→ 2014/01/14
数字で楽しむJリーグ (インターセプト編) (前編) → 2014/01/15
数字で楽しむJリーグ (インターセプト編) (後編)■ クラブ別のランキング今度は「ドリブル数」に着目する。クラブ別のランキングは表1となる。1位が川崎F、2位が広島、3位が浦和、4位がC大阪、5位が鹿島、6位が横浜FMとなっているので、リーグ戦の上位チーム(1位~6位まで)がそのままトップ6になっている。一方、もっともドリブルが少なかったのは鳥栖で334回だった。FC東京、名古屋、柏など、攻撃的なポジションにタレントのいるチームが下位というのは意外な気もする。
J1のリーグ戦は34試合なので、1試合平均の数を出すと、1位の川崎Fが16.62回で、最下位の鳥栖が9.82回となる。「ドリブル数」というのは、成功した場合だけでなく、失敗した時もカウントされるが、川崎Fと鳥栖では大きな差があることが分かる。ただ、もっとも多い川崎Fでも約5.4分に1回のペースなので、現代サッカーではドリブルで仕掛けるシーンはあまり多くないことが分かる。
表1. ドリブル数 (クラブ別)
| | ドリブル数 |
1 | 川崎フロンターレ | 565 |
2 | サンフレッチェ広島 | 557 |
3 | 浦和レッズ | 541 |
4 | セレッソ大阪 | 539 |
5 | 鹿島アントラーズ | 514 |
6 | 横浜Fマリノス | 495 |
7 | ジュビロ磐田 | 487 |
8 | 清水エスパルス | 451 |
9 | アルビレックス新潟 | 429 |
10 | 大分トリニータ | 417 |
11 | ヴァンフォーレ甲府 | 411 |
12 | 湘南ベルマーレ | 396 |
13 | ベガルタ仙台 | 393 |
14 | 大宮アルディージャ | 390 |
15 | FC東京 | 382 |
16 | 名古屋グランパス | 370 |
17 | 柏レイソル | 347 |
18 | サガン鳥栖 | 334 |
■ ドリブルの多かった選手(ベスト30)今度は個人別でドリブルの多かった選手(ベスト30)を表2で示した。1位になったのはMFミキッチ(広島)で、2位がMFレナト(川崎F)で、3位がMF中村俊(横浜FM)で、4位がMFジュニーニョ(鹿島)、5位がMF齋藤学(横浜FM)だった。広島というとパスサッカーのイメージが強いが、ドリブル数はチーム全体ではリーグ2位で、MFミキッチが個人別で1位。ドリブルも有効に使っていることが分かる。
ベスト30に入った選手の中で、異質なのは、やはりDF槙野(浦和)である。顔ぶれを見ると、ボランチの選手は誰もいなくて、サイドの選手がほとんどであるが、CBがメインの選手では、唯一、DF槙野がランクインしている。彼の特異なプレースタイルは賛否両論あるが、左ストッパーのDF槙野の突破というのが、浦和の大きな武器になっており、相手チームにいると非常に厄介な選手であることは確かである。
表2. ドリブル数のランキング (個人別)
順位 | 選手名 | チーム名 | 試合数 | 出場時間(分) | ドリブル |
1 | ミキッチ | 広島 | 29 | 2256 | 196 |
2 | レナト | 川崎F | 28 | 2168 | 167 |
3 | 中村 俊輔 | 横浜FM | 33 | 2963 | 149 |
4 | ジュニーニョ | 鹿島 | 30 | 2121 | 130 |
5 | 齋藤 学 | 横浜FM | 28 | 2103 | 125 |
6 | 原口 元気 | 浦和 | 33 | 2553 | 115 |
7 | 柏 好文 | 甲府 | 34 | 2934 | 113 |
8 | チョ ヨンチョル | 大宮 | 33 | 2673 | 110 |
9 | 山田 大記 | 磐田 | 30 | 2698 | 104 |
10 | ウイルソン | 仙台 | 30 | 2545 | 100 |
