Jリーグは1993年に開幕して2014年が22年目となる。これまでの21シーズンで計5,820試合が行われているが、「観客動員数の多かった試合ベスト20」は表1のようになる。1位は「新記録達成」ということで、大きな話題になったが、昨年の11月30日(土)に行われた第33節の横浜FMと新潟の試合で62,632人を集めた。(※ J2の試合、NCや天皇杯などのカップ戦、PSM、CSは除く。)
表1. 観客動員数の多かった試合ベスト20
■ 3万人以上集めた試合 今度は「3万人以上集めた試合」をカウントすると581試合となる。合計5,820試合の中で581試合ということは、ほぼ全体の10%となる。その内訳をまとめると表2のようになる。1番多かったのは浦和のホームゲームで172試合。Jリーグで3万人以上の試合はこれまでの21シーズンで581試合なので、29.6%が浦和のホームゲームとなる。これはダントツの数字である。
2番目に多かったのは新潟で113試合。これは全体の19.4%に相当する。以下、3番目が横浜FMで59試合、4番目がFC東京で41試合、5番目が東京V(V川崎)で31試合、6番目が鹿島で27試合、7番目が名古屋で22試合と続いていく。結局、ホームゲームで3万人以上を集めた経験があるのは23チームだけで、未経験のチームもいくつかある。
そして、4万人以上となると合計256試合で、そのうちの114試合が浦和のホームゲームなので44.5%に相当する。2位が39回の新潟で、3位が26回の横浜FMとなる。新潟のホームスタジアムであるビッグスワンはJリーグにおける過去最多が42,056人(2006年5月6日(土)の清水戦)なので、4万人で埋まると「立錐の余地もない。」という感じになると思われる。
表2. 3万人以上を動員した試合 (ホームゲームのみ)
| 3万人以上 | 4万人以上 | 5万人以上 | 6万人以上 |
浦和 | 172 | 114 | 58 | 3 |
新潟 | 113 | 39 | 0 | 0 |
横浜FM | 59 | 26 | 14 | 2 |
FC東京 | 41 | 10 | 0 | 0 |
東京V | 31 | 18 | 12 | 0 |
鹿島 | 27 | 6 | 4 | 0 |
名古屋 | 22 | 3 | 2 | 0 |
磐田 | 14 | 1 | 0 | 0 |
清水 | 14 | 7 | 4 | 0 |
C大阪 | 13 | 3 | 0 | 0 |
千葉 | 13 | 11 | 6 | 0 |
横浜F | 10 | 7 | 4 | 0 |
柏 | 9 | 2 | 0 | 0 |
広島 | 6 | 1 | 0 | 0 |
G大阪 | 6 | 1 | 0 | 0 |
平塚 | 6 | 4 | 0 | 0 |
札幌 | 6 | 0 | 0 | 0 |
大分 | 5 | 0 | 0 | 0 |
仙台 | 5 | 1 | 0 | 0 |
大宮 | 5 | 0 | 0 | 0 |
横浜FC | 2 | 2 | 0 | 0 |
神戸 | 1 | 0 | 0 | 0 |
甲府 | 1 | 0 | 0 | 0 |
| 581 | 256 | 104 | 5 |
■ 圧倒的な浦和と新潟の動員力改めて数字を眺めていくと浦和のホームでの動員力というのは物凄いものがある。342試合の平均は31,007人で、埼玉スタジアムでのホームゲームに限定すると166試合で平均43,097人。埼玉スタジアムで過去最少だったのは2011年の福岡戦(17節)の20,240人で、埼玉スタジアムで3万人を超えなかったのは13試合だけ。実に92.2%で3万人をオーバーしている。
新潟の動員力も凄まじい。2004年にJ1に昇格してきたが、J1昇格後のホームゲームは計168試合で平均は32,989人。上のとおり、浦和は342試合で31,007人なので浦和を上回っている。ホームゲームで2万人未満は8試合だけ。ホーム最低は2004年11月の柏戦(@国立競技場)の11,150人となるが、これは中越地震の影響でビッグスワンで開催できなかった試合である。
