■ 首位攻防戦J2の第32節。初のJ1昇格を目指す2位のサガン鳥栖が、ホームのベアスタに首位のFC東京を迎えたJ2の首位攻防戦。鳥栖は16勝6敗8分けで勝ち点「56」。FC東京は19勝5敗6分けで勝ち点「63」。その下は、3位の札幌は「53」、4位の徳島は「52」、5位の千葉は「50」で続いている。両チームとも絶好調で、鳥栖は最近の11試合で9勝2分けと負けなし。FC東京もクラブ新の7連勝中。しかも、6試合連続完封勝利中と「敵なし」の状態になっている。
ホームの鳥栖は「4-2-3-1」。GK赤星。DF丹羽、呂成海、木谷、磯崎。MF藤田、岡本、早坂、池田、キム・ビョンスク。FW豊田。エースのFW豊田はリーグトップの15ゴールを挙げている。韓国代表経験のある「10番」のMF金民友は怪我のため欠場中。10月12日の練習中に負傷して、全治4週間と診断されている。
対するアウェーのFC東京は「4-2-2-2」。GK権田。DF徳永、森重、今野、椋原。MF梶山、高橋、谷澤、田邉。FW羽生、ルーカス。19日(水)に行われた横浜FC戦のロスタイムに決勝ゴールを決めたMF石川はベンチから出番を待つ。チームトップの7ゴールを挙げているFWロベルト・セザーもベンチスタート。
■ スコアレスドロー試合の前半は、ホームの鳥栖ペースとなる。大観衆に後押しされた鳥栖は、ボランチのMF岡本やMF藤田のところでうまくボールをひっかけて、カウンターにつなげていく。最大のチャンスは前半34分。右サイドのMFキム・ビョンスクを起点に、MF岡本→MF池田とつないで、ゴール前でFW豊田が絶好機を迎えるが、フリーで放った左足のシュートは大きく枠を外してしまう。一方のFC東京は、攻撃のときにスピードアップできず、前半は、ほとんどチャンスを作れず。試合は0対0で折り返す。
後半になると、一転してアウェーのFC東京のペースとなる。ボールを回され始めた鳥栖は、スタミナが切れてきて防戦一方となる。後半11分に、MF田邉に代えてMF石川を投入すると、さらに右サイドの攻撃が活性化し、FC東京が攻め込む。対して鳥栖は、FW豊田のところにボールが入らなくなって、ほとんど攻撃できなくなる。鳥栖は劣勢となったが、DF木谷を中心に体を張って守り切って、何とかスコアレスで終了。鳥栖は12試合負けなしで2位をキープし、FC東京も9試合負けなしとなった。
■ 前半は鳥栖、後半はFC東京注目の上位対決は、前半は鳥栖がペースを握って、後半はFC東京がペースを握った。前半の45分間は、鳥栖の勢いが上回って、いい形で中盤でボールを奪って、カウンターにつなげることができた。「決定機」といえるのは前半34分のFW豊田のシュートシーンぐらいだったが、うまく展開できれば「ビッグチャンス」につながりそうな場面は何度か作れており、鳥栖にとっては「手ごたえ」を感じる前半だった。
しかしながら、その一方で、アップテンポになった分、MFキム・ビョンスク、MF池田、MF早坂の3人がスタミナを浪費して、後半に受け身になる要因になった。今の鳥栖の強みの一つは、2列目の選手が「ハードワーク出来る点」で、3人とも、サイズもあって運動量もあるので、忠実に守備を行って、相手のボランチや最終ラインにプレッシャーをかけ続けることができているが、疲れが出て、2列目の3人が機能しなくなると、FC東京にボールを持たれるゆになった。
FC東京が、それを見越した上で、前半に攻めさせていたわけではないと思うが、後半開始から、ギアを一段上げてきたこともあって、鳥栖は全く対応できなくなった。この辺りは、「さすがにFC東京」という感じで、「J2レベル」を超えるサッカーをしてきた。
■ 1位での昇格が濃厚7連勝中だったFC東京は、連勝こそストップしたが、2位の鳥栖との差は「7」で、4位の札幌との差は「11」。残り7試合で「11」の差があって、しかも、上位チームは「つぶし合い」もあるので、3位以内はほぼ確実であり、1位で昇格する可能性も限りなく高くなった。
