■ 第31節J2の第31節。8勝12敗10分けで勝ち点「34」のロアッソ熊本と、3勝17敗10分けで勝ち点「19」のカターレ富山がKKウイングで対戦した。熊本は17位で、富山は22位。富山は5月27日に行われたアウェーの愛媛FC戦で勝利した後、14試合勝利なしで、最下位と苦しんでいる。
ホームの熊本は「4-2-2-2」。GK南。DF藏川、矢野、廣井、片山。MF養父、根占、藤本、西森。FW武富、齊藤。右第2腰椎横突起骨折で離脱していたFW北嶋が戻ってきてベンチ入りを果たした。元日本代表のFW北嶋は25節から28節まで4試合連続でスタメン出場したが、移籍後初ゴールは生まれていない。
対するアウェーの富山は「3-4-2-1」。GK守田。DF足助、福田、池端。MF大西、平出、関原、ソ・ヨンドク、國吉、木村。FW黒部。京都から加入のGK守田は11試合連続スタメンで、鳥栖から加入のMF國吉は3試合連続スタメンとなった。
■ ロアッソが快勝試合は立ち上がりからホームの熊本のペースで進んでいく。2トップの一角のFW齊藤がいい動きを見せて、ベテランのMF藤本を中心にチャンスを作っていく。先制ゴールが生まれたのは前半30分で、FW武富のパスを受けたMF養父が切りかえしから左足でミドルシュートを決めて熊本が先制する。
さらに、前半33分に左サイドのFKを獲得すると、トリックプレーで中央にグラウンダーで入れたボールをDF片山が左足で決めて2対0とリードを広げる。MF養父は今シーズン初ゴールで、DF片山は今シーズン2ゴール目となった。前半は2対0で熊本がリードして折り返す。
後半開始から富山は、DF池端を下げてFW苔口を投入。平出のポジションを一列下げて、2トップに変更すると、セットプレーを中心にチャンスを作るようになる。光ったのは、3試合目のスタメンとなるMF國吉の左足のキックで、抜群の精度のキックで惜しいシーンを演出していく。
しかしながら、決定機を逃し続けてゴールを奪えずにいると、後半ロスタイムに熊本が途中出場のFW仲間のパスを受けたMF大迫希が左足で決めてダメ押しの3点目を挙げる。鹿児島城西高出身のMF大迫希は今シーズン3ゴール目となった。
結局、試合は3対0でホームの熊本が勝利し、勝ち点「3」を獲得した。一方の富山は、後半はセットプレーを中心にチャンスを作ったが、決定力を欠いて完封負け。15試合未勝利で、最下位に沈んだままで、JFL降格の危機が迫っている。
■ MF養父が1ゴール1アシスト富山の決定力不足に助けられたところもあるが、ホームの熊本が3対0で勝利して、勝ち点を「37」に伸ばした。15位のアビスパ福岡、16位のザスパ草津も同じ勝ち点「37」で、11位のギラヴァンツ北九州が勝ち点「43」なので、順位を上げるチャンスが巡ってきた。
試合は立ち上がりから熊本のペースで進んだが、MF藤本、MF根占、FW武富らを中心にパスが回って、攻撃のリズムは良かった。奮闘したのは、大卒2年目のFW齊藤で、スピードと運動量を駆使してボールに絡んで、チャンスを演出した。ベテランのFW北嶋が戦列に復帰してきたので、ポジション争いが待っているが、アピールに成功したと言える。
ヒーローとなったのは、背番号「10」を背負っているMF養父で、前半30分にミドルシュートで先制ゴールを奪うと、直後の前半33分にもセットプレーからDF片山のゴールをアシストし、1ゴール1アシストの活躍を見せた。DF片山のシュートも、MF養父のシュートも、相手のディフェンスに当たっており、ラッキーなところもあったが、思い切ってシュートを放ったのが良かった。
■ ベテランの頑張り今シーズンの熊本は、柏からレンタル移籍中の21歳のFW武富が11ゴールを挙げて、得点ランキングで5位タイに付けるなど、大ブレークを果たしている。技術の高さに定評のある選手だったが、今シーズンはゴールへの意欲が増して、ゴール前で怖さを与えられる選手になっており、ワンランク上の存在になった。
他にも、23歳のFW齊藤のチャンスを得るなど、若手も伸びてきているが、32歳のGK南、35歳のDF藏川など、ベテラン選手も頑張っている。特に、DF藏川は8節以降、ほとんどの試合でスタメン出場を果たしており、運動量の要求されるサイドバックのポジションで奮闘している。
同じく34歳のMF藤本も怪我から戻ってきて、ここ最近、スタメン出場を続けており、攻撃に変化を加えているが、GK南、DF藏川、MF藤本、FW北嶋とJ1経験が豊富なベテランがチームを引っ張っている。思うような結果は残せていないが、彼らの持つプロ意識などは、若手のいいお手本となるだろう。
■ 新加入のFW北嶋今後は、FW北嶋に注目したいところである。昨シーズンは柏で23試合に出場して9ゴールを挙げる活躍を見せて、柏のリーグ優勝に大きく貢献したが、シーズン途中に熊本に移籍してきて、新たな生活をスタートさせている。4試合連続でスタメン出場した後、怪我をして、しばらく離脱していたが、予想以上に早い段階でピッチに戻ってきて、ここからの活躍が期待される。
今シーズンの熊本は190センチのFWファビオが試合に出場することができず、2011年に33試合で8ゴールを挙げたFW長沢もいなくなったので、ゴールの前の迫力がなくなっている。FW武富が大ブレークして、FW齊藤も頑張っているが、FW北嶋のような点の獲れる選手がゴール前にいると、MF藤本やMF養父やDF片山なども生きてくるだろう。
柏では「レジェンド」と言っていいほどの選手なので、FW北嶋本人は並々ならぬ覚悟で熊本に移籍してきた。サッカー選手としてだけでなく、人間的にも魅力のある選手なので、J2に上がって5年が経過して、停滞気味のロアッソ熊本をどう変えていくのか、注目したいところである。
■ 最下位に沈む富山対する富山は、15試合未勝利となった。J2の残留争いは、19位の鳥取が勝ち点「24」、20位のFC岐阜が勝ち点「23」、21位の町田が勝ち点「22」、22位で最下位の富山が勝ち点「19」となっているが、鳥取と町田はここに来て、勝ち点「3」を獲得する試合が出てきて、FC岐阜も上位の大分や千葉から勝ち点「1」を得るなど、少しずつ勝ち点を伸ばしており、富山は離されつつある。
メンバーを見ると、攻撃的なポジションも、守備的なポジションも、タレントがいるので、最下位に低迷するような戦力ではないと思うし、試合内容も、それほど悪いとは感じないが、ここまで勝てないとなると、何かを変えるしかない。
当然、そうなったとき、優先度が高いのは、安間監督を交代させることであるが、今のところ、そういった動きもなくて、閉塞感も漂っている。安間監督というと甲府時代から選手に慕われるタイプの指導者で、金銭的な事情もあるので、解任のタイミングは難しいが、試合数が少なくなると、さらにプレッシャーがかかってくるので、近いうちに決断が下されても不思議はない。
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