ビッグスワンでのワーストは2011年の甲府戦の13,644人で、ワースト2位は2012年の横浜FM戦の15,854人。ということでビッグスワンで15,000人に届かなかったのは1回だけ。キャパシティの問題もあるのでどうしようもない話であるが、「過去に15,000人をオーバーした試合は数回だけ」というチームもいくつかある。新潟の動員力というのが、普通ではないことが分かる。
埼玉スタジアムも、ビッグスワンも、非常に雰囲気のいいスタジアムであるが、「めちゃくちゃアクセスに優れたスタジアムか?」というとそういうわけではない。どうしようもないほど不便なところではないが、ともにJRなどの最寄駅からは遠くて、徒歩やバスで向かうことになるが、ハンディを感じさせないほどの動員力がある。J1の中では、この2チームは飛び抜けている。
■ Jリーグブームの凄まじさ 容易に予想できると思われるが、観客動員数の多かった試合の上位の多くが浦和絡みである。第100位が2006年8月12日(土)の浦和とFC東京の試合(@埼玉スタジアム)で50,195人なので、5万人以上を収容できないスタジアムでホームゲームを開催しているチームはノーチャンスとなるが、ベスト100のうち、浦和のホームゲームが56試合で、もちろん、クラブ別では最多となる。
その次が横浜FM(横浜M含む)のホームゲームで14試合、3番目がV川崎(東京V含む)のホームゲームで12試合なので、この3チームだけで82試合となる。ベスト100を書き出すと、ほとんどがこの3チームのホームゲームとなるので、浦和と横浜FMと東京Vの3チームは除外して、それ以外のチームのホームゲームで歴代ベスト100に入っている試合を書き出すと、表3のようになる。
注目したいのは、歴代33位のところである。これが浦和とV川崎(東京V)と横浜FM(横浜M)が絡まない試合でもっとも観客を集めた試合となるが、1994年6月1日(水)の市原と清水の試合で54,656人。この人数でも歴代33位となるが、水曜日の夜に、中立地の国立競技場で、市原と清水の試合でこれだけのお客さんを集めている。当時のJリーグブームの凄まじさを痛感する。
表3. 観客動員数の多かった試合ベスト100 (ただし、浦和・横浜FM・V川崎のホームゲームは除く。)
歴代ランク | 年度 | 月日 | ホーム | アウェー | スタジアム | 人数 |
18 | 1993 | 06/09(水・祝) | 名古屋 | V川崎 | 国立 | 56,335 |
25 | 1994 | 06/08(水) | 横浜F | V川崎 | 国立 | 55,014 |
33 | 1994 | 06/01(水) | 市原 | 清水 | 国立 | 54,656 |
40 | 1998 | 09/15(火・祝) | 横浜F | 横浜M | 横浜国 | 53,598 |
42 | 1993 | 11/17(水) | 市原 | 浦和 | 国立 | 53,570 |
48 | 2001 | 05/12(土) | 清水 | 磐田 | 静岡 | 52,959 |
52 | 1994 | 03/26(土) | 市原 | 鹿島 | 国立 | 52,612 |
59 | 1994 | 05/14(土) | 市原 | V川崎 | 国立 | 52,228 |
60 | 1994 | 05/04(水・祝) | 清水 | 鹿島 | 国立 | 52,218 |
61 | 1995 | 05/06(土) | 市原 | 浦和 | 国立 | 52,149 |
68 | 1993 | 12/01(水) | 清水 | V川崎 | 国立 | 51,825 |
73 | 1999 | 05/05(水・祝) | 鹿島 | 磐田 | 国立 | 51,575 |
75 | 1994 | 04/06(水) | 市原 | 横浜M | 国立 | 51,291 |
81 | 1993 | 08/25(水) | 横浜F | V川崎 | 国立 | 51,082 |
88 | 1994 | 08/20(土) | 鹿島 | 清水 | 国立 | 50,724 |
92 | 1993 | 05/29(土) | 清水 | 名古屋 | 国立 | 50,475 |
