■ 第32節J1の第32節。14勝6敗11分けで勝ち点「53」のセレッソ大阪(5位)と、17勝8敗6分けで勝ち点「57」のサンフレッチェ広島(3位)がキンチョウで対戦した。J1は残り3節となったが、優勝の可能性が残っているのは、首位で勝ち点「59」の横浜FM、2位で勝ち点「58」の浦和、3位で勝ち点「57」の広島、4位で勝ち点「56」の鹿島、5位で勝ち点「53」のC大阪、6位で勝ち点「51」で川崎Fの6チームだけ。この試合は3位と5位の直接対決となった。
ホームのC大阪は「4-2-3-1」。GKキム・ジンヒョン。DF酒本、藤本、山下、丸橋。MF山口螢、扇原、エジノ、シンプリシオ、南野。FW柿谷。187センチのFW杉本はベンチスタートで、天皇杯の鳥栖戦でFKでゴールを決めたMFエジノがスタメンで起用された。日本代表の欧州遠征に参加してオランダ戦とベルギー戦に出場したFW柿谷とMF山口螢はスタメン出場となった。FW柿谷は31試合で18ゴールを挙げてJ1の得点ランキングの3位タイに付けている。
一方の広島は「3-4-2-1」。GK西川。DF塩谷、千葉、水本。MF青山敏、森崎和、ミキッチ、ファン・ソッコ、石原、高萩。FW佐藤寿。こちらも日本代表のGK西川と韓国代表のMFファン・ソッコは揃ってスタメンで出場して、「現段階ではベスト」と言える11人がスタメン起用された。エースのFW佐藤寿は31試合で17ゴールを挙げてJ1の得点ランキングの5位タイに付けている。シャドーのMF石原は30試合で8ゴールを挙げている。
■ 1対0でC大阪が勝利ともに優勝のためには「勝たなければいけない試合」だったが、前半はスローな展開となる。広島がゆっくりとしたボール回しをして、確実につながるパスを多用したため、アウェーの広島がボールをキープして、ホームのC大阪が守る展開となる。広島はFW佐藤寿が鋭い動き出しから何度かフリーで抜け出しかけたが、大チャンスには至らない。結局、前半の45分間は双方があまり見せ場を作れずに0対0で折り返す。
後半になると、一転してスピーディーな展開となる。先制したのはC大阪で、後半7分にC大阪らしいパスワークから最後はFW柿谷のスルーパスを受けたトップ下のMFシンプリシオが落ち着いて決めて5位のC大阪が先制に成功する。MFシンプリシオは今シーズン4ゴール目となった。その後は、C大阪も、広島も、持ち味である絶妙のコンビネーションから何度かチャンスを作るが、シュート精度を欠いてゴールを生み出すことは出来ない。
試合の終盤になると、広島が立て続けに惜しいシーンを作ったが、シュートがクリーンヒットしないケースが多くて、同点ゴールには至らず。結局、5位のC大阪と3位の広島の直接対決はC大阪が勝利して、かろうじて優勝の可能性を残した。C大阪は33節がホーム最終戦でACLの出場権を争っている鹿島と対戦する。一方の広島はリーグ連覇が遠ざかる完封負けとなった。33節はホームで湘南と対戦して、34節はアウェーで鹿島と対戦する。
■ リーグ連覇は難しくなる・・・この試合は2週間前にチケットが完売になっており、17,489人という大入り満員で埋まったが、前半はサポーターが望んでいなかったスローな展開になったが、両チームともハーフタイムでギアチェンジして、後半はともにたくさんの見せ場を作った。勝ち点「1」ではダメなので、ともに勝ち点「3」を目指して戦ったが、C大阪にとっては、「この試合の最初の決定機」をゴールに結びつけて、1対0で勝利した。これで広島との差も「1」となった。
広島は試合前の時点では首位の横浜FMとの差が「2」だったので、十分に逆転できる差だったが、32節で横浜FMが勝ち点「3」を積み上げたので、「5」差となった。決定機に近い形というのは、広島の方が多くて、特に後半はパスワークから何度もいい形を作ったので、攻撃に関してはそれほど悪くなかったが、勝ち点「3」が必要な試合なので、もう少し前半から積極的な姿勢を見せた方が良かったのではないか。
広島は31節を終えた段階で28失点という成績だったが、これは首位の横浜FMと5位のC大阪と同じ失点数で、J1の中では最少タイの数字である。GK西川、DF塩谷、DF千葉、DF水本の4人のセットというのは「ほぼ固定」で、コンビネーションも良好で、かつ、個人能力も高いので、「リーグ最高の守備ユニット」と言えるが、今シーズンも、5バック気味にして、後ろに人数をかけて慎重な試合運びをすることが多くなっている。
もちろん、そういう戦い方が安定感を生んでいるのは間違いない。そして、これが森保監督やスタッフの方針であり、昨シーズンは、この戦い方で結果を出しているので、外野からとやかく言われる類のものでもないが、これだけ攻撃陣にタレントがいて、かつ、コンビネーションも熟成しているので、もっと積極的なサッカーをされたほうが相手としては厄介で、今のような慎重な試合運びをしてくれると相手は戦いやすくなる。
