■ 4戦目ロンドン五輪のアジア最終予選の4試合目。3連勝でロンドン行きに王手をかけた「なでしこジャパン」が北朝鮮と対戦。
北朝鮮はここまで2勝1分け。初戦でオーストラリアに1対0で勝利し、2戦目の中国とはスコアレスドロー。3戦目の韓国には3対2で勝利し、勝ち点「7」を獲得して、2位に付けている。3位は中国で1勝2分けの勝ち点「5」。4位はオーストラリアで1勝2敗の勝ち点「3」。5位は韓国で0勝2敗1分けの勝ち点「1」。タイは3連敗で勝ち点「0」の最下位となっている。
日本は、北朝鮮に勝利すれば4連勝で首位通過が確定し、ロンドン行きが決定する。引き分けの場合でも、オーストラリアと中国の試合で、オーストラリアが勝つか引き分けると、2位以内が確定する。
最終戦の前に自力で出場を決めたい日本は「4-2-2-2」。GK海堀。DF近賀、岩清水、熊谷、鮫島。MF阪口、澤、大野、宮間。FW永里優、川澄。スタメンは3戦目のオーストラリア戦と同じ11人で、FW安藤、FW丸山らがベンチスタートとなった。
■ 1対1のドロー試合の立ち上がりは、日本がテンポ良くパスを回して攻め込んでいく。前半5分には、軽快にパスをつないで、FW永里のポストプレーからMF大野がフリーでシュートを放つなど、ビッグチャンスも作る。しかし、その後は、北朝鮮が前からプレッシャーをかけてきて、日本のリズムを崩していく。その後、日本は全くシュートを打てなくなって、決定機もほとんどなし。完全に北朝鮮のペースで、0対0で前半を折り返す。
後半も同じような展開となる。北朝鮮は、たびたび、サイドからクロスを上げて、ゴール前のチャンスを作っていく。うまくいかない日本は、後半8分に、MF大野に代えてFW安藤を投入。前線に運動量を加えてくる。ようやく流れが変わり始めたのは、後半20分あたりで、日本もパスが回り始めて、チャンスを作り始める。
待望の先制ゴールが決まったのは後半37分。日本は作り直しの攻撃で、右サイドに流れたDF岩清水がゴール前に鋭いクロスを入れると、うまくフリーになったFW永里がシュート。これは相手のGKにセーブされるが、GKがはじいたボールが北朝鮮の選手に当たってゴールイン。オウンゴールとなって1対0と日本が先制する。
これで「リードを守って、勝利すればロンドン行きが決まる」という展開になったため、日本は残り時間はサイドでボールをキープして時間を稼ごうとする。しかし、ロスタイムに波状攻撃を受けると、DF近賀のクリアが不十分で相手にゴール前でチャンスを作られて、途中出場のキム・チョランにミドルを決められて1対1の同点に追いつかれる。日本はアジア最終予選で2失点目となった。
結局、試合は、そのまま1対1のドロー。日本は3勝1分け、北朝鮮は2勝2分けとなって、この試合で、日本のロンドン行きは決まらず。ナイトゲームで行われる中国とオーストラリアの試合の結果で、今日中にロンドン行きが決まるか、最終戦の中国戦に持ち越されるかが、決定することになった。
■ 実力を見せた北朝鮮第2戦の韓国戦と同様に、日本は自分たちのサッカーが出来なかった。そのため、90分のうちの大半が北朝鮮ペースで試合は進んだ。「誰かの出来が悪かった。」というよりは「チーム全体の問題」で、北朝鮮の「運動量の多さ」と「球際の強さ」が際立つ展開になった。
(男子の代表でも同様のことを感じるが、)北朝鮮という国は、世界大会になると、経験不足が理由なのか、別の問題があるのかは分からないが、借りてきた猫のようになって、無抵抗のまま、無残な敗退に終わることが多いが、アジアの予選では、男女問わず、各年代でいつも力を発揮してくる。
それにしても、北朝鮮の選手は「ドーピング違反で主力5人が出場停止になっている」という「マイナス要素」をほとんど感じさせなかった。平均年齢は20歳くらいということで、(この情報が事実かどうかは定かではないが、)もし、本当であるならば、しばらくの間、日本も苦しめられそうである。
北朝鮮はドローに終わったが、最終戦はタイと対戦するので、白星を挙げる可能性は高い。こちらも、中国とオーストラリアの結果が非常に気になる展開になってきたが、格上といえる日本から勝ち点を奪ったことで、ロンドン行きを決める可能性は高くなってきた。
