■ J2の第2節J2の第2節。開幕戦はアウェイで水戸と対戦してスコアレスドローだったロアッソ熊本がホームで服部浩紀監督を迎え入れたザスパクサツ群馬と対戦した。熊本のホームゲームは基本的にはうまかな・よかなスタジアムで行われるが、この日は熊本市にある水前寺競技場で開催された。群馬は開幕戦でミロシュ・ルス監督が就任した横浜FCと対戦したが、前半8分にFW大久保哲哉にゴールを許して0対1で敗れた。
ホームの熊本は「4-2-3-1」。GK原。DF藏川、クォン・ハンジン、大谷、片山奨。MF高柳、養父、中山雄、常盤、嶋田慎。FW齊藤和。今オフ、DFクォン・ハンジンとFW平繁が群馬から熊本に移籍したが、FW平繁は怪我のためスタンド観戦となった。大卒2年目のMF中山雄がスタメンで起用されて、1トップの位置にはFW齊藤和が入った。特別指定選手で大津高校の2年生のDF野田裕がベンチ入りを果たした。
対するアウェイの群馬は「4-2-2-2」。GK富居。DF夛田、小柳、青木良、小林亮。MFアクレイソン、松下裕、吉濱、江坂。FW大津耀、タンケ。開幕スタメンを勝ち取ったFW野崎は欠場で、高卒2年目のFW大津耀が今シーズン初スタメンとなった。FWオリベイラはベンチスタートで、浦和などで活躍した元日本代表のFW永井雄もベンチスタートとなった。FW永井雄は2014年はアルテリーヴォ和歌山でプレーした。
■ 2対2のドロー試合の序盤は完全にアウェイの群馬ペースとなる。軽快にパスが回ってチャンスを作ると、前半5分にFWタンケのパスを受けたFW大津耀がいいタイミングで左サイドでフリーになっていたMF江坂にパスを送ると、流通経済大出身のルーキーのMF江坂が左足でコース隅にシュートを決めて群馬が先制する。形を作れなかった熊本だったが、前半29分にMF嶋田慎が自ら得たPKを確実に決めて1対1の同点に追いつく。
さらに前半34分には高い位置でボールを奪ってMF嶋田慎がキーパーと1対1のチャンスを得ると、キーパーの動きをよく見て落ち着いて決めて2対1と逆転に成功する。プロ2年目で飛躍が期待されるMF嶋田慎は2ゴールの活躍だった。迎えた後半20分に群馬はゴールやや左寄りの絶好の位置でFKを獲得すると、ひと悶着あった末にMFアクレイソンが蹴ったグラウンダーのシュートが決まって2対2の同点に追いつく。
その後、両チームに3点目のチャンスが訪れたが、決めることはできず。結局、試合は2対2の引き分けに終わった。熊本は2試合連続ドローで、群馬は0勝1敗1分けとなった。どちらかというと群馬がペースを握る時間帯が長かったので、群馬にとってはかなり残念なドローとなったが、群馬は内容はかなり良かったと言える。次節は熊本はアウェイで愛媛FCと対戦して、群馬はホームで大分と対戦する。
■ 大卒ルーキーの江坂任がプロ初ゴールこの試合はなかなか見どころの多い試合となった。出来としてはアウェイの群馬の方が良かったが、まず目立ったのは先制ゴールを決めたMF江坂である。インカレの得点王で流通経済大から群馬に入団したルーキーの活きの良さが一番印象に残った。点を獲る才能に恵まれている選手で、フォワードがベストポジションではないかと思うが、左サイドハーフのポジションでいいプレーをたくさん披露した。
MF江坂の持ち味は「左右両足から繰り出される正確なシュート」と言われているが、右利きなのか、左利きなのか、どちらなのか短い時間では判別できないほど左足のシュートも精度が高い。それ以外のプレーの質も非常に高かったので、群馬にとっては大きな戦力であり、FWオリベイラやFW永井雄という選択肢もある中で開幕からスタメンで起用されている理由が良く分かるパフォーマンスだったと言える。
サイドの位置でプレーしながら点に絡める選手は貴重である。ザックジャパンのときのMF岡崎慎であったり、右サイドでプレーしているときのMF小林悠などが代表例と言えるが、MF江坂という選手もそういう感じでベースポジションがサイドであるにもかかわらず、チャンスシーンに絡むことができる選手のようだ。「シュートの上手な選手」というのは日本人ではなかなか出てこないので、そういう意味でも魅力がある。
