■ 5位決定戦クラブW杯の5位決定戦。Jリーグ王者のサンフレッチェ広島と、アジア王者の蔚山が豊田スタジアムで対戦した。広島は初戦のオークランド・シティ戦は1対0で勝利したが、準々決勝のアルアハリ戦は1対2で惜敗して、5位決定戦に回った。一方の蔚山は、準々決勝はメキシコのモンテレイに1対3で敗れた。
広島は「3-4-2-1」。GK西川。DFファン・ソッコ、塩谷、水本。MF青山敏、森崎和、石川、山岸、森崎浩、高萩。FW佐藤寿。アルアハリ戦で負傷交代したGK西川は左のほおを8針縫う重症だったが、強行出場となった。DF森脇、DF千葉、MFミキッチ、MF清水がスタメンから外れて、DFファン・ソッコ、DF塩谷、MF石川、MF山岸の4人が初スタメンとなった。
対する蔚山は「4-2-2-2」。GKキム・ヨングォン。DFイ・ヨン、カク・テヒ、キム・チゴン、キム・ヨンサム。MFイ・ホ、コ・ソルギ、イ・グノ、キム・スンヨン。FWキム・シンウク、ラフィーニャ。 攻撃の中心となるFWラフィーニャ、MFイ・グノ、MFキム・スンヨンの3人は、2011年シーズンはG大阪で一緒にプレーしている。
■ 3対2で逆転勝利!!!試合は前半17分に蔚山が先制する。広島のDF水本がキーパーにバックパスをするが、GK西川との呼吸が合わずにそのままゴール方向に流れてオウンゴールで蔚山が先取点を挙げる。しかし、前半35分に広島はセットプレーを得ると、FW佐藤寿がフリーでヘディングシュートを放って、GKがはじいたところをMF山岸が押し込んで1対1の同点に追いつく。前半は1対1で終了する。
追いついて勢いの出てきた広島は、後半11分に左サイドからMF山岸がクロスを入れると、ゴール前に飛び込んできたFW佐藤寿がうまく左足で流し込んで2対1と勝ち越しに成功すると、さらに、後半27分にも、MF高萩のパスからFW佐藤寿が決めて3対1とリードを広げる。
後半のロスタイムに蔚山はFKからDFイ・ヨンが決めて1点差に迫るが、そこで試合は終了。結局、広島が3対2で勝利して「5位」で大会を終えることになった。一方の蔚山は、先制しながら逆転を許して2連敗。自分たちの力を発揮できず「6位」に終わった。
■ 蔚山は6位嫌な形で先制を許した広島が見事な逆転勝ちでアジア王者を下した。196センチで韓国代表のFWキム・シンウクの高さに対抗できず、前半は劣勢だったが、時間が経つに連れて、3バックの中央のDF塩谷がきっちりと対応するようになって、FWキム・シンウクの高さが生きなくなった。
蔚山の攻撃は、FWキム・シンウクの高さが武器になっており、サイドで起点が出来たら、簡単にクロスを上げてくるし、また、ハーフウェーライン付近から単純なロングボールを蹴ってくることもある。守備陣にそれほど高さがない広島にとっては、戦いにくい相手だったと言えるが、GK西川とDF塩谷を中心にして、比較的、うまく守ることができた。
蔚山は、モンテレイに1対3で、広島に2対3というスコアで、いいところを出せずに大会を去ることになったが、草津やG大阪で活躍したFWラフィーニャが生きるシーンはほとんどなくて、FWキム・シンウクの高さ、MFイ・グノの奮闘ぶりくらいしか、見どころは無かった。
FWラフィーニャとFWキム・シンウクの2トップで、MFイ・グノのポジションが右サイドハーフだったことも、広島にとってはラッキーで、FWイ・グノがフォワードの一角でプレーして、ゴールに近いところにポジションを取るようだと厄介だったが、右サイドにいることが多かった。
パスワークやコンビネーションで崩すのではなくて、高さや強さや個人の頑張りで何とかするチームで、実に、「韓国らしいチーム」と言えるが、前近代的なところは否めない。今年のACLを制しているので、力のあるチームだと思われるが、クラブW杯では、世界に対して、いい印象を与えることはできなかった。
■ 広島は5位あくまでも、クラブW杯での順位なので、5位であっても、6位であっても、あまり大きな差は無いが、広島は2013年はACLに挑戦するので、その前にアジア王者を叩くことができたというのは、大きな自信につながるだろう。「初の日韓対決」ということで注目されたが、来年のACLにつながる試合ができたと言える。
過密日程ということもあって、スタメンを4人も入れ替えてきたが、その中では、3バックの中央で攻守に貢献したDF塩谷と、1ゴール1アシストのMF山岸の活躍が光った。オウンゴールで失点して、前半は蔚山のペースだったので、早い時間に追いつくことができないと、まずい結果に終わっていたと思うが、MF山岸の得点感覚の鋭さが発揮されて、同点に追いついた。
今シーズンのMF山岸は怪我もあって、さらには、欠場中にMF清水が台頭してきたこともあってポジションを失ってしまったが、経験もあって、攻撃でも、守備でも貢献できるので、国際試合では生きてくるタイプである。MFミキッチも、MF清水も、守備に不安があるので、両サイドをこなすMF山岸は、ACLにおいて、キーを握る存在の1人と言える。
■ 日本代表入りを巡る議論勝ち越しゴールとダメ押しのゴールを決めたFW佐藤寿は、エースにふさわしい働きを見せた。初戦のオークランド・シティ戦では、なかなか持ち味を発揮できなかったが、アルアハリ戦では同点ゴールを決めて、5位決定戦でも2ゴールという活躍で、世界大会でも十分な結果を残した。
後半27分の3点目のゴールは、MF高萩の素晴らしいラストパスから生まれており、「FW佐藤寿は決めるだけ。」という感じでフォワードにとっては美味しいゴールだったが、前半11分の逆転ゴールというのは、FW佐藤寿のいいところがフルに発揮された「らしいゴールだった。」と言える。
これで、今シーズンの戦いは終了したが、リーグ初優勝を飾って、得点王になって、JリーグでMVPとベストイレブンに選ばれて、さらには、クラブW杯でも結果を残した。FW佐藤寿にとっては、これ以上ないほど素晴らしい1年になったと言える。
こうなってくると、「日本代表でも観てみたい。」という声がさらに増えるのは、間違いないだろう。10月の欧州遠征で、2年半ぶりに日本代表に復帰して、(結局、出場のチャンスはなかったが、)ザッケローニ監督の構想に入っていることは確認できた。2月6日のラトビア戦で試される可能性もあるだろう。
もちろん、かなり特殊な選手であり、これまで、ザッケローニ監督が起用してきた1トップの選手とは、キャラクターが全く異なるので、1トップのスタメンというのは考えにくい。「点の欲しい場面で途中から投入する。」というのが、もっとも現実的な起用方法と言えるが、これだけの得点力を持った選手はなかなかいないので、日本代表の新たな武器になる可能性はある。
よって、「寿人は日本代表に必要か、否か」といった議論は、活発になされるべきだと思うのが、残念に思うのは、様々な事情を考慮せず、「JリーグMVP&得点王を起用しない。」というところだけをクローズアップして、ザッケローニ批判に結びつけるようとする人がいることである。こういうのは、FW佐藤寿にとってもマイナスになるので、有益には思えない。
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