■ カメルーン代表戦トゥーロン国際トーナメントで4位という結果を残した反町ジャパンが国立競技場でカメルーン代表と対戦。グループリーグ第2戦で戦うナイジェリアを想定したトレーニングマッチは0対0のスコアレスドローに終わった。
日本は<4-5-1>。GK西川。DF森重・水本・吉田・田中裕。MF本田拓・梶山・梅崎・谷口・本田圭。FW森本というスタメン。
前半から押し気味に試合を進めて何度もゴール前に迫ったが、相手GKの好守もあって最後までゴールは奪えなかった。その一方で、相手に許したシュートは4本のみと前線からの守備陣が機能し、一定の収穫は得ることができた。
■ 機能した守備陣反町ジャパンは、北京五輪の本番まで2か月を切ってようやくチームの骨格が定まってきた。もともとDF水本を中心にした守備能力には定評のあったチームだが、この試合は、右サイドバックにDF森重、左サイドバックにDF田中裕を起用。ともに所属チームではセンターバックでプレーすることの多い選手であるが、五輪代表ではサイドバックで起用され、効果的なプレーを見せた。
特に、左サイドバックのDF田中裕のタイミングのいい攻撃参加とビルドアップ能力は大きなパワーとなった。充実したプレー内容は、五輪代表でのポジション獲得はもちろんのこと、将来的なA代表への抜擢の可能性も感じさせた。
ただ、DF内田篤人、DF安田理大、DF長友佑都というA代表にも選出されているサイドプレーヤーがチーム戻ってきたときに、どういう起用方法をとるのかは大きな悩みどころであり、チームが様変わりする可能性は十分ある。
オランダやナイジェリアといったチームと対戦することを考えると、センターバックタイプの選手を4枚並べるのも効果的で、セットプレーでの高さ対策にも有効である。
■ ポジションを奪う吉田麻也この試合では、DF青山直を差し置いて、19歳のDF吉田麻也がスタメンフル出場。186mの高さだけでなく、正確なつなぎで大きな存在感を示した。パートナーを組んだ水本とのコンビも申し分なく、一気にレギュラー候補に躍り出た。
センターバックにはDF闘莉王らオーバーエイジの起用も考えられるが、DF水本、DF吉田、DF青山直と充実してきていており、DF森重、DF田中裕の起用も可能ということを考えると、このポジションにオーバーエイジを採用するの可能性は低くなったかもしれない。
■ ビルドアップの改善昨年までの試合と大きく異なるのはビルドアップの部分での改善で、最終ラインから正確につないで崩すシーンも多かった。MF本田拓が絡んでダイレクトプレーで相手守備網を突破するシーンもあって、チーム全体で意思統一が図られていることがうかがえる。
パスを捌くことのできるDF吉田麻也が最終ラインに入って、前線にMF梅崎やMF谷口といった運動量豊富な選手を起用していることも、スムーズさをもたらしている。
■ ラストの課題 その一方で、フィニッシュにかかる部分では、以前として問題を多く抱えている。カメルーン戦では決定的なチャンスもいくつか作ったので、「得点が入らなかったのは不運だった。」と考えられなくもないが、このままの状態で進んでいったとして、五輪の本番で急に得点力不足が解消されるとは思えない。
気になるのは、もともとチーム全体の重心が後ろ気味なので、1トップのFW森本にボールが入った時にサポートする選手が少なく、MF梅崎がいい形で前を向いてボールを持ったシーンを除くと、相手に本当の意味で危険を感じさせることは出来なかった。
オーバーエイジとしてFW大久保やMF遠藤らの参加が噂されているが、これで一気に問題点が解決されるという可能性は薄い。アメリカ遠征やトゥーロン国際大会の成果もあって、昨年のアジア最終予選のころと比べるとチーム力は上向きであるのは間違いないが、北京五輪本番で好成績を残すには、得点力不足が大きな足枷である。
仮に北京五輪の本番まであと1年くらいの時間的な余裕があるとしたら、「順調なチーム作りができている。」と評価できるが、残念ながら、本番まであと50日しかない。
日本代表が世界と互角以上に戦うためには、どの年代でも、「得点力」が一番のネックになるが、現在の五輪代表チームは、どういう風に世界大会という舞台でゴールを奪うのかという最重要の課題が見過ごされたままで来ている。FW森本やFWエスクデロといったこのチームでは完全に未知数といえるタレントに期待する以外に無いのが現状といえる。
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