10 | 柿谷 曜一朗 | C大阪 | 34 | 3018 | 100 |
12 | 大迫 勇也 | 鹿島 | 33 | 2756 | 96 |
13 | チェ ジョンハン | 大分 | 28 | 2418 | 93 |
14 | 大久保 嘉人 | 川崎F | 33 | 2967 | 92 |
14 | 駒野 友一 | 磐田 | 34 | 3015 | 92 |
16 | マルキーニョス | 横浜FM | 32 | 2824 | 90 |
17 | 古林 将太 | 湘南 | 30 | 2367 | 86 |
18 | 高山 薫 | 湘南 | 32 | 2772 | 81 |
18 | 槙野 智章 | 浦和 | 34 | 3060 | 81 |
20 | 梅崎 司 | 浦和 | 28 | 1484 | 74 |
21 | ダヴィ | 鹿島 | 26 | 1858 | 73 |
22 | 山岸 智 | 広島 | 26 | 1206 | 72 |
22 | 遠藤 康 | 鹿島 | 28 | 1657 | 72 |
22 | 丸橋 祐介 | C大阪 | 31 | 2566 | 72 |
25 | 金 珍洙 | 新潟 | 31 | 2778 | 71 |
26 | 酒本 憲幸 | C大阪 | 29 | 2544 | 69 |
27 | 高木 俊幸 | 清水 | 30 | 1670 | 67 |
27 | 高萩 洋次郎 | 広島 | 31 | 2744 | 67 |
29 | 野田 隆之介 | 鳥栖 | 20 | 1528 | 65 |
30 | 金 民友 | 鳥栖 | 33 | 2932 | 64 |
■ 90分あたりのドリブル数のランキング次の表3は「90分あたりのドリブル数が多かった選手のランキング」である。ここでは「J1のリーグ戦で500分以上に出場した選手」に限定している。1位になったのは、シーズン途中にゴトビ監督率いる清水に加入してスーパーサブとしての地位を確立したFW村田(清水)で8.21回/90分。ドリブルの回数がJ1の中でもっとも多かった広島のMFミキッチの7.82回/90分を上回っている。
野洲出身のFW村田は、MF乾貴士(フランクフルト)、MF田中雄大(水戸)と同級生となる。野洲出身らしく技術も高いが、何と言っても、抜群のスピードがあって、右サイドからの突破はJ1でも有数である。C大阪ではなかなか出場機会を得ることができなかったが、清水は3トップを採用しており、右ウイングのポジションで躍動した。自分の周りにスペースがある清水のサッカーにハマったと言える。
ベスト30の顔触れを見ると、広島の選手の多さが目に付く。MFミキッチが2位、MF清水が5位、MF山岸が8位に入っており、MFファン・ソッコも18位に位置する。ただ、1位のMF村田でも8.21回/分なので、約11分に1回のペースとなる。点が欲しい時間帯でサイドからのドリブル突破を期待されてピッチに送り出されたとしても、そんなに簡単にはドリブルを披露できるわけではないようだ。
表3. ドリブル数/90分のランキング
順位 | 選手名 | チーム名 | 試合数 | 出場時間(分) | ドリブル | /90分 |
1 | 村田 和哉 | 清水 | 23 | 504 | 46 | 8.21 |
2 | ミキッチ | 広島 | 29 | 2256 | 196 | 7.82 |
3 | レナト | 川崎F | 28 | 2168 | 167 | 6.93 |
4 | 山崎 亮平 | 磐田 | 21 | 693 | 52 | 6.75 |
5 | 清水 航平 | 広島 | 19 | 866 | 56 | 5.82 |
6 | 楠神 順平 | C大阪 | 24 | 721 | 45 | 5.62 |
7 | ジュニーニョ | 鹿島 | 30 | 2121 | 130 | 5.52 |
8 | 山岸 智 | 広島 | 26 | 1206 | 72 | 5.37 |
9 | 齋藤 学 | 横浜FM | 28 | 2103 | 125 | 5.35 |