94 | 2000 | 11/26(日) | 鹿島 | 柏 | 国立 | 50,399 |
95 | 1994 | 08/17(水) | 名古屋 | G大阪 | 国立 | 50,375 |
■ アウェー動員数 今度はアウェー動員数に着目して、平均が多かったチームから順番に並べてみると、表4のようになる。1位は浦和で22,000人で、2位は横浜FCで21,336人となる。横浜FCがJ1に在籍したのは2007年だけであるが、開幕戦が埼玉スタジアムでの浦和戦(=57,188人)だったことと、日産スタジアムで横浜ダービー(=53,916人)が行われたことが数字を伸ばした主要因である。
上位の顔触れを見ると、浦和はもちろんのこと、鹿島、磐田、横浜FMなど、歴史や伝統があって、ブランド力の高いチームが上位を占めている。単純に人気クラブになると、「アウェーサポーターの数が多くなる。」という事情もあるが、Jリーグにおいては、対戦相手の魅力というのも、観客動員数に大きく関わってくることがよく分かる結果になっている。
また、関東圏のチームが上位に来ていて、地方のクラブは下位に位置する傾向にある。これについては、「アウェーからやってくるサポーターの数」が全く変わってくるので、たくさんのクラブがある関東圏のチームが有利なのは間違いないが、関東圏以外で上位に食い込んでいる磐田・清水・G大阪などは、「対戦相手として魅力のあるチーム」と言えるのではないかと思う。
最下位になったのは福岡で、10,626人とダントツの低さとなるが、いくつかの事情を考慮しなければならない。福岡がJリーグ(J1)に所属したのは1996年から2001年までと、2006年と2011年になるが、福岡の場合、動員的にJリーグの暗黒期にJ1に所属することが多かったことが原因と考えられる。(※ 2011年も東日本大震災の影響で平日の試合が非常に多かった。)
結局のところ、「(相手が弱くて)勝てそうな試合」よりも、「対戦相手にスター選手がいる試合」であったり、「歴史や伝統のあるクラブとの試合」の方がお客さんが集まりやすいのが、Jリーグの特徴と言える。これだけアウェーの平均動員数に差があることを考えると、 魅力のある選手や魅力のあるチームが増えれば増えるほど、Jリーグ全体も活気を帯びてくると考えられる。
表4. アウェーの平均動員数
| クラブ名 | 試合 | 平均 |
1 | 浦和 | 342 | 22,000 |
2 | 横浜FC | 17 | 21,336 |
3 | 鹿島 | 357 | 20,186 |
4 | 磐田 | 339 | 18,969 |
5 | 横浜FM | 357 | 18,841 |
6 | 川崎F | 168 | 17,675 |
7 | 東京V | 238 | 17,601 |
8 | 清水 | 357 | 17,398 |
9 | FC東京 | 211 | 16,932 |
10 | G大阪 | 340 | 16,765 |
11 | 名古屋 | 357 | 16,647 |
12 | 仙台 | 98 | 15,933 |
13 | 大宮 | 153 | 15,919 |
14 | 湘南 | 145 | 15,868 |
15 | 山形 | 51 | 15,849 |
16 | 新潟 | 168 | 15,748 |
17 | 横浜F | 114 | 15,281 |
18 | 甲府 | 68 | 15,280 |
19 | 鳥栖 | 34 | 15,207 |
20 | 柏 | 283 | 15,032 |
21 | 千葉 | 289 | 14,774 |
22 | 大分 | 132 | 14,672 |
23 | C大阪 | 251 | 14,307 |
24 | 広島 | 325 | 14,094 |
25 | 神戸 | 242 | 13,611 |
26 | 札幌 | 81 | 13,202 |
27 | 京都 | 176 | 13,119 |
28 | 福岡 | 127 | 10,626 |
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