■ 優勝の可能性は残る一方のC大阪は首位の横浜FMとの差が「6」なので、「3連勝しても逆転できるかは微妙」と言える。勝つしかない状況で、32節が広島(H)、33節が鹿島(H)、34節が浦和(A)と続く上位との3連戦がスタートしたが、まずは最初の関門を突破した。横浜FMとの差が縮まらなかったので「逆転優勝」というのは非常に難しくなったが、横浜FM以外の上位のチームが思うように勝ち点を得ることが出来なかったので、ACLの可能性は膨らんできた。
C大阪も前半はあまり良くなかった。攻撃もあまり良くなかったが、守備のところで、DF山下とDF藤本の間のスペースを1トップのFW佐藤寿に突かれるケースが何度かあった。FW佐藤寿の消える動きに付いていけないシーンが目立ったが、前半41分にDF藤本が怪我で交代してDF茂庭が入ってからはFW佐藤寿がフリーになるケースが無くなって、最終ラインは安定した。DF藤本の怪我は残念だったが、怪我の功名で守備は良くなった。
ベルギー戦で1ゴール1アシストと結果を残して代表定着をアピールしたFW柿谷は、決勝ゴールをアシストした。この日は1トップで起用されたが、下がってくるケースが多くて、DFラインの裏を狙う動きはほとんどなくて、中盤で組み立ての仕事をする場面が多かったが、アシストの場面も下がってきてボールを受けてから、一瞬、フリーになったMFシンプリシオに絶妙のパスを出した。その他でも、周りを生かそうとする意識が高かった。
オランダ戦とベルギー戦の2試合で評価を急上昇させたMF山口螢は、攻撃でも、守備でも、目立っていた。攻撃では2度ほど鋭いゴール前への飛び出しを見せて大チャンスを作ったが、このように3列目から飛び出す形でゴールを決めることができるようになったならば、ボランチとしてさらにレベルアップすることができる。簡単に相手を振り切ることができる圧倒的なスピードがあるので、全速力で飛び出されると相手はマークするのは難しくなる。
■ 4年間で目覚ましい成長日本代表においては、「ボランチの3番手」という評価にとどまらず、「MF長谷部あるいはMF遠藤からポジションを奪ってしまうのではないか?」という人もいる。ボランチの争いに関しては停滞感があったので、むしろ、「MF山口螢にレギュラーを奪取してもらって、チームに刺激を与えてほしい。」と感じている人もたくさんいると思うが、ここ最近は、攻守両面で見事なパフォーマンスを発揮している。海外のクラブから狙われるのも納得である。
先日は、「ドイツ2部のケルンが興味を示している。」と報じられたが、W杯の本大会まで7・8カ月を切ったので、「W杯の本大会のメンバー入りは確実」と考えられる選手でない限り、今冬は日本代表クラスの選手の海外移籍はちょっと考えにくい。FW柿谷も同様であるが、W杯に出場できれば、もっと自身の評価を高めることができるので、とりあえずはC大阪に残留することになると思うが、欧州リーグでも活躍できるだけの実力を備えつつある。
一番、いいところは、運動量の多さとスピードである。ボランチとしての経験が長いわけではなくて、J1での試合経験もそれほど多いわけではないので、ボランチに必要なクレバーさを感じるシーンは少ないが、動きの量の多さとスピードでカバーできている。ただ、もっとレベルの高いリーグで、もっと厳しい環境でプレーしたら、もっと考える力が養われると思うので、伸びシロはたっぷりあって、まだまだボランチとして成長できる余地はある。
MF山口螢は今シーズンがプロ5年目となるが、プロ初出場はC大阪がJ2に所属していた2009年の10月の愛媛FC(H)との試合だった。怪我人が多発して、苦しいメンバー構成になったときにスタメンのチャンスが巡ってきたが、ほとんど何もできないままで途中交代となった。あれから4年経ったが、日本代表の一員としてブラジルW杯の出場を狙える選手になるとは、当時、全く想像できなかった。
「5年後のブラジルW杯のメンバーはどうなるだろう?」と、2009年当時も、いろいろな人が空想したり、予想していると思うが、おそらく、MF山口螢の名前をブラジルW杯の日本代表候補に挙げた人はいなかったと思う。同じC大阪で育った選手でも、MF香川、MF乾、FW柿谷、MF扇原、FW杉本らは、10代の頃から「人とは違った才能を持っている。」ということが誰でもすぐに分かったが、MF山口螢はそうではなかった。そういう意味では、異質である。
関連エントリー 2012/07/28
光を照らすボランチ山口螢 2012/08/06
類希な才能を持つ扇原貴宏 2013/05/03
【湘南×C大阪】 日本代表入りが期待される山口螢 2013/06/16
日本代表のWボランチは誰がいいのか? 2013/11/09
言うほどザックジャパンって末期症状なのか? 2013/11/10
言うほどザックジャパンの選手選考はおかしいか? 2013/11/17
【オランダ×日本】 ドローで取り戻した自信と信頼の2つ 2013/11/20
【ベルギー×日本】 有言実行の本田圭佑 2013/11/30
全記事一覧(2005年-2013年)
- 関連記事
-