■ 前半終了と同時に起こったブーイング「日本のサッカースタジアム」といっても、いろいろである。そして、サポーターの「応援風景」もいろいろである。一口にJリーグのサポーターと言っても、クラブによって、あるいは、スタジアムによって全く違っていることは、実際に現地を訪問してみるとよく分かる。先日の土曜日(28日)は大阪市にあるキンチョウスタジアム、翌日の日曜日(29日)は岡山市にあるkankoスタジアムを訪れたが、比較的、距離の近い大阪と岡山のスタジアムでも全然違っている。
C大阪と磐田の試合はナイトマッチで、岡山と千葉の試合はデイマッチだったので、その点は考慮する必要はあるが、キンチョウスタジアムは30代や40代のサラリーマン風の人と若い女性ファンが多くて、kankoスタジアムは子供やお年寄りが多かった。これは大阪という大都市の真ん中にあるキンチョウスタジアムと、岡山という地方都市にあるkankoスタジアムの違いとも言えるが、kankoスタジアムの方が年齢層のばらつきは大きかったように思う。
どちらの試合も非常に大事な試合だったこともあって、試合中はキンチョウスタジアムも、kankoスタジアムも、ピッチ上のプレーに集中している人が多くて、1つ1つのプレーに大きな歓声が起こっていた。なので、スタジアム全体の雰囲気は非常に良かったが、キンチョウスタジアムのお客さんの方がストレートな反応をする人が多くて、相手チームのラフなプレーやレフェリーの判定に対して大きなブーイングが起こることが何度かあった。
印象に残っているのは、前半が終わって選手と審判が引き上げるときにブーイングが起きたことである。5試合連続引き分け中で、この日も前半は0対0だったので、C大阪の選手に対してブーイングをした人もいたと思うが、レフェリーに対してブーイングをした人が大半だったと思う。前半の終了間際のプレーで「C大阪のCKか!?」と思われたシーンでゴールキックと宣告されたことを不満に感じた人が多かったので、そういう反応になったと想像できる。
■ 選手に対するブーイング大阪という土地柄も大いに関係していると思うが、C大阪のサポーターはふがいない試合をしているとき(あるいは、したとき)は、結構な確率でブーイングをする。ホームで相手にリードされている時は、前半終了のホイッスルが鳴った瞬間、サポーター席から大きなブーイングが起きることも珍しくない。ただ、叱咤激励するために、選手にブーイングを浴びせることは必ずしも悪いことだと思わないので、こういう意思表示も1つのやり方である。
その一方で、レフェリーに対するブーイングというのは、どうかなと思う。もちろん、微妙なジャッジが下された直後に、不満の意思をブーイングという形で表現すること自体はありだと思うが、ハーフタイムに突入して、控室に引き上げていくレフェリーに対してブーイングを浴びせるのは、全くプラスに働かないと思う。サポーターの憂さ晴らしにはなると思うが、それによって、自チームに有利なジャッジを引き出すことができるかというと、むしろ逆である。
確かに、この試合の前半は、何度か微妙なプレーでC大阪側に不利なジャッジが下されているが、同じくらい、C大阪側に有利なジャッジも下されている。結局のところ、どちらか一方に有利なジャッジが続いたというわけでもなく、PKや退場など、重大局面につながるようなシーンもなかった。したがって、前半において、レフェリーのパフォーマンスに大きな問題があったとは思えないが、引き上げるレフェリーに対しては、大きなブーイングが浴びせられた。
レフェリーの立場に立って考えると、決定的なミスを犯したときは、「ブーイングを浴びても仕方がない。」と受け入れることができると思うが、大きな落ち度が無い場合に浴びるブーイングというのは、納得はできないだろう。レフェリーの性格にもよると思うが、「ここのスタジアムのサポーターは感じが良くない。」と思っても不思議はないし、「あまり分かっていないサポーターだ。」と感じてもおかしくない。
■ レフェリーに対するブーイングしたがって、ブーイングに関して、個人的な考えを述べると、安易にレフェリーに対してブーイングを浴びせることは、チームにとってプラスには働かない。「本気でチームを勝たせたい。」と考えているのであれば、止めた方がいいと思う。正当なブーイングであれば別であるが、そうでない場合は、レフェリーの心証が悪くなるだけで、損得の話をすると「損」になる。(試合前にレフェリーの名前がコールされただけでブーイングを浴びせる行為は、愚の骨頂である。)
サッカーの試合では、「どちらとも取れる。」というシーンが試合の中で何度かある。「ファールでもいいし、ノーファールでもいい。」、「マイボールのスローインのようにも見えるし、相手チームのスローインのようにも見える。」という場面である。あるレフェリーは、「グラディエーションのところ」と表現していたが、そういうとき、どちらに転ぶか。無意識の判断になるとは思うが、『心証のいいチームに有利に働くジャッジが下される確率が高くなる。』と思う。
したがって、持論を述べると、「うちのチームは変な審判に当たることが多い。」、「誤審で不利になることが多い。」と考えているサポーターの多いチームは、雰囲気作りが上手くないところだと思う。レフェリーも人間なので、コールのとき、拍手などで歓迎された方が気分は良くなるだろうし、何でもないジャッジに対して、頻繁にブーイングが起こるようなことがあると気分が悪くなる。これは当たり前のことである。
レフェリーを味方にするためには何ができるのか、どうすべきかというのは、サポーターにとって、重要な案件だと思うが、正直なところ、「うまく考えているなあ。」と感心するスタジアムはほとんど無い。なぜか分からないが、敵対心を露わにするスタジアムもある。これは全く解せない。この日のキンチョウスタジアムのレフェリーに対する反応は、Jリーグでは珍しいことではないと思うが、「勿体無いなあ。」という感じは否めない。
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