FC東京は、久々のJ2の舞台ということで、シーズン序盤はその対応に苦しんで、スコアレスで試合が進むと焦りが出て来て、無理に攻めようとして失敗することがあったが、最近では、早い時間に先制点が獲れなくても、慌てることなく、落ち着いて攻めることができているので、勝ち点を取りこぼすことも、ほとんどなくなった。「焦らずにボールを回していれば、いつか点が取れる。」という余裕も出て来ているので、こうなると、J2のチームでは対処できなくなる。
もちろん、FC東京の選手も「プレッシャー」を感じていると思うが、下のチームとの差が大きく広がっているので、余裕もある。よって、「ガチガチ」になることもないだろう。ここから急失速することは、まず考えられないので、「J1復帰」へのカウントダウンが始まったといえる。
■ 大きな勝ち点「1」鳥栖にとっても、FC東京が相手ということを考えると、ドローでも十分な結果といえる。終盤戦に入ってきたので、勝ち点「1」の違いも大きいが、「無敗記録がストップしなかった」というのも大きい。次節は、5位の千葉と対戦するが、勝ち点差は「6」。勢いに乗ったまま、有利な立場で大一番を迎えることができた。
結局、今節は、徳島が勝利し、FC東京・鳥栖・千葉が引き分けで、札幌が敗れたので、徳島の一人勝ちとなった。その結果、FC東京が「64」、鳥栖が「57」、徳島が「55」、札幌が「53」、千葉が「51」となって、3位と4位が入れ替わった。次節は、2位の鳥栖と5位の千葉がベアスタで対戦し、3位の徳島と4位の札幌が鳴門で対戦するが、もし、鳥栖と徳島がホームで勝ち点「3」を獲得するようだと、FC東京、鳥栖、徳島の3チームが抜け出す形になる。鳥栖、徳島、札幌、千葉の4チームにとっては、非常に大事な試合が待っている。
その鳥栖は、千葉戦(H)のあとは、FC岐阜(A)、横浜FC(H)、愛媛FC(A)、北九州(H)、徳島(A)、熊本(H)と続いていく。今のJ2の中では、一番、チーム状態が悪いのが横浜FCで、その次がFC岐阜だと思われるので、鳥栖は、残りの対戦相手には、比較的、恵まれているように感じる。
■ 見えてきた?初のJ1昇格鳥栖が最後に敗れたのは、8月6日のホームでザスパ草津戦なので、2ヶ月半も負けなしが続いている。地元のサポーターも、「いよいよ」という感じになってきているみたいで、ベアスタには「15,489人」という大観衆が集まった。過去にも、1万人を超える試合はあったが、この試合は仕組まれたものではなく、自発的なものだったので、これまでのどの試合とも違う異質の雰囲気の中で試合が行われた。
「大観衆の中で、J1昇格を目指して、FC東京のようなJ1でも実績のあるクラブと戦う。」というのは、J2で下位に沈んでいた頃から、サガン鳥栖を応援しているサポーターにとっては、本当に「夢のようなシチュエーション」であり、長く記憶に残る試合になったことだろう。
これで残りは7試合。当然のことながら、2度目の昇格を目指すFC東京も、4度目の昇格を目指す札幌も、J1復帰を目指す千葉も、それぞれが「J1昇格」に向けて、盛り上がってきていると思うが、ずっとJ1でプレーしてきたクラブが感じるものと、J1経験の無いクラブが感じるものとでは、同じ「J1」への思いでも、全く異なるものとなる。
もちろん、それが「プレッシャー」となってマイナスに働くこともあるが、逆に、「初めて」というのが、とてつもないエネルギーに変わることもある。J2は、毎年、最後まで何が起こるか分からないが、いい風は吹いてきている。果たして、今シーズン、鳥栖の夢は実現するのだろうか・・・。
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