10 | 武藤 雄樹 | 仙台 | 22 | 702 | 41 | 5.26 |
11 | 関口 訓充 | 浦和 | 20 | 502 | 27 | 4.84 |
12 | 中村 俊輔 | 横浜FM | 33 | 2963 | 149 | 4.53 |
13 | 梅崎 司 | 浦和 | 28 | 1484 | 74 | 4.49 |
14 | 原口 元気 | 浦和 | 33 | 2553 | 115 | 4.05 |
15 | 遠藤 康 | 鹿島 | 28 | 1657 | 72 | 3.91 |
16 | 野田 隆之介 | 鳥栖 | 20 | 1528 | 65 | 3.83 |
17 | チョ ヨンチョル | 大宮 | 33 | 2673 | 110 | 3.70 |
18 | 三田 啓貴 | F東京 | 17 | 584 | 24 | 3.70 |
19 | ファン ソッコ | 広島 | 26 | 993 | 40 | 3.63 |
20 | 南野 拓実 | C大阪 | 29 | 1540 | 62 | 3.62 |
21 | 水野 晃樹 | 甲府 | 19 | 671 | 27 | 3.62 |
22 | 高木 俊幸 | 清水 | 30 | 1670 | 67 | 3.61 |
23 | ウイルソン | 仙台 | 30 | 2545 | 100 | 3.54 |
24 | ダヴィ | 鹿島 | 26 | 1858 | 73 | 3.54 |
25 | 山田 大記 | 磐田 | 30 | 2698 | 104 | 3.47 |
26 | 柏 好文 | 甲府 | 34 | 2934 | 113 | 3.47 |
27 | チェ ジョンハン | 大分 | 28 | 2418 | 93 | 3.46 |
28 | 佐々木 勇人 | 仙台 | 22 | 521 | 20 | 3.45 |
29 | 田中 輝希 | 名古屋 | 16 | 512 | 19 | 3.34 |
30 | 古林 将太 | 湘南 | 30 | 2367 | 86 | 3.27 |
■ 打開力が復活表2や表3でもっとも目に止まったのは、やはり、横浜FMのMF中村俊である。2013年は自身2度目となるリーグMVPに選ばれたが、ドリブルの回数は3位で、90分あたりの数字は12位。ベスト30に入っているのは、サイドプレーヤーか、フォワードの選手がほとんどである。当然のことながら、中央が基本ポジションの選手がこれだけドリブルで仕掛けることができるようだと大チャンスにつながっていく。
MF中村俊という選手は「司令塔」と表現されることが多くて「パサー」に分類する人もいるが、10代後半から20代前半の頃は自分からドリブルで仕掛けて、自らの力で局面を打開することができる選手だった。スピードで相手を抜くというよりは、テクニックやタイミングで抜くタイプだったが打開力は高かった。ただ、20代後半になって体のキレが落ちてきた後は、自分から仕掛けることが難しくなった。
それ故、晩年の日本代表では苦労したが、今シーズンは、ドリブルで仕掛けるプレーが復活した。これは数字にもはっきりと表れている。MF中村俊は2010年にJリーグに戻ってきたので復帰して4年目のシーズンだったが、過去4シーズンのドリブルに関する数値は表4のようになる。過去3年とは全く違っているので、キレを取り戻して、打開力が蘇ったことが2013年の大活躍につながったのは間違いない。
表4. ドリブル数に関する数値 (中村俊輔)
| 試合数 | 出場時間 (分) | ドリブル数 | /90分 |
2010 | 32 | 2694 | 86 | 2.87 |
2011 | 24 | 1860 | 40 | 1.94 |
2012 | 31 | 2619 | 82 | 2.82 |
2013 | 33 | 2963 | 149 | 4.53 |
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