他には19歳のFW大津耀の出来も良かった。C大阪U-18から高卒で群馬に進んでプロ2年目。昨シーズンもある程度の出場機会を得ているが、2試合目にしてスタメンのチャンスを得た。同様にFWオリベイラやFW永井雄という選択肢もある中でスタメンで起用されたので、服部監督の評価の高さがうかがえるが、しっかりとボールが収まっており、MF江坂の先制ゴールにつながったアシストは見事だった。
■ 中盤を仕切った新外国人のMFアクレイソン群馬は3人の新外国人選手に注目が集まっているが、この日はボランチのMFアクレイソンが目立った。ブラジル出身で32歳。176センチで80キロとがっちりした体格で、球際の強さを駆使して中盤を仕切るタイプの選手と言えるが、この日は直接FKで同点ゴールを記録した。「強烈なFKを持っている。」という情報は入っていたが、雨で濡れたピッチも味方して熊本のキーパーのGK原は止めることができなかった。
FKを蹴る前にひと悶着あった。左利きのMF吉濱、ロングシュートに定評のあるMF松下裕などもボールの近くに寄っていたが、MFアクレイソンとMF吉濱が激しく口論してつかみ合いの喧嘩に発展しそうな勢いだった。Jリーグの試合でチームメイト同士が試合中にここまで険悪な雰囲気になることは非常に珍しいが、予期せぬ争いに熊本の選手も動揺したのか、ここでMFアクレイソンの右足から同点ゴールが生まれた。
左足のキックに自信のある新加入のMF吉濱が「自分が蹴りたい。」とアピールしたが、MFアクレイソンはキッカーの座を譲らず。それにMF吉濱がキレて、その態度に腹を立てた経験豊富なMFアクレイソンも言い返したと想像できる。ベテランのMF松下裕などが仲介役となって2人をなだめようとしたが、頭に血が上った状態であるにもかかわらず、MFアクレイソンは冷静にグラウンダーのシュートを放った。
当然、試合中に味方同士で言い争いをするのはいいことではない。MF吉濱があれだけ激怒したということは、「自分がキッカーにはなれなかった。」ということを示しているのも同然で、「MFアクレイソンが蹴るだろう。」ということは熊本の選手も察知できたと思う。そういう意味でも不必要な争いと言えたが、『それだけ試合に対する思いが強い。』とも考えられる。いろいろな見方や考え方ができる場面だった。
■ 19歳の嶋田慎太郎が2ゴールの活躍一方の熊本は出来としてはそれほど良くなかった。開幕の水戸戦(A)はスコアレスドローだったが、このときの試合も出来はあまり良くなかったので、2試合連続で内容的にはすっきりしない試合となった。持ち味であるプレッシングがハマらないケースが多いので、難しい試合展開になっているが、押され気味の試合であるにもかかわらず、2試合連続で負けなかったことはポジティブに捉えたいところである。
熊本で目立ったのは何と言っても2ゴールのMF嶋田慎である。開幕の水戸戦(A)の出来はあまり良くなかった。水戸戦(A)で途中出場したMF中山雄の出来はまずまず良かったのでスタメン落ちも考えられたが、FW平繁が怪我で欠場ということもあって2試合連続でチャンスを得た。MF嶋田慎にとっては何としてでも自分の存在をアピールしたい試合だったが、個人としては十分すぎるほどの結果を残した。
同点ゴールにつながった1点目のPKも自ら獲得した。PKの場面も冷静に左足でコース隅に蹴りこんだが、2点目のゴールも落ち着いていた。完全にキーパーと1対1の形になったが、あれだけフリーになると逆に緊張してしまうものである。あまりにもドフリー過ぎたので、相当なプレッシャーを感じるのが当たり前と言えるシチュエーションだったが、キーパーの動きをよく見てゴールに流し込んだ。
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