■ うまく時間を使いきれず・・・北朝鮮は、伝統芸ともいえる「前半からの選手交代」を行うなど、ベンチも積極的に動いてきたが、さすがに後半の中盤以降は「動き」が落ちてきて、日本のパスが回るようになった。全く機能していなかったMF大野に代えてFW安藤を入れたのが「1つのスイッチ」になったが、ちょっとしたラッキーもあって、オウンゴールで先制。最高の時間帯に先制したが、守りに入る気持ちが強すぎたのか、ロスタイムにミスから追いつかれてしまった。
何度かクリアミスが続いたので、ミスから許した同点ゴールだったが、やや「キープ」に入るタイミングが早すぎた感じはある。日本は後半41分にコーナーキックを獲得したが、ここで普通に蹴ることなく時間稼ぎを選択したが、ロスタイムを含めると、5分以上残っていたので、若干、早すぎた気がする。
こういうのは「結果論」になってしまうが、キープして時間を稼ごうとすると、それだけ相手の攻撃の時間が少なくなるので、失点する可能性は低くなるが、選手たちは守ろうとして「受け」に入ってしまうので、押し込まれる可能性は高くなる。
3戦目のオーストラリア戦の終盤はFW丸山を投入し、うまくボールをキープできていたので、時間を使うプレーとういうのは苦手ではないが、ワンタイミングか、ツータイミングくらい早かったと感じてしまう。中国とオーストラリアの試合がどうなるかは分からないが、日本としては目の前にロンドン行きが迫っていたので、悔やまれるドローとなった。
■ ロンドン行きに大きく前進も・・試合展開を考えると「敗戦」の可能性もあったので、「ドローでもロンドン行きに大きく前進」となったのは間違いないが、試合内容は物足りないものだった。予選なので突破することが大事であり、多くのことを求めるのは気の毒であるが、タイ戦、韓国戦、北朝鮮戦と「なでしこらしくない試合」が続いているのは気になるところである。
北朝鮮も、試合を支配していた割には決定機は少なくて、ゴール前のスクランブル状態から「あわや」のシーンはあったが、決定的なシュートは数えるほどだったので、失点の可能性はそれほど高くはなかったが、日本はイージーなミスも多くて、運動量でも相手を下回っていた。
走り負けていることについては、「過密日程」というのが大きな理由の1つでhあるが、条件は相手チームも似たようなものである。むしろ、本来の日本のサッカーが出来ていれば、もっとパスも回るはずで、相手を疲れさせて、後半に一気にギアチェンジしてゴールを奪うという展開に持ち込めても不思議ではないが、なかなか思うようなゲーム展開にならない。
■ ミスの目立つ宮間気になるのは中盤の4人である。MF澤は攻守ともに効いたプレーを見せていて、今予選ではシュートチャンスはほとんどないもの「高いパフォーマンス」を見せているが、MF阪口、MF宮間、MF大野の3人は、本来のプレーができずに苦しんでいる。
キーマンのMF宮間は、途中出場した初戦のタイ戦では、流れを大きく変える働きを見せたが、その後は、パスミスが多くて、サイドで起点になれていない。MF阪口は、守備ではまずまず頑張っているが、中盤の低い位置で相手につぶされてボールを失うシーンも多く、W杯のときと比べると安定感を欠いている。INAC神戸で好調のMF大野は、韓国戦で決勝ゴールを決めたが消える時間が長く、思い切りのいいプレーは見せられておらず、MF澤を除く中盤の3人の働きは十分ではない。
したがって、中盤はうまく機能していないが、MF大野を除くと代わりの選手がいないのが現状である。よって、動きが落ちてきても、調子が悪くても、交代させることはできない。初戦のタイ戦でまずまずのプレーを見せたMF上尾野辺やMF田中あたりは、途中から投入しても効果的だと思うが、そこまでの信頼されていないのか、佐々木監督が動くことはほとんどない。
FWに関しては、W杯ではさっぱりだったFW永里が復調してきて、しっかりとボールをおさめられるようになっていて、FW川澄もブレークしているので使える駒が豊富になっているが、中盤に関しては、使える選手が少ない。今後、「ロンドン行きが決まる・決まらない」に関わらず、新戦力の発掘は不可欠といえる。
この時点では、中国とオーストラリアの結果が分からないが、オーストラリアに頑張ってもらって、最後の中国戦は若手を起用して経験を積ませる場にしておきたいが・・・。
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