督の信頼は勝ち取っている。当然、2列目のレギュラーの有力候補と言える。
これまではFC東京のMF中島翔、岡山のMF矢島慎、広島のMF野津田の3人が攻撃的MFの中心を担ってきたが、他にも才能のある選手は多い。そして、前回のロンドン五輪代表チームのときのMF香川であったり、MF清武弘のようにフル代表で活躍するほどの飛び抜けた実績を持った選手は見当たらない。序列が変わって新たに「攻撃的MFの軸」になる選手がこれから出てきても全く不思議はない状況と言える。
これまでに何度か五輪代表の試合でテストされており、「メンバーに入るか否かギリギリ」というところにいるのが福岡のMF金森、鹿島のMF豊川、千葉のMF井出、ザルツブルクのMF南野あたり。現段階ではMF中島翔とMF矢島慎とMF野津田の3人は「親善試合等でメンバーを集めるときは高確率でメンバーに選ばれるだろう。」と言えるが、MF金森やMF豊川やMF井出やMF南野などは本当に当落線上と言える。
この中でやや苦しいのは鹿島のMF豊川か。熊本の大津高校出身でCBのDF植田直とは高校時代からのチームメイト。左サイドハーフでプレーすることが多くて2月に行われたU-23シンガポール代表との親善試合は1ゴール1アシストと結果を残したが、今シーズンは鹿島で出番に恵まれない。同ポジションにMFカイオやMF金崎がいることもあって、15節を終えた段階でリーグ戦は2試合の出場のみ。立場は厳しい。
対照的に千葉のMF井出は好調。「J1昇格」が至上命題となる千葉の攻撃陣をリードする存在になっている。独特なボールタッチを持っていて、トップ下あるいは右サイドハーフの位置で攻撃にアクセントを加える役割を高いレベルでこなしている。7節の大宮戦(H)や14節の金沢戦(H)などビッグマッチで結果を出している点も印象が良くなる。彼も2月のシンガポール戦でスタメン起用されてゴールという結果を残した。
2014年の1月に行われたU-22アジア選手権のメンバーだった福岡のMF金森も好調。怪我のため少し出遅れたが、無敗で突っ走ったチーム状態の良さに乗り遅れることなく、ピッチに戻って来てからは質の高いプレーを続けている。MF城後やMF酒井宣など同ポジションのライバルもしっかりと結果を出しているので、「常時スタメン」とはいかないが、4つのゴールすべてに絡んだ12節の群馬戦(H)のプレーは圧巻だった。
オフにC大阪からザルツブルクに完全移籍したMF南野も現段階では当落線上。1トップあるいはトップ下でもプレーできる点、得点感覚の鋭さ、エースとして期待された2014年の10月のU-19アジア選手権で4試合で4ゴールとしっかりと結果を残した点も好印象だが、海外でプレーしているので国内で行われる合宿や親善試合に簡単に呼べない点がマイナス要素。コンビネーション等にも幾分かの不安を抱えている。
→ 2015/06/17
2016年のリオ五輪の日本代表メンバーを予想する。 (攻撃的MF編) (後編